信太のボクシングカフェ

信太のボクシングカフェ

ボクシングが大好きです。大好きなボクシングをたくさんの人に見てもらいたくて、その楽しさを伝えていきたいと思います。

【観戦記】オスカル・バルデスvsロブソン・コンセイサン。ガブリエル・フローレスJrも。

※当ブログでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含みます。ご了承ください。

中谷潤人のアメリカでの初防衛戦、大快勝に湧いた9/11。

その続き。。。ですが、あまり良い気分にならない人も多いかもしれません。このブログを読んでくれている方は、きっと結果を知ってから読んでいると思うので、結果的にいうとボクシングはこんなので大丈夫なのか、と不安になる内容。

↓中谷潤人vsアンヘル・アコスタの観戦記はこちら

boxingcafe.hatenablog.com

 

 

スーパーフェザー級10回戦

ガブリエル・フローレスJr(アメリカ)20勝(7KO)無敗

vs

ルイス・アルベルト・ロペス・バルガス(メキシコ)22勝(12KO)2敗

アリゾナ州ツーソンでのトップランク興行、セミファイナルに登場するのはガブリエル・フローレスJr。トップランクのプロスペクト、フローレスはおそらくオスカル・バルデスへの挑戦をめがけ、2戦連続でバルデスのアンダーカードに登場。

現在21歳というフローレス、前戦では世界挑戦経験者、ジェイソン・バレス(プエルトリコ)に6RTKO勝利と評価を高めています。

果たして、ゴング。

初回からガンガンとパンチを振るうロペス!そのパンチは鋭く、早々に右オーバーハンドをヒット!初回からアップセットする気満々のロペスは、非常に良い攻撃を見せています。

 

後半に入るとフローレスはステップを踏み、波に乗りかけますがここでまたロペスの右オーバーハンドがヒット!初回からビッグラウンドをつくったロペス、これは「まさか」が起きる展開です。

2R、フローレスのディフェンススキル、カウンタースキル、そして素晴らしいコンビネーションはこれまで何度も見てきましたが、今回の試合は少し違います。

ロペスのプレスが強く、踏み込みとボラードがスピードに溢れているためか、フローレスはいつものようなステップワークを駆使できません。

いつもはもっと塩分の濃い試合をしながら、上下に打ち分けるテクニカルなコンビネーションを打つフローレスですが、ロペスはディフェンス勘が良い上に非常にタフ、そしてハードパンチを持っています。ややルーズなガードポジションですが、その分自由にパンチを放つロペスがクリーンヒットでも上回ります。

 

強引な詰め方、強気な攻めを続けるロペス、完全にフローレスのパンチは効かない、と高を括っているようにも思います。

4R、まだまだ強気なロペス。一度沈んでから右ボラードを叩き込むのは、作戦なのかナチュラルなのかわかりませんが、非常にハマっています。ここまで何度もその右ボラードがフローレスを捉えていますね。かなりダメージが重なってきているような感じがするフローレス。

5R、フローレスは明らかにダメージがあり、脚を使っているというよりも逃げ回っているようにしか見えないという展開。

 

ロペスは相変わらず反応もよく、ややスピードも鈍ってしまったフローレスのジャブをひょいひょいとかわし、近づいて殴るという作業。この上体の動きは柔らかく、素晴らしい。

6R、そんなロペスの上体の動きに惑わされ、距離感を見誤っていくつものパンチを浴びてしまうフローレス。フローレスはコンビネーションパンチャーで、一発逆転出来るパンチを持っておらず、かなり苦しい展開。

このラウンドはボディを効かされ、ロペスとしてはもう詰め作業に入っている感じです。

7R、試合を決めに行くロペス、ロープに詰まり、一発逆転を狙うフローレス。しかしフローレスもこの状態でも諦めず、打たれて幾度となく顔を跳ね上げられているものの倒れはしません。残り1分、反撃の力も残っていないほどグロッキーとなっているフローレスですが、何とかサバイブ。

8R、フローレスのパンチにビクともしないロペス、ロペスのパンチにふっ飛ばされるフローレス。見ている分には逆転の芽はほとんどなく、ロペスも強引に仕留めにはいかない、そしてフローレスはハートを見せて諦めない。

ここはセコンドかレフェリーが救ってあげるべきではないでしょうか。

ロペスが細かいパンチをまとめてさえいけば、ストップ勝ちもあり得る展開だと思いますが、ロペスはそういうパンチは打ちませんね。

 

9R、メキシカンの独特のリズム。。。とよく聞きますが、このロペスを見ているとよくわかります。どんな軌道を描いて飛んでくるかよくわからないパンチ、一寸遅れて出される強いパンチ。これがリズムを外すということで、ある種非常に参考になります。

終盤、ロペスは完全にフローレスを効かせ、ロペスはロープにもたれかかって完全にグロッギー。これはもう本当に止めてもらいたい。セコンドは何のためにいるのか、レフェリーは何のためにいるのか。

どんなに選手がやりたいと言ったとしても、ここは止めるべき。しかしセコンドのフローレス・シニアは、息子をリングに送り出します。謎です。

 

ここまでのダメージを負う必要はなかったフローレスは、おそらく冷静な判断を欠き、今後のボクシング人生を棒に振る可能性だってあります。これには賛同できません。かつてダニエル・デュボアが自ら膝をついたように、ここは棄権すべき。

最終ラウンドを戦い抜き、決して諦めない意地を見せたフローレスでしたが、10Rを通して目立ったのは無印のルイス・アルベルト・ロペスというボクサーの強さ。

まさに「ボクサー」という感じのボクシングをするフローレスですが、喧嘩のように戦うロペスとは相性もよくなかった上、初回で完全にペースを掌握されてしまいました。ここでトップランクの若きプロスペクト、ガブリエル・フローレスJrは初黒星。

ロペスは非常にアグレッシブなボクサー、ガードがルーズなところもエキサイティングな要素を含み、面白いボクサーですね。今後も楽しみです。

そしてフローレス、気持ちの強さとタフネスを見せてくれましたね。やや線の細いプロスペクト、というイメージでしたが、この初黒星を糧に大きく成長してもらいたいものです。

 

WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ

オスカル・バルデス(メキシコ)29勝(23KO)無敗

vs

ロブソン・コンセイサン(ブラジル)16勝(8KO)無敗

前戦、自身のベストバウトにも数えられるミゲル・ベルチェルト(メキシコ)との一戦を制して2階級制覇を果たしたオスカル・バルデス。

このベルチェルト戦から、応援者も増えたのではないかと思います。

しかし、ここ最近騒がれているのは、バルデスがVADAのテストで陽性となったこと。これで一気に世間の流れは変わり、ここ日本ではバルデスの応援者は一気に減ったような感じ。

 

コンセイサンはリオ五輪の金メダリスト、ボクシング競技においてはブラジル初の金メダリスト。

コンセイサンはスピーディなコンビネーションを持つものの、そのパワフルそうなパンチとは裏腹にパンチングパワーには秀でておらず、ややパワーレス。あまり拳を握っていない、という識者もいますね。

身長、リーチに勝るコンセイサンですが、ベルチェルトはコンセイサンよりもリーチがあったことも事実なので、この体格差をどれほどアドバンテージとして活用できるか。

ブーイングとともにコンセイサンが入場、落ち着いた、良い表情をしています。そしてバルデスは大きな声援とともに入場。

さて、いよいよゴングです。

 

コンセイサン、どっしりと構えますね。バルデスは踏み込んでのジャブをヒット、コンセイサンは手数に勝ります。

コンセイサンはジャブからの右ボディストレート、この押すようなパンチでバルデスを後退させます。コンセイサンのジャブはよく伸び、素早い左フックが良い。

2R、コンセイサン、しっかりとした構えからストレートで押していきます。バルデスは左フックを強振しますが、やや単発気味か。

コンセイサンのストレートでバルデスはガードさせられ、押されて飛ばされてしまうので見栄えはあまり良くありませんね。

WOWOW解説者、西岡氏が初回に「世界タイトルマッチになるとボクサーは3〜4割増し」と言っていましたが、まさにそう。今回のコンセイサンは今まで見たどのコンセイサンよりも素晴らしい出来に見えます。特にしっかりとした踏み込みで、パンチに力が籠もっており、本当に5割増しくらいに見えます。

3R、コンセイサンがやや脚を使い始めたか、という矢先、バルデスの右フックがヒット。ここは詰めたバルデスですが、コンセイサンも押し返します。コンセイサンは脚を使うよりもしっかりと構えた方が良さそうです。

バルデスが近寄ろうとするところでコンセイサンはジャブやアッパー、コンビネーションでバルデスを牽制。バルデスはなかなか強いパンチを打てる距離に近づけません。

 

4R、バルデスがガードを固めて距離を詰めます。しかし、そこに行き着くまでに手が出ないのがよくない。そしてそれを見たコンセイサンは、ジャブで牽制、大きなアッパー。上体を前に倒しながら打つジャブは、かなり遠い。ベルチェルトの方がリーチはあるはずですが、おそらくコンセイサンの方が遠く、手数の少ないバルデスは全然近づけていないというイメージ。

バルデスはガードしながら中に入るのはストレート、アッパーに阻まれて難しい。もっとヘッドムーブを使うべきだと思います。

どうでもいいことですが、10/18(月)のエキサイトマッチ放送情報として、サニー・エドワーズvsジェイソン・ママの情報が。この試合は延期となり、負傷ということなのでちょっと1ヶ月以内だと難しいのでは。。。(いらぬ心配)

 

5R、コンセイサンは、これまでの押すようなストレートから、リラックスした状態からのスピード重視のコンビネーションに変えてきました。これが本来のスタイルとも言えますが、バルデスとの距離感を把握した今となってはこちらの方が良さそう。コンセイサンとしてもこちらの方が疲れないのだと思います。

後半、コンセイサンの見事な左フックカウンター、これはいつもの「握っていない」スピード重視の左フック、バルデスもガードしておりダメージはないかもしれませんがポイント的には非常に効果的。

6R、強いプレスをかけるバルデス!コンセイサンは左右のステップを使ってアウトボックスの展開。バルデスの近い距離でのフックはガードの上からでも威力を感じます。しかしコンセイサンのガードも固い。

最終盤、バルデスの右ボラードが浅くヒット、コンセイサンはスリッピングアウェーでいなしますが、このラウンドはじめて、バルデスが明確にポイントをピックアップできた、と言っても良いと思います。

 

f:id:boxingcafe:20210912205351j:plain

Oscar Valdez vs. Robson Conceicao - live results ⋆ Boxing News 24

7R、序盤からコンセイサンのジャブがよく出ます。しかしコンセイサンはやや疲れてきたのか、下がりながらの戦い。

バルデスも疲労が見え、踏み込みにやや勢いを欠くか。

8R、プレスをかけていくのはバルデスですが、その追い脚にはいつもの勢いはありません。コンセイサンは脚を使いながら、スピーディなパンチを繰り出しますが、その威力はやや乏しいようにも思います。

ただ、手数は圧倒的にコンセイサンであり、バルデスの出てきたところに当てる事も。終盤はバルデスの左ボディがヒット。

 

9R、序盤からやや近い距離。打撃戦からスタートも、ともにクリーンヒットは少ないです。コンセイサンは危ない距離になると、すっと左肩を寄せて距離を完全に潰します。

近い距離でコンセイサンがバルデスの後頭部をポンポン叩き、突然の減点!注意も与えない減点、かなり厳しいですね。

その後のコンセイサン、手数を増やしていくつかのクリーンヒットを奪います。バルデスはコンセイサンを追い続けますが、コンセイサンの脚のスピードと上体の動きに躱され、当たりません。

10R、コンセイサンは自分から攻めると良いコンビネーションが出ますが、かなりの疲労が見えます。バルデスは疲れていても力強いパンチが出せていますが、如何せん届きません。

これはどっちもどっちの展開になっていますが、コンセイサンはジャブを連打する時、脚ごと角度を変えて出せるという点が良く、それで押されてしまうバルデスはよくない。

 

ただ、バルデスは力強いパンチを打ち込めますが、コンセイサンのガードは固く、クリーンヒットが奪えません。

11R、やっぱりコンセイサンはジャブが良いですね。上体も使った長いジャブ、脚をつかってポジショニングを変えての連続ジャブ、素晴らしいです。ただ右ストレートを打つと身体が流れてしまうあたりは疲労でしょうか。ここに左フックを合わせられるはずですが、バルデスも疲労とダメージからベルチェルトを倒したようなカウンターを打てずにいます。

このラウンドが終了したところで、コンセイサンは早くもガッツポーズ。しかし忘れてはいけない、ここはメキシコ国境にほど近いアリゾナ州ツーソン、メキシコ移民が多く住む場所、つまりアウェーです。

ラストラウンド。

 

バルデスは攻めるしかありません。コンセイサンはとにかくジャブ、軽いストレートで対抗しています。近づけばクリンチ、このラウンドを捨てて完全に終了ゴング待ちのパターンですが、この試合ははっきり言って本当にわかりません。

そして終了のゴングが鳴ると、コンセイサンが勝利をアピール。

個人的には、僅差でコンセイサンか、ドローに思うくらいの内容(減点があったので、現実的にはドローはあり得ませんが)。ほぼ差はないように思いました。前半は確実にコンセイサンでしょうが、その後はどちらとも言えません。

発表された採点の、一番最初の117-110。

皆さんと同様に、私もここで確信してしまいました。

ビバ・メヒコ判定だと。

 

残りは115-112、3-0のユナニマス・デシジョンでオスカル・バルデスの勝利。

どちらが勝つにせよ、117-110という採点はありえないように思います。試合終了後の顔のダメージを見れば、バルデスの方がダメージがありますが、結果、それだけで判定結果が測れるわけでもありません。

ホームのバルデスに優位な判定が出た、という事は事実としてあると思うのですが、それを踏まえれば115-112はかろうじて許容範囲、というようにも思います。かろうじて、ギリギリです。これが116-111となると許容範囲を超えるくらい。(1〜5Rをコンセイサン、それ以降がバルデス、と考えると)

コンセイサンは、余裕を持ちすぎた、というよりも、後半に攻めきるスタミナを持っていませんでした。この判定結果に対して、コンセイサンはどのようにか言っているのでしょうか?

 

ともあれ、バルデスの動きはあまり良くなく、コンセイサンの動きはこれまでの5割増しで良かった。バルデスは試合直前のゴタゴタ劇が堪えた、とも思いますし、コンセイサンはこの大チャンスにかける思いから、これまで以上に仕上げてきました。

バルデスのVADAテスト陽性→疑惑の判定というコンボは、非常に残念ではあります。ただ、コンセイサンにしても挑戦者として、あの接戦の中で最後まで攻めきれなかった事については、疑問が残ります。

ということでなんだか煮え切らない思いを抱えつつ、大好きなスーパーフェザー級という階級は次の戦いへ向かっていきます。そんなわけで、私はもう一回中谷vsアコスタを見てリセットします。

boxingcafe.hatenablog.com

 

 

プライバシーポリシー お問い合わせ