リング・マガジンのパウンド・フォー・パウンドランキング1位にして、当代最も稼ぐボクサーとして有名なサウル「カネロ」アルバレス。
GBPとDAZNに対して訴訟を起しただの何だのありましたが、驚くべきことにそのキャリアは停滞せず、あっという間にGBPを離脱。
主戦場をスーパーミドル級とし、超難敵とみなされたカラム・スミスに何もさせず、圧倒的なパワーでスミスの腕を壊した末、判定勝利を納めたのは、つい先日。
現在は、カネロ・プロモーションという自身のプロモーション会社を設立、DAZNとは単発契約なのか、良好のようですね。
そこから約2ヶ月、早くもカネロがリングに帰ってきます。
↓カネロvsスミスの観戦記
WBAスーパー・WBC世界スーパーミドル級タイトルマッチ
サウル・アルバレス(メキシコ)vsアブニ・イルディリム(トルコ)
サウル・アルバレス(メキシコ)57戦54勝(36KO)1敗2分
おそらく世界で最も著名なボクサー、サウル・アルバレス。通称「カネロ」。
30歳という若さで既に57戦もの戦績をこなし、ここまでにスーパーウェルター、ミドル、スーパーミドル、ライトヘビー級の4階級を制覇しています。
唯一の敗戦はフロイド・メイウェザーJr(アメリカ)、引き分けのふたつはキャリア初期(5戦目)と、2017年にゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)と戦った1戦目。
元々は若くしてフロイド・メイウェザーJrと戦ったり、誰もが嫌がるエリスランディ・ララ(キューバ)と戦ったりと強敵を恐れないマッチメイクではありました。
ただ、ゴロフキンの衰えを待っているような時期があったり、その1戦目ではゴロフキン勝利を推す声も多く、それ以前のララ戦でも多くはカネロは負けていた、と言われる事が多く、「カネロ判定」という疑義は否めないところもあります。
ただ、ここ最近の充実ぶりは目をみはるものがあり、先日のカラム・スミス戦は本当に圧巻。評価の高いカラム・スミスが本当に何もできずに終わりました。
スミスがガードした腕を壊すという、常人離れした反則(ではないんですが)級の技をやってのけたカネロですが、ここまで強くとも対戦相手には困りません。
それは彼が莫大なマネーを生むドル箱スターだからでしょう。
誰もがカネロと戦いたい、そんなボクサーとなったカネロ。
ただ、前述の疑惑の判定の件や、メキシカンビーフの件等々、カネロを認められない一定数のボクシングファンがいることも事実。これはどこまでも拭えないのかもしれません。
アブニ・イルディリム(トルコ)23戦21勝(12KO)2敗
2014年デビューのイルディリムは、2017年に当時のIBO世界スーパーミドル級王者、クリス・ユーバンクJr(アメリカ)とWBSSトーナメントで激突、3RTKO負けを喫して初黒星。
その後5連勝し、2019年にWBC世界スーパーミドル級王座決定戦に出場、アンソニー・ディレル(アメリカ)に10R負傷判定で僅差の判定を落としてしまい2度目の敗北。
この2度目の敗北から、何故かカネロ戦というチャンスが巡ってきたイルディリム。
ディレル戦でもそうだったように、基本的には打ち合いを好むファイタータイプ。ただ、パワーとしてはさほどではなく、どちらかというと馬力型のファイターであり、正直カネロと比べるとスピードでもパワーでも戦術でも、おそらくフィジカルでも下回ると思われます。
イルディリムの勝ち筋は、何でしょうか。。。??
カネロはディフェンスが非常に素晴らしく、そしてタフさも相当なものだと思われますので、イルディリムのパンチで倒されるところは全く想像が付きません。
かといって、どんなに上手いボクサーでも、カネロに判定で勝つ事はおそらくできません。
イルディリムの勝率はほぼ0%。せめて、カネロ相手に萎縮せず、恐れずに勇気をもって向かっていってもらいたいものです。
ここ最近、アップセットが多いともいえますが、今回はさすがにサプライズは起こり得ない。
さて、実はこのメインイベントよりも、セミファイナルの方が興味深い。
WBC世界フライ級タイトルマッチ
フリオ・セサール・マルティネス(メキシコ)19戦17勝(13KO)1敗1NC
vs
マクウィリアムス・アローヨ(プエルトリコ)24戦20勝(15KO)4敗
超攻撃的王者、マルティネスの3度目の防衛戦。2015年、デビュー戦で黒星を喫しますが、その後は連戦連勝、チャーリー・エドワーズ(イギリス)の持つWBCタイトルへアタック。
この一戦、初回からガンガン攻めたマルティネスは3Rにエドワーズからダウンを奪い、KO勝利!かと思いきや、そのダウンの後、エドワーズに攻撃を加えてしまい、無効試合に。
一度は獲ったと思った世界タイトルが、手のひらからするりと抜け落ちたマルティネス、攻撃的すぎましたね。。。
勿論、こんな結果だったのでリマッチが約束されましたが、エドワーズがこれを回避して返上。完全に負けていたから仕方ないかもしれません。ここで、比嘉大吾を破って戴冠したクリストファー・ロサレス(ニカラグア)との決定戦を制して初戴冠を果たしました。
その後は初防衛戦でジェイ・ハリス(イギリス)からダウンを奪って判定勝利、2度目の防衛戦ではモイジェス・カジェロス(メキシコ)を2Rで切って落とし、圧勝。
とにかく初回から前に出てパンチを振るい、そのスタミナとハートの強さは一級品、パワーと回転力を武器にフライ級最強の呼び声も高い26歳。
ディフェンス面は大きな課題を持ち、被弾もしますが、タフさもあります。引退後が心配なボクサーではありますが、その試合は非常にエキサイティングです。
対するアローヨは、アマで世界選手権優勝経験もある元オリンピアン。確かな技術を持ち、4敗を喫していますが、そのうち3敗は井岡一翔(Ambition)、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)、そしてアムナット・ルエンロン(タイ)。アムナット戦は、どちらが勝ってもおかしくない内容でもありました。
そしてもう1敗は、キャリア初期に4回戦で喫したアップセット、元M.Tジムのトレーナーである岡田隆志戦であることは非常に興味深いですね。
ということで、意外と日本人にとって馴染みの深いアローヨ。
4階級を制覇した井岡、ロマゴンには敵いませんでしたが、世界王者クラスの実力を持っているといっても過言ではありません。
そして、このアローヨはダウン経験はあるものの、KO負けの経験のない、ディフェンスも良いテクニカルなボクサー。
このアローヨを圧倒的な連打でノックアウトできるのならば、マルティネスの評価は更に高まる事でしょう。
手を出し続けて前に前に出るファイター、マルティネスは、ボクシングIQは高そうには見えません。もしかすると、このアローヨはマルティネスの天敵となる恐れもあり、もちろん予想は実績を残して勢いもあるマルティネス優位ですが、なかなか侮れない相手。
サプライズが起こるとすれば、このセミファイナルです。
個人的には、マルティネスに強さを発揮してもらって、井岡やロマゴン並に完勝してもらうか、もしくはKOで勝利してほしいです。そして評価を上げて、中谷潤人(M.T)戦をやってほしい、というのが希望です。
セミセミには、中国の大型ヘビー級ボクサー、チャン・ツィーレイ(22戦全勝17KO)も登場です。東アジア人として非常に珍しいこのヘビー級世界ランカーは、北京オリンピックで銀メダルを獲得した元トップアマでもあります。
37歳のオールドルーキーは、果たして世界に辿りつけるのでしょうか。
目指すはロンドンオリンピックで敗れている、アンソニー・ジョシュア(イギリス)?
さて、このカネロ戦をメインに据えたマッチルーム興行は、もちろんDAZNで生配信。
日本時間2/28(日)AM9:00〜の配信です。
おそらくセミがお昼前後、今週末も楽しみです。