さてさて、いよいよロマチェンコvs中谷。そしてバリオスvsデービス。
その前日、6/25(日本時間6/26)には、イギリスでは日本人と絡む可能性のある軽量級の試合が行われていました。
このMTKグローバルの興行は、ESPN+で見られるようで、折角なので視聴。
今回のブログは、ジェイ・ハリスvsリカルド・サンドバルのIBF世界フライ級挑戦者決定戦をメインに据えた、MTKグローバル興行の観戦記です。
↓プレビュー記事
6/25(日本時間6/26)イギリス
ポール・バトラー(イギリス)32勝(15KO)2敗
vs
ウィリバルド・ガルシア(メキシコ)12勝(6KO)4敗1分
元IBF世界バンタム級王者、ポール・バトラー。本来であればWBO世界バンタム級の指名挑戦者決定戦に出場する予定でしたが、対戦相手のジョセフ・アグべコのビザが降りず、代役としてウィリバルド・ガルシアとのノンタイトルマッチに挑みます。
元世界王者として圧倒して勝ちたいバトラーと、最近、メキシカンの間で多いアップセットの波に乗りたいガルシア。
初回、早々にバトラーのジャブが当たりまくります。ガルシアは強引に距離を詰め、メキシカン得意のボラードを振り回します。
その強引な攻めに対し、ガードでしっかりとしのぐバトラー。左ボディから左フックのコンビネーション、この左フックがカウンターとなってガルシアはダウン。やや効いているそぶりを見せつつ、破れかぶれで攻めるガルシア!よもや1RKOか、という展開ながら、ガルシアは身体が流れようとも打つ手は緩めません。
2R、劣勢のガルシアは思い切りの良いパンチを放っていきます。これはバトラーも油断ができませんね。このガルシアは、真剣にアップセットを狙っています。
基本がしっかりしているバトラーを崩すのは、このガルシアのように強引で、パワーパンチを振り回すタイプのボクサーなのかもしれません。
3Rも強引にパンチを振り回し、バトラーに向かっていくガルシア。バトラーは守勢に回りつつもステップとブロッキングでガルシアの攻撃を無効化し、コンビネーション、得意の左フック、ボディショットでガルシアにダメージを与えていきます。
ボクシングのテクニックは雲泥の差、そしてガルシアはダメージを蓄積し、動きが鈍ってきてしまったように見えます。
4R、バトラーが速いコンビネーションで攻めると、ガルシアは強いパンチの連打で反撃。この連打の中では、バトラーのガードを割ってパンチを入れる場面もあり、アップセットへの望みをつなぎます。
中盤にもバトラーをロープに詰め、パンチを振るうガルシアですが、ことごとくカウンターをとられます。しかし諦めないガルシア、また強いパンチを放っていきます。このガルシア、非常に気持が強い。そしてタフ。
終盤にもバトラーの左ボディから左フックという見事なコンビネーションが入りますが、ガルシアはゾンビ。
5R、あれだけもらえばダメージはあるはずですが、とにかく力強いパンチを放ち続けるガルシア。カウンターをとられようがかまわず前進、これは本当にすごい。
終盤にもラッシュを見せたガルシアですが、効果的なパンチは当てられず。
6R、7Rも展開は変わりません。ガルシアは懸命にパンチを振るい、そして追っていき、ま他件名にパンチを振るう。バトラーはクリーンヒットを免れてはいるものの、まだまだガルシアのパンチ、特に左右のボディショットは迫力十分です。
8R、まだまだガルシアは止まりません。しかし、バトラーの方はというとステップで外すことが少なくなり、ロープに詰まる場面もしばしば。手を出せばディフェンスに難のあるガルシアにはヒットしますが、ガルシアはとっくにバトラーのパンチに慣れてしまったのか、とにかくもらいながらでも手が出ます。
9R、おそらくポイント劣勢のガルシアは、倒すしかありません。強いパンチを振るい、追っていくもののバトラーのカウンターを浴びます。それでも尚、諦めずに追い続け、この試合何度目か、バトラーをロープに釘付け。とにかくガルシアの根性が目立つ試合。
ラストラウンドもとにかく身体を前に出し、強いパンチを振るうガルシアと、ガード主体のバトラー。フルラウンドを戦い抜き、試合は判定決着へ。
スコアは97-93が一者、96-94が一者、そして94-95、スプリットの判定でバトラーが勝利。
バトラーの方がクリーンヒットは多かったと思いますが、とにかく手数が少なく、逆にガルシアは超アグレッシブで、バトラーのクリーンヒットが印象的でなかったラウンドはガルシアに流れたようですね。
ともあれ、ガルシアのがんばりはものすごかった。元世界王者を倒せれば、この上ないアピールになったとは思いますが、惜しくも届かず。逆に、力の差を見せつけたかったであろうポール・バトラーは思わぬ大苦戦。
ちょっと見くびっていたのかもしれませんね。ともあれ、代役として呼ばれた割には非常にがんばったガルシア、アップセットを真剣に狙っている感じがあって素晴らしい試合でした。
IBF世界フライ級挑戦者決定戦
ジェイ・ハリス(イギリス)18勝(9KO)1敗
vs
リカルド・サンドバル(アメリカ)18勝(13KO)1敗
フリオ・セサール・マルティネスに負けた元世界挑戦者、ジェイ・ハリス。同国のIBF同級王者、サニー・エドワーズ挑戦を目指して挑戦者決定戦に出場です。
リカルド・サンドバルについては私は勉強不足ですが、KO率も高く、そして22歳と若く、戦績や状況を見ると期待の持てるボクサーですね。
初回、ジリッジリッと互いに距離を探り合いつつ、鋭いジャブを飛ばして様子見。ハリスもサンドバルも素晴らしいジャブを放ちます。これは好試合が期待できます。
サンドバルは左ボディが非常にパワフルで良い。そしてハリスはコンビネーションが良い。
2R、ともにキビキビとした動き、キレのあるジャブ、そして一瞬の隙を逃さないカウンターを持っています。甲乙つけがたい互角の展開は、危険な距離で両者の素早いパンチが交錯します。
非常にハイレベルな、中間距離での美しいボクシングが展開されます。
3R、やや均衡が崩れてきたように思うこのラウンド、パンチングパワーの差なのか、フィジカルの差なのか、クリーンヒットの数は同等でも、ハリスの方がやや劣勢に見えます。
ハリスはパンチをもらった時ののけぞり方、押されて下がる場面が少し目立ち、逆にサンドバルはがっしりとしています。
4R、明らかなパワー差、というほどではありませんが、ラウンドが進んでくると少しハリスはパワーレスに見え、体全体のパワーでもサンドバルが優位。
5R、序盤にハリスのジャブを外して右をヒットしたサンドバル、プレスをかけて徐々にハリスを追い詰めていきます。
ロープ際をサークリングしていくハリスもコンビネーションで盛り返し、打ちつ打たれつの攻防。
6R、今度はハリスもプレス。しかし、パワーに勝るサンドバルが反撃を試みると、まっすぐ下がってしまうので、そこまで丁寧にかけたプレスの効果が半減してしまいます。
中盤にもサンドバルの右ストレートで顎を跳ね上げられたハリス。終盤にはボディの打ち合い。
7R、序盤にカウンター気味に入ったハリスの左で、サンドバルはガクッと腰を落とします。ここがチャンスと攻め込むハリス、コンビネーションとステップを使ってサンドバルにダメージを与えていきます。
サンドバルに傾きかけた流れを引き戻す値千金のカウンターは、ハリスに自信をもたらし、近い距離での打撃戦に発展します。
そうなるとサンドバルにとっては有り難いことで、フィジカルの差を活かしてハリスをコーナー、ロープに詰めてパワーパンチを放っていきます。
8R、引き続きハイレベルな攻防が繰り広げていく中、ハーフタイム、サンドバルの左ボディショットがハリスにヒット!この一発で膝をつき、カウントを聞くハリス!
立ち上がったハリスに、ここがチャンスとみて襲いかかるサンドバル。
そして2度目の左ボディアッパーをヒットすると、ハリスがまたもダウン!!
ここはレフェリーにより、テンカウントが数えられました。
リカルド・サンドバル、8RKO勝利!
サンドバル、お見事でした。とにかくこの速く、巧い二人のボクサーの試合は、見ていて非常に見応えのある、おもしろいものでした。
リカルド・サンドバル、今までノーチェックでしたが、非常にレベルの高いボクサーです。これでムザラネを攻略したサニー・エドワーズ(イギリス)への挑戦権を得て、この試合が組まれればまたイギリスへ乗り込んでいくのかもしれませんね。
ハリス、サンドバル、ふたりの差は、「パワー」でした。スピードや技巧は少なくとも互角に見え、ここまでの採点も非常に悩ましいものだったとは思いますが、明確にサンドバルのパンチ、そしてフィジカルがハリスを上回っていました。
ハリスも見どころは作りましたが、今回はサンドバルの勝利。素晴らしいボディショットでした。
今後のフライ級戦線、日本には中谷潤人(M.T)がおり、日本王者にはユーリ阿久井政悟、WBOアジアパシフィック王者には山内涼太がいます。そしてその他のランカーも、日本人ボクサーは強豪揃い。
フライ級、世界的に盛り上がって欲しいものですね。