10/23(日本時間10/24)のDAZN興行!このマッチルーム興行は、いつも見ているトップランクの無観客試合よりも見栄えの点で少し見劣りしますね。
ともあれスーパーフライ級の注目試合が2試合、そしてフライ級のタイトルマッチと、かつての「Super Fly」興行のようなラインナップの興行がスタート!
日本人と絡む可能性の大きいボクサーの登場も多く、多くの日本人ボクシングファンが見たのではないでしょうか。
今回のブログでは、このトリプルタイトルマッチの観戦記を書いていきたいと思います。
WBC世界フライ級タイトルマッチ
フリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)18戦16勝(12KO)1敗1NC
vs
モイセス・カジェロス(メキシコ)42戦32勝(17KO)9敗1分
前日計量で5.4ポンド(約2.45kg)オーバーしたというカジェロス。コロナの影響で急遽代役出場ということもあり、同情の余地が多少はあるのかもしれません。でも体重を作れないなら受けない方がいいと思います。
まずは両者ジャブで様子を窺いますが、早々にマルチネスが鋭い踏み込みを見せます。そして1分も経たないうちにマルチネスの左フックから右ストレートをクリーンヒット、フォローの左フックはかすっただけでしたがカジェロスはダウン。マルチネスは踏み込みながらの左フックが速く、パワフルです。
ミニマム級あがりのカジェロスは完全にパワー負け、スピードでも負け、1Rで既に大勢は決した用な感じです。
マルチネスはこのラウンド終盤、一発一発に力を込めた連打も披露し、カジェロスを追い詰めます。
2R、マルチネスがかなり余裕を持って攻め、カジェロスには対抗するすべがないように見えます。スイッチを織り交ぜ、カジェロスの攻撃をアップガードで止め、力強いパンチを繰り出すマルチネス。
カジェロスが攻めたところを左フックでカウンター、その後右アッパーからの連打で効かせ、猛烈な勢いの連打!
ここでレフェリーが止めに入り、マルチネスのTKO勝利!
フリオ・セサール・マルチネスの2RTKO勝利。
圧倒的な力の差、戦前からそんな予想はしていましたがミスマッチでした。今回は本来挑戦するはずだったマキシミノ・フローレスにコロナ陽性反応が出たために、急遽の代役挑戦者でしたので致し方のないことかもしれません。
手数も多く、スピードもパワーもあります。ディフェンスには難がありますが今回はそのように見えませんでした。マルチネスの固いガードをカジェロスでは全く崩せず。
手数は多いですがコンビネーションパンチャーというよりは一発一発をしっかり打つ、パワー型のファイター。その切り返しは速く、強いパンチを連打できるところが特性で、怖い王者です。
そんなマルチネスはフライ級、我々日本人にとっても馴染み深い階級です。
日本のスーパーホープ、中谷潤人(M.T)がもうすぐ世界王者となってくれると思いますので、ひょっとしたら統一戦なんかもあるかもしれません。楽しみですね!
WBAスーパー世界スーパーフライ級タイトルマッチ
ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)51戦49勝(41KO)2敗
vs
イスラエル・ゴンサレス(メキシコ)28戦25勝(11KO)3敗
フェイスオフのときに気になったのは身長差。ロマゴン(ローマン・ゴンサレスは以後この表記)はこの階級ではやはり小さい。
フェイスオフ。
— 信太 (@rqKBKLB9N9KmyNB) 2020年10月23日
やっぱりロマゴン小さいですね。 https://t.co/h9d1yT6jQb
初回、サークリングしながら要所速いコンビネーションを放っていくゴンサレス(イスラエル・ゴンサレスは以後この表記)。ジャブはポンポンと出て非常にやっかいです。ロマゴンはヘッドムーブしながら中に入ろうとしますが、ゴンサレスは足もなかなかに速い。
2R、序盤はゴンサレスのコンビネーションが良いように見えます。主にストレートを使ってロマゴンを突き放します。初回よりは距離が近くなってきました。ロマゴンのパンチも当たる距離ですが、ゴンサレスは上体の動きも柔らかく、良い。
3R、ジリジリと距離を詰め、いきなりの右をヒットしたロマゴン。ゴンサレスのパンチに怖さがないからか、どちらかというとガードで距離を詰めていつもの手数が出始めます。もう入るのに躊躇しません。ペースアップしたロマゴンは難度もゴンサレスをロープに詰めて連打を見舞います。
4Rもロマゴンはジリジリと距離を詰めて要所で連打。ゴンサレスもコンビネーションで対抗します。ゴンサレスのコンビネーションも速く、素晴らしいです。しかしロマゴンの連打は止まらない、というか止まった、と思ったところからまだ手がでる感じです。
5R大きく足を使うゴンサレス。ゴンサレスは下がってしまうとロマゴンがどんどん手を出してくるので、むしろ自分から仕掛けたいところかと思います。しかしそれもロマゴンの手数に阻まれできないように見えます。
6R、開始早々速いコンビネーションで撹乱しようとするゴンサレス。しかしロマゴンはマイペースというか自分のリズムでパンチを繰り出し、やはりゴンサレスはロープ際へ。ロマゴンのパンチはコンパクトでそれでも力強く、ゴツゴツとダメージを与えている感じです。対するゴンサレスはコンビネーションの最後のパンチはしっかりと振り抜き、パワーは感じますが的中率は低い。
7R、ラウンド前半は非常に元気なゴンサレス。初手は速いコンビネーションを仕掛けます。しかしジリジリとロマゴンに詰められ、あとはロープ際でのボクシング。見栄え的にはかなり苦しいゴンサレス。ミニマム、ライトフライ、フライ級時代のロマゴンはこのボクシングに圧倒的パワーと若さがあったと考えると非常に恐ろしいですね。
8R、中に入ってくるロマゴンに対し、アッパーを多用するゴンサレス。このラウンド序盤にはコンビネーションを当て、久々にロマゴンを若干下がらせます。しかしその後ロマゴンも持ち直し、ロープ際でラッシュ。
9R。ゴンサレスはこの闘い方のままではジリ貧ではないでしょうか。ロマゴンの方が手数が多く、的確。ゴンサレスは時折良いコンビネーションを打ちますが、ロマゴンの手数に飲まれてしまっています。ゴンサレスにもっとパワーがあれば違ったのかもしれません。
10R、このラウンドはゴンサレスが意地を見せます。ロマゴンの連打をしっかりとガードしたタイミングでコンビネーションを打ち込み、そのうち何発かはしっかりとヒット。しかしそういう場面を作ると、ロマゴンもギアを上げて打ち返し、明確なラウンドとさせない辺りはさすがです。
11R、12Rも同様の展開、下がりながら時折コンビネーションを打ち込むゴンサレス。しかしロマゴンのガードは固く、ヘッドムーブも素晴らしい。
ロマゴンのパンチでゴンサレスはガードだけの時間も長く、クリーンヒットの差だけでなくガード時の見栄えを考えてもロマゴン有利となるでしょう。
最終ラウンドはゴンサレスも気力を振り絞って前に出ますが、ロマゴンの連打に晒されやはり後退。ゴンサレスはいつしか上体の動きも出なくなり、倒れる事は拒否したものの実力の差は明らか、そしてペースを握られた後はあまりにも無策に見えました。
ローマン・ゴンサレスの12R判定勝利(3-0)
イスラエル・ゴンサレスの首筋に「アスラエル」と日本語でのタトゥーを発見。。。この微妙な間違いは一体。
それは置いておいて、ロマゴン、淡々と仕事をこなした感じに見えました。期待したほどのファイトではありませんでしたが、イスラエル・ゴンサレスのスピードに翻弄されず、落ち着いていてさすがです。
自分に自信があるのでしょう、自らのリズムを崩さず、自分のボクシングを貫く姿はまさに横綱相撲。PFPランキングから外れているとはいえ、まだまだ力のあるところを見せてくれました。
WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ
ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)43戦40勝(27KO)3敗
vs
カルロス・クアドラス(メキシコ)43戦39勝(27KO)3敗1分
クアドラスが気合の入った良い表情をしています。帝拳プロモーション(クアドラスは共同プロモーション)の連勝なるか。
初回、クアドラスの動きの良さが目を引きます。動きのキレ、パンチへの反応の良さ、最初からアクセル全開です。これは好勝負の予感がしますね。天才肌のクアドラス、この試合にかける思いが伝わるような第1R。対するエストラーダは若干クアドラスのスピードについていけていないように見えます。回転力は明らかにクアドラスが上。
2R、クアドラスの動きもよくなってきました。キビキビとした動きに戻っています。クアドラスはスピードがありますが、若干手打ちな感じがします。攻め急いでいるようにも見えます。
3R、ともにリズムをとりながらコンビネーションの打ち合い!終盤、クアドラスの右アッパーをヒット!バランスを崩したエストラーダに左フックをフォローしてダウンを奪います。その後は時間がなくて詰めきれず。
4R、今日のクアドラスの動きを見ていると、まさかの展開が考えられます。大方の予想は最近の両者を見ていれば自然とエストラーダに傾くと思いますが、今日はクアドラスが良く、エストラーダは良いとはいえません。このラウンドもクアドラスがステップやダッキングを効果的に使い、エストラーダは空転が目立ちます。
このインターバル、かなり大きく肩で息をしているクアドラス。もしかしたらオーバーペースかもしれません。
5R、エストラーダの動きが先程のラウンドと比較して良くなったように感じます。前Rは3Rのダメージを引きずっていたのでしょうか。クアドラスの足はまだ生きていますが、ガードが下がり気味になり、このラウンドはエストラーダのパンチが当たります。
6R、エストラーダがペースアップ!力を込めたコンビネーションで、徐々にクアドラスを下がらせる展開になっていきます。クアドラスはやはり若干疲れているか、相手に体を預けようとする行為が目立ちます。それでも時折見せるコンビネーションは速く、まだまだ可能性を大いに秘めています。
7R、クアドラスは疲れているように見えますが、そのコンビネーションは衰えません。やや足元が疲れでふらつくようにも見えますが、ステップを踏みながらジャブを打ち、当たればコンビネーションに移行。パンチへの反応もまだ衰えてはいません。クアドラスの意地を感じます。しかしエストラーダは足取り、フィジカルもまだまだ疲れを知らず、プレスをどんどん強めて前に出ます。
8R、表情やそのステップからは疲労度はクアドラスの上。しかしエストラーダもかなり打たれているようで、顔面が紅潮しているのがわかるほど。このラウンドはエストラーダの左フックが効果的、クアドラスは下がらされています。
9R、このラウンドも近い距離での打撃戦。クアドラスはパンチングパワーに勝り、クアドラスはコンビネーションの回転力に勝る。
10R、エストラーダはこのラウンドにチャージ!距離を詰めて力強くパンチを振るっていきます。しかしクアドラスもまだ諦めず、速いコンビネーションでエストラーダをのけぞらせる場面を作ります。感覚的にはエストラーダが優位なのですが、エストラーダは少しでも止まるとクアドラスの連打に晒されます。しかしこのラウンド終盤はエストラーダのボラードがヒット、クアドラスは限界が近いようにも感じます。
どちらも諦めない、非常に素晴らしい一戦。クアドラスは長いコンビネーションを打つので、躱し損ねたエストラーダがダウンするという展開もまだ考えられます。しかしクアドラスは披露とこれまでのヒッティングからかなり辛い状況にも見えます。
11R、ワセリンを塗りたくられたエストラーダ。。。開始早々に右ストレートを起点にチャージ!!このラッシュでダウンを奪ったエストラーダ、更に追い打ちをかけ、気丈に打ち返したクアドラスでしたが右のボラードで再度クアドラスがダウン!
これで終わった。。。と思いましたが、立ち上がったクアドラス。レフェリーも止めません。ここまでやらせるのは最近では珍しいかもしれません。。
ここから更にラッシュをしかけるエストラーダ、クアドラスも負けじとコンビネーションで対抗。素晴らしい精神力。
最後はエストラーダの右で動きが止まったクアドラスを、ようやくレフェリーが救い出しました。
ファン・フランシス・エストラーダの11RTKO勝利!
今回も素晴らしい激闘でした。しかしやはりエストラーダの方が一枚上手だったのは間違いありません。ちょっとレフェリーのストップは遅かったようにも感じますが、あれほどの激闘、レフェリーも止めづらかったでしょうね。
ファイト・オブ・ザ・イヤー候補とも言われるこの一戦でしっかりと決着をつけたエストラーダ、向かうはロマゴン戦のみですね。
ここに日本人ボクサーが絡んでくれると非常におもしろいのですが、まずはエストラーダvsロマゴンですね。エストラーダは勝てば階級アップの可能性もあるので、もしかしたらバンタムで井上尚弥と、、、という話にもなってくるのかもしれません。
ロマゴンはこれ以上の階級アップは難しいと思うので、スーパーフライ級にとどまる事になれば、対戦を希望している井岡一翔や田中恒成といったボクサーとの対戦も楽しみですね。
いずれにしろ、軽量級が盛り上がってくれるのは日本人ボクサーにとっても有り難い事です。本場では注目度が低い、軽量級の日本人ボクサーを、井上尚弥に続く形で世界に送り出せる可能性があるからです。
これからもこのスーパーフライ級は要チェックですね!
↓田中恒成がフライ級王座を返上した頃に書いた記事。