先週末は、イギリスではアンソニー・ジョシュア(イギリス)が登場し、アメリカではトップランク興行でシャクール・スティーブンソン(アメリカ)が、そしてPBC興行でクリス・コルバート(アメリカ)が登場しました。
ただ、我々日本人にとってはフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)vs中谷正義(帝拳)が最も話題をさらいましたし、世界的に見ても最もエキサイティングな一戦だったと思います。
ジョシュアの登場したマッチルーム興行は、ジョシュアの強さを見せつけるような一戦であり、中だるみもあり、残酷なショーにもうつりましたが、セミで出場したローレンス・オコーリーの期待度が私の中でより高まった事が収穫でした。
↓先週末のマッチルーム興行の観戦記
このコロナのパンデミック下の中でも、世界中で動いているボクシング。
今回の観戦記は、アメリカのトップランク興行、PBC興行のものですが、あまり需要はないかもしれません。しかし!私の備忘録的に残しておきたいと思います!
12/12(日本時間12/13)アメリカPBC興行
WBA世界スーパーフェザー級暫定タイトルマッチ
クリス・コルバート(アメリカ)14勝(5KO)無敗
vs
ハイメ・アルボレダ(パナマ)16勝(13KO)1敗
ジェスレル・コラレスとのスピード対決を制したコルバート、暫定王座の防衛戦です。
初回、コルバートとアルボレダのスピード差は歴然。コルバートは距離を測るジャブを突き、速いジャブを3連打、距離を詰めて左オーバーハンドを叩き込みます。
それを受けたアルボレダ、すぐさまコンビネーションを返しますがもうそこにコルバートはいません。ああ、もうこれがこの対戦の縮図だな、と感じます。
とはいえ、高いKO率を誇るアルボレダ、一発当てればチャンスは来るかも知れません。
2R、コルバートは前の手をぐるぐると回し、威嚇。それが邪魔でアルボレダは攻められません。
しかし不意にコルバートがコーナーにつまる(自ら?)場面があり、アルボレダはここぞとばかりにラッシュ。しかしコルバートの固いガードを崩せず、カウンターを被弾。
その後接近した距離での攻防となりますが、この距離でもコルバートのディフェンスが冴え、完全に打ち負けます。
3R、接近戦でも勝てる事を悟ったコルバートが今度はプレスをかけます。アルボレダは下がりつつ応戦。多分ここで下がってしまうと勝ち目がよりなくなると思いますが。。。
終盤、ノーガードになる等かなり余裕を持って闘うコルバートですが、同時に油断も大きくなっているようにみえますね。
4R、このラウンドも自らロープにつまりカウンターを狙う等余裕のコルバート。完全に足を止めてロープ際、完全に舐めきっています。
5R、このラウンドはノーガード。反応はよく、両手をだらりと下げたスタイルからでも素早いジャブで翻弄、足も速い。身体能力は高いですね。これでハードパンチャーだったら本当に怖いボクサー。
6Rもノーガード&ロープにつまる作戦でスタートしますが、その後はガードを固めてプレス。接近戦でのカウンター作戦に切り替えました。いつの間にかオーソドックスになっています。
7Rもオーソドックス、リング中央で戦います。オーソドックスの右ストレートが先程のラウンドからヒットしています。
8R、アルボレダがチャージ!これまで以上に手数を出し、コルバートに迫ります。しかし逆襲にあい、やはり打ち合いでも分が悪い。この後、コルバートはローブローで減点にあい、少々の休憩が入りました。
再開後、コルバートはまたサウスポーにスイッチ、アルボレダは一気に攻められなくなります。
9R、開始と同時にアルボレダが猛烈にチャージ。コルバートが強気で打ち返し、超接近戦に。
アルボレダはエンドレスに手を出し続け、勝利への執念、気持ちの強さを見せつけます。コルバートはひとしきりディフェンスしたあと、自身も連打を返します。
そしてまたロープに誘い込んだコルバート、カウンターを起点として連打!アルボレダはとうとうダウン!立ち上がったところでラウンド終了のゴングが鳴りました。
10R、コルバートはプレスをかけ、試合を終わらせにいっています。アルボレダはサークリング、そして上体を柔らかく使ってディフェンス。アルボレダ、意外にディフェンスも良いです。
11R、アルボレダ、もう逃げる力も残っていないのか、それとも肚をくくったのか、サークリングをやめました。そして攻撃を繰り出そうとしますが、コルバートの左ストレートからのコンビネーションであえなくダウン。
辛くも立ち上がりますが、コルバートのラッシュにあい、またもダウン。
また立ち上がりますが、コルバートは容赦なく襲いかかり、ここでようやくレフェリーがストップ。
クリス・コルバートの11RTKO勝利。
接近戦でも強さを見せたコルバート。ガードは固く、ボディムーブもスムーズで、勿論反応も良いので相手の打ち終わりにカウンターをしっかりと合わせていました。
もっと早くに仕留められたとは思いますが、あまり無理をしないボクシングなのは予想通り。正規王者のレネ・アルバラード(ニカラグア)とやることになったら、やっぱりスピードで塩漬けにしてしまうんだろうな。あまり見たいとは思わないマッチアップですね。
12/12(日本時間12/13)アメリカTR興行
ライトフライ級8回戦
ジェシー・ロドリゲス(アメリカ)12戦全勝(8KO)無敗
vs
サウル・フアレス(メキシコ)39戦25勝(13KO)12敗1分
ロドリゲスはアメリカにおいて非常に珍しいライトフライ級のプロスペクト。前戦は9月、ジャメル・ヘリングの防衛戦のアンダーカードで登場し、衝撃の1RKOで勝利しているボクサーです。現WBA世界スーパーフライ級王者、ジョシュア・フランコ(アメリカ)の実弟だとか。
対するフアレスは戦った相手を見ただけでも世界に挑戦したワンヘン戦、寺地拳四朗戦をはじめ、メリンド、ガニガン・ロペス、ファン・エルナンデス等々、のちの世界王者だらけ。歴戦の雄ですね。そして注目すべきは、ここまでKO敗けが一つもないことです。(カットにより試合続行不可能のTKO敗けが一度)
そのフアレスに対し、初回からプレッシャーを与えていくロドリゲス。このロドリゲスはスピードがものすごく速いわけではありませんが、とにかくステップが素晴らしいです。
ナチュラルに距離を詰めていけるこのスタイルは、ロドリゲスの得意な距離(接近戦)までたやすく持っていくことができ、よほどのボクサーでないと逃げ切れません。
ロドリゲスは両手のグローブを顔にぴったりとくっつけたスタイルから距離を詰め、強打を見舞います。
2Rもロドリゲスは自分のボクシングを貫徹。とりわけサウスポースタンスから繰り出す左ストレート、そして非常にコンパクトに打つ右アッパーが秀逸です。その右アッパーを若干角度を変えてボディにめり込ませるのも得意ですね。
最後はタフなフアレスを左アッパーでダウンさせ、そのままテンカウントを聞かせました。
ジェシー・ロドリゲスの2RKO勝利。
フアレスは既に敗けが混んでいて、今日の出来はもう引退したほうがよさそうな動きでした。
このジェシー・ロドリゲスに関しては、帝拳がプロモートしていることもあり、日本のリングにもそのうちご縁がありそうなボクサー。
日本で活動しても、人気が出そうなボクサーです。というか、アメリカよりもそっちの方が良いかもしれません。
スーパーミドル級8回戦
エドガー・ベルランガ(アメリカ)15勝(15KO)無敗
vs
ウリシス・シエラ(アメリカ)15勝(9KO)1敗2分
15連続1RKOを記録している、ベルランガ。この記録のすごいところは、初回のゴングと同時に獣のように襲いかかって打ち立てた記録ではないところです。
ベルランガはいつもまずは距離を計り、ジャブを突いてから強いパンチを放ち、そしてガードの上からでも効かせて、仕留める。例えば力の差があったとしても、15連続で3分以内に決着しているということは本当に恐るべきことです。
対戦相手に好戦績のシエラを迎え、今回も1RKOなるか、という注目を集めた一戦。
しかもこのシエラ、KO負けがないようです。
開始早々、しっかりをガードを固め少々の様子見をするベルランガ。対してシエラは意外にも前に出てパンチを振るいます。
出てくるシエラに対し、ベルランガはやや大振りで迎え打ちます。これは結構珍しいことです。
迫力あるパンチを振るうベルランガに対して、シエラは早くも下がり始めます。ベルランガのジャブで吹っ飛ばされ、そこから左ボディ、そして左フックを返されてからは防戦一方。ベルランガはガードを固めるシエラに右ストレートを何度も打ち据え、ダウンをゲット。
立ち上がるシエラ、大振りの猛攻を加えるベルランガ。またも吹っ飛ばされたシエラはここでロープダウン。(ロープがなければ倒れていた、と判断された場合はダウンとなります。)
ここまで2分。
倒そうという気持ちがアリアリと見えるベルランガ、かなりの大振りでシエラは意地のカウンターを数発ヒット。しかし最後はワンツーから左フックで薙ぎ倒され、ゲームオーバー。
エドガー・ベルランガ、1RTKO勝利。
これでベルランガは16連続1R KO勝利。本当に破格のパンチャーですね。。。このまま、1RKOの記録を目指すのでしょうか?そうであればあと数戦、格下と戦う可能性もありますが。。。
この記録は止まっても問題ないとは思うので、そろそろ名のある強豪との試合が見たいですね。シエラも戦績としては強豪なんでしょうけど、この内容では分かりません。
セミファイナルはこの試合!
中谷正義(帝拳)vsフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)!!!
ボクシングファンの大感動を呼んだ、ファイト・オブ・ザ・イヤー候補の一戦!
↓観戦記
控えめにいって、今年最も素晴らしい試合の一つでした。この一戦の後に、メインイベントはシャクールの調整試合。。。
ちょっと見る気が起きなくなったのは私だけではないはずです。
スーパーフェザー級10回戦
シャクール・スティーブンソン(アメリカ)14勝(8KO)無敗
vs
トカ・カーン・クラリー(アメリカ)28勝(19KO)2敗
シャクールはプロ入り初のサウスポーのようですね。力の差を見せつける事ができるか。
初回からシャクールがプレスをかけ、力強いパンチをヒットさせていきます。クラリーもジャブはシャクールに当たりますが、やはりシャクールとは力量が違いそうです。
2R、このラウンドも引き続きシャクールはプレス。クラリーが打ってきたらスウェーでかわし、要所要所でカウンター。
3R、シャクールはスウェーやバックステップでかわした後、すぐにもどし、攻撃態勢を整える辺りがさすがです。対戦相手から見ると隙を見つけるのは難しいでしょう。
4R、技術の差は歴然であり、あとはシャクールがこのクラリーを仕留めきれるか、という所が焦点となってきました。しかしこのクラリー、固いガードで手数は最小限のジャブ。ディフェンシブな戦い方なので、苦労しそうです。
5Rも同様な展開、クラリーは展開を変える気持ちはあるのか?
6R、シャクールがチャージ。明らかに試合を決めるためにラッシュ。しかしクラリーもなかなかタフ、ガードも固く倒す事はできません。
クラリーはもう最終ラウンドのゴングを聞く事が目標となっているかもしれませんね。
7R、このラウンドも一方的にパンチを当てまくるシャクール。効かせるパンチもいくつかはありましたが、クラリーは倒れません。
8R、クラリーも逆転を狙って力強いパンチを放っていきますが、シャクールには当たらず。うち終わりにシャクールの速いコンビネーションが飛び、逆にダメージを与えられてしまいます。
9R、10Rもシャクールがプレス。最終ラウンドも攻め込み、結局のところ最初から最後まで一貫して攻め続けたシャクールと、逃げ続けたクラリーという構図でゴング。
シャクール・スティーブンソンの10R判定勝利。
中谷vsベルデホ戦の後に見る試合ではありませんでしたね。。。完全に技術の差を見せつけながら、倒す事は叶いませんでした。
ターゲットはWBO世界スーパーフェザー級王者、ジャメル・ヘリング(アメリカ)。WBOは王者が階級を変更すれば、変更した階級の1位になるという規定があります。
なのでシャクールがヘリング挑戦を目論むという事は、最短距離であり自然な流れでもあります。
ヘリングは人気者のようですが、シャクール戦はかなり厳しい戦いになるでしょう。シャクールにタイトルを明け渡してしまえば、前戦でもかなりのダメージを負ったことで家族から心配もされている、との話もありましたのでそのままキャリアを閉じてしまう可能性だってあります。
もし伊藤雅雪(横浜光)がタイトルを保持したままであれば。。。という夢物語も妄想してしまいますが、運や縁、タイミングといったものが複雑に絡み合うこのボクシングという競技、これからも色々な階級で色々な楽しみが待っていますね。
さて、本日はそんなところですがいよいよ今週末はカネロ、GGGが一日違いで登場するマッチルーム興行。
そして来週末はA-SIGN、からの大晦日興行。
これから年末まではノンストップで注目興行が続きます。どこにも出かけられない年末年始は、ボクシングを見て、自主練をして過ごしたいと思います。