遅ればせながら、本日は3/28(日)に行われた、REAL SPIRITSの観戦記です。
真正ジム興行であるREAL SPIRITSは、最近はYoutubeチャンネル、Boxing Realさんで生配信してくれています。これは非常にありがたいことで、これまで関西のボクシングについてはテレビ放送が少なく、見たくてもなかなか見れない状態が続いてきました。
このコロナ禍で、そこに一石を投じてくれた真正ジムには感謝しかありませんね。
そもそも、世界タイトル戦のネット配信は山中竜也氏の防衛戦が最初(ボクモバ?)だったような気がします。違ったらごめんなさい。「最初」じゃなくて「最初のほう」にしておきましょう、自信がないから。
ともあれ、真正ジム興行、REAL SPIRITSの観戦記です!
↓プレビュー記事
メインイベント 58.5kg契約8回戦
久保隼(真正)vs佐伯瑠壱斗(岐阜ヨコゼキ)
前戦、王者候補、中野幹士(帝拳)と8Rを戦い抜き、負けはしたものの評価を高めた佐伯は、2戦連続でハードマッチメイクに臨みます。2戦連続で、というよりもずっとハードマッチメイクです。地方ジムのハンデを背負いつつ、強敵を恐れないこのスタイルには敬意を表したいですね。
大して元世界王者久保隼、前戦の復帰戦では危なげのない判定勝利。今回も圧勝のパフォーマンスが期待されます。
初回、久保がリードの右を軽くついて、利き手の左をボディに伸ばします。佐伯は久保にボクシングをされてはおそらく敵わない、距離を一気に詰めたいところでしょう。
久保は前手の使い方と細かなバックステップがよく、距離をしっかりと支配した上で、このラウンドは左ボディストレートも光ります。
2R、佐伯がプレスを強め、手数を増やして強引に打ってでます。このラウンド、近い距離で佐伯の右が久保を捕らえます。
遠い距離では久保が優位に立ちますが、近づけば佐伯の右アッパーが非常に良い。佐伯はこの右アッパーを起点として近い距離で良い攻撃ができています。
大して久保は初回のようにジャブを突いてのボクシングをしたいところです。
3R、久保、前の手を使いつつ距離をとり、佐伯が前に出ようとすると左ボディを打つぞとフェイントをかけます。この戦い方は良さそうです。
そして開始40秒のところで、久保の左ストレートがクリーンヒット!ジャブで佐伯を惑わしてからの左ストレート、まっすぐに伸びて素晴らしいパンチでした。
この左で佐伯はダウン、その後はやや後ろ荷重となってしまった佐伯。
ここからも佐伯は気迫を見せ、久保に右をヒットして強引に攻め立てますが、久保も負けじと応戦、遠い距離からのワンツー、近い距離では左のショートを何度も叩き込むという久保にとって珍しいボクシング。
そして残り時間がなくなってきたところで、久保は再度左ストレートをヒット、ぐらついた佐伯を見てレフェリーが割って入りました。
久保隼の3RTKO勝利
フィニッシュ前の久保の左ストレートは完璧でしたね。一瞬の隙をついて、という表現が正しいかどうかはわかりませんが、佐伯が若干気を抜いたタイミングで入ったパンチにも見えました。
その前から、離れ際や、接近戦から離れてふっと一息つくタイミングで久保はパンチを放っていましたが、佐伯もよく反応していたように見えました。
久保のように、タイミングのとりづらい相手は非常にやりづらいと感じます。
接近戦での被弾は危ない場面もあり、近い距離での改善点はまだまだ多そうです。遠い距離、中間距離ではしっかりと距離を支配できる久保にとって、接近戦でパンチをもらわないようにする、ということは命題であり、また伸びしろでもありますね。
佐伯は今回も、格上相手によくがんばりました。序盤、距離の遠い久保に対してなかなか思うように攻め込めませんでしたが、2Rは強引にペースを手繰り寄せましたね。ガッツのある、良いボクサーだと思います。
ここのところのハードマッチメイクで、思うように勝ち星を挙げられていない佐伯は、負け癖がついていないかが心配。このあたりで良い勝ち方をできなければ、勝ち方を忘れてしまう、ということも起こりうる気もします。
強敵相手の連戦で、徐々に自信をつけているという佐伯、次はその自信を確信に変えてもらいたいですね。
セミファイナル スーパーフライ級8回戦
坂田健太(神奈川渥美)vs与那覇勇気(真正)
セミの試合が一試合なくなり、繰上げでセミファイナルとなったこの一戦。
坂田は7勝7敗2分、日本バンタム級18位にランクされる与那覇は8勝(5KO)3敗1分という戦績です。
与那覇は2016年に長嶺克則(マナベ)の敗戦をきっかけにブランクをつくり、2019年に復帰。復帰2戦目で日本ランカーに勝利してランキングを獲得、今回が復帰3戦目となります。
与那覇は落ち着いた立ち上がり、対してサウスポー、坂田は忙しく動き回り、与那覇を撹乱しようと試みます。坂田はフライ級の選手なんですね。変則的に動き、打っては離れる(ことを試みる)ボクシング。
与那覇はやややりにくさを感じているようでしたが、初回の後半には坂田の動きにも慣れたのか、しっかりとプレスをかけ始められたように見えます。
2R、与那覇は手数はさほど多くないものの、ジャブや飛び込みながらの右ストレート、左ボディを放ち、これはあたらずとも効果的。
坂田はこれにより自在で変則的な動きができづらくなってきました。
与那覇もかなり個性的な動きをしつつ、単発ながら軌道の読みにくいパンチを放つ変則ボクサーです。ただ、こちらはアグレッシブさが根底に伺えます。
与那覇の右ストレートがヒットしだしたところで終盤、なんと与那覇が視線をリング外に落とします。それを見て取った坂田が(おそらく)攻めようとしたところで、与那覇の右ストレートがグサリ。
これは練習してきたのでしょうか。。。とんでもない必殺技ですね。これがリアルな「よそ見」パンチ。
3R、かなり調子の出てきた与那覇、ステップ、上体の動きでかわしつつも、ガードを固めてプレスをかけます。しゃがみこむくらいのダッキング(のようなもの)をする場面もあり、そのうちカエルパンチも出しそうな雰囲気です。
とにかく与那覇の右がよく当たっているイメージですが、これは変則スタイルの与那覇はほかの動きで坂田の注意をひきつけた上で、足からけって右を伸ばすだけ、という本当にモーションがない右ストレートだからでしょう。
4R、徐々に追い詰められる坂田、リーチの違いもありなかなか反撃のパンチを当てることができません。おおよそ大勢は決してしまいましたが、あきらめない坂田はどうにかパンチを当てようとがんばります。
しかし、与那覇の独壇場ともなったあとは与那覇の右ストレートが幾度もヒット、佐伯はこうなると為す術を見出せません。
6R、与那覇はまたも右をヒット、ロープにつめたところで坂田陣営からタオルが投入されました。
与那覇勇気、6RTKO勝利。
技術の高さを見せて圧勝した与那覇、今年はランキングを上げて日本タイトルに絡んで生きたいとのこと。
基本的に距離感にすぐれ、変則的な動きで撹乱するというボクサーはそれなりにいますが、それをここまで昇華できているボクサーは稀かもしれません。ランキングをあげるには、やはりランカー対決が手っ取り早い。
ここからは一戦一戦がまた楽しみですね。
あと、「よそ見パンチ」は、はじめの一歩では「つられてそっちを向いてしまう」という表現だったと思いますが、リアルなのは「よそ見をした相手に対して無防備に攻めてしまう」でしたね。確かに考えてみるとそうなるかもしれません。
やってみようかな。。。でも相手から目を離す勇気はありません。これが与那覇勇気が勇気たる所以ですかね。(ちがう)
スーパーバンタム級6回戦
脇田洸一(クラトキ)vs田井宜広(RST)
2015年に辰吉寿以輝(大阪帝拳)と戦った脇田、そこからは負けなしで日本ランカーとなっています。対して田井はアマキャリア抱負な元芦屋大ボクシング部主将、B級デビューの1戦1勝(1KO)というボクサー。
田井は変則的な動きをするボクサーですが、左右のスイッチもスムーズですね。左右のスイングパンチはスピードもあり、軌道も読みづらく、怖いパンチですね。特に相手の打ち終わりを狙って思い切り振り回すオーバーハンドは威力もありそうで、これが決まればかなりでかい。
田井はステップも自在で上体の動きもよく、ガードもかなり固い。
パンチに対する反応もよく、またまた楽しみなボクサーが関西から出てきた感じですね。
4Rの残り30秒、田井の左ボディがヒットした脇田は体がくの字に曲がり、それを見逃さない田井はボディを中心にラッシュ。
フィニッシュもボディ、レフェリーがストップしましたが脇田はしばらく立てませんでした。
田井宜広の4RTKO勝利。
これはおもしろいですね!こういうボクサーも映像がなければ脇田というボクサーに田井というボクサーが4RTKO勝利をした、という事実のみが残り、仮にこの田井が後楽園ホールに出てきたときにびっくりする、というのが常ですが、これからこのボクサーには注目していきたいと思います。
小林廉(エスペランサ)vs寺崎和輝(リングサイドフィットネス)
2020年の西日本新人王、小林の復帰戦。前戦の西軍代表決定戦で小林に勝った冨田風弥(伊豆)は全日本新人王に駆け上がりました。
この小林も、そして寺崎も、この一戦に勝ったほうがB級にあがれるというアツい一戦。
初回からふたりの気迫が伝わってくるような一戦。ともに基本のしっかりとした良いボクサーです。
寺崎のジャブは速く、まっすぐ出て力強く、そこからややオーバーハンド気味に打つ右ストレートもなかなか威力がありそうです。
小林はクラウチングの状態から誘い、ダックしての左ボディが良い。
互角に近い展開は最終ラウンドに劇的なクライマックスを迎えます。
ともに最終ラウンド勝負といわんばかりに距離が近づき、手数が多くなった両者。ここまでの3Rでは甲乙つけがたく、このラウンドをとったほうが勝つ、というイメージかもしれません。
このままどちらに転んでもおかしくない判定決着か、と思われた残り30秒、右クロスをヒットした小林が顔面への左フックを決め、よろめいた寺崎に追撃。
ダウンした寺崎に、レフェリーはストップを宣言。
小林廉の4RTKO勝利。
一瞬の勝負の決め時を見逃さなかった小林、すばらしかったですね。どちらが勝ってもおかしくないような試合内容だったので、寺崎は残念でしたが素晴らしい左を持ち、そして素晴らしいインテリジェンスを持ったボクサーだと思います。
両者ともに、今後もがんばってほしいですね。
女子フライ級4回戦
浜田麻理菜(エスペランサ)vs阿比留通子(オークラ)
阿比留がじりじりとプレスをかけ、浜田が足をつかっていなし、阿比留の打ち終わりを狙うという展開です。
この浜田はサイドにまわりながら動き、伸びの良いストレートを打つボクサーですね。阿比留のパンチがなかなか当たらないのは、浜田のステップが大きく、阿比留の踏み込みがやや浅い。
女子ボクシングの4回戦というのは久々に見ましたが、大昔よりもやはりレベルは大きく上がっている気がします。
両者ともにしっかりと自分のボクシングを貫き、ディフェンス、オフェンスともにしっかりとしていて見ごたえがあります。2分は少し短く感じますが。
距離がつまると阿比留のほうがパンチの回転力にすぐれ、浜田もいくつかの被弾を許してしまいますが、多くの時間は浜田が距離を支配。
規定の4Rを戦い終えた結果は、浜田麻理菜の4R判定勝利。
ほぼフルマークという判定で勝利した浜田、これで4戦3勝1分。無敗を維持し、フライ級5位という日本ランカー。
近々、日本タイトルへの挑戦というのもあるのかもしれませんね。
ということで、今回はREAL SPIRITSの興行の全試合の観戦記でした。気になったのは画面に映るお客さんの少なさ。全席指定、とあり、おそらく客席を制限、そしてチケットは高額ということから、いたし方のないことかもしれません。
興行としてはかなりの赤字になってしまうと思われますが、それでも興行全体をYoutubeで無料配信、そして自主興行をあきらめない真正ジムに感謝して、観戦記を書きました。
そして、4/4(土)に開催される次回のREAL SPIRITSも生配信が決定しています。
日程は4/4の11:15〜ということなので、お時間のある方は是非御覧ください。
こちらの興行は、メインに日本女子アトム級タイトルマッチ、長井香織(真正)vs樽井捺月(山木)に据えた、女子ボクシングの興行です。
他にも、総合格闘技から転向した赤林檎(真正)のデビュー戦、元世界王者・山中竜也氏の妹、山中菫(真正)のデビュー2戦目と関西の女子ボクサーたちがこぞって出場しますね。
皆さんも、少しでもこのYoutube動画が収益化できるように、少しずつでも良いのでこの興行を見ましょう。ボクシングの灯を、絶やさないためにも。
BOXING REALさんのYoutubeチャンネルはこちら