前回、前々回のブログの続きです。
各団体、各階級の王者たちの展望と、個人的な期待を書いています。
そして今回のブログでは、WBOアジア・パシフィック王者たちの展望を書いていきます。尚、統一王者もいますので、その場合は前回のもののコピペですのでご了承下さい。
一回目と二回目。
このWBOアジア・パシフィックタイトルは、WBOの地域王座であり、アジアと太平洋という意味なので、中央アジアも含まれ、範囲的にはOPBFの東アジア、太平洋というくくりよりも広い事になります。
ただ、この地域タイトルというのは全体的にランキングが非常に曖昧な感があり、日本人のマッチメイカーたちが一生懸命推挙しているためか、日本人ボクサーのランクインは非常に多いです。その分、王者誕生も多く、コロナになってからは王座決定戦という形で突然の戴冠、というのも目を引きます。
こちらのWBOアジア・パシフィックタイトルも、17階級中9階級で日本人が君臨しています。
WBOアジア・パシフィック王者
ミニマム級 重岡優大(ワタナベ)
2018年9月にB級デビュー、2021年は2月に堀川龍(三迫)とのホープ対決を制し、11月に元王者、小浦翼(E&Jカシアス)との大接戦を制して初戴冠。
この2021年は重岡にとって、大きな飛躍の年となりましたね。
もともとこの王座は、優大の実弟である重岡銀次朗(ワタナベ)が返上した王座で、しっかりと後釜に座ってみせました。
日本のお家芸ともいえるこのミニマム級は、2021年12月に同門・谷口将隆がWBOの世界王座に就いたばかり。この重岡も、すぐに世界へ打って出たいという気持ちもあるでしょうが、今年はまだもう少し我慢、というところでしょうか。
小浦戦の判定はかなり際どく、まだ国内に強豪もいます。
とはいえ世界への切符はすぐそばにあり、今年は地力を養ってもらいたい。
ライトフライ級 加納陸(大成)
2020年11月に獲得した王座を、2021年に1度防衛。なかなか試合の機会に恵まれません。
7月の初防衛戦では、過去2度、日本タイトルに挑んだ栄拓海(折尾)から2度のダウンを奪われる大苦戦、そこから巻き返しての逆転KO勝利。
何よりもハートの強さを誇示した一戦でした。
タイでプロデビューし、2016年に一度は世界戦を経験した加納ですが、世界に臨むにはまだ少し、物足りない感じがします。
早急に世界というのではなく、ここは防衛戦でしっかりと地固めをして、勝負は来年以降にかけてもらいたいですね。
フライ級 山内涼太(角海老宝石)
2020年8月、戸高達(レパード玉熊)との決定戦を3R終了TKOで勝利し、初戴冠した山内。ただこの決定戦は戸高がランキング下位だったこともあり、やや疑問でした。2021年は中山祐太(一力)を相手に初防衛戦を行い、7RTKO勝利で快勝。
プレスをかけて試合をつくり、パワーパンチを存分に見せた一戦でした。
この戸高、中山ともにWBOアジア・パシフィックのランキングでは8位、9位といったランカー。このランキングのトップコンテンダーは畑中建人(畑中)。是非ともこういった強豪との対戦が見たいボクサーです。
山内はまだ、この先で通用するか否かを証明できていないボクサーだと思っています。敗戦は、田中恒成(畑中)に挑戦したウラン・トロハツ(中国)戦のみで、それもプロ5戦目の話で、ダウンを奪う大健闘。今の山内の実力を、チャレンジマッチで見てみたい。
バンタム級 西田凌佑(六島)
2021年に最も飛躍したボクサーの一人といえば、西田。2019年のデビュー2戦は外国人選手が相手だったものの、翌2020年12月の試合では元王者大森将平(Woz)を攻略、ファンをあっと驚かせました。
その勢いはそのままに、2021年は元世界王者、比嘉大吾(志成)を撃破してWBOアジア・パシフィックタイトルを獲得、同年末には大橋哲朗(真正)を降し、初防衛に成功しています。
彗星のごとく現れたボクサーで、この技巧はプロ5戦で既に折り紙付き。
幾度もアップセットを起こしてきたこのメンタルと、長身サウスポーのストロングポイントを大いに活かしたボクシングはまだ底が見えません。
バンタム級は世界を急げる階級ではないので、今年も国内の強豪を相手に防衛を重ねてほしいですね。
ランキングには、石田匠(井岡)、中嶋一輝(大橋)といった元王者たちや、村地翼(駿河男児)、高山涼深(ワタナベ)といった新鋭が名を連ねています。
防衛戦の相手も、目が離せません。
https://boxingcafe.hatenablog.com/entry/2021/04/27/230000
スーパーバンタム級 井上拓真(大橋)
こちら2021年国内ボクサーの私的MVP、井上拓真。これまでの実績は当然ながら、2021年は栗原慶太(一力)からOPBF東洋太平洋バンタム級王座を奪い、返上、和氣慎吾(FLARE山上)とWBOアジア・パシフィック・スーパーバンタム級王座決定戦を戦い、戴冠。
国内の強豪と戦い続けるハードマッチメイクは、ボクシング漫画以上です。
おそらく主戦場はバンタム級、チャンスがあればスーパーバンタム級も視野に入れている、ということでしょう、この王座は返上はしていません。
コロナさえなければ、前半に世界前哨戦として一戦して、井上尚弥が統一後、返上したバンタム級王座を巡って王座決定戦にでも出場できそうなものですが。
2022年、果たして国内で戦う相手が見つかるかどうか。
できることなら、井上尚弥とともに米国での一戦を期待したい。
栗原慶太vs井上拓真のOPBF世界バンタム級タイトルマッチを視聴!今後の両者に期待!! - 信太のボクシングカフェ
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ライト級王者 吉野修一郎(三迫)
豊富なアマキャリアを経て、プロデビューしてわずか6戦目で日本タイトルを獲得。これまで6度の王座防衛を成し、その道すがらOPBF、WBOアジアパシフィック王座を獲得し、3冠王者に。
2021年は1試合のみで、期待された三代大訓(ワタナベ)との対戦は実現されませんでしたが、新鋭仲里周麿(ナカザト)を6RTKO、やはり国内で抜きん出ている存在であることを証明しました。
保持する3つのタイトルのうち、日本タイトルのみを返上。いよいよ世界へ打って出ます。
その吉野に立ちはだかったのが元世界王者、伊藤雅雪(横浜光)。この試合はGGGvs村田のアンダーカードとして決定しており、あとは日程を待つのみ。
これが順調に行けば春には開催されるので、そこに勝てば海外で戦ってもらいたいですね。三代との一戦も見てみたいですが、やはり先に進む姿を見たい。
【観戦記】8/12、吉野修一郎vs仲里周麿のダイヤモンドグローブを視聴。 - 信太のボクシングカフェ
スーパーライト級王者 平岡アンディ(大橋)
2019年、2020年とアメリカで戦い、2021年にようやく初戴冠を成し遂げた平岡アンディ。日本タイトル、WBOアジア・パシフィックタイトルがかけられた注目戦、佐々木尽(八王子中屋)との一戦は、体重超過した佐々木を寄せ付けず11RTKO勝利。
その圧倒的な強さをまざまざと見せつけましたね。
初防衛戦は2/28と決まっており、相手はアオキ・クリスチャーノ(角海老宝石)。下馬評は平岡優位となるはずですが、アオキも前戦で近藤明広(一力)を破っており、侮れません。
ひとまず初防衛戦は行うとして、気になるのはその後。
このスーパーライト級で、日本やアジア王座を何度防衛しても、世界には結びつきません。平岡が早期に世界トップ戦線に行くには、やはりアメリカで戦っていく方が懸命でしょう。
トップランクとも契約しており、アメリカでプロモートしてもらったほうがよさそうな平岡アンディ。この平岡には、是非とも世界へたどりついてもらいたいので、アメリカで揉まれてほしい。それも、早々に。
【観戦記】フェニックスバトル、またまた大熱戦!平岡vs佐々木、中嶋vs栗原! - 信太のボクシングカフェ
ウェルター級王者 豊嶋亮太(帝拳)
2021年、最も飛躍したボクサーといえば豊嶋亮太、この名前を挙げるファンも多いのではないでしょうか。
2021年初頭に、長濱陸(角海老宝石)からこのOPBF王座を奪った事を皮切りに、5月にWBOアジア・パシフィック王者だった別府優樹(久留米櫛間&別府優樹)を倒して2冠王者となり、12月には坂井祥紀(横浜光)をしっかりとした形で退けています。
長濱に勝った試合は驚きましたし、坂井には小原佳太(三迫)よりも明確に勝利。
たった1年、たった3戦で、日本のウェルター級トップの評価を不動のものにした豊嶋、本当に素晴らしい1年でした。
とはいえ、本人は「世界」を目指すと公言、2021年を「最も良かった年」とするつもりはさらさらないようです。
ただ、この階級の世界の壁は今、非常に厚い。厚いし、高い。さらに固い。そして重い。
このウェルター級で世界を取るには奇跡に近いですが、その奇跡に期待をしたいです。
アジア2冠王者ではあるものの、まだまだ世界的知名度は無いに等しく、ここはやはり海外で大きな試合を経験しなければならない状況でしょう。
個人的には、小原佳太(三迫)との頂上決戦も見たいですが、小原も海外で戦いたいと公言していることもあり、実現は難しそうです。
豊嶋はまだ26歳、焦る必要はありません。2022年は、海外でのお目見え戦の他、地力を養う年としてほしい。
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ミドル級 野中悠樹(渥美)
プロデビューが1999年。20世紀です。私よりも2つ年上です。パッキャオよりも一つ年長です。すごいです。
2021年のリング登場は7月、約22ヶ月ぶり。
アマ70戦の越川孝紀(一力)を相手に12R判定勝利で防衛に成功、衰えのない姿を見せてくれました。
「どうしても世界タイトルマッチをやりたい」とインタビューで語った44歳の野中は、まだ諦めていません。
10敗という黒星の中で、KO負けはキャリア初期の1度のみ。どうかこの野中に、世界戦のチャンスを与えて欲しい。
もし、世界戦のチャンスが来るとすれば、まぎれもなくアンダードッグ。20数年にわたるプロキャリアの思いは、そこで爆発するかもしれません。
虎視眈々と世界挑戦のチャンスをにらみ続ける野中、そろそろ報われる事を願います。
OPBFとWBOアジア・パシフィック
JBCが承認している、ふたつの地域タイトル。
ただ、2021年に日本国内で行われたこのふたつの地域タイトル戦は、全て日本人対決でした。
かつては、日本タイトルの上にOPBFタイトルがあった、というイメージですが、今はもうおそらく日本タイトルを獲る方が困難な場合が多い。
日本タイトルは、ランキングも厳密、ランカーは当然日本人、または日本のジムに所属するボクサー、「なぜこの一戦にタイトルがかけられるのか?」ということも存在しません。
なので日本タイトルを狙うには時間がかかったり、世界ランクに入りやすくなる、という理由からアジアのタイトルを獲りにいく、というボクサーが多いですね。
ただ、ボクサーとしては勿論タイトルがあった方が良く、タイトルを獲ったとなれば引退後にも実績として活きてくることから、それが悪いと言うつもりはありません。
選択肢以前に比べて広がっている、というイメージです。
そしてタイトルがかかるからこその熱戦も多いことから、また今年も楽しませてくれる事でしょう。