マイク・タイソンvsロイ・ジョーンズJr。

みなさんはこのエキシビジョンマッチ、どのようにご覧になりましたか?
2分8ラウンズ、12オンスグローブ、ヘッドギアなし。
エキシビジョンマッチとはいうものの、限りなく実戦に近いルールともいえますが、謎のKO決着なし、勿論公式ジャッジもいません。
WBCが特別なベルトを贈呈する、というこの一戦(といっていいのかわかりませんが、他に言い方が思い浮かびませんね。)は、もともとチャリティーマッチとしての意味合いでした。
このエキシビジョンマッチの観戦記は、書く予定にはしていませんでしたが、私個人としては非常に楽しめたので、残しておきたいと思い観戦記を書くことにいたしました。
↓プレビュー記事
WOWOWエキサイトマッチのライブ放送では、セミセミのバドゥ・ジャックから登場。ジャックは芯の通ったしっかりとした、堅牢なボクシングを疲労します。
しかし対戦相手のマッカーナンはなかなかにタフであり、なんとか倒される事だけは拒否します。
終始プレッシャーをかけ、後半にかけては倒そうという気持ちが満々だったジャックの攻撃に耐え、8R終了のゴングを聞きます。
そして、当然のようにバドゥ・ジャックの判定勝利という結果がでました。
格の違いはありましたが、ジャックにとってはもっと圧倒して倒しきりたかったでしょう。
スーパーミドル、ライトヘビーを制したバドゥ・ジャック、これからクルーザーの王座を目指すのでしょうか。
年齢も年齢(とはいえ、衰えはあまり感じない)なので、アクティブに動く事が肝心ですね。
セミファイナルは置いておいて、いよいよメイン。
見どころは、結局ふたりのレジェンドボクサーがどれほど動けるのか。
前日の計量は、ロイ・ジョーンズが210lbs(95.25kg)、マイク・タイソンが220.4lbs(99.97kg)という体重。
タイソンはこの日のために約45kgの減量に成功したといい、現役時代の体重とほぼ変わらないほど、仕上げてきました。
ジョーンズは絞りきれてはいませんが、元々の骨格を考えると絞りすぎてもいけないので、こんなものか、とも思います。
WOWOWでは、タイソンのKOハイライトが流れますが、ロイ・ジョーンズのは流れない。。。
あくまでもWOWOWの放送は、タイソン中心であり、タイソンがどのようにジョーンズを倒すのか、というところに焦点があたっているような番組構成です。
エキシビジョンマッチとはいえ、もっとフラットにしてもらいたいですね。
こういう風に一方に肩入れしすぎると、ロマvsロペスのようなミスリードが生まれてしまうのだと思いますよ。
リングアナウンサーはマイケル・バッファー!
このリングコールは鳥肌ものです。
無観客なのが本当に惜しい。
まずはタイソンの踏み込みのスピードの速さに驚きます。
足は若干ついてきていないのか、やや上体が突っ込みすぎの部分はあるものの、ヘッドムーブも往年のタイソンを彷彿とさせるもの。
タイソンのキャリア終盤、ほとんど頭を振らず、棒立ちのような状態で一発狙いで突っ込んでいった姿を思い浮かべると、感慨深いものがあります。
きっとタイソンは、このエキシビジョンマッチに際し、初心に帰り、もしかすると過去の自分を師としてその動きを思い出したのかもしれません。
対するジョーンズは、突っ込んでくるタイソンにたいしてクリンチで対抗。
2R終了のゴングのあと、少しパンチを出してしまったタイソン、しっかりとジョーンズに謝る仕草を見せます。
そうそう、こういう雰囲気でいいんですよね。エキシビジョンなんだから。
ジョーンズは勿論、最盛期のように足は動きませんが、速いジャブを出したり、右をジャブのように使ったり、軽くスイッチしたりと現役時代を彷彿とさせるような動きを披露します。
ただ、クリンチ際でタイソンのボディを受けすぎたためなのか、それともただの練習不足なのか、スタミナは早くも切れているようです。
身長自体は大して変わりませんが、骨格レベルでフィジカルの強さが違う両者の間では、クリンチの際に消耗するのもジョーンズかもしれません。
インターバル中も疲れた表情を見せるジョーンズですが、タイソンは全く平気のようです。
4Rに入っても、タイソンの動きはキレています。
2分、という時間は、3分と違って休憩が多くなるために、スタミナ難は隠せます。
しかし、2分でも8Rもやるとしんどいものです。
私(41歳)も、学生たちとスパーリングをやる場合は、自身のスタミナを考慮して2分でやらせてもらう事が多いですが、それでも疲れます。
この二人のボクサー、54歳と51歳のボクサーが、2分とはいえここまで動けるのは驚きであり、やはり特別なボクサーだと再認識させられます。
WOWOWの解説陣は、ジョーンズがどこで出るか、という話もしていますが、ジョーンズにはそんなスタミナは残っていなさそうな後半。
ジョーンズの少し腰を折っての左ジャブ、右を出す姿、こういう仕草はたとえジョーンズではないボクサーがやっても「ロイ・ジョーンズっぽい」と思われる仕草。こういう場面が、タイソンについても、ジョーンズについても幾度となく出るのは、やはり二人のボクサーの試合をたくさん見てきたんだな、と感慨深いです。
7R、ジョーンズは速いコンビネーションを見せてジョーンズたる意地を見せます。しかしタイソンはパワフルであり、そのパンチを分断するものはやはりクリンチ。
最終ラウンドもタイソンの動きは落ちない。ジョーンズはとりあえず戦い抜けてほっとしました。
何だこのスコア⁉️
— ドナルドダックの左ジャブ(低浮上 低血圧) (@UcesuAWHYuiDvSB) 2020年11月29日
全部ロイジョーンズにつけてるのワロタw pic.twitter.com/USwQwsI9Bs
スコアはドロー。
大変な忖度は働いているものの、これは非常に興味深い。
女子ボクシングの第一人者ともいえるクリスティ・マーチン。タイソンの前座としても登場した、女子ボクシング黎明期におけるスターの一人はタイソンを支持。
そして、ビニー・パジェンサ。映画「ビニー/信じる男」でも有名であり、ジョーンズと対戦経験(6RTKO負け)のあるパジェンサがロイ・ジョーンズ支持。
そして二人のボクサーと比較的関係の薄い、チャド・ドーソンがドロー。
三者三様のドロー、始まる前から既に役割が決まっていたかと思いますが、なるほど、と思いました。
もともとジャッジングなんていうものはする気もなく、勿論ベルトも2つ用意。
タイソンのボディーは「本当に効いた」 ジョーンズJr.は脱帽「体力を奪われた」 (THE ANSWER) - LINEアカウントメディア https://t.co/9oYkSY8AlQ
— Ch.com (@Chcom_official) 2020年11月29日
私はこれはこれで良いと思いました。
インタビュー。
かなり疲れた雰囲気のジョーンズ。
タイソンはとてもうれしそう。
15年という月日は、タイソンからダメージを抜き、人として円熟させました。
たくさんのことを経験したタイソンは、非常に大きな男になっていました。
このインタビューの中で、タイソンとジョーンズの友情も感じましたし、周りのせいで、そして自分のせいで身を持ち崩したタイソンが、ここまで幸せになっている事を本当に嬉しく思いました。
「人々を励ますために試合をした」
そう語ったマイク・タイソン。
皆さんがどう思ったのかはわかりませんが、私は大いに励まされました。勇気をもらいました。本当に感動しました。
茶番劇、というには真剣すぎ、真剣勝負というには仲が良すぎました。
しかし、様々な事があったであろう二人のボクサーが、懸命に自らの肉体を取り戻そうと努力し、こうしてリングに立ったという事は、きっと人生に不可能なことなんてない、ということを教えてくれたのだと思っています。
この8Rは、往年の伝説を脳内に蘇らせ、このエキシビジョンの前後に、私たちは一旦不安になり、始まると同時にすごく楽しませてもらいました。
Best exhibition I have ever seen
— George Foreman (@GeorgeForeman) 2020年11月29日
ジョージ・フォアマンの言う通り。
最高のエキシビジョンマッチだったと思います。