ライトフライ級の歴史は比較的新しく、1975年にWBAが新設した階級です。
当時、フライ級では体格的に劣っていた具志堅用高(協栄)が、新設したライトフライ級に階級を下げ、日本の世界タイトル防衛記録を大きく塗り替える13度の防衛を果たしたことは日本中、誰もが知るところでしょう。
具志堅以降、多くのボクサーがライトフライ級の王座を保持し、一時はライトフライ級の主要4団体の王座を日本人ボクサーが独占するという時期もあったほどです。
現在も日本人世界王者が2人君臨するこの階級、統一戦の機運も高まっています。
現世界王者を中心に、ライトフライ級のトップボクサーを振り返っていきます。
ライトフライ、ふたりの日本人王者。
WBC王者
寺地 拳四朗(BMB)17戦全勝(10KO)
アマチュアで実績を残し、プロデビュー。日本王座、OPBF東洋太平洋王座とステップアップし、木村悠(帝拳)からWBC王座を奪ったガニガン・ロペス(メキシコ)に2017年にアタック。2-0の判定で下した後は、2年半で7度の防衛。
キャリアを進めるうち、13度防衛の記録を塗り替えると発信しており、本来であれば、今年(2020年)中に3度の防衛を果たし、10回防衛という大台に乗せたいと語っていましたが、コロナ禍によりかつてないキャリア中断にあってしまいます。
飛び跳ねるようなステップワークで動き、抜群の距離感をキープ、左を当てる。相手が出てきたところへのカウンターも武器で、世界王者になってからも防衛戦ごとに強さを増している超安定王者です。
距離で相手のパンチを外すので、ダメージも受けにくく、ハイペースで試合をこなせます。しかも相手は強豪ばかりを選択しています。昨年決まりかけて相手の怪我で流れてしまった統一戦が早く見たいですね。
WBAスーパー王者
京口 紘人(ワタナベ)14戦全勝(9KO)
こちらも同じく元トップアマ、敬愛する辰吉丈一郎と同じく8戦目でミニマム級の世界タイトルを獲得。その後、ジムの先輩である田口良一から王座を奪ったヘッキー・ブドラー(南アフリカ)からWBA王座を奪取。前戦は大阪のベテラン、久田哲也(ハラダ)に善戦を許しながらも後半に圧倒し、2度目の防衛戦をクリア。
コロナ禍の中でもYOUTUBEチャンネルは好調。私ももちろん毎回見させていただいています。現役ボクサーのYOUTUBEチャンネルとしては走りですね。ボクサー個人としても、どんどん発信が必要な世の中になっているので、是非いろいろなボクサーが後に続いてほしい。
ガードをがっちり固めたスタイルから、超攻撃的なボクシングを展開します。こちらも安定王者で、寺地拳四朗との統一戦が待たれます。海外からボクサーを招聘できない今は格好の対戦どきとも思いますが、如何に?
手強い対抗王者たち
当然ですが、その他の王者たちも手強いです。個人的には、いきなり寺地vs京口ではなく、それぞれが統一戦で打ち勝って、最後にしてもらえればいいなと思っています。つまり、WBSS開催を強く希望します。
WBAレギュラー王者
カルロス・カニサレス(ベネズエラ)22戦21勝(17KO)1分
2016年末、鳴り物入りで挑んだ初の世界挑戦は、当時の王者、田口良一とドロー。そして2018年に神戸で小西伶弥(真正)との王座決定戦で判定勝利で戴冠。2戦目での世界タイトル奪取を狙ったルー・ビン(中国)を最終回TKOで退け、木村翔をアウトボックスしてここまで2度の防衛。
ライトフライ級にもかかわらず、驚異的なKO率です。ハードパンチと、中南米特有の上体の柔らかさが持ち味です。そのハードパンチを武器にしながら、木村戦のようなアウトボクシングもできるので曲者。スーパー王者に京口が君臨するWBAですが、過去に拳四朗と闘いたい、と発言していた記憶があります。
カニサレスはアウェーに乗り込んでタイトルを獲得し、防衛もしてきている選手。また統一戦で、日本でその雄姿を見られる日も近いと思います。
IBF王者
フェリックス・アルバラード(ニカラグア)37戦35勝(30KO)2敗
2013年末、井岡一翔の持つWBA王座に挑戦してから早6年半、31歳になっています。翌年フライ級にあげてファン・カルロス・レベコ(アルゼンチン)に挑戦するもこちらも判定負けで失敗、2018年に先日拳四朗に挑戦したランディ・ペタルコリン(フィリピン)との決定戦を制して3度目の正直で戴冠。初防衛戦では小西伶弥を退けています。
アルバラードもその戦績が示す通りのハードパンチャー。そしてかなり打たれ強い。ディフェンスに難ありとも言えますが、相手のパンチをもらいながらもそのハードパンチを打ち込む、かなり怖い選手です。
拳四朗との対戦が決まっていたものの、自身の怪我で中止に。
また日本に来てくれることを祈り、その時を待ちたいと思います。
WBO王者
エルウィン・ソト(メキシコ)18戦17勝(12KO)1敗
過去に田中恒成への挑戦経験もある、アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)に最終回KO勝ちして王座を射止めたソト。こちらも高いKO率を誇ります。初防衛戦ではエドワード・ヘノ(フィリピン)に大苦戦とまだ評価は定まりませんが、23歳と若く、これからのボクサー。
キャリア初期に1敗を喫しています。この王者たちの中では若干落ちる感は否めませんが、一発の怖さのある王者です。
前WBO王者
アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)23戦21勝(21KO)2敗
2017年に田中恒成の持つWBO王座に挑みますが判定負け。次戦で決定戦で同王座を獲得。勝ち星すべてがKOという驚異的なハードパンチャーです。
ソトには不覚をとりましたが、すでに再起済み。「ティト」という愛称は地元プエルトリコの英雄、フェリックス・トリニダードから来ているものです。我々世代は、期待するのにはこの愛称だけで十分。
もう一花咲かせてもらいたい、超攻撃的な元王者です。
日本のお家芸、ライトフライ。
もちろん世界タイトルを虎視眈々と狙う日本人ボクサーもたくさんです。
久田哲也(ハラダ)46戦34勝(20KO)10敗2分
京口に挑戦、善戦しましたが敗退。ベテランの巻き返しに期待。
堀川謙一(三迫)57戦40勝(13KO)16敗1分
前戦で日本タイトルを失いました。40歳、もう人花咲かせられるか。
矢吹正道(緑)13戦10勝(10KO)3敗
次戦で日本タイトルに挑みます。勝利の全てがKO、強豪との対戦が目立つ矢吹。
これからに大いに期待のボクサーです。
小西伶弥(真正)19戦17勝(7KO)2敗
世界タイトルに2度挑むも失敗。3度目の正直になるのか。
ベテランから新鋭まで、これからもしっかりと揃っているライトフライ。
しかし、世界的に見るとマイナー階級であることは否めません。
だからこそ今、統一戦を開催し、アジア圏や中南米だけでなく、様々な国のボクシングファンから注目を集めてもらいたいと思っています。現在の王者たちは皆揃ってKO率も高く、良い意味で軽量級らしくない試合が見られると思います。
今のうちに、タイトルの統一戦をバンバン組んで、世界中で見てもらいたいものですね。