信太のボクシングカフェ

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ボクシングが大好きです。大好きなボクシングをたくさんの人に見てもらいたくて、その楽しさを伝えていきたいと思います。

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【観戦記】偉大なるマニー・パッキャオ。ラストファイト?vsヨルデニス・ウガス。

2021年8月22日は、おそらく世界中の全てのボクシングファン、そしてボクサーたちにとっても特別な日になったんだと思います。

少し前に、「21世紀最強ボクサー10傑」なる格付けランキングを、アメリカのスポーツ専門メディアが発表したらしく、その中に井上尚弥が入っていた事に対してニュースになっていました。

その中に勿論、マニー・パッキャオというレジェンドも含まれていましたが、このパッキャオの実績は間違いなく、群を抜いています。

 

21世紀、今のところのベストボクサーは、パッキャオで間違いない、それも圧倒的に、と個人的には思います。

そのパッキャオが、2年ぶりに帰ってきたリング。本日はそのパッキャオが、WBAスーパー王者であるウガスと戦った、WBAスーパー世界ウェルター級タイトルマッチの観戦記です。

8/21(日本時間8/22)FOX PPV興行

アメリカでは75ドル。アンダーカードは、ボクシングファンにとってなかなか興味深いマッチアップながら、少し弱い。しかし、パッキャオという名前だけでチケットもPPVも売れるでしょうし、もともとパッキャオvsスペンスだったわけですから、PPVを早めに買って準備していた人たちもいるでしょうから、売上はきっと良い方でしょう。

日本ではWOWOW様様が生中継してくれるので、本当にありがたい。

アンダーカードも非常におもしろい試合でしたが、今回はさらりといきます。

 

マーク・マグサヨ(フィリピン)22勝(15KO)無敗

vs

フリオ・セハ(メキシコ)32勝(28KO)4敗1分

初回にマグサヨがあっという間にダウンを奪い、これは早く終わってしまうか、とも思いました。マグサヨがカタにハマった時の強さを発揮し、セハはやはり衰えがあるのか。。。?と感じましたが、ここからなんと手数でセハが盛り返します。

コツコツとボディを叩き続けたセハは、5Rに明らかにボディを効かせてマグサヨを後退させます。そしてセハはマグサヨの顔面に左フックを返してダウンを奪い返します。

わからなくなった勝負の行方、このボディを効かされまくったマグサヨはハートも強さを見せ、なんとかサバイブ。ガンガンボディを効かせられて、諦めなかった事はこのマグサヨの強さですね。

 

しかしこのままジリ貧、せめて判定まで粘るというサバイバルモードか。。。と思った10R、強いオーバーハンドを空振りさせて威嚇するマグサヨ。開始30秒で突然のラッシュ。

その後左フックから右ストレート!セハは倒れ、そのままレフェリーがストップ!

勝負をかけたマグサヨ、見事なノックアウトでした。

セハは掴みかけた勝利が手のひらからするりと抜け落ちてしまいましたね。

 

マグサヨは勿論穴の多いボクサーではありますが、この勝負強さ、諦めないハートの強さと勝負をかけられるハートの強さというのは非常に素晴らしいものがあります。

今回、ボディという欠点を思い切り露呈してしまいました。ゲイリー・ラッセルJrには届かないようにも思いますが、このボクサーはどんな劣勢にもめげず、そろそろWBCの王座を移動させてくれそうな気もしますね。

 

ビクター・オルティス(アメリカ)32勝(25KO)6敗3分

vs

ロバート・ゲレーロ(アメリカ)36勝(20KO)6敗1分

「ロートル」といっては失礼でしょうが、すでに峠を過ぎたボクサー同士のセミファイナルの一戦。

ともにサウスポー、頭から突っ込むオルティス、迎え撃つゲレーロ。

クリンチも非常に多い内容であり、若いボクサー同士のスピード感のあるボクシングではありませんが、ともにやるべきことがわかっているような戦いぶり。

 

難しいラウンド続きのこの一戦は、最後までどちらに転ぶか本当にわからない戦いでした。

ともすれば退屈にも感じるラウンドですが、ともにダメージを溜めながら、諦めない姿勢。

この二人のボクサーは、最終地点をどこに設定しているのか。どこをキャリアの終わりと定めるのか。

兎にも角にも、この勝負に勝つ、それだけを目標として手を出しあうふたりの老雄の姿には、ボクシングという競技の儚さすら見えます。

 

誰しもが、光り輝く栄光の中で、そのキャリアを終えられるわけではありません。それでも、衰えても尚、勝利に向かって考え、トレーニングを積んで仕上げ、勝利を目指してリングに上がるボクサーには、本当に尊敬を覚えます。

判定は3者ともにゲレーロ。これに勝てば世界タイトルに挑戦できるとか、より上を目指せるとか、そんな戦いではありません。世界戦線に「生き残った」という戦いですら、ありません。

傷つきながらも戦うボクサーを、戦い続ける限り応援するのがボクシングファンだ、と次に控えるメインを思いながらの観戦でした。

 

WBAスーパー世界ウェルター級タイトルマッチ

ヨルデニス・ウガス(キューバ)26勝(12KO)4敗

vs

マニー・パッキャオ(フィリピン)62勝(39KO)7敗2分

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この試合が、パッキャオの最後の試合になるかもしれない。

これまで私たちボクシングファンを楽しませてくれた稀代の英雄がラストファイトに臨みます。少なくとも、私は「ラストファイト」を覚悟して観ます。

そして相手は、当初、PFPファイターのひとりであるエロール・スペンスJr.でしたが、スペンスが網膜裂孔(のちに網膜剥離との情報も)を発症、試合はご破産に。

パッキャオの相手は、当日、別のボクサーと対戦予定だったヨルデニス・ウガスに変更。

 

ウガスはWBAスーパー世界ウェルター級王者であり、元オリンピアンであり、実力者。

パッキャオは下馬評で有利ということですが、パッキャオがウガスに負けても驚く事はありませんし、もし勝てば(勝ち方によりますが)大いに驚くであろう、という一戦です。

さて、ゴング。

当然サイズはウガスに分がありますが、それをいくつも覆してきたのがパッキャオ。パッキャオは速いジャブから、得意の左ストレートで踏み込んでは連打。この往年の動きは、決して悪くはありません。

 

ウガスはどっしりと構え、フィジカルを活かしたカウンター狙い。ウガスはかなり低く、受け止めるように構える分、身長差はあまり感じませんが、ジャブを見るとやはりリーチには差があり、非常に遠くまで届きます。

2R、序盤にウガスのジャブがヒット。パッキャオもジャブを飛ばすものの、やや距離が遠い。パッキャオはこの距離をゼロに出来る踏み込みを持っているはずですが、踏み込めません。

踏み込めないのは、ウガスのジャブによるものなのか、パッキャオの衰えによるものなのか。

 

パッキャオの動きはやはり少し緩慢に見えます。時折、鋭い踏み込みを見せるものの、中間距離での連打の回転は以前に比べても遅く感じます。

3R、ウガスは遠くから右オーバーハンドを放ちます。これはウガスのサンデーパンチの一つですが、中に入りたいパッキャオには非常に効果的。

パッキャオはチャンスと見るや素晴らしい連打を放ちますが、それ以外はウガスの固いガードに阻まれて見せ場がありません。

このウガスのガードの強固さは、フィジカルの強さによるものだと思いますが、パッキャオとしてはウガスの体勢を崩すような戦いをしなければ、いけないかもしれません。

 

4R、序盤はパッキャオのボディ攻撃が良い。その後ウガスがお返しにボディにストレートを伸ばすと、パッキャオはローブローをアピール。ベルトラインくらいに見えましたが。

このラウンドも随所にパッキャオらしさを出して、近い距離では回転力のある連打を見舞うパッキャオ。しかしウガスのガードはかなり固く、そのリターンも良い。

 

何よりもパッキャオの、中間距離からジャブで踏み込んで左ストレートで踏み込んで、更に右ストレートで踏み込む、という「打ちながら踏み込む」とその踏み込みのスピードを活かした攻撃が見られないのは残念でなりません。(伝わりますか?)

5R、中間距離ではウガスのジャブが素晴らしい。そしてそのジャブを打った後の左手の置き場は、ハイガードの位置で、ジャブの打ち終わりにパッキャオが攻め込んでくるのを防いでいます。これは短時間で練った、最も効果的なパッキャオ対策でしょう。

終盤はパッキャオが手数で攻め込み、近い距離になればそのパンチの回転力、パンチのアングルにパッキャオの方が優れているように思います。

 

6R、ウガスは少し、手数が少ないように思いますが、パッキャオのストレート連打に対してはしっかりとガード。まっすぐ入ってくる左ストレートに対して、オーソドックスが両腕を前に出すだけのガードで防ぐ、というのは実はかなり難しい。普通に考えれば押されてしまうからです。

しかしウガスのガードは本当に固く、パッキャオの左ストレートにもびくともしませんね。

7R、折り返して後半に入るこのラウンドは、ウガスが良いプレスをかけています。パッキャオもパッキャオらしいコンビネーションで攻め込みますが、やはりウガスのガードは固い。

 

ウガスがジャブを主体にワンツーで攻め込む場面をつくり、ウガスの印象の方が良いです。

8R、ウガスが細かいジャブから右オーバーハンド。このオーバーハンドはクリーンヒットこそないものの、ガードをしたパッキャオがバランスを崩すほどの威力。パッキャオもかなりこのパンチを警戒しているように見えます。

パッキャオは集中的に攻撃に移るものの、その後にリターンを出すウガスの方が見栄えの面で良い。最終盤には、ウガスが攻勢に転じ、パッキャオは防戦。

パッキャオ、ウガスともに顔面にはダメージが見えますね。

 

9R、パッキャオはこのラウンド、ジャブを軸に攻めます。不思議とこのラウンドのパッキャオの右ジャブは届いています。いきなりの左ストレートもヒット、近い距離の連打ではウガスをガードさせ、強いパンチではないですがいくつかのクリーンヒットを奪っています。

ウガスはそのパッキャオに対して、ガードして強いパンチを返すのみ、それをパッキャオはガードするもののやはり体勢は崩されてしまいます。

10R、ジリジリとプレスをかけるウガス、距離を詰めてボディを乱打。これはウガスが勝負に出たか、と思いますがその後パッキャオもやり返します。

 

終盤にもワンツーを巧打したウガス!パッキャオも打ち返します!

11R、ウガスは幾度か右をヒット。単発気味ながらパワー十分な右ストレートやオーバーハンドをパッキャオにコネクトし、またガードの上から叩いて体勢を崩します。

パッキャオは打ち返すもののかなり苦しい展開です。

ラストラウンド、やや強引にも思えるウガスの右。パッキャオはグローブを挟んではいるものの、そのパワーに身体を律しきれていません。このパンチが明暗を分けることになるのではないか、と思ってしまいます。

 

パッキャオはおそらくダメージを被り、そして疲労も蓄積しています。ウガスの右を警戒するあまり左ガードは高く掲げ、その分かつての勢いのある左ストレートは出づらい。

最終ラウンドのゴング、試合終了。

パッキャオがすぐさま両手を挙げて勝利をアピール、ともに顔にはダメージが見えますね。

ともかく、この一戦は終わりました。

判定結果は、もう皆さんご存知でしょうからあえて書きません。

 

ちなみに勝敗のポイントとしては、やはりウガスはフィジカルが強く、ガードが一切ずれなかったことでパッキャオの攻撃を無効化して(又はしているように)みせたことと、大きなパンチでパッキャオが幾度となく身体が泳ぎ、ガードはしているもののダメージを負ってしまった(ようにみえた)ことだと思います。

パッキャオは手数が多かったものの、そのパンチにあまりパワーは感じず、このあたりも往年のパックマンとは違うところでしたね。

まずは勝利したウガスを称えましょう。苦労人・ウガスは、個人的にはもっと早くにチャンピオンになっていておかしくないボクサーでした。

 

オリンピックで銅メダルを獲得し、アメリカに亡命、なかなか恵まれなかった苦労人は、35歳にして、ようやく日の目を見ました。

衰えたとはいえ、相手はパッキャオ。パッキャオの対戦相手、というだけで、多くの注目が集まるはずです。そして今後、「パッキャオに勝った」という冠がついたヨルデニス・ウガス、今後はもしかすると今までとは比べ物にならないほど、対戦希望が殺到するかもしれません。また、そうなることを願います。(やりにくいボクサーですが)

 

さて、マニー・パッキャオ。

アジアの生んだ、稀有なボクサーは、個人的にはモハメド・アリに次いでグレートだと思っています。

これはすでに前々からわかっていたことですが、全盛期に比べると(本当は比べることすら愚かなこと)、その踏み込みは浅く、目にも留まらぬ連打はなりを潜め、その的中率も低い。

前に出る、という事はある程度できていても、様々な角度から攻撃する術は失い、パッキャオらしいダイナミックな攻撃は見られませんでした。

年齢、42歳です。

 

それに輪をかけて、70戦以上のキャリアがあり、歴戦の疲れやダメージも計り知れません。

試合後のインタビューで、「あなたのような選手はもう2度と出ない」とインタビュワー。

まさにこれ、まさにこの通りです。

フロイド・メイウェザーJr.のようなボクサー、サウル・アルバレスのようなボクサー、井上尚弥のようなボクサーは、この後の歴史の中できっと出るでしょう。

 

しかし、このマニー・パッキャオのようなボクサーは、もう、きっと出ない。

マニー・パッキャオというボクサーと同じ時代を生きさせてくれて、本当に感謝しています。

「感動」なんていう言葉は生ぬるい、本当に素晴らしい戦いの数々を、本当にありがとうございました。

来年の大統領選はどうあれ、これを引き際にしてもらいたいものです。

 

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