歴史のあるミドル級。常に話題のある階級であり、多くの中量級のボクサーたちが行きつく場所でもあります。
最近では、マニー・パッキャオのトレーナーであるフレディ・ローチが、ミドル級でゲンナディ・ゴロフキン挑戦を画策しているというニュースも流れました。ただ、ミドル級はさすがのパッキャオも無謀でしょうね。
少し前まではゲンナディ・ゴロフキンを頂点としたミドル級ではありましたが、現在は乱戦状態と言ってもいいでしょう。しかし、統一戦の機運はそれほど高くなく、それぞれの王者がそれぞれの道を行くという階級でもあります。
boxingcafe.hatenablog.com 今回のブログでは、現在のミドル級トップ戦線について見ていきたいと思います。
世界王者たち
WBAレギュラー王者
村田諒太 18戦16勝(13KO)2敗
現在、日本一有名なボクサーの1人でしょう。日本ボクシング史上2人目の世界ミドル級王者である、村田諒太。ロンドンオリンピック金メダリストの肩書からデビュー、2017年にWBAミドル級王座を初戴冠、2度目の防衛戦で陥落するも、見事リベンジして返り咲き。
ロブ・ブラント2戦目の闘いは、鬼気迫るものがありました。
そこから初防衛戦のスティーブン・バトラー戦を見ると、ここに来て村田のボクシングは完成したとも言えるでしょう。
逆に言うとこれ以上のスタイルチェンジは不可能とも見て取れます。34歳、既にキャリアの終盤と悟っているであろう村田。村田自身はサウル・アルバレス戦を熱望していますが、個人的にはゲンナディー・ゴロフキン戦が見たいです。
WBC王者
ジャーモール・チャーロ 30戦全勝(22KO)
2008年にプロデビュー、2015年にIBF世界スーパーウェルター級王座を獲得。3度防衛ののち、2017年にミドル級転向を表明、テストマッチを経て2018年にWBC世界ミドル級暫定王座決定戦に出場し、これを獲得。

2019年にWBC世界同級王者のサウル・アルバレスがフランチャイズ王者(この時に出来た謎の王者)となったため、チャーロが正規王者に昇格。
WBCのアルバレス優遇には驚きます。ここでアルバレスvsチャーロなんていうと非常に盛り上がった試合だったんですが。実際はアルバレスがチャーロを避けたのか、それともアルバレスは複数階級の目標があってチャーロにかまっている時間がなかったのか。
いずれにしろ、チャーロはミドル級でも圧倒的な強さを誇っています。
非常にアグレッシブ、スピード溢れるKOパンチャーで、フィジカルも強い。下の階級から上げてきた選手とは思えない程、ミドル級でも全く力負けしません。その分、自身の攻撃的スタイルを貫く事ができています。
2019年12月が最新の試合ですが、試合後にはサウル・アルバレスかデメトリアス・アンドラーデとの統一戦を希望しています。
アルバレスは振り向いてくれそうにないので、アンドラーデ戦が現実的でしょうか。
双子の弟はWBC世界スーパーウェルター級王者、ジャーメル・チャーロ。
IBF王者
ゲンナディー・ゴロフキン 42戦40勝(35KO)1敗1分
かつてミドル級最強の名をほしいままにしたゴロフキンも38歳。
元トップアマ(アテネ五輪で銀メダル等)から2006年にプロデビュー。2010年のWBAミドル級王座獲得を皮切りに、次々とKO防衛を重ねていきます。
メキシコ、ドイツ、ウクライナ、アメリカ、モナコ、と各地で闘い続けた闘う王者、ゴロフキン。数々の強敵を打ち砕き、WBC暫定王座(後に正規に認定)、IBF王座を吸収し、2016年にはウィルフレド・ゴメスと並ぶ17連続KO防衛という記録を打ち立てます。

そして2017年にいよいよサウル・アルバレスとの一戦が持たれます。
この一戦は、大いに議論を呼ぶ判定でドロー。中には8ポイント差でアルバレスの勝利を支持しているジャッジもいましたが、この採点は「ジャッジの見方によって採点が変わる」というレベルのものではなかったと思います。再戦ではアルバレスに敗北してしまいましたが、私の個人的な採点ではアルバレスと1勝1敗です。(2戦目はアルバレスの勝ちで良い内容)
その採点の他、アルバレスからメキシコ人によくある禁止薬物の検出がされたり、と穏やかでなく、ゴロフキンを応援している身としてはあまり認めたくはない2戦ですね。
キャリアが終わってもおかしくないタイミングでの敗北、そして年齢だったゴロフキンですが、再起戦で世界ランカーを下し、2019年にセルゲイ・デレフヤンチェンコとの王座決定戦を制し、IBF王座に返り咲き。この試合は非常に接戦ではありましたが、評価の高いデレフヤンチェンコを下し、まだまだ第一線で活躍できることを示しました。
次戦については、契約するDAZNの以降でアルバレスとの第3戦が組まれるという話もありましたが、IBFの指名防衛戦であるカミル・シェレメタ戦が有力のようです。
WBO王者
デメトリアス・アンドラーデ 29戦全勝(18KO)
こちらも元トップアマ(世界選手権金メダル等)を経て2008年にプロデビュー。2013年にWBO世界スーパーウェルター級王座決定戦で勝利し、初戴冠。この王座剥奪後、2017年にはWBA同級王座を獲得。こちらはミドル級転向のため返上。
2018年にWBO世界ミドル級王座を決定戦で獲得。最新の試合で2020年1月30日に3度目の防衛戦をクリアしています。
特徴的には、ディフェンシブで防御カンに優れ、技術が高いサウスポー。前戦ではパンチの的確さも証明しました。相手からすると非常にやりにくいスタイルです。
アメリカ出身ながら、そのスタイルからあまり人気の高くない王者。しかし強く、敗けづらいので、なかなかビッグマッチには恵まれてきませんでした。本人はもっともっととファイトマネーを釣り上げる傾向があり、決まりそうな試合(チャーロ戦やサンダース戦)も結局破談になるパターンも多かったような気がします。
次戦はチャーロ戦と本人も希望していて、相思相愛なのでまとまれば面白いですね。ミドル級最強の矛vs最強の盾という矛盾対決!

WBAスーパー・WBCフランチャイズ王者
サウル・アルバレス 56戦53勝(36KO)1敗2分
リング誌のPFPランキングで1位に輝くサウル・アルバレス。スーパーウェルター級で王座獲得、その後ミドル級でも王座を獲得。ゴロフキンと1勝1分、ダニエル・ジェイコブスを統一戦で退けます。
その間にミドル級王座を保持したままスーパーミドル級で戴冠、ライトヘビー級でも戴冠。結局ライトヘビー級の王座は返上し、現在は上記王座に加え、WBAスーパーミドル級のレギュラー王座も保持しています。
コロナ禍前、村田諒太との対戦も取りざたされましたが、村田が世界的に無名ということを受けて結局は実現せず。しかし、アルバレスは世界各地で闘いたい、という希望を持っており、今後も交渉の場は持たれるでしょう。
その後確定的と話題に上がったのは、WBOスーパーミドル級王者のビリー・ジョー・サンダースとの1戦でした。しかしサンダースがSNSでDVを助長するような発言をしたために、ライセンス停止処分に。アルバレスの次戦は不透明なものになりました。
アルバレスは人気、実力ともにNo.1の評価を得ており、この先もしばらくは中重量級の話題は「カネロ(=アルバレス)が誰と闘うのか」ということが話題になることでしょう。対するボクサーにとっても、話題性、報酬、そしてもし勝てば名声といった具合に全てが手に入ると思われるアルバレス戦。カネロの次戦の相手には目が離せませんが、一説によるともうカネロがミドル級のウェイトを作るのは容易ではなく、スーパーミドル級以上での試合となる予想が立っています。村田諒太は、ウェイトはカネロに合わせる、と発言しており、カネロ戦を熱望しているようです。
層が厚い!ミドル級のコンテンダーたち
セルゲイ・デレフヤンチェンコ 15戦13勝(10KO)2敗
デレフヤンチェンコはこれまでに2度、タイトルに挑戦していますが、いずれも僅差の判定負け。相手はダニエル・ジェイコブス、ゲンナディー・ゴロフキンと1流どころのため、世が世なら当然世界王者となっていてもおかしくない、というのが評価のようです。
非常にスキルフルなデレフヤンチェンコは、王者となれるか。非常に層の厚いミドル級、うかうかしていると歳をとり、若手に取って代わられる可能性もあります。
クリス・ユーバンクJr 31戦29勝(22KO)2敗
村田諒太というアクティブなWBA王者がいるにも関わらず設けられたWBA暫定王座戦に勝利し、ミドル級の暫定王座を獲得したクリス・ユーバンクJr。
元2階級制覇王者のクリス・ユーバンクを父に持つジュニア、2011年にプロデビュー。2015年にWBA世界ミドル級暫定王座を獲得、その後返上。
2つの黒星は2014年に地域王座戦でビリー・ジョー・サンダース戦で喫した1敗と、2018年にWBSSシーズン1にスーパーミドル級で出場し、準決勝でジョージ・グローブスに敗れたものです。
あくまでも暫定王座なので、村田諒太との次戦が社会通念上は規定路線なのでしょうが、村田vsユーバンクJrという話題は全く出てこないのが不思議ですね。
ハイメ・ムンギア 35戦全勝(28KO)
WBO世界スーパーウェルター級王者、ムンギアは2020年1月11日、ミドル級でのテストマッチを終えました。
相手は歴戦の雄、ゲイリー・オサリバン。そのオサリバンに対し、若干体敗けはしたものの、終わってみれば終始ムンギアペースの圧勝と言っていい内容でした。
スーパーウェルターのスピードそのままに、圧倒的な連打をするシーンがあったムンギア。若干23歳とまだ若く、パワーはこれからまだまだつけていけるでしょう。
次期スターといっても過言ではないムンギアではありますが、スーパーウェルターで無敵を誇ったフィジカルは、ミドル級では今のところやや心もとないところがあります。この先楽しみではありますが、もう2〜3戦ほど、ミドル級の体づくりをすすめながらテストマッチをして、トップに挑んでほしいですね。
竹迫司登 13戦12勝(11KO)1分
日本からは竹迫司登。現日本&OPBF東洋太平洋ミドル級王者で、間違いなくミドル級国内最強です。
但し、この階級の世界の壁は厚く、世界ランカーにも無敗の強者や無冠の強者がウヨウヨしています。可能であれば、同門の井上岳志とともにアメリカで試合経験を積み、世界ランカーに勝って日本の中量級・重量級を盛り上げてもらいたいです。
ミドル級のランカーは、強者揃い
次戦でゴロフキンに挑むカミリ・シェルメタ、村田とロンドン五輪決勝で戦ったエスキバ・ファルカオ、パトリック・ウォシッキー、パトリス・ボルニー、ジャニベック・アリムカウリー等々、無敗の世界ランカーも数多くいます。
まだまだ強敵との対戦も少なく、実力を測りかねる世界ランカーも多いですが、現在の王者たちはおそらくここから成長するというようなタイプでもないので、これからがチャンスでしょう。
だからこそ今、ミドル級での統一戦、ビッグマッチをやるべきタイミングでもあります。
特に我らが村田諒太チャンプには、他団体の王者との統一戦、カネロじゃなくていいのでどうにか実現してほしいものですね!
近々のニュースに期待です。