つい最近まで、ヘビー級といえばアンソニー・ジョシュア(イギリス)vsタイソン・フューリー(イギリス)という同国人同士による4団体統一戦が締結しそうな流れでした。
しかし日程、会場ともになかなか決定のニュースは流れず、結局デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)が再戦条項をつきつけて横入り。もともとこのフューリーvsワイルダーの第3戦目というのは、2戦目のあとから話題にはなっており、再戦条項の存在も明らかにされてきました。
しかし延期に次ぐ延期を経て、ならばとジョシュアvsフューリーの一戦の話題が上がり、こちらが先に対戦合意に達した、という流れだったと思います。
しかし、その対戦合意から場所、日程がなかなか定まらず、結局はワイルダーに横入りされたジョシュアはご立腹だそうですが、こうなることを見越してチンタラやっていた感も否めず。
ともあれ、フューリーvsワイルダーの第3戦が正式決定との報が、数日前にひょっこり出てきて、これは確かな情報のようです。
タラレバの話をすると、本当はワイルダーがフューリーに負けさえしなければ、ヘビー級の頂上決戦でジョシュアvsワイルダーという因縁めいた米英対決となったはずなんですけどね。
まあ、その前にジョシュアがアンディ・ルイスJr(アメリカ)に負けなければ、もっと前にビッグマッチが決まっていたかもしれませんけどね。
そんないくつもの「タラ・レバ」を乗り越えて、いよいよ統一へ進む(?)ヘビー級!今回のブログでは、今後のヘビー級の動きについて書いていきたいと思います。
7/24(日本時間7/25)、フューリーvsワイルダーⅢ
EXCLUSIVE: Deontay Wilder vs. Tyson Fury III arbitration still ongoingより
タイソン・フューリーとデオンテイ・ワイルダーは、2018年12月、WBC王座を持つワイルダーに、元統一王者のフューリーが挑戦するという形で実現しました。
この試合は、フューリーが主導権を握ってはいたものの、後半の9Rと12Rにダウンを喫し、結果ドロー。これはフューリーにとって厳しい採点の試合ではありました。
ただ、この拮抗した展開のお決まりのドローというのが、第二戦へ大きな注目を集めることになったのです。
「ブロンズボマー」デオンテイ・ワイルダー
デオンテイ・ワイルダーは超絶ハードパンチャーであり、ワイルダーの相手は「12R、ずっと完璧なボクシングをしなければならない」という事に対し、ワイルダー自身は「2秒、完璧なボクシングをすれば良い」、という理不尽さ。ここが最高であり、どんな劣勢も一発でひっくり返せるパンチが魅力。
ワイルダーがボクシングを始めたのは2005年、20歳の時。かなり遅いスタートではあったものの、その後たった3年で2008年の北京オリンピックに出場するオリンピアンとなり、しかもそのオリンピックで銅メダルを獲得。
その後ほどなくしてプロ転向、連戦連勝、そしてそのすべてでノックアウト勝ちを飾り、2015年、WBC世界ヘビー級王座を獲得しました。このタイトルマッチが、ワイルダーがKO勝利を飾れなかった唯一の勝ち星です。
しかしこの時前王者となったバーメイン・スタイバーン(カナダ)には6度目の防衛戦の際に1RKO勝利、その他の防衛戦もすべてKOで飾り、8度目の防衛戦で前述のタイソン・フューリーを迎えました。
その後も防衛を重ねて結果10度防衛、フューリー第二戦前の戦績は42勝(41KO)1分という驚異的なものでした。まあ、ロマンがありますね。
ちなみに、この10度目の防衛戦はルイス・オルティスとの再戦だったのですが、ワイルダーは初回から7Rまでオルティスに大苦戦。ところが7R残り10秒のところで右ストレートを一発当て、そのまま試合を決めてしまうという実にワイルダーらしい勝ち方をして、フューリー第二戦へ臨んでいます。
「ジプシーキング」タイソン・フューリー
対してタイソン・フューリーは12歳でボクシングを開始、こちらは北京オリンピックの選考で落選、プロ転向。
ワイルダーと同じ頃、2008年にプロデビューしたフューリーは、こちらも連戦連勝。ワイルダーほどのインパクトはなく、地道にキャリアを重ねていきました。
チャンスを掴んだのは2015年11月、WBAスーパー・IBF・WBOのメジャー3団体統一王座に君臨していたウラディミール・クリチコ(ウクライナ)への挑戦が実現したとき。
何度も延期になり、消え入りそうになっていたこの一戦は、クリチコのWBA9度目、IBF19度目、WBO15度目の王座の防衛戦として行われました。超安定王者、クリチコに対して、自分のボクシングを完遂したフューリーは、これを見事2-1の判定で勝利。
クリチコの時代の終わりを世界中に告げました。
しかし、その後のフューリーは、一気にスターダムにのし上がったためなのか精神的に不安定となり、折角獲った王座も剥奪、返上、自身の怪我(?)によるブランク、更には禁止薬物の陽性反応、鬱病の発症等々、見事なほど転げ落ちていき、誰もが「フューリーはもう戻ってこない」と思ったと思います。
しかし2018年6月、クリチコ戦以来2年7ヶ月ぶりにリングに戻ってきたフューリーは、3R終了TKOで再起。そのままワイルダーとの初戦を迎えます。
誰もがワイルダー優位としていたこの一戦は、フューリーの見事なボクシングが冴え、試合を支配。9R、12Rに痛烈なノックダウンを喫するものの、それこそゾンビのように起き上がり戦うフューリーは、とても人間とは思えないほどのものでした。
ドローでWBC王座は獲得ならずとも、その評価を取り戻したフューリーでしたが、2019年のオット・ワリン戦では右目尻を深くカット、格下であるワリンを相手に大苦戦の内容で、若干評価を落とした中でワイルダーとの再戦に臨みます。
そして2020年2月22日、ワイルダーvsフューリーⅡ。
結果としてはタイソン・フューリーの7RTKO勝利であり、3Rと5Rにダウンを奪うという圧勝劇。ワイルダーには、良いところが全然ありませんでした。
その後、ワイルダーはもともとこの試合前にあった再戦条項を糧に再戦を要求。一時期、待ち料を払って、フューリーvsジョシュアを締結させる、という報道もなされ、実際ジョシュアとの間に対戦合意はあったそうですが、結局はワイルダーの再戦要求に応じる形になりました。
↓ジョシュアvsフューリー対戦合意が伝えられた頃の記事
さて。。。てっきりジョシュアvsフューリーをやって、その勝者にワイルダーが。。。なんていうのを想像していたわけですが、結果フューリーvsワイルダーⅢ。これはもう日程も7/24、場所もラスベガスと言われているので、さすがに決定でしょう。
1戦目はワイルダーはほぼ完封されていて、ドローを拾った感じ
2戦目はフューリーの完璧なボクシングと、ワイルダーの不調により、フューリーの完勝。
それでも尚、3戦目、ワイルダーに期待してしまう自分がいます。
フューリーは一発では沈まないかもしれません。捉えどころのないジプシーキングに、2発3発と当てていくのは、ワイルダーの技量的に難しいかもしれません。
それでもやはり、この稀代のハードパンチャーの試合は見ていて飽きないので、3度目の正直として、フューリーを倒してくれる様を見たい。ということで、ワイルダー、今度はリングコスチュームにも気をつけて、言い訳出来ない準備をして頑張ってもらいたいですね。
そして、「AJ」アンソニー・ジョシュア
フューリーに振られてしまったジョシュア。ジョシュアvsフューリーも数戦のシリーズで行われる予定だったので、まだまだチャンスはあるでしょう。
おそらく、このフューリーvsワイルダーで、どちらが負けたとしても、さほど商品価値は落ちないのではないか、と思っています。
さて、AJ。
ジョシュアは、WBOから指名戦の指令を受けているようです。WBOのトップコンテンダーは、クルーザー級のUndisputedチャンプ、オレクサンデル・ウシク(ウクライナ)!!
ジョシュアvsウシクというのも非常に興味深いマッチアップですね。
ジョシュアはアンディ・ルイス第一戦で露呈してしまった通り、顎の強さに不安を抱えています。第二戦は非常に大事に闘いましたね。
しかし、ウシクはヘビー級に上げてから、明らかにパワーレス。体格にも劣り、やはりクルーザーとヘビーの間には如何ともし難い階級の壁が存在しています。
それでも尚、技術に上回るウシクがジョシュアを攻略するのか、はたまたジョシュアがその体格を活かしてウシクにボクシングをさせないのか。
決まってほしいなぁ。
この試合が同意に至らなければ、ジョシュアはWBO王座を放棄する可能性もあるとのこと。
折角なので、3団体統一王者であるジョシュアと、WBC王座のフューリーまたはワイルダーの、4団体統一戦を見たいですよね。その機運は今こそ高まっており、今以外にはもう実現しないかもしれませんし。