日本時間9/5(日)、日中は駿河男児ジムの興行は本当に熱戦の嵐でした。
「オールメインイベント」というサブタイトルの興行は、そのマッチアップもさることながら内容においても圧巻のスーパーマッチだらけでしたね。
逆転KO、ホープに対して意地を見せたアンダードッグ、2度もダウンを奪われながらもその他のラウンドでポイントをしっかりピックアップしていったスーパーホープ。
これは生配信で見せてくれた事に本当に感謝ですが、現地観戦した方々は本当に幸運だったと思います。
ただの凱旋興行ではなく、本気のマッチアップを見せてくれた駿河男児ジム、今後も注目していきたいと思います。
さて、同日の日本時間で早朝、イギリスでも注目試合が行われていました。
今年2月、伏兵マウリシオ・ララ(メキシコ)にまさかのKO負けを喫してしまった元世界王者、ジョシュ・ウォーリントンのリベンジマッチ。この試合に負ければ、リングを去る事になるかもしれないというウォーリントンにとっては、文字通り進退をかけた一戦となります。
そしてアンダーカードには、ウェルター級のプロスペクト、コナー・ベン(イギリス)が登場。「ダークデストロイヤー」ナイジェル・ベンの遺伝子を持つ「デストロイヤー」コナー・ベンは、難敵・アドリアン・グラナドス(メキシコ)を迎えます。
今回のブログは、日本時間9/5早朝に行われた、マッチルーム興行の観戦記です。
9/4(日本時間9/5)イギリス
WBAコンチネンタル・ウェルター級タイトルマッチ
コナー・ベン(イギリス)18勝(12KO)無敗
vs
アドリアン・グラナドス(メキシコ)21勝(15KO)8敗3分1NC
7月末に行われる予定だった一戦は、ベンのコロナ陽性反応により延期。1ヶ月ほどの時を経て、ララvsウォーリントンのアンダーカードに組み込まれる事になりました。
コロナ罹患によるコンディションはどうなのか、という不安定要素を抱えつつ、迎えるグラナドスはなかなかの強豪。
エイドリアン・ブローナー、ショーン・ポーター、ダニー・ガルシア、ロバート・イースターJrと戦い、敗れているグラナドスですが、これまでの8敗のうち、KO負けはガルシア戦のみ、タフなファイターです。
ベンがこのグラナドスを倒せるのであれば、ウェルター級の世界戦線に名乗りを上げられる事になるでしょう。
コナー・ベン、その大器を示す事ができるか、試練の一戦です。
しかしこのリーズの会場、むちゃくちゃお客さん入っています。。これは本当に羨ましい。撮影の仕方も、日本のテレビ局は絶対に見習った方が良い。
さて、ゴング。
ベンは少し小さく見えますね。
ベンはグイグイとプレスをかけ、非常にアグレッシブなボクシングを展開します。これはいつものことですね。グラナドスは脚を使ってサークリングしながら、上体を柔らかくつかってディフェンス。
とにかくこのベンの勢いはすごい。内藤大助氏風に言うと、グラナドスの視点からみると「あ〜怖い怖い怖い怖い!」です。すぐにでも試合を終わらせる準備があるかのように、思い切り振ってきます。
2R、ベンの攻撃は、鋭く、フォロースルーが効いており、深い。歴戦の雄、グラナドスは非常に柔らかいディフェンスでそれをいなし、かわし、こちらもメキシカンらしくパンチを強振します。
ベンは倒す事を意識するあまり、オーバーペースになってしまわないかと心配になります。
3R、グラナドスはステップとダッキング、そしてスリッピングアウェーと素晴らしいディフェンスを随所に見せ、ベンはベンで距離感が素晴らしく、そしてダッキング、ウィービングと上身体も柔らか。
終盤、ベンが攻め込む場面を作りますが、両者とも、激しい手数を繰り出すもクリーンヒットは少なく、非常にハイレベルな攻防です。
4R、ベンはガンガン攻めるだけでなく、フェイントも使っています。やや運動量が落ちてきたグラナドスは、逆に近い距離まで詰めて休むというベテランらしい戦い方も見せています。
5R、遠い距離から攻める時のベンはややワンパターン。グラナドスの方が、その辺りの引き出しを持っているかもしれません。
しかし打ち合いとなるとベンのパワー、回転力はグラナドスを上回り、やはりグラナドスとしては離れたところで戦いたい。ベンのボディ、巻き込むようなフックが幾度となくグラナドスにヒットしますが、ヒットするたびにグラナドスは逆に前に出て応戦、ベンが強くパンチを打てない距離までくっついてしまう辺りはさすがです。
6R、しかしベンは本当に思い切りが良いですね。恐ろしいぐらい思い切り振っていくこのボクシングは、見ていて爽快そのものです。
しかし、実直すぎてわかりやすいのか、グラナドスが試合巧者なのか、その勢いほどあたってはいません。ただ、グラナドスもディフェンスに割く時間が長く、なかなか手が出せていません。
7Rもこの展開は変わらず、攻め入るベンとステップを駆使してごまかしながらディフェンシブに戦うグラナドス。ベンは力押しではこのボクサーに当たらない、もうひと工夫がほしいところですね。
8R、グラナドスはディフェンス第一で戦っています。ジャブを打っては顔をずらし、とにかくベンの追撃を受けないようにする戦い方を徹底。いくつかの被弾を許してはいますが、このディフェンス力は大したものです。
しかし、思えば最初からもしかするとサバイバルモード、つまりは「倒されないための戦い方」なだけなのかもしれません。
9R、やはりグラナドス、詰められないためにジャブを突き、このラウンドはサウスポーにスイッチする等とにかく倒されないようにする逃げの一手に見えます。
しかしベンも力押しでこのディフェンシブな相手を攻略することができず、ただただ時間だけが過ぎていくような感じ。とはいえ、ここまでディフェンシブな相手だと、攻める方は苦労刷るのも事実。
ところでラウンド終了後、度々両手を挙げてアピールするグラナドス、どういう心境なのか。
ラストラウンドに入ると、グラナドスもラッシュをかける等やる気をみせます。ベンをロープに詰める等しますが、それ以外の時間はとにかく逃げまくる。
打ち合いに応じないグラナドスにベンが吠え、最終ラウンドのゴングを聞きました。
判定は、100-90、99-91、97-93のユナニマスでコナー・ベン。
グラナドスは、消極的すぎました。アウェーを考えると、ことさら。
コナー・ベンの魅力は、あのワイルドなパンチと獰猛さ、ということで間違いはありませんが、逃げ回る相手を捕まえるには緻密さが足りない、と露呈するような結果になったとも言えますね。
身体能力は抜群、攻撃力もあればディフェンス能力、ディフェンス勘にも優れているものの、今後もあのようにはぐらかされる可能性は大いにあります。
力押しで何とかなる、という戦いはこれから先、少なくなっていくのかもしれません。
その実直過ぎるボクシング、これは同じ階級のプロスペクト、バージル・オルティスにも言える事ですが、そこを超えていかなければ、ウェルター級という超激戦区で世界王者になる、というのは難しいのかもしれません。
今回、圧倒できたものの、個人的には少し物足りなかったコナー・ベン。次もまだ、テストマッチでしょうが、次戦での上達が楽しみです。
マウリシオ・ララ(メキシコ)23勝(16KO)2敗
vs
ジョシュ・ウォーリントン(イギリス)30勝(7KO)1敗
メインイベントは、マウリシオ・ララとジョシュ・ウォーリントンのダイレクトリマッチ。前戦の敗北は、ウォーリントンにどのような6ヶ月を与えたのか。
番狂わせで勝利を挙げたララは、ここでウォーリントンを跳ね返す事で、絶対的な評価を得る事ができるはず。
どちらもモチベーションが高いであろう一戦は、ともに気合の入った良い表情をしています。
注目の一戦がゴング。
初回、ハイガードのファイティングポーズからまずジャブを飛ばしたのはウォーリントン。ララもしっかりとガードをあ上げ、突き刺すようなジャブを打っていきます。
ファーストヒットはウォーリントンの右ストレート!まだ身体がほぐれていないところでもらったララは、ほんの少し、ぐらついたようにも見えました。
その後もウォーリントンは上下のコンビネーションでララを攻め立て、後半になるとララもほぐれてきたか、ワイルドなオーバーハンドで応戦します。
パワーパンチはララの方が上回りますが、ウォーリントンのコンビネーションはテクニカル。
双方譲らない1Rは、クリーンヒットでややウォーリントンが上回った印象です。
2R、ウォーリントンはハイガードのままサイドへ回り込み、打ち合いには付き合わない意思表示。打っては離れ、ララの強打を警戒しています。
1分20秒ほどのところでバッティング、その後もまたバッティング。両方とも、ウォーリントンの頭の固い部分がララの左眼付近、ほぼ同じ場所を直撃し、2度目のバッティングで試合がやや中断します。
再開後、ララはアッパーを主体に攻め込み、ウォーリントンはステップとジャブ、コンビネーションで迎え撃ちます。
ウォーリントンの下がりながらの左フックは素晴らしい。
このラウンド終了後、アップで写ったララの左眼付近は流血しています。バッティングでしょうか。
かなり傷が深そうですが、開始のゴングが鳴ります。
開始ゴング後、ドクターがララの傷をチェック、ここで試合の中断が決定しました。。。。
正式な判定は、テクニカルドロー、負傷ドローです。
なんという結末。。。
バッティング直後は、傷がぱっくりと開いているというふうには見えませんでしたが、終わってみればララの左眼上の傷はかなり深い。これはストップが妥当でしょう。
これから白熱してくるであろう試合が、このように終わってしまうことは本当に残念。
これもボクシング、仕方ないですね。
これはやはり、3戦目が組まれてしかるべき、という事由でしょう。
ただ、ウォーリントンとしては勝つとしても、万が一負けるとしても、このリーズで試合ができることは大きかったような気がします。
ララの完治を待って、という事になると思うので、また半年ほど空いてしまうのでしょうか。
ウォーリントンはその間、誰か別のボクサーと戦うという選択肢はないような気がしますので、世界戦線への復帰は先の話になりそうですね。
ララについても同様、折角世界ランク上位につけ(IBFでは最上位の3位)、世界タイトルへのウェイティングサークルに入ったものの、停滞を余儀なくされてしまいました。
この結果は、両ボクサーにとってかなりキツイ結果になってしまいましたね。
マウリシオ・ララvsジョシュ・ウォーリントン第3戦、次は決着がついてもらいたいものです。