いよいよ開始された東京オリンピック、ボクシング競技。
東京オリンピックでは、男子8階級、女子5階級でトーナメントが開催されることになっています。
↓オリンピック実施階級についてはこちら
トーナメントは、各国の代表となったボクサーが、地域予選(日本でいうとアジア・オセアニア予選)に挑み、その予選を勝ち抜いたボクサーがオリンピックへの出場権を得ます。
本来は、それに加えて最終予選という世界規模で出場権をかけたトーナメントがあるのですが、今回はコロナショックにより最終予選は中止。かわりにIOCの定める世界ランキングの上位者が出場権を獲得しています。
いずれにしろ、国の代表となっただけでは、まだオリンピックへの出場権すらありません。
そしてその厳しい予選を勝ち抜いたボクサーと、今回は開催国枠で数名のボクサーは出場権を得られました。その数は男子4名、女子2名の合計6名。
↓オリンピック出場を決めた6選手について
その階級も、合計32名の出場ボクサーがトーナメント形式で争い、各ボクサーは1日1試合しかできないので、柔道や他の競技よりも多くの時間を有します。
ROUND32(1回戦)
→ROUND16(2回戦)※終われば、ベスト8が出揃います。
→ROUND8(3回戦)※終われば、メダルが確定。(3位決定戦は行われず、銅メダルは各階級でふたり)
→準決勝(4回戦)※勝った方は銀以上が確定。負ければ銅メダル。
→決勝(5回戦)
と進んでいきます。
東京オリンピック、ボクシング競技は4日目、本日は岡澤セオンが2回戦に臨みます。
対戦相手は、アマチュアボクシング大国、キューバのロニエル・イグレシアス。2008年、北京オリンピックで銅メダル、2009年の世界選手権で金メダル、そして2012年のロンドンオリンピックでも金メダル。最新の成績でも、2017年の世界選手権で銀メダルを獲得している超強豪。随分前から世界のトップ戦線で活躍してきたキューバのレジェンド。
本日のブログでは、この岡澤セオンが世界の頂きの一つに挑んだという一戦の観戦記。
ウェルター級ROUND16
ロニエル・イグレシアス(キューバ)vs岡澤セオン(日本)
これまでの実績からする期待値でいえば、この岡澤セオンこそが男子ボクシング日本代表において最も期待値が高いと言えます。しかし、この岡澤のトーナメントの山は強豪揃い。2回戦で早くも超強豪といえるイグレシアスと当たるというのは、なかなか運を持っていない。
しかし、ここに勝てば大きく道が開けますし、一日前には田中亮明がリオ五輪の銀メダリストを破るという殊勲を上げています。決して不可能な事はありません。
ボクシングファン、そして多くの人の期待を背負って、岡澤が軽やかにリングイン。
初回、岡澤はまずボディジャブ。軽やかなステップでサークリング、素晴らしいジャブから時に踏み込んで左ストレート。イグレシアスは岡澤のスピードにやや戸惑っているようにも見えます。
岡澤はらしさをみせて自由にリングを動き回り、ペースを掌握しているように思います。
しかしイグレシアスも流石なもので、後半には接近戦に持ち込まれることもしばしば。クリーンヒットが少ないのは両者のディフェンス技術が卓越しているが故ですが、このラウンドかなり優勢に進められたと思います。
初回、ジャッジの判定は5-0で岡澤!!この初回をとれたのはかなりでかい!!
2R、先程よりもアグレッシブに攻める岡澤。接近戦での場面が増えます。イグレシアスの踏み込みにあわせたワンツー、いつものボディジャブ!
イラついているようにみえるイグレシアス、後頭部への加撃で減点!これまた岡澤にとってはラッキー。一度だけのラビットパンチで減点、しかも故意ではないと思いますが、このレフェリーは先程からやや厳しい。すぐに試合を止めます。
セオンは右へ左へ動き回りますが、少し疲労が見えます。イグレシアスのプレッシャーによって、削られているのかもしれません。
そしてイグレシアは身体が非常につよく、ブレない分、見栄えが非常に良い。後半は少し押され気味、ポイントは3者がイグレシアス、2者が岡澤。
インターバル中に映った岡澤は、かなり体力を消耗しています。対してイグレシアスはまだ体力面では余裕が伺えますね。
ただ、減点分があるのでまだ岡澤が優勢です。
3R、イグレシアスが強く踏み込んできます。劣勢を意識してでしょうが、頭がぶつかる。これは怖い。開始30秒ほどのところで岡澤にダウン宣告、何故?と思いましたが、その前にもイグレシアスの頭が当たっており、それでダウンを取られたようですね。
岡澤セオン選手
— 小4 ボクシング&水泳 中武亮翔(あきと)ボクシング中毒 目標は世界王者 と父 剣道から拳道へ (@akitoworldchamp) 2021年7月27日
2ラウンドまでポイント完全に勝ってたのにバッティングしたもん勝ちなん⁉️😤#岡澤セオン #バッティング #オリンピック #ボクシング pic.twitter.com/jC8HnLTQTN
せりしゅんやさんからの情報。こういうことがあるらしい。(知りませんでした)
岡澤セオンの2回戦で、最終回のバッティングを嫌がった直後に受けたダウン宣告。バッティングでもダウンを取って休ませることはある。ただし、その場合はそれがパンチのダウンではないことをレフェリーは示す必要がある。
— せりしゅんや / Shunya Seri (@serishunya) 2021年7月27日
バウトレビューなしも今回のルール。
とにかく接戦で、序盤は岡澤優勢だった。
アマチュアボクシングの場合、パンチでダウンを取られたとしても一発のクリーンヒットと同等。これで10-8という採点にはなりませんが、印象的にはよくありません。
このあと、この印象を取り戻したい岡澤は、よりアグレッシブに。しかし近接戦闘ではイグレシアスは身体が強く、非常にガードも固い。
岡澤としては遠い距離から踏み込んでいく時にパンチを当てて、小さく打って離れたい。しかしイグレシアスも巧く、クリンチ際の攻防では適格性で岡澤に勝る。
どちらともとれないラウンドのように思いましたが、印象的に最初のダウンが効いていたのでしょうか。このラウンド、5者ともにイグレシアスに流れ、最終的なジャッジはスプリット(3-2)の判定でイグレシアスを支持。
ジャッジ3名が28-28、ジャッジ2名は29-27で岡澤を支持しましたが、ドロー採点の3名がイグレシアス優勢との判断。(ポイントドローの場合は、全体を通してどちらがより優勢だったかに印をしてレフェリーに渡す仕組みになっています。)
これは悔しい採点でした。
負けてはいませんでした。
あと一歩、タラレバを言うとドローとしたジャッジの一人でも岡澤が優勢と言ってくれてさえいれば、準々決勝に進んだのは岡澤でした。
まさに紙一重、この惜敗により、岡澤セオンの金メダルへの夢は絶たれました。
しかし、本当に素晴らしかった。開催国枠ではなく、自力で掴んだオリンピック。初戦では、前回敗北した相手に完勝のリベンジ。
そして2回戦では、金メダル候補の一角、アマチュアボクシングでは遠い存在のキューバの強豪相手に堂々と渡り合い、採点の集計方法さえ違えば勝っていたという試合。(要は5名の採点の集計は、2-0だったわけです。)
一生アマボクを宣言しているプロのアマチュアボクサー・岡澤セオンは、今大会が終われば、次に目指すはパリオリンピック。この大きな大きな経験を武器に、次こそ、表彰台の一番てっぺんに登ってくれると思います。
アマチュアボクシング、まだまだ未来は明るい。今後のセオンに大いなる期待を寄せて。
と、話は変わりますが、悲運のダウン判定。あれがなければ。。。と思わなくもないですが、それ以前にやっぱりヘッドギアあったほうが良いですよね。
成松大介の頭蓋骨の陥没についても、ヘッドギアさえあれば防げたと思います。
勿論バッティングによるカット等、連戦となる選手を守る意味であのヘッドギアの復活を望みます。
ちなみに、アマボクのヘッドギア、プロがスパーリングでつけているものと違ってかなり薄い上、防護できる範囲もかなり狭いです。(今の女子や少年がつけているアディダス製のものはウィニング製のものよりやや厚めに思いますが)逆に、アマチュアのグローブは昔のものよりもかなり効きづらくなっており、勿論ノックアウトは生まれにくい。
ギア有りでもギア無しでも、正直ノックアウトは生まれにくいので、怪我防止の意味を込めてヘッドギアを復活させてもらいたい。カットなんてした日には、私(先日ギアなしになってから初めてセコンドについた)なんて超慌てる自信があります。
AIBA、考え直してほしいですね。