9月最終週はボクシング三昧!
国内だけでなく、海外でも注目試合が目白押しです。
その中でも、アメリカのPBC興行は必見!しかもWOWOWさんがオンデマンドで生配信してくれました。さらに、一か月ほどは見逃し配信もあります。
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今ならチャーロ兄弟の興行の他、10月~12月のビッグマッチも見れますね。
ちなみに第一部の興行では、ジャモール・チャーロvsセルゲイ・デレビヤンチェンコをメインとして、スーパーバンタム級の注目王者、ブランドン・フィゲロアの防衛戦と、井上尚弥にフラれてしまったジョンリエル・カシメロの防衛戦も。
日本のボクシングファンにとっては大注目の興行です。
9/26(日本時間9/27)
WBC世界スーパーバンタム級挑戦者決定戦
ダニエル・ローマン(アメリカ)31戦27勝(10KO)3敗
vs
ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)24戦21勝(9KO)3敗
前WBAスーパー・IBF世界スーパーバンタム級王者、ダニエル・ローマンの復帰戦にして、WBC同級王座への挑戦者決定戦であるこの一戦。
2010年にデビューしたローマンは4回戦時代に岡田隆志との対戦経験があり、この時が初黒星(デビュー4戦目)。2013年には11戦目で8回戦で判定負け。
その後連勝を重ね、2017年に久保隼(真正)の持つWBAタイトルへ挑んだのが世界初挑戦で、見事9RTKOで王座を獲得しました。
その頃は、現在のようなローマンの活躍は想像できないほど、凡庸なボクサーに見えました。
しかし、初防衛戦で日本期待の松本亮(大橋)を圧倒的な手数で退けると、4度目の防衛戦で岩佐亮佑(セレス)を破ったIBF同級王者、TJドヘニー(アイルランド)との2団体統一王座戦に臨みます。
ここを明確な判定で勝利した後、ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)にタイトルを明け渡してしまいました。
アフマダリエフは確かに強かったですが、内容は互角。どちらが勝ってもおかしくない内容でした。たった8戦目で2冠統一王者となったアフマダリエフは、運にも味方されたといっていいでしょう。
ということで、未だ力が落ちているわけではないローマン、圧倒的な力を持つわけではありませんが、基本のしっかりととのったボクサーで、その丁寧なボクシング、旺盛なスタミナから生来の生真面目さが見て取れます。
おそらく日本にもファンは多いのではないでしょうか。
そして対するパヤノは、ご存知井上尚弥(大橋)に70秒でKO負けしてしまったボクサー。
しかし実力は折り紙付き、負傷判定とはいえアンセルモ・モレノ(パナマ)を降しWBA世界バンタム級王座を獲得、初防衛戦ではルーシー・ウォーレン(アメリカ)をも退けています(が、再戦して判定負け)。
井上尚弥に痛烈なKO負けを喰ってからも、その復帰戦ではホープ、ダミアン・バスケス(アメリカ)を完封して判定勝利。(バスケスは同日興行の第1部でブランドン・フィゲロアに挑戦。)しかし2019年7月にはルイス・ネリ(メキシコ)にボディでKO負けして後がない状態でもあります。
バンタムから上げてきたパヤノと、ナチュラルなスーパーバンタムのローマン、体格の差はあるでしょう。
パヤノはもともとパワーがある方ではありませんが、ネリ戦でもやはりフィジカル面で遅れをとっている感じはありました。
パヤノには厳しい闘いとなりますが、ローマンはその真正直なボクシングがパヤノに翻弄されない事が大切ですね。スーパーバンタム級のサバイバルマッチ、トップ戦線に返り咲くためにもローマンに良い勝ち方をしてもらいたいです。
ローマンvsパヤノ
解説陣も言っていますが、パヤノは大きく見えますね。体の厚み、背中、肩回り。ナチュラルなスーパーバンタムに比べても明らかに大きいです。体格差はなんとパヤノの方が大きかった、既に私の予想が外れそう。
手を出しながら攻め込むローマンと、待ち構えながらも素早いジャブ、利き手の左を出すパヤノ。ここは予想通りの展開です。
2Rもスピーディでスリリングな展開が続きます。ローマンはガンガン攻め込みますが、パヤノもよく手が出ます。
3R、プレッシャーをかけるローマンですが、終盤はパヤノが大きい左右を振っていき、攻勢を印象づけます。回転力はローマンが上かと思いましたが、パヤノも意外なほど回転力があります。
4R、5R、ローマンはボディを中心に攻め込みます。攻め込んでくるローマンに対してパヤノは速いコンビネーションで対抗。後半に強いローマン、ここからです。ここまでパヤノはオーバーペースなのか、それともこのペースで最後まで持つのか。
拮抗状態に陥った6R、ローマンは突進力が若干減ったように感じます。休んでいるのでしょうか?
7R、どちらに振り分けるか非常に難しいラウンドが続きますが、もしボディがポイントになっていなければ厳しいかもしれないローマン。このラウンドも含め、パヤノに対してまだいつものように攻め込めていません。
8R、ローマンのボディでダメージを受けたかと思ったパヤノでしたが、その後ラッシュ!大きなパンチをふるっていき、まるでKOを狙っているような戦い。パヤノはやはりゲームメイクが上手い!
9R、パヤノはカウンター準備をして待ちのボクシング。ローマンは攻めたいが明確には攻めきれず。
10R、攻めるローマン、サークリングするパヤノ。パヤノは左目上をカット、気にしています。しかしロープ際の攻防でもパヤノのディフェンス技術は目立ちます。しかしここはローマンが攻勢。
11R、同じく攻め込むローマン、パヤノは攻め込んできたところにパンチをまとめます。最終ラウンドも攻め込むローマンといなすパヤノ。パヤノの動きは思ったほど落ちていません。
ローマンはいつものように手数で圧倒できず、パヤノのボクシングに付き合っているように見えますが、ジャッジの見方はどうか。最後の最後、ローマンの左フックがカウンターで当たりパヤノがダウン!しかしレフェリーはカウントを数えず。
どちらに転んでもおかしくないような判定は、3者ともに116-112でダニエル・ローマン!
微妙なラウンド続きでしたが、ジャッジはローマンの攻勢をとったようですね。それぞれが明確にとったラウンドは少なかったですが、3者一致というのは文句の言いようもないかもしれません。(そういう問題ではありませんが。)
ともあれ、ダニエル・ローマンおめでとう。WBC王座への挑戦資格を有しました。
WBC世界スーパーバンタム級王座決定戦
ルイス・ネリ(メキシコ)30戦全勝(24KO)
VS
アーロン・アラメダ(メキシコ)25戦全勝(13KO)
「憎き」ネリ。山中戦でのドーピング違反、大きな体重超過は日本のボクシングファンは絶対に忘れないでしょう。私も現地で観戦しましたが、特に2戦目、もしかしたら日本のボクシング会場で初めて聞いた大ブーイングだったかもしれません。
とはいえ、30勝24KO無敗という戦績が示すとおり、ネリの実力を認めないわけにもいきません。それは薬物の力に頼ったものであったとしても、実際のリングでそのハードパンチを惜しげもなく披露し、結果を出しているのです。
もし彼にかかっている様々な疑惑がなければ、その痛快なボクシングはきっと日本のファンの多くに受け入れられていた事でしょう。
そして勿論、今回もリングに上る前、ネリにとってまず最初の敵は「秤」。本人が敵とみなしているかどうかはわかりませんが。。。
ちゃんと体重をつくってリングに上がってほしいものですね。
対するアーロン・アラメダ。今回の試合が決まって、初めて名前を聞くような選手です。
世界ランク6位の選手が王座決定戦に出場というのも如何なものか、とも思いますが、前戦がWBCバンタム級のシルバー王座の防衛戦だったネリがWBCスーパーバンタム級の1位になっているのも不思議で仕方ないです。
このアラメダ、メキシコの元トップアマらしく、どちらかというとディフェンシブな闘い方に見えます。中間距離でのディフェンスは上手いですね。 しかしネリの猛攻を、こう上手くかわせるかは疑問です。打ち合ってしまうとネリ有利となってしまうでしょう。
アラメダがネリを空転させて、自らのパンチを打ち込む、という展開は想像できませんが、願わくばそうなってほしい。メキシコでは珍しいサウスポー同士の一戦、アラメダが上手く闘う事を期待しています。
ネリvsアラメダ!
立ち上がり、ジャブをついていくネリ。アラメダもジャブが良く、動きは悪くありません。2Rもアラメダの長いジャブが有効。後半はネリが手数で攻勢に出ます。
3R、中間距離での攻防に終始。ネリは次から次へと手数が出ますが、やや右ガードが下がってきます。
4R、ネリがプレッシャーを強め、得意のスイングパンチを放ちます。しっかりガードしたアラメダはインサイドからカウンター。これまでのネリは、ディフェンシブな時はディフェンシブで、攻撃する時はスイングパンチをどんどん放っていき、手数が増えれば増えるほどスピードも上がっていく印象でした。
しかしこの日は回転力のある連打がここまで見えません。スーパーバンタム級ではメキシカンビーフの力も通用しないのでしょうか。
互いにクリーンヒットは少なく、手数勝負。手数であればネリに軍配が上がる展開です。ここばで、ネリのスイングにはバンタム級のときほどの迫力は感じませんが、アラメダ相手にはフィジカルで勝っている印象を受けます。
7R、ネリの渦に飲み込まれつつあるアラメダ。ただ、ネリにいつもの爆発力のある攻撃は見えない分、アラメダにもまだチャンスはあるように見えます。
9Rにアラメダのカウンターがヒット。しかしネリはびくともしません。両者ともに無理に攻めず、まるでスパーリングのようです。
10R、アラメダのワンツー、そして良いボディがネリにヒット。アラメダはチャンス!ネリの勢いが明らかに下がります。遅きに失した感もありますが、あと2Rあります!リスクを冒せ、アラメダ!!!
しかし11R、攻め切れないアラメダ。カウンターは打てましたが、厳しいかもしれません。最終回、つっこむネリ!アラメダはカウンターチャンスですがなかなか手が出ません。
ジャッジは115-113、116-112、118-110のユナニマス・デシジョンでルイス・ネリ。
アラメダはジャブがよく、ディフェンスもよく良い選手ではありましたが、ベルトがかかった正念場の一戦で意地を見せられませんでしたね。もうちょっと、いやもっともっと玉砕覚悟でいっていたらどうなっていたかわかりません。
対するネリは暴風のような連打が落ち着いてしまい、パワー自体は感じるものの、これまでのようにガード越しに相手に効かせることはできません。更にボディの打たれ弱さを露呈した試合でもありました。ということでダニエル・ローマンのボディショットに期待します。
WBC・WBA・IBF世界スーパーウェルター級王座統一戦
ジャーメル・チャーロ(アメリカ)34戦33勝(17KO)1敗
vs
ジェイソン・ロサリオ(ドミニカ共和国)22戦20勝(14KO)1敗1分
WBC王者、チャーロとWBA・IBF統一王者のロサリオの3団体統一戦! チャーロ兄弟の弟、ジャーメルは兄・ジャモールのようなパワーパンチャーではなく、どちらかというとスピードを武器にしたカウンターパンチャー。
2016年にWBC王座を初戴冠、話題のエリクソン・ルビン(アメリカ)を1RKOで退け、強豪、オースティン・トラウト(アメリカ)にも勝利。
当時のWBA・IBF統一王者、ジャレット・ハード(アメリカ)との統一戦が持ち上がっていましたが、伏兵トニー・ハリソン(アメリカ)に僅差の判定を落とし、無冠になってしまいました。
しかしこの微妙な判定からの再戦で、ハリソンを11RKOに切って落とし、王座へ返り咲き。そして今回の統一戦を迎えました。
対するロサリオは、統一王者ジャレット・ハードをアップセットで破ったジュリアン・ウィリアムス(アメリカ)を5RTKOのアップセットで破り、初戴冠でいきなり2冠王者に。
強豪との対戦は少ないので、チャーロが優位予想なのは致し方のないことだと思います。 ウィリアムスは、ジャレット・ハードを破ったことで満足してしまっていたのかもしれません。
そこを突かれたと考えると、ロサリオの実力はどうなのか疑問が残るところです。 とはいえ、3冠統一戦であることには変わりありません。
「階級最強」の称号は、チャーロの手中に収まるのか。それともロサリオが2戦連続でアップセットを起こすのか。
チャーロ弟vsロサリオ!!
様子見から、チャーロのワイルドなパンチ。攻め入ったチャーロに押し倒されたようにロサリオが倒れます。ここはダウンをとられますが、これは不運。気を取り直してダメージなしのロサリオがどっしりとした構えから若干プレッシャーをかけ、チャーロはステップを踏みます。
2R、距離が近くなり危険なタイミングでのパンチが交錯!ロサリオのガードは固く、スッと距離をつめます。一方、距離をとって中間距離で戦いたいチャーロ。ステップを使い、接近したらクリンチ。
3R、じりじりとにじりよっていくロサリオ。強いプレッシャーが、チャーロを徐々に追い詰めていきます。4Rも常にロープを背負っている感じのチャーロ。
序盤はロサリオが良い戦い方をしているように見えます。初回のダウンポイントはここまでで挽回できたと思います。
5R、ロサリオが左を出し、接近戦だけでないところを見せます。しかしチャーロもやはり大いに危険、浅くですが右ストレートをヒット。しかしロサリオの左ボディは素晴らしいです。
6R、ロサリオが踏み込んだ際、一瞬の隙をついてチャーロの左フックから右フックがヒット!!ロサリオはかなり効いています!ここはゴングに救われます。
7R、前ラウンドのダウンで一気に試合をひっくり返した感のあるチャーロ。しかしロサリオを警戒し、無理には攻めません。変わらずロサリオはプレッシャーをかけ、チャーロはサークリング。ロサリオは若干動きが鈍った気がします。
8R、開始早々にチャーロの上から下へのジャブ。その下のジャブがロサリオのボディにヒット、ロサリオがダウン!!この一発で、ロサリオh呼吸ができないのか、10カウント!
なんとなんと、チャーロが衝撃の8RKO勝利!
当たったところはベルトライン。その後呼吸困難に陥ったロサリオ。苦しみながらも見事、3度のダウンを奪って8RKOで3団体を統一したチャーロ!しかしチャーロに対してプレッシャーをかけ続けたロサリオの力量は、賞賛されるべきでしょう。
全6試合、その中でタイトルマッチが5試合、挑戦者決定戦が1試合。それぞれがメインでもおかしくないPBC興行、見応えがあって素晴らしい試合がたくさんありました。
無観客興行というのは残念でなりません。一時でもはやく、ボクシングに観客の歓声が、熱狂が戻ってくることを楽しみにしています。