朝起きて、Twitterを開くと驚きのニュース。
8月21日、ラスベガスでマニー・パッキャオと対戦予定だったエロール・スペンス ・ジュニアが左目を負傷。パッキャオ対スペンス戦は行われなくなり、パッキャオは代わりにWBAスーパー王者のヨルダニス・ウガスと対戦するとのこと。主催者側からの正式発表です。 pic.twitter.com/6dbJvA0ChD
— daisuke sugiura 杉浦大介 (@daisukesugiura) 2021年8月10日
楽しみにしていたマニー・パッキャオvsエロール・スペンスJrがキャンセル。
理由は、エロール・スペンスJrが左目の網膜裂孔を発症した、とのこと。スペンス本人はTwitter上で、3人の医者にみてもらった、と発言していますね。。。
パッキャオの対戦相手は当日別のボクサーと対戦予定だったヨルデニス・ウガス(キューバ)に置き換えられ、興行自体は挙行されるようです。
ちなみに、ウガスの対戦相手も怪我で離脱。。。(ほんとか?)
ともあれ、ウガスも強豪ボクサーであり、これはまたパッキャオにとって危険なマッチアップ。しかし、パッキャオの最終章、ともすれば最終戦の相手になるかもしれないというこのタイミングでは、スペンス戦の方が望まれていた、ということは言うまでもありません。
今回のブログでは、パッキャオvsウガスのWBAスーパー世界ウェルター級タイトルマッチのプレビューと、ついでに「網膜裂孔」という怪我についてです。
WBAスーパー世界ウェルター級タイトルマッチ
ヨルデニス・ウガス(キューバ)26勝(12KO)4敗
vs
マニー・パッキャオ(フィリピン)62勝(39KO)7敗2分
https://twitter.com/ESPNRingside/status/1425172052470730759より
一応、スーパー王座を保持するウガスを上に書きましたが、この一戦のAサイドは間違いなくマニー・パッキャオ。
パッキャオは現在WBAウェルター級の休養王者という扱いで、他にも試合をしていない王者がわんさかいる中、パッキャオだけがなぜか休養王者になってしまいました。
パッキャオのキャリアについては、ひとたび書いてしまえばハイライトですら多過ぎて数日間必要になってしまいますので省略。直近の試合は2019年7月21日、キース・サーマン(アメリカ)戦です。
パッキャオの何度目かのサプライズ、キース・サーマン戦。
当時30歳、そこまでアクティブに戦っているわけではありませんが、全盛期に差し掛かる年齢であり、更に無敗、当時ウェルター級最強とも言われた(日本贔屓の)キース・サーマン。
対してパッキャオは当時40歳、前戦でエイドリアン・ブローナー(アメリカ)を退けているものの、既に全盛期の力はなく、流石に「ワンタイム」サーマンはキツい、と思われていました。
しかし、ボクシング界史上最大のミスマッチと戦前言われたオスカー・デ・ラ・ホーヤ戦を始め、数々の奇跡を成し遂げてきた空前絶後のキャリアを持つこのボクサーは、なんと初回にサーマンからダウンを奪い、その後ペースを握られそうになるも持ち直し、結果スプリットの判定勝利。これがあるからパッキャオというボクサーは、偉大。
そして今回、ウェルター級最強ボクサーの1人であるエロール・スペンスJrとの試合が決まった時も、「普通に考えればスペンス、しかし相手はあのパッキャオだ」と、ボクシングファンだけでなくレジェンド王者たち、識者に至るまで、言わしめるのがまさにパッキャオ。もう、誰もパッキャオの行き先を知らないのです。
今のパッキャオは42歳、しかも前戦から2年が経過し、その仕上がりには疑問符もついてきます。なので、今のパッキャオは、誰にでも勝てる可能性があると同時に、誰にでも負ける可能性があるボクサーであるとも思います。
そしてスペンスの代役として登場する、ヨルデニス・ウガスだってもちろん強豪。
東京オリンピックでも猛威を振るったアマチュアボクシング大国、キューバでボクシングを始め、2008年の北京五輪で銅メダルを取り、2010年にアメリカに亡命してプロデビュー。
キューバ出身が故に世界初挑戦は意外と時間のかかった2019年、ショーン・ポーター(アメリカ)戦。このエンドレスファイター、ポーターに対してウガスは体の強さを生かしてプレス、ショーン・ポーターにアウトボクシングを選択させるという離れ技をやってのけます。
この試合は負けてしまいましたが、2020年、アベル・ラモス(アメリカ)を相手に王座決定戦に臨み、判定勝利。ようやく初戴冠を果たします。
もっと早くに世界王者になっていておかしくないボクサーで、フィジカルが強く、打ち合いにも強い。とはいえ、アクションは少なめで、プレスをかけつつ相手をじっくり見てカウンターをとるタイプのテクニシャン。
ただ、その出自からか、判定はかなり不利に出ることが多く、ラモス戦は完勝かと思いきやスプリット、ポーター戦でもやや不利な判定だったことは否めません。
おそらく、ウガスのフィジカルはおそらくパッキャオを上回ります。そしてパッキャオの勝ち筋は、やはりあのスピードと、そして強く、速い踏み込みを駆使した一瞬の攻防にあると思います。
ウガスのプレスがどんなに強かろうとも、パッキャオが警戒し過ぎて手が出ない、という展開は考えづらく、パッキャオの試合はいつもエキサイティング。おそらく多くのボクシングファンがそうであるように、私もここはパッキャオに明確な勝利をもぎ取ってもらい、有終の美を飾る(か、もしくはスペンス戦に進んでもらう)ことを願います。
ただ、もう一度言うとウガスは強い。34歳で世界王座を初戴冠、と言うのは正直あの実力を持ってすれば遅過ぎた、とも言えます。
仮にパッキャオが敗北したとしても、その出来、年齢を考えるとさして驚きはしません。
パッキャオの試合はいつもエキサイティングで、楽しみ。その一つは、「加齢による衰え」という当たり前のことを覆して、我々を驚かせてくれるであろうことと、その勇姿を、また、拝めることです。パッキャオがリングに立つ。相手がスペンスでなくても、たったこれだけで、よく考えればもう十分満足なのかもしれません。
と、気持ちを切り替えていきたいと思います。
がんばれ、パッキャオ!!
網膜裂孔について
(専門家でも何でもなくて、ただの自らの体験です。)
私は、以前にボクシングで網膜裂孔を発症、やや剥離した状態でのレーザー手術を経験しました。ちなみに、そこから20年、特に日常生活に支障はありません。(※日常生活=スパーリング等)
網膜裂孔は、眼球内部の網膜という部分に穴があく、という病気です。今回のようにボクシングをしていての網膜裂孔は、怪我の部類に入るでしょうが。
この網膜裂孔が進むと、この網膜が剥がれてしまう状態となり、ここに水が入ってしまうと失明してしまうようです。
私が網膜裂孔を発症した約20年前、お医者さんから説明を受けたことと、自身の体験から言いますと、この網膜裂孔は、起こりやすい人と起こりにくい人がいる、とのこと。
私は毛細血管が細部まで行き渡っておらず、もともと網膜の接着が弱かったらしいです。
お医者さんからは、「未熟児で生まれたか?」と聞かれましたが、私は生まれた時の体重は3,800gありました。
この網膜裂孔の穴の位置が、後ろの方(脳みそよりの位置)にあれば飛蚊症等の症状が出にくく、発見も遅れてしまうそうで、私の穴はかなり大きかったのですが全く気づかず。もう失明寸前ですよ、くらいの危険な状態ということで診察を受けたその日にすぐにレーザー手術。いきなり20万円以上の手術費を要求され、当時働き始めたばかり(初任給も出てない)くらいの私は親に泣きついたことを覚えています。
このレーザー手術というのは、網膜の穴が空いて、少し剥がれてしまった部分をレーザーで焼き付け、穴を塞ぐというもので、手術自体は目薬で網膜を開き、目に風が当たる程度のもので、割とすぐに終わりました。(私の場合は、経過観察ということで1日くらい病院で過ごしました。)
網膜剥離となると、溜まった水を抜いて、穴を塞ぐ、という風になるようなのですが、そうすると眼圧が変わって、ある程度の入院も必要になるとのことだったと思います。
スペンスの症状がどの程度かは分かりませんが、大きくブランクをつくることはない、と言って良いと思います。この網膜裂孔、網膜剥離については、頭部に打撃を受けるボクシングではよくある怪我。スペンスの場合、ともすれば交通事故とも関係しているかもしれません。
網膜裂孔ということであれば、現時点では、その怪我自体は大きなキャリア停滞という心配はいらないはずです。
ただ、この網膜裂孔から網膜剥離という怪我は、失明に至ってしまう重篤な怪我の一つでもありますので、もし、今後に不安が残るようであれば、引退という選択肢もなくはないのかもしれません。(昔、JBCのルールでは網膜裂孔は即引退でした。最初にそのルールを覆したボクサーは、辰吉丈一郎。)
ちなみに、私の場合は後遺症として、視力をどんなに矯正しても、0.7以上にならなくなってしまいました。そもそも私がこの網膜裂孔に気付いたのは、自覚症状がほとんどない状態で、コンタクトレンズを作りにいき、どんなに度数を上げても視えるようにならなかった、ということから、「おかしいぞ」となり、総合病院に行けと言われたのがきっかけです。
かなり後ろの方だったので。。。
いずれにしろ、スペンスの早期回復を願うばかりです。