先週行われたホセ・ラミレスvsビクトル・ポストル。スーパーライト級の新旧対決とも言うべき頂上決戦のひとつは、若きラミレスの圧勝に終わる予想が大半だったと思います。
しかし、蓋を開けてみればベテランポストルの健闘が光る素晴らしい一戦となりました。
今回は、ラミレスvsポストルの興行を中心に、同日に行われたエリスランディ・ララの試合の観戦記を書いていきたいと思います。
↓プレビュー
トップランク興行、前座試合。
ラミレスvsポストルの前座試合では、注目のボクサーが登場していました。
バンタム級のガブリエル・ムラタヤ(アメリカ)とスーパーライト級のレイモンド・ムラタヤ(同)兄弟。ガブリエルが兄で26歳、レイモンドが弟で23歳です。リングアナウンサーの声を聞くと「ムラタヤ」と発音しているように聞こえますが、日本語表記では「ムラタラ」とされることもあるようです。
特にガブリエルはバンタム級のプロスペクトなので、井上尚弥には間に合わなくても日本人ボクサーとの対戦が今後ある可能性の高いボクサーです。
↓ガブリエル・ムラタヤの前戦、前々戦。
ガブリエル・ムラタヤの相手は、2戦2勝のジャスティス・ブランド(アメリカ)。
手足が非常に長いブランド、スピードもあります。非常によく伸びるジャブ。非常に良い選手に見えます。やはりアメリカは4回戦のレベルが高い。2Rの中盤くらいから距離が近くなります。つまりブランドの距離ではなくなります。ブランドは徐々にスピードが衰えてきます。
接近戦でブランドのパンチをひょいひょいとかわし、ショートパンチを叩き込むムラタヤ。この選手はフットワークもいいですが接近戦も良い。
ムラタヤが危なげなく判定勝利を挙げ、これで5戦全勝(3KO)。
弟、レイモンドの相手はセサール・バレンズエラ(メキシコ)。
15勝(5KO)6敗1分というキャリアのある相手で、兄の相手と同様に大きく、リーチが長いです。ムラタヤとは身体の厚みが違い、やはり少し当たり負けしている感じがします。
ムラタヤ兄弟はともに思い切って打つ右のオーバーハンドがパワーに溢れています。少しオープンブロー気味ですが。強気に攻めるムラタヤは、早々にダウンを奪います。しかし2R、攻め込んだムラタヤがバランスを崩したところでバレンズエラの右がヒット、ムラタヤもダウン。
その後試合はエキサイトし、打ち合う場面も増えていきます。ここでも有効だったのは、ムラタヤの右。まっすぐも出せますし、オーバーハンドでも出すこの右は相手にとって非常にやっかい。
そして7R、ヒットを積み重ねたムラタヤがコンビネーションでバレンズエラを下がらせたところでレフェリーがストップ。レイモンド・ムラタヤの7RTKO勝利。
エルビス・ロドリゲス(ドミニカ共和国)vsコーディ・ウィルソン(アメリカ)
ウェルター級の6回戦。9戦8勝8KO1分という戦績のロドリゲス。1分はバッティングによる負傷ドローです。身体もでかく、パワフルなパンチを繰り出し、1Rから圧倒。サウスポースタンスからテクニカルにパンチを当て、最後は左ストレートでウィルソンを粉砕。恐ろしいパンチャーです。
エルビス・ロドリゲスの2RTKO勝利。
アーノルド・バルボサJr(アメリカ)vsトニー・ルイス(カナダ)
スーパーライト級の10回戦。23戦全勝(10KO)のバルボサJrが登場です。技術的なものは勿論しっかりしていますし、前の手がうまく、そこから繰り出すコンビネーションもテクニカル。しかし相手のルイスも23勝(10KO)2敗と好戦績なボクサーで、手数が多く非常にタフです。
ほぼフルマークの判定でアーノルド・バルボサJrの判定勝利。
メインイベント
ホセ・ラミレス(アメリカ)vsビクトル・ポストル(ウクライナ)
身体を振りながらプレッシャーをかけるラミレスと、ステップを踏んでジャブを撃つポストル。好対照な両者です。1R、ポストルは逃げているようにも見える、ディフェンシブな闘い方。
2Rに入るとポストルは逃げるのを止め、能動的なフットワークと素晴らしいジャブを打ち込み始めます。逆にラミレスはポストルに近づけず、パンチが空を切る場面が目立ちます。
3R、ポストルのジャブはまだまだ冴えていますが、気を抜くとラミレスの早い左右が飛んでくるので緊張感が漂っています。後半に強いラミレス相手にどうなるか見ものです。
4R、5Rも同様、ラミレスはやや強引に入りパンチを当てることもありますが、全体的にポストルのジャブが機能している印象です。そろそろやばくなってきたラミレスと、このままいきたいポストル。
6Rも非常にテンポよくリズムを刻み、左右のストレートを繰り出すポストル。ラウンド終盤はやや脚が止まりかけたようにも見えます。
7R序盤、先程にも増して大きくステップを使うポストル。しかしこのラウンド、ようやくラミレスのプレッシャーがポストルを明らかに上回り始めます。ポストルはラミレスの突進を止められなくなってきました。
8Rもラミレスの突進は止まりません。ラミレスは自分の距離になれば、ガードを打ち壊すような連打をお見舞い。アップライトで構えるポストルは、入ってくる時のラミレスのパンチでのけぞってしまうので見栄えもあまり良くない。
その後のラウンドも、ラミレスは攻め続け、ポストルは脚をつかってジャブを多用。互いに自らの武器を前面に押し出しつつ、相手の良い所は消せない、そんな感じの12R。
終にエキサイティングな場面は訪れませんでしたが、ともにクリーンヒットを奪い合い、死力をつくした闘いだったと思います。
判定は、2-0でラミレスを支持。妥当だと思います。
これでWBC、WBO王座を防衛したラミレスは、ジョシュ・テイラー(イギリス)との4団体統一戦を熱望しています。
テイラーは9/26日にアピヌン・コーンソーン(タイ)を相手に防衛戦を行う事が決まっていますので、早ければ年内、遅くも来年春くらいには統一戦となりそうです。
↓以前の記事ですが、スーパーライト級世界戦線についての記事。
↓日本人ボクサーが絡む時は来るのでしょうか。
エリスランディ・ララ(キューバ)vsグレグ・ベンデティ(アメリカ)
ララが世界のトップで闘いはじめてからもう10年近く経つのでしょうか。多くのキューバン・ボクサー同様に非常に息の長いボクサーですね。
亀海喜寛(帝拳)に勝利したとはいえ、やはり役不足に思えるベンデティ。長身のララに対し、がっしりとした体躯を活かして低く入りますが、ララのディフェンス、当て勘は大したもの、体ごとぶつけてくるベンデティに対してきっちりとガードし、相手のダック中にもパンチをコネクト。
ベンデティも持てる武器を使って接近、手数で勝負しますがそのほとんどはララのガードの上を叩くのみ。時折のヒットもララを脅かすには至りません。
後半はララがディフェンシブに闘い、逃げ切り。ララやリゴンドウは無観客試合が向いているかもしれません。どうやってもブーイングが起きないから。
エリスラディ・ララの判定勝利。前戦で獲得したWBA世界スーパーウェルター級王座の初防衛に成功しました。
先週の海外興行については、ララの試合は想定通りでしたが、ラミレスはもう少しがんばってポストルを倒してテイラー戦にはずみをつけてほしかったですね。結果的にはポストル恐るべし。ラミレスvsテイラーが実現したあとは、タイトルはまたバラけると思うので、そこでまたポストルには充分すぎるチャンスが生まれてきます。
そこにはやく日本人ボクサーも絡んできてもらいたいですね。
まあこのトップランク興行では、次代を担うプロスペクトたちが続々と登場してくれたことが良かったと思います。
↓結局国内興行の方が最強でした。