今月21日は全日本新人王決定戦です。
デビュー間もない新人たちが1年に渡りしのぎを削るこのトーナメントは、日本独自のものであり、統括機関のある日本だからこそできるトーナメントでもあります。
日本の誇るルーキー・オブ・ザ・イヤー、新人たちの頂点を決める決戦にあたり、2020年度の全日本新人王決定戦に出場するボクサーたちの戦いをプレイバックしています。
前回、今回は2020年12月20日に行われた東日本新人王決勝戦を振り返ります。(第二回)
↓ミニマム級〜バンタム級(第一回)はこちら
スーパーバンタム級
矢斬佑季(花形)vs二瓶竜弥(DANGAN郡山)
2017年、2019年に続き3度目の新人王戦の矢斬。二瓶は2017年デビューながら、初の新人王参戦であり、ここまで5勝(1KO)1分と無敗をキープしています。
サウスポー矢斬がサークリングしながらジャブを突きます。二瓶はガードをしっかりと固め、グイグイと前に出ます。矢斬のリズムが非常に良いように見えます。
矢斬は小刻みなステップから踏み込み、コンビネーションを打って離れる、ヒットアンドアウェイ。
2R、矢斬はサイドステップ、右ジャブと右フック、左をボディに打ったりと攻めのバリエーションが豊富。二瓶の攻撃に対しては距離を操り、良いボクシングが出来ています。
二瓶は距離を詰め、右を巧打する場面もありますが、全体的には矢斬が試合を支配しています。
3R、二瓶がプレスを強め、やや強引に攻めていきます。矢斬はストレートで止め、右フックでまわし、自らはサイドステップでまわっていなします。
4R、矢斬が先に手を出します。その打ち終わりにパンチを繰り出す二瓶ですが、やはり矢斬のステップが良く、手数もよく出ます。
自らパンチを出した方が良いと思うのですが、どうしても後手にまわってしまう二瓶。
ラストラウンドに入っても手数、動きともに衰えない両者。ポイントはここまで矢斬でしょうが、二瓶も逆転KOにかけてガードを固めて前進。
終盤、二瓶の強い右がヒットしますが、矢斬も負けじとしっかりと打ち返します。
矢斬佑季、3-0(49-46✗3)の判定勝利で東日本新人王に!
素晴らしい距離感で自ら試合をつくった矢斬。最初から最後まで自分のボクシングを貫き通せる意志の強さ、ハートも含めたタフネスを持ったボクサーでした。
二瓶もよく攻めましたが、地方ジムのハンデか、サウスポー対策があまりしっかり出来ていないようにも見えました。(前足のポジショニング、右ストレートの打ち方等)
両選手とも、これからの奮起に期待です。
フェザー級
平野和憲(KG大和)vs吉田諒(イマオカ)
3戦3勝3KO、パーフェクトレコードで決勝戦へ上がってきた平野。吉田も3戦3勝(1KO)と無敗。
ともにしっかりとしたアマチュア経験があり、レベルの高い好試合が期待される一戦です。
初回、好戦的な両者は、速いジャブを交換するスタート。出し惜しみなくスピーディな展開、開始1分ほど、吉田がコンビネーションで攻め込みます。
しかし1分半、平野の打ち下ろすような右ストレートが吉田にヒット、やや効いたかバランスを崩す吉田。
そのまま攻め立てた平野、ロープ際でガードを固める吉田に対し、狙い済ました右ストレートをヒット!たまらず吉田はダウン。
立ち上がった吉田に対し、回復しないうちに攻め込む平野。ここで放った左がカウンターとなってヒット、ぐらついた吉田を見てレフェリーがストップ。
平野和憲、1RTKO勝利で東日本新人王に輝く!
アマ経験豊富なレベルの高いボクサー同士の一戦は、短時間決着ながら非常に見応えがありましたね。
平野は4戦全勝全KOとパーフェクトレコードを保持、年齢は31歳ですがまだまだ大いに期待できそうなボクサーでした。
吉田はこの試合を最後にワールドスポーツジムに移籍しています。(イマオカジムがボクシング協会を退会のため)かつて東日本新人王トーナメントの2戦目で倒し倒されの試合を演じたリッキー長谷川と同門となりますね。
ライバル同士、切磋琢磨してまた這い上がってきてもらいたいですね。
スーパーフェザー級
奈良井翼(RK蒲田)vsドミニク謙心(リングサイドフィットネス)
5戦全勝4KOの奈良井は、スーパーバンタム級で新人王トーナメントに出場しましたが、途中で棄権。二度目の新人王トーナメントです。
対するリック吉村の愛弟子、リングサイドフィットネスジムのプロ第一号の5勝(2KO)1敗、ドミニク謙心。
初回、中間距離でのジャブの差し合いから、奈良井が踏み込んでワンツー。顔を跳ね上げられるドミニク。1分半、ドミニクの右ストレートを受けながら強い左フックを当て、ドミニクは膝が折れます。効かされたドミニクは、連打をまとめられ、ダウンを奪われます。
その後も奈良井の猛攻は続きます。辛くもゴングに救われたドミニク。
2R、ドミニクは少し足元が怪しいようにも見えます。奈良井はワイルドにパンチを振っていきますが、ドミニクは反則スレスレの逃げ方で回避。
ここでレフェリーからドミニクに対してホールディングの減点が課されます。
再開後、突然の強い左フックを放った奈良井。これがドミニクにクリーンヒット!
倒れたドミニクを見て、レフェリーはノーカウントでストップ!
奈良井翼、2RTKO勝利で東日本新人王に。
奈良井、2019年の新人王は「体調不良」つまりは体重を作れずに棄権。そこから2階級上げ、見事に東日本新人王に輝きました。非常にパワフル、素晴らしいボクシングでした。
勝利者インタビューで涙を流した奈良井、ここまで色々な葛藤もあったことでしょう。敗北こそ知りませんが、失敗したことを糧にした奈良井、これからも期待です。
対するドミニク、リック会長のようにもっと距離を取れれば良かったですね。線が細く、打たれ脆さはありありと分かる体型だけに、少し心配です。リングサイドフィットネスジムがプロ加盟する時のクラウドファウンディングに協力した身としては、かつてのリック吉村のように、「負けないボクシング」で開花することを願って病みません。
ライト級
浦川大将(帝拳)vs山本ライアンジョシュア(ワタナベ)
※山本が棄権、中止。
スーパーライト級
兒玉麗司(三迫)vs鳴海拓郎(RK蒲田)
アマ35戦、プロ2戦目の兒玉と、黒星デビューから3連勝、プロ5戦目のプロ叩き上げの鳴海。
初回から兒玉のスピードが目に映ります。開始15秒、ワンツーから左フックを返すと鳴海にクリーンヒット!鳴海はダウン。兒玉の左フックに対して右のガードが下がってしまいましたね。立ち上がった鳴海に対し、焦らずにジャブをついてじっくりと攻める兒玉。
徐々に落ち着きを取り戻した鳴海ですが、ジャブで顔を跳ね上げられ、苦しい立ち上がり。
2R、兒玉、逆ワンツーをヒット、その後左フックもヒット。鳴海は自ら攻めれば良い攻撃ができていますが、今のところ得意なカウンターはとれていません。
残り1分ほどのところで鳴海がとうとうカウンターをヒット、すぐ終わるかとも思われた試合でしたが、鳴海がペースを取り戻しつつあるようにも見えます。
3R、兒玉がジャブフックから攻め込み、このラウンドは非常にアグレッシブに、強いパンチを振るって攻め込みます。コンビネーションは力強く、スムーズ。
少し手が出ない鳴海、兒玉に先に動かれるとそのスピードに翻弄されてしまいます。兒玉はジャブが速く、パンチも多彩、元トップアマそのもののボクシング。
ラストラウンド、KOを狙ってかプレスをかける兒玉。鳴海は一発のカウンターにかけて狙っています。1分すぎ、兒玉の左ボディで効かされた鳴海!兒玉はそれを見てラッシュ!
鳴海陣営のタオル投入にあわせ、防戦一方となった鳴海をレフェリーが救いました。
兒玉麗司、4RTKO勝利で東日本新人王に。
兒玉、前評判通りに素晴らしいボクシングを展開しましたね。スーパーライト級の新人でこのスピードは破格と言っても良いでしょう。
鳴海も後半そのスピードに慣れ、カウンターを取れる場面もありましたが、自ら攻める場面でも良い流れはつくれそうだっただけに残念でしたね。あの猛攻の中倒れず、打ち返したのは天晴。再起に期待したいです。
ウェルター級
山﨑海知(山龍)vs齊藤裕大(DANGAN郡山)
1勝(1KO)2敗、前戦は対戦相手が棄権し、いきなりの決勝戦となった山﨑、齊藤もデビュー戦でKO負けしましたが前戦で対戦相手が棄権、(0勝1敗の戦績)こちらもいきなりの決勝。
2020年の新人王トーナメントは、コロナで棄権者が相次いだこともありますが、日本重量級、なんとも寂しいトーナメントとなってしまいました。
出場する選手たちにとっては大チャンス。
サウスポー、斎藤は山﨑に比べて大きいですね。長身サウスポー、かなりやりづらいでしょう。
20歳の山﨑、かなり落ち着いており、太々しい感じすらします。離れた距離ではガードを低くし、何かを狙っているような雰囲気もありますね。
開始2分、山崎のワンツーが痛烈にヒット、齊藤はダウン!
たちあがった齊藤に襲いかかる山崎ですが、ここは齊藤が凌ぎます。
2R、ぐいぐいと攻める山﨑、離れて戦いたい斎藤はどんどんジャブを出して突き放していきたい。クリンチの距離でもパンチを出し続ける山﨑、かなり身体が強いですね。
3R、じっくりと見て、スローなリズムから一気にリズムを変えて攻め込むタイプの山﨑。離れている時は休んでいるので、ここで齊藤は攻めるべきだと思いますが、遠い距離でもあまり手が出ない齊藤。
残り1分のところで右ストレートをヒットした山﨑、その後も接近戦での打ち合いではアッパーやストレートを効果的決め、このラウンド残り2秒のところでまたも右ストレートがクリーンヒット、大の字に倒れた齊藤を見てレフェリーがストップ。
山﨑海知、3RTKO勝利で東日本新人王に!
ガードの低さが気にはなりますが、素晴らしいパワーですね。デビュー戦はミドル級で戦っているようですが、体を見ればもう少し絞れそうな感じもします。
全日本新人王戦後、パワーをそのままでもう少し下の階級に落とせれば、よりパワーが活きるかもしれませんね。
ミドル級
可兒栄樹(T&T)vs吉野健二(帝拳)
3勝(1KO)1分の可兒は、弱冠19歳のホープ。対する吉野も20歳と若い。デビューから2連敗も、前戦でデビュー戦で敗れた伊藤大賀(角海老宝石)にリベンジ、決勝では2戦目で敗れた可兒との対決。
2人は再戦となり、吉野が2戦連続でリベンジするのか、可兒が返り討ちにするのか、注目の一戦。
初回、30秒ほどで可兒の右ストレートがヒット。決定的なタイミングにも見えましたが、吉野はダメージを感じさせず、近い距離ではフィジカルで押し、ドスンドスンと音を立ててボディで攻め込みます。
ラスト20秒のところで吉野の右ボディからの返しの左フックがクリーンヒット!かなり効いた可兒でしたが、ここはゴング。ミドル級はやっぱり恐ろしいですね。
2R、思い切って振ってくる吉野のパンチは怖さが充分。重そうです。対して可兒はスピードがあり、回転力もありカウンターも取ることができる、シャープなパンチ。ここまでわかりやすいパンチの質の差は珍しいですね。
終盤に、可兒の素晴らしいジャブが機能します。可兒はこの距離で戦いたい。
3R、可兒はジャブを起点としてサイドに周り、ボクシングを展開。ただ吉野は身体の力が強く、近づいてくると可兒は苦しい。逆に可兒はフィジカルで押し負けるので、これからの課題か階級を落とすかしたほうがいいかもしれません。
後半、吉野の強いパンチに対してカウンターで攻め立てる可兒。これがクリーンヒットするので見栄えは良い。しかし終盤には吉野の強いパンチで後退、難しいラウンドばかりです。
両者が持ち味を発揮した激闘は最終ラウンドへ。足を使いつつ、細かいパンチを当てる可兒、大味なミドル級にあってはテクニシャンの部類に入っていくボクサーでしょう。回りつつのカウンターに対して吉野は身体をつけてボディから連打。
ともに疲労の色は濃く、完全に気持ちの勝負!吉野が良いパンチを当てれば、すぐさま可兒もコンビネーションを返し、まさに一進一退。
敗者がいないのではないか、と思う激闘は、その通りドローという結果。
1−0のドローで可兒栄樹が優勢点で東日本新人王に!
敗れたとはいえ、吉野も今後期待できるボクサーですね。フィジカル、パンチングパワーと振り回す迫力は充分、そしてまだ若く、ロマンのあるボクサーです。
ということで、東日本新人王決勝の振り返りでした。
前回、今回のブログで書いたボクサーが、今月21日の全日本新人王決定戦に出場します。
その全日本新人王決定戦は、日テレG+で生放送。
日テレG+はスカパー!に加入で誰でも見れます。(CSアンテナがなくても、契約さえすればオンデマンドでは見れるそうです。)
↓スカパー!に加入して、全日本新人王を楽しみましょう。
ちなみに料金は、月額、「基本料390円」+「G+視聴料900円」=1290円(税込1419円)です。初月無料なので、2月21日までにお試しでどうぞ。
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