先週末はエロール・スペンスJr.vsダニー・ガルシアという注目試合のほか、ビリー・ジョー・サンダースvsマーティン・マーレイの世界タイトルマッチもありましたね。
とはいえ、やはりスペンス
スペンスが、自身の運転するフェラーリが大破するほどの事故を起こし、そこからパフォーマンスがどのようになっているか、という事が焦点だったこの一戦。
更に、タフで誰とでも接戦を演じられるダニー・ガルシアというボクサーに対し、どこまで明確に勝利を手にする事ができるか、という試練の戦いでもありました。
今回のブログでは、このスペンスvsガルシア戦を中心に、観戦記を書いていきたいと思います。
さて、まずはスペンスガルシア戦の前に、イギリスで行われた注目興行!とはいっても、サンダースvsマーレイは語るに値しないので、こちらの一戦!
12/5(日本時間12/6)イギリス
リンドン・アーサー(イギリス)17戦全勝(12KO)無敗
vs
アンソニー・ヤーデ(イギリス)21戦20勝(19KO)1敗
初回、両者ともに細かいフェイントを入れながら様子見。このラウンドはジャブの差し合いに終始。
2Rも強引さは見えないヤーデ。強打を叩き込むタイミングはこのままでは訪れません。アーサーは非常に反応が良く、ヤーデが前に出るとその分退き、素早いジャブを飛ばします。
3Rもヤーデはプレスをかけますが、アーサーは上手くバックにサイドに、少ない動きで被弾を許しません。アーサーは左手を下げたスタイルから、よく伸びるジャブを飛ばしますね。
4R、とうとうヤーデがワンツーを繰り出し始めます。しかし試合は動きません。5Rもですね。。。この試合を見ているイギリスのファンたちはどう思うのでしょうか。。。
ほとんどがフェイント合戦であり、両者ともにクリーンヒットどころか手数も少ないです。かといってともにスピーディでその動きにはキレがあり、ボクサーとしての身体能力、ポテンシャルの高さは感じられるものです。
6R、ヤーデはガードを上げたり下げたり、身体を振ってみたりと色々と試してはいるものの、なかなか入れません。右も数発しか打てません。アーサーはほぼステップとジャブのみ。そしてマイペースです。7Rも同様、ともに見せ場は作れていません。
8R、ヤーデの右が浅くヒットする場面を作りました。ポイントをどちらに振り分けるのか微妙なラウンドしかないといっても過言ではありませんので、一発のクリーンヒットでポイントは流れそう。
9Rの序盤には逆にアーサーの右が浅くヒット。このラウンドもそうですが、ややアーサーのジャブの方が伸びが良く、ヒット数は高いような気がしますね。
残り3Rとなり、ヤーデもいよいよプレスを強めていきます。10Rはこれまでのラウンドよりも手数が増え、プレスも功を奏しているように見えます。
11Rにはようやくフックの届く距離まで攻め込めたヤーデ。それも数えるほどしかありませんが。。。
ラストラウンド、ヤーデが前に出て、アーサーが打ち返す!序盤はアーサーのパンチの方が的確にヒットしているように思います。しかし中盤、ヤーデが強引にフックを振るっていき、クリンチもありながらですが11Rまでとは比べ物にならないほどの接近戦。
終盤の3Rは、明確にヤーデがポイントを奪い、それ意外はどっちもどっちという展開でしたが、判定はスプリットでアーサー。
無観客で良かったですね、という試合でした。ヤーデはもっと強引に攻めるべきでしたね。
現地時間で12/4、12/5に行われたイギリスでの興行は、あまりエキサイティングな内容ではありませんでした。イギリスのファンにとって、ボクシングとはこういう競技でいいのでしょうか。特にアーサーvsヤーデは。。。
12/5(日本時間12/6)アメリカ
この興行のセミセミ、エドワルド・ラミレスvsミゲル・フローレスはサンダースvsマーレイ、アーサーvsヤーデを見た後だと更にエキサイトできる試合でした。
ハナからバチバチの打ち合い、そして5RでのKO決着。
ラミレスが最後に繰り出したカウンターは素晴らしかったですね。この一戦は、WBC世界フェザー級の挑戦者決定戦でもあったそうです。
WBCはIBFと違い、挑戦者が決定したとしても厳密ではありませんから、すぐに世界戦、とはいかないかもしれません。
ただ、日本人とも絡みのありそうな階級ですので、今後注目していきたいボクサーですね。
さて、セミファイナル。
セミファイナル スーパーウェルター級12回戦
セバスチャン・フンドラ(アメリカ)16戦15勝(10KO)1分
vs
ハビブ・アメド(ガーナ)30戦27勝(18KO)1敗1分1NC
フンドラの相手、変更になっていたんですね。。。アメドはスーパーミドル級の選手、いきなり2階級落としての一戦。アンダードッグ感が満載ではありますが、素晴らしい戦績を持っています。
さて、2m近い慎重のフンドラ、サウスポースタンスから左アッパーでまずはアメドをグラつかせます。ここまで長身だと、アッパーはかなり有効ですね。
アメドとしてはフンドラの顔面にパンチが届く気はしないでしょうね。。。
2R、フンドラはアッパーからフックを中心に攻め込み、開始一分でラッシュ。力強いパンチを絶え間なく繰り出せるのは強みですね。アッパーは下から直線的に出すアッパー、あれは通常のボクサーでも遠い距離でも届くアッパーです。フンドラにとっては非常に体格が活きるパンチですね。
アメドはどういう状況でこの試合に臨んだのかはわかりませんが、何も出来ませんでしたね。
フンドラは、どうしてもあの身長、リーチに目がいきがちではありますが、攻撃時は非常に強さを発揮するボクサーのようです。ディフェンス、そしてタフネスがどうか、というところがまだわかりませんが、こういう個性的なボクサーは今後楽しみです。
メインイベント WBC・IBF世界ウェルター級タイトルマッチ
エロール・スペンスJr(アメリカ)26戦全勝(20KO)
vs
ダニー・ガルシア(アメリカ)38戦36勝(21KO)3敗
そしていよいよ、メインイベント。セミファイナルが早くに終わりましたので、その分待ちましたね。テレビの前の我々も、会場の皆さんも。
交通事故明けのスペンスの仕上がりはいかほどか。向かい合った時の体格差は結構あるように見えます。そしていよいよ、注目の一戦のゴング!
1R開始のゴングがなると、スペンスが早速プレスをかけます。もっと見るかと思いましたが。。。久々のリングも関係ない、と言わんばかりに、カウンターパンチャーであるガルシアに対してどんどんパンチを出していきます。
近い距離になると危険なカウンターも交錯し、スリリングな展開です。うち終わりを狙うガルシア、スペンスは少し注意したいですね。
2Rも引き続きスペンスがプレスをかけます。非常に右ジャブも伸び、数も出ます。ガルシアはやや待ちの姿勢でしょうか。スペンスの左ストレートの終わりに、右を返します。
3R、ガルシアも自分から攻めるようになってきました。その分、スリリングな交錯が増えます。ガルシアはスペンスのプレスに慣れてきましたが、スペンスは非常に速く、得意の左フックのカウンターはまだほとんど打てていません。
4R、スペンスはプレスを強め、ダイナミックなパンチを繰り出していきます。このラウンド中盤はリング中央でともに当たる距離でパンチを出し合います。両者ともにディフェンスもよく、クリーンヒットはありませんでしたが、終盤にはガルシアの右ストレートが印象的。
5R、6Rもスペンスが強いプレスをかけ、ガルシアはその打ち終わりを狙います。基本的には先に手を出していくスペンスのペースであり、ガルシアはこのままではジリ貧。どこかで大きなアクションを起こせるか。
7R、激しいボディの打ち合いから始まったラウンド。ガルシアがチャージに出てきたのかもしれません。しかしスペンスも足を止めて打ち合いを選択。ボディワークも上手いです。
8R、序盤からガルシアがポンポンと手を出し、リズムが出てきました。その後、スペンスがまたもプレス、ロープ、コーナーに追い込んでパワーパンチを放っていきます。
9R、スペンスは右ジャブが頻繁に、そしてスムーズに出て良いボクシングをしています。対するガルシアは左フックが少なく、右ストレートを主武器として闘っていきます。
10R、スペンスはサイドに回りつつ、ボクシング。休んでいるのでしょうか。ガルシアはぽんぽんと手を出し、リズムがよくなってきます。
11R、スペンスが再びプレスをかけます。ガルシアも手を出しますが、スペンスからクリーンヒットを奪うことは困難です。前半スペンス、後半ガルシアという感じでしょうか。
最終ラウンドもスペンスはプレスをかけ、ガルシアはスペンスの打ち終わりにカウンターを狙う展開。最初から最後まで同じような展開ではありました。
エロール・スペンスJr.の判定勝利。
結果としては、大方の予想通りといってもいい一戦でした。
序盤、近い距離でパンチを出し合う事で、好試合の予感がしました。ともに技術レベルが高く、近い距離でもクリーンヒットは少なく、見応えのある攻防が続きましたね。
しかし、中盤、終盤も大きく流れが変わらなかった事で、やや退屈な印象に感じた方もいるのかもしれません。
ガルシアが放ったパンチのほとんどは、スペンスにとってあまり危険なパンチではなかったように思います。右ストレートは力がこもっていて、タイミングも良かったですがことごとくガードに阻まれました。
スペンスはいくつも良いパンチを当てましたが、こちらも目の覚めるようなビッグパンチを当てる事はできませんでした。ジャブでコントロールして、自らが攻めたい時に攻める、素晴らしいボクシングだったとは思います。
スペンスの動きは、交通事故の後遺症、1年以上のブランクを感じさせない動きでした。唯一、後半に入ってやや集中力を欠いたように見えた場面もありましたが。
そして、サーマン、ポーターよりもより明確に強豪、ダニー・ガルシアを降したスペンスは、やはりこのウェルター級のトップ・オブ・トップであることは間違いありません。
あとは、是非ともテレンス・クロフォードとの頂上決戦をやってもらいたいですね。