国内戦が、アツい。
コロナショックにより外国人選手を招聘できなくなったため、国内のボクサーたちが雌雄を決するサバイバルマッチが次々と行われています。
個人的には、「最高だ!」と諸手を挙げて賛同すべきかどうなのかはわかりません。
もちろん最高だと思えるマッチアップは多いですが、本来であればキャリアを積むための戦いをすべきところで相手が見つからずキャリアを停滞させるボクサー、そしてキャリアップを図りたいタイミングで相手が見つけられないボクサー、等々がいることは考えものです。
とはいえ、概ね素晴らしいマッチアップは我々ファンにとっては非常に喜ばしいことであり、厳しい状況の中で命を懸けてリングに上がり、我々に感動を届けてくれるボクサーたちには感謝しかありません。
願わくば、ひとつやふたつの敗北でそのキャリアを閉じず、まだまだ戦う姿を我々に見せてもらいたいものです。
さて、本日のブログでは10/14(木)に迫ったダイヤモンドグローブをプレビューです。
58.0kg契約8回戦
佐川遼(三迫)10勝(5KO)2敗
vs
小坂烈(サンライズ)9勝(4KO)6敗
もともとこの試合は、2021年8月に予定されていましたが、佐川の急病、そして体調不良により延期に。日付を10/14に変更されて行われることになりました。
メインイベントは前日本フェザー級王者、佐川の再起戦。再起戦というと楽な相手を選びがちで、本来であれば外国人選手を招聘し、明確な勝利を得ることで自信を取り戻す、というのが筋ではあります。
しかし、今回佐川が再起戦に選んだのは、一度敗北を喫している小坂烈。
このあたりもコロナの影響が見て取れるマッチアップですね。
2019年9月に阿部麗也(KG大和)との王座決定戦を制して戴冠した佐川は、日野僚(川崎新田)、竹本雄利(クラトキ)を迎えて2度の防衛。
3度目の防衛戦で丸田陽七太(森岡)に7RTKOで敗れ、タイトルを失ってしまいました。
↓観戦記
阿部、日野、竹本とのサウスポー3連戦から、長身オーソドックスの丸田を相手にし、距離を完全に支配されてしまった感がありましたが、何よりこの日の丸田は出色の出来、本当に見事なボクシングをして見せました。
丸田は、チャンスがあればすぐさま世界へ乗り込もうとしており、もし佐川が丸田にリベンジを希望しているなら、あまり時間はないのかもしれません。
なので、ここは絶対に落とせない一戦。
しかし、相手の小坂は2017年、日本ユース・フェザー級トーナメントで佐川に2RTKO勝利しているボクサー、決して簡単な相手ではありません。
この小坂は直近の2戦で連敗しており、もう後がない状況ではあります。
しかし、この元王者佐川にここで勝てば、日本ランクはおろかOPBFランク、そして下位ながらWBCの世界ランキングも手に入るかもしれない、という一発逆転の一戦。
2017年5月、ふたりが最初に戦った時から、積み上げた実績は佐川のほうが圧倒的に上。それでもなお、この一戦に勝てば、佐川が積み上げてきたものを一気に奪い取ることができる、と考えれば、モチベーションは高いでしょう。
佐川が一度負けているこの小坂を選んだ背景は、おそらくリベンジが目的。
ともに負けられない一戦、当然予想は佐川優位でしょう。しかしポイントで先行されたとしても、小坂は前戦のようになりふり構わず前に出れば、チャンスはあるのかもしれません。
日本スーパーフェザー級挑戦者決定戦
中川兼玄(三迫)10勝(5KO)6敗
vs
長谷川慎之介(ワールドスポーツ)13勝(9KO)2敗1分
日本1位、中川兼玄は、2018年、B級トーナメントの決勝で敗れた時には、負け越しのボクサーでした。
しかしそこから5連勝、そのすべてが格上とのチャレンジマッチだったということを考えると、このボクサーのポテンシャルたるや目を見張るものがあります。
この、三迫ジム大躍進の期間とも重なる中川の大躍進。まさに三迫ジムそのものと言ってもよいボクサーでしょう。
大手ジムらしく、周りのパートナーにはもちろん恵まれているのでしょうが、大所帯の中で自分を見失わない芯の強さを感じるボクサーです。それは、競ったときの勝負強さ、接戦をものにする「実力」に反映されているのだと思います。
そんなミラクルマン、中川は前戦で元日本フェザー級王者、源大輝(ワタナベ)を破ったことでトップコンテンダーへと上り詰めました。
ハードパンチャー、源の強打に臆することなく強いパンチを打ち返し、ペースを握り、奪われそうになったところを踏ん張って盛り返し、最終的には完勝という内容。強い相手に対して強さを見せた姿は、格上相手の5連勝がフロックではないことのまぎれもない姿でした。
↓観戦記
この中川のハートの強さ、フィジカルの強さは申し分なく、このボクサーを打ち負かすのはかなり困難。
しかし、日本2位の長谷川慎之介もハートの強い、素晴らしいボクサーです。
2016年、青木ジムからプロデビューした長谷川は、新人王戦を終えて1勝2敗1分という戦績。しかしそこからなんと破竹の12連勝を記録、その間に青木ジム閉鎖という憂き目にもあいながらも、この位置まで上がってきました。
自身を「モスキート級並みのパンチ力」(今でいうアマのピン級、45kg以下)と揶揄し、モスキートレフトと呼ぶ左ストレート。
しかしその左はアングルが多彩であり、時にワイルドに放つモスキートレフトは十分なパワーパンチ。13勝中9KOKO率も高く、とりわけ前戦のダウンを奪われてからの逆転TKO勝利は素晴らしかったです。
↓観戦記
こちらも非常に気持ちの強いボクサー、気持ちと気持ちのぶつかり合い、非常にアツい試合になりそうですね。
そして勝ったほうが日本スーパーフェザー級王者、坂晃典(仲里)に来年のチャンピオンカーニバルで挑む、という構図も素晴らしい。これまたアツい試合になりそうです。
この挑戦者決定戦、中川vs長谷川は、甲乙つけがたい接戦が予想される一戦ではあるものの、フィジカルが強く、がっちりとしたガードを持つ中川がほんの少し優勢か、と思います。
長谷川はガード面がやや雑になる場面があり、手数の多い中川のパンチのすべてを無効かできるか、というとおそらく難しい。
乱打戦の展開、我慢比べとなったときには中川が上回りそう、という印象です。
しかし、がっちりしたガードを持つ中川に対して、長谷川がその間隙を縫って多彩なアングルから左を決められたならわかりません。先にダメージを被り、疲弊してしまうのは中川なのかもしれません。
個人的に、どちらを応援するか迷う一戦でもありますが、今回は長谷川応援。是非とも勝って、日本王座挑戦につなげてもらいたいものです。
スーパーフェザー級8回戦
保坂剛(三迫)5勝(3KO)無敗
vs
中井龍(角海老宝石)2勝(1KO)1敗1分
セミセミにも好カード。このふたりがキャリア初期のここでぶつかる、というのがもったいないとも思いますが、これもコロナならではのマッチアップかもしれません。
フィリピンのALAジムから戻った逆輸入ボクサー、保坂は、2021年4月、福井寛太(寝屋川石田)を相手にA級で日本デビュー。
将来を嘱望される三迫ジム期待のホープです。
そして対して中井は、前戦でスーパーホープ、宇津木秀(ワタナベ)からダウンを奪う善戦を見せたボクサーで、あの宇津木を相手にあわや。。。という期待を抱かせたボクサーです。
フィジカルモンスターともいえる中井は、前戦、宇津木戦でサイドへのステップワークを使う等、ボクシングの幅を見せた戦い方をしました。敗れはしたものの、強さを見せつけたボクサーで、キャリアは浅いながらも個人的には期待大のボクサー。
この中井を相手に、アグレッシブなボクサーである保坂は、距離をとってのボクシングではなく前に出てのボクシングを選択するはずです。
打ち合い、もしくは近い距離でのステップワークを駆使したパンチの交換が予想される、好ファイトとなるはずの一戦。
これは勝敗を含め大変に興味深いですね。
そしてこのセミセミの前(第二試合)には、68.5kg契約ウェイトで磯谷大心(輪島スポーツ)がデビュー戦に臨みます。対戦相手は同じくデビュー、羽賀彬光(DANGAN越谷)。
この磯谷は、レジェンド、輪島功一名誉会長の孫。そういう世代なんですね。。。
お父さんが輪島氏の長女と結婚した元日本ランカー磯谷和広氏、父子鷹で世界を目指すそうです。幼いころからボクシングに慣れ親しんだというわけではないようですが、輪島功一氏がボクシングを始めたのが25歳と考えるとまだ早いスタート。
こういう場合は2世ボクサーとは言わないでしょうが、3世ボクサーと呼ぶのでしょうか?
放送・配信は?
このダイヤモンドグローブは、フジテレビで1時間枠で放送予定です。おそらく10/16(土)か10/17(日)の深夜、関東ローカルです。
そしておそらく10/18(月)15:00以降、FODまたはTVerで無料配信されると思います。
しかし1時間番組なので、メイン+数試合のハイライト。せっかく撮影しているなら、配信は全試合フルラウンド見せてもらいたいものですね。