本日は全世界注目のマッチルーム興行onDAZN!
世界一稼ぐボクサーであるサウル・アルバレス=カネロに、Real Deal(本物)ならぬ「Real Heel」ビリー・ジョー・サンダースが挑む一戦。
サンダースはカネロのことを「メキシコ人の半分が嫌っている」と言ったそうですが、自身はドーピング問題、DV啓発問題をはじめ妙な動画を拡散させてしまい、おそらく世界中の半分以上から嫌われているのではないでしょうか。
今回の一戦は、私も含めてカネロを応援する人がこれまで以上に多いと思われます。
そしてセミファイナルでは、ミニマム級で何度も世界王者となった高山勝成が、若き王者エルウィン・ソトに挑みます。ソトとしてもマッチルーム契約後、初の一戦ということで気負いもあるはずなので、そこを高山は経験を持ってつきたいところ。
本日のブログは、この注目のマッチルーム興行の観戦記です。
↓プレビュー記事
WBO世界ライトフライ級タイトルマッチ
エルウィン・ソト(メキシコ)18勝(12KO)1敗
vs
高山勝成(寝屋川石田)32勝(12KO)8敗1NC
「老雄」と呼ぶと失礼なのかもしれませんが、数多の経験を経てきた高山、ラスベガスのリングでメキシコの若き王者、エルウィン・ソトに挑みます。
初回、ソトの体は高山よりもひとまわり大きく感じます。パンチの交錯からスタートした試合は、高山が足を使って周り、ボディへのジャブを使っていきます。
しかし1分すぎ、早々にソトの右ストレートが高山にクリーンヒット、高山は効いてしまったか少しぐらつきます。ソトはスピードはさほど感じないながらも、そのパンチングパワーは軽い階級とは思えません。終盤、高山はまたもクリーンヒットを許し、かなり分の悪いスタートです。
2R、インターバル中の「フェイントを使って、速く動け」という指示通り、高山は前ラウンドよりもスピードを意識した闘い方。しかしソトはワイルドなパンチを振るい、ガードの上からでも高山をふっとばします。
手数では高山の方がありますが、パンチの見栄え、一発のパンチ力はソトが上回ります。
高山はソトのパンチにのけぞってしまい、非常に見栄えが悪く感じます。終盤、近い距離での打ち合いも頭を下げてしまう高山は、やはり打ち負けているように見えてしまいます。
3R、高山はサイドへサイドへ動き、フェイントを駆使。しかしソトは高山のパンチを怖がらないので、少し効果が薄い。ソトは速く動く高山を捉えきれてはいないものの、ジリジリとプレスをかけ、高山の体のどこかにパンチを当てれば見栄えの面で勝れるのは強みです。にしても、手数は少なすぎかとも思います。
4R、高山、ジャブの連打から軽いコンビネーションで勝負。しかしソトの一発でチャラ。ソトのパワーはこの階級で出色、対して高山はミニマム級出身で明らかにパワーレス。
手数は明らかに高山、ソトはミスブローも目立ちますがポイントはソトに流れてしまいそうです。それでも序盤の1、2ラウンドよりは高山は調子を上げてきました。
5R、サイドへ動く高山に対して、ソトの手数は少ない。一発一発を力強く振り回すソトのパンチは怖いですが、高山は手数でソトにパンチを出させません。
後半、ボディの打ち合い。ここに活路を見出したいところです。
6R、変わらずの展開ですが、高山はジャブの打ち終わりを気をつけたい。高山のジャブ終わりに放たれるソトの右オーバーハンドは要注意。
中盤以降、近い距離でのボクシングが展開され、終盤、ソトのパワーパンチが高山を襲います。レフェリーが割って入ろうとしているようにも見えた最終盤でしたが、打ち合いの途中でゴング。
7R、ソトは亀状態からのスタート。ちょっとボディが効いてきているようにも見えます。とはいえ、先程の展開を見ていると先があまり長くなさそうです。
ソトの右オーバーハンドは非常に危険。攻守が入れ替わるラウンドの終盤は、高山は効果的なボディ攻め、ソトは相打ち覚悟で強いパンチを振るっていきます。
しかしここまでラウンド後野スロー、高山がやられているところしか映らない。。。
8R、高山は執拗に左ボディ。このボディでソトを削り、このラウンド以降勝負をかけなければ勝利はありません。
9R、ソトは手が出ないどころか、やや下がり始めた印象です。やはり高山はスタミナモンスター、このラウンドになっても全く手数、足も衰え知らず。
ソトはスタミナをごまかしつつ、要所でパンチをまとめている辺りはさすがですが、前半ほどのパワーは感じません。
一発一発のパンチングパワー自体は減りましたが、その分連打が出るソト。最後の力を振り絞っての連打は、当て勘が良く高山の顔面を次々と捉えていきます。
高山が打たれたところで、レフェリーがストップ!
突然のストップで、納得いかない高山陣営と本人。。。
エルウィン・ソトの9RTKO勝利。
ソトはおそらく苦しかったのでしょう、リングに膝をつき喜び、そして高山は「まだまだできる」とリング上でシャドー。スポーツマンシップあふれる抗議(?)の仕方に、夢は散るも感動をリングに残してくれます。
とはいえ、あの展開ではストップも致し方ないことかもしれません。ここはアメリカで、高山を知る人は誰もいません。
高山としては、ボディで削り、ここから勝負という雰囲気だったかもしれません。そしてここからの逆転劇は、高山を贔屓目に見ていれば、なくはないことだったと思います。
しかし、高山のタフネスを知らないアメリカのレフェリーの判断はここでストップという判断は覆りません。致し方ないとはいえ、アフマダリエフvs岩佐や、アンカハスvs船井のように、最後まで燃え尽きさせてくれない終わり方でした。
ただ、高山はこれで終わりにはきっとしないでしょう。おそらく本人も、陣営も、そしてこの試合を見た私も、まだまだ終われません。ただやっぱりミニマム級上がりの高山はパワーレスであり、頭を前に突き出すスタイルは、バッティングの怖さや見栄えの面で、今後苦しいかもしれません。
ソトは(特に前半)非常にパワフルで、パワーだけなら京口、拳四朗を上回る王者に見えます。ただ、拳四朗にはアウトボックスされそうです。
京口とであれば噛み合いすぎるほど噛み合い、京口にとっては序盤はかなり危険に思えます。京口が闘うのであれば、序盤はあまり力比べに固執せずにボクシングを展開、大振りのソトのパンチ、特に右オーバーハンドに最大限の警戒をして内側からアッパーをコツコツ当て、後半勝負という展開が理想な気がします。
序盤、力んで振ってくるソト相手なら、カウンターを取りやすいようにも思えますね。そこでダメージを与えていくという展開にしたいところ。
WBAスーパー・WBC・WBO統一世界スーパーミドル級タイトルマッチ
サウル・アルバレス(メキシコ)55勝(37KO)1敗2分
vs
ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)30勝(14KO)無敗
3つのベルトの統一戦のリングアナウンサーは、マイケル・バッファー。
3つのベルトの他に、リングマガジンベルト、そしてWBCが今回新たに作ったというメスチソ・ベルトも後ろに控えます。
サンダース陣営にはタイソン・フューリーの姿もありますね。
70,000人という大観衆、かつてのボクシングが戻ってきたようにも感じます。
全世界注目の一戦がスタート。
初回。カネロはプレスをかけつつも様子見、サンダースは適度にジャブを飛ばします。互いに様子を見つつ、相手に手の内を悟られましとしているように見える展開です。両者ともに手数は少ないものの、緊張感のある第一ラウンドが終了。
2R、カネロはジリジリとプレスをかけ、サンダースをロープに詰めて右ボディ。サンダースが打ってくればガードしてカウンター。サンダースは危険な距離に行かず、ストレートの距離で闘うのが無難でしょうね。
カネロはラウンド終盤、ようやく上体の動きが出てきて、少しずつ自分から攻めるようになってきました。そろそろ様子見は終わりでしょうか。
3R、サンダースは広いスタンスで右リードを漂わせてカネロの進入を阻みます。素早いコンビネーション、サイドステップを駆使してこのラウンドは巧く戦えています。
しかし後半はカネロが攻める場面が目立ち、サンダースはポイントを奪うまでには至っていないと思います。何せ相手はあのカネロ。そしてここはアメリカで、この興行はシンコ・デ・マヨの興行です。
4R、サンダースのジャブは悔しいが良いジャブで、悔しいがディフェンス勘も良い。さすがのカネロもクリーンヒットを奪えませんが、やはりカネロのパワーは素晴らしく、そしてカネロ寄りの歓声も大きい。
5R、カネロが本格的に中で戦おうと、プレスをかけつつ頭を振ります。サンダースは素早いステップを駆使しつつも上体を動かし、カウンターを狙います。これがおそらく事前に予測できた展開でしょう。
このラウンド、サーダースのジャブ、そして左ストレートがカネロにヒット。
6R、クリーンヒットが増えてきます。カネロはやや強引に攻めた方が、サンダースには効果的なように見えますね。サンダースをガードポジションに移行させなければ、なかなかパンチは当たりません。
しかしサンダースもカネロのパンチに臆する事がないので、これはやはり最近のカネロの相手とは一線を画すところです。
7R、サンダースはボディを嫌がっているように見えます。しかしそれでもサンダースの右ジャブは止まらず、カネロはその右ジャブとフェイント、足さばきに邪魔されて、なかなか思うように攻めきれません。
8R、まだまだ元気なサンダース、序盤に速いコンビネーションでカネロを攻め立てます。
しかしこのラウンドのハーフタイム、サンダースのミスブローの打ち終わりにカネロの右がヒット!サンダースはクリンチに逃れるピンチ。
その後もカネロの飛び込みざまの左フックと見せかけた左ボディがサンダースに炸裂。ボディも効いてしまったサンダース、体をくの字に折り曲げてボディへの被弾を回避、ガードを固めて防戦一方です。
観客を煽ったカネロ、ノックアウトに向けてプレスを強めます。
こうして精神的優位にたったカネロは強い。
70,000ニン以上の観衆を味方につけ、余裕を持って前に出るカネロは、まさに王者です。
そしてこのラウンドをサバイブしたサンダースですが、インターバル中、棄権。
右目がほとんどふさがっており、眼窩底骨折でしょうか。
いずれにしろ、途中まではなかなか良い勝負を続けていたサンダース。やはり技術の高いボクサーですね。
もっと完全にぶっ倒してほしかった思いが強いですが、途中棄権なら仕方ありません。
ともあれ、やはりカネロは強い。実際勝負を決めたのはあの右一発でしょうが、それまでのボディも十分サンダースに効いていました。あの右がなかろうとも、残りのラウンドでサンダースを仕留めていたと思います。
今日見て改めて思ったのは、やはりカレブ・プラントでは相手にならなそう。
今年9月、メキシコの独立記念日の興行で、カネロがこのスーパーミドル級の4団体制覇を成し遂げる事はほぼ確約されたと言っても良いでしょう。
井上尚弥よりも後に始めた4団体制覇への道のりが、こうも簡単に実現していってしまうあたり、やはりカネロというボクサーはいろいろな意味でとてつもない。
ということで、今日は思いっきりビバメヒコ!難敵サンダースを、やや苦戦ともいえましたが蹴散らし、当代最高のボクサーであると証明したカネロの行く道は、栄光にあふれています。
いったい誰が、カネロを止めるのか。