いやあ、本当に素晴らしい一戦でした。
ヘビー級タイトルマッチという全世界が注目される中で、ボクシングの素晴らしさ、おもしろさというものを存分に見せつけてくれるような試合。
FOTY(Fight Of The Year)、年間最高試合候補となっても差し支えない試合となったこのフューリーvsワイルダーの第3戦。
今回のブログでは、この試合の観戦記です。
WBC世界ヘビー級タイトルマッチ
タイソン・フューリー(イギリス)30勝(21KO)無敗1分
vs
デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)42勝(41KO)1敗1分
第3戦。
初戦が名勝負となり、2戦目で勝敗が逆転して1勝1敗となった場合、決着戦として、「ラバーマッチ」が行われることが多いです。
しかし、今回は初戦2018年12月1日に引き分け、第二戦は2020年2月22日にフューリーが7RTKO勝利、からのラバーマッチ。
勿論勝ち方にはよりますが、フューリーが勝てば完全決着、もしワイルダーが勝ったならともすれば4戦目が組まれそうな大注目のヘビー級戦。
さすがに4戦はやりすぎだろう。。。とも思いますが、個人的希望はワイルダーに「ブロンズ・ボマー」炸裂でのKO勝ちを期待してしまいます。
やっぱりワンパンチKOの代名詞ともいえるデオンテイ・ワイルダー、そのパンチには拳闘ロマンを感じずにはいませんね。
前戦、ワイルダーはTKO負けのあと、「入場の衣装が重すぎて、脚が動かなかった」「陣営の棄権が早すぎた」「フューリーがグローブになにかを仕込んでいた」等々、醜い言い訳を並べ立て、評価を落としてしまいました。
そしていよいよ3戦目、どのような結果が待っているのでしょうか。
3戦目、277lbs(約125kg)で臨むフューリー、238lbs(108kg)で臨むワイルダー。
前戦、身体の重さを活かして重厚な攻撃を見せたフューリーは更に増量、身体負けしてしまったワイルダーも増量。
両者ともに過去最高体重で臨んだこのWBC世界ヘビー級タイトルマッチ、大注目です。
ところでWOWOWの中継が、セミファイナルからなのは非常に残念。このPPVファイトの初戦に登場した、ジャレット・アンダーソン(アメリカ)は見たかった。
両国の国家斉唱が終わっても、二人のボクサーはまだ入場しません。ワイルダーのグロービング時にトラブルが発生している、とのこと。
もしかすると、フューリー陣営がワイルダー陣営にイチャモンをつけているのかもしれませんね。まあ、なんともわかりませんが。
そして待ちに待った入場。
ワイルダーは、豪華なリングコスチュームですが軽そうですし、目もチカチカするタイプではありません。黒✗赤で決め込んだリングコスチュームはかっこいい。マスクをかぶっている分、表情はわかりません。
そしてフューリー、古代ローマの戦士のような出で立ちで入場。う〜ん、これもかっこいい。
途中でベースボールキャップにチェンジしたフューリー、非常にリラックスしていますね。
「失うものはない」と語ったワイルダーですが、負ければ色々なものを失ってしまうかもしれません。元王者としての尊厳、そしてボクサーとしての矜持、もしかすると再起不能になってしまうかもしれません。
対してフューリーはここで敗北を喫したとしても、次(4戦目)があるとも捉えられます。
両者の覚悟が、状況が、この試合にもたらす影響やいかに。あと1時間もせずに、その現実が突きつけられます。
いよいよ、ゴング!!!
初回、ワイルダーの素晴らしいボディジャブからスタート!遠い距離からボディへのジャブを放ち、右ストレートもボディに返します。
今回のワイルダーは非常にハイペース。顔面を動かすディフェンスの巧いフューリーに対しての、執拗なボディジャブ、ボディストレートは非常に有効。
フューリーはワンツーを放ち、その勢いのままクリンチ。このあたりはやはり上手く、打ち終わりの追撃を避ける狙いでしょう。
解説の亀海氏、「ワイルダーにスピードが感じられない。力み過ぎかもしれない」とのことですが、これはそんな風に感じますね。
ワイルダーの右ボディストレートはフューリーの左脇腹にあたっており、ここはあまりダメージを与えられる箇所ではありません。しかし迫力は十分。
ボディへの攻撃でポイントをピックアップできたと思われるワイルダーですが、このラウンド終盤、フューリーは速いワンツーで対抗。
2R、フューリーがややプレスをかけ、ワイルダーがサークリングというスタート。ワイルダーは相変わらずジャブ、ワンツー主体ですが、この回は左ボディもヒット。
レフェリー、巨人ふたりに挟まれて大変そうです。クリンチのふたりを分けるにも、かなりのパワーを必要としそうですね。
ともあれ、ワイルダーは非常によくジャブを打ち、長い距離から右ストレートを使ってきます。フューリーは近い距離では有利、クリンチでワイルダーの体力を削り、内からアッパーを打ち、外からボディフック。
ワイルダーはのけぞってしまうのはあまり良くないですね。
3R、フューリーのステップが軽やかになってきました。リズムを取り始めたフューリーは、明らかにワイルダーの打ち終わりを狙います。
ハーフタイム頃、力強く振っていくワイルダーの右がヒット、フューリーはしっかりとガード、もしくはパンチを流しています。
残り1分過ぎ、フューリーの右オーバーハンドがヒット!そこに右アッパーをフォローして、ワイルダーはダウン!!!
立ち上がったワイルダーですが、足元はかなり怪しい。フューリーは詰めますが、ワイルダーはクリンチに逃げ、辛くもこのラウンドをサバイブ。
4R、ワイルダーは、ダメージから回復していません。フューリーは身体ごと押し込んで、接近戦をしかけます。
かなり苦しいワイルダー、下半身には力が入っておらず、前進するための足使いも足がついていきません。
早くも絶対絶命か。。。と思った瞬間、ワイルダーの真正面に立ってしまったフューリーに、ワイルダーの右ストレートがクリーンヒット!!!一気に元気になったワイルダーが攻め込み、フューリーがダウン!!!
のそりと立ち上がったフューリーに対してワイルダーはチャージ!やや大振りながらフォロースルーを効かせたパンチを打ち込み、フューリーが2度目のダウン!!!
フューリーが立ち上がったところでゴング!
なんという、素晴らしい試合でしょうか。絶体絶命かと思われたワイルダー、値千金のダウンを奪いました。
しかし、初戦で我々は知っています、フューリーの驚くべき回復力を。
5R、フューリーは1分の休憩であっという間に回復しているように思います。逆に、ワイルダーは疲労なのか、それとも3Rのダメージなのか、足元は相変わらずふらついているように見えます。
フューリーは身体で押し込んでいき、スペースを作っては右ボディアッパー、相手に体重を預けてワイルダーにさらなる消耗を与えていきます。
しかしワイルダーも足元はふらつきながらも右をかすらせ、その右でフューリーは後退。
後半には右と右の相打ちのタイミングで両者のパンチがミス、とんでもないタイミングのこの右と右の打ち合いは、一発で試合が終わってしまう可能性を秘めた非常に危険なパンチ。
6R、フューリーがリズムを取りつつプレス。このリズムを取りながら、というのがフューリーの特徴で、そのスピードを速めたりすることでフェイントとなり、フューリーにとっては疲れづらいリズムになるのかもしれません。
フューリーは速いワンツーを主体で攻め込み、攻め込んだ後は身体で押し込んでいき、ワイルダーの追撃を封じます。体ごと預けることでワイルダーの消耗を誘い、ワイルダーは押されて下がってしまいます。
ワイルダーのパンチもあたってはいるものの、やはり身体の強さでフューリーが上。
幾度となくワイルダーをのけぞらせ、クリンチでは上から覆いかぶさればワイルダーは下半身に力が入らないのか、膝をついてしまいます。
ワイルダーは苦しい。。。しかし、ワイルダーが何か起こしてくれるのでは、という思いはまだ消えません。
7R、ワイルダーには回復を図ってほしいですが、サークリングするワイルダーに対してフューリーが距離を詰めてくる方が速い。
更に近距離ではフューリーが有利、ワイルダーはこのクリンチ終わりに右を当てたいところ。
ワイルダーはもう、身体に力が入っておらず、自らが踏み込んだパンチでもバランスを崩してしまいます。
終盤もフューリーの左フックで足が揃ってしまい、ダウン寸前!!とはいえフューリーの疲労も相当なものなのか、ラッシュをかけることはできません。
ラウンド終了後、右手をアピールしたワイルダー。果たして、意識はしっかりてしているのでしょうか。。。?
8R、フューリーは、ダメージからの回復力だけではなく、疲労からの回復も非常に早い。ふたりが同じラウンドを戦っているとは思えないほど、疲労具合に大きな差が生まれています。
ずっとグラグラしているワイルダー、いくつものフューリーのクリーンヒットを許すものの、まさしく本能で打ち返していきます。
しかし、ダメージを鑑みるとかなり危険にも見えます。レフェリーはまだこのふたりを戦わせるのか?
しかし、ワイルダーはもしかすると、ここから逆転KOというものを見せてくれるのかもしれない、という期待もあります。レフェリーとしても非常に難しい試合なのでしょう。
9R、開始早々にドクターがワイルダーをチェック、しかし続行。フラフラと動くワイルダー、フューリーのジャブに反応もできず、軽いジャブでも顎を跳ね上げられます。
頑張れ、ワイルダー!!
1分過ぎ、ワイルダーの右がかする!これですら希望を抱かせるワイルダーのパンチ!
中盤、フューリーのコンビネーション、クリンチ際でのボディアッパー等がワイルダーを襲いますが、少し距離が空けば打ち返すワイルダー!
ラウンド終盤、コーナーに詰められたワイルダーは、ここで体を入れ替えて右!この疲労困憊の中、ほんの少しの希望は、ワイルダーが「万が一」のパンチを持っているかもしれないことです。
10R、なんでもないジャブで足がふらつくワイルダー、しかし下がらせられてもワンツーを打ち返します。ワイルダーとは、こんなにも根性があるボクサーだったのか、と認識を改めなければなりません。
パンチには、力がこもっていません。それでも力いっぱい振り回すパンチには、感動を覚えます。
しかし現実は無慈悲、ワイルダーのミスブローにあわせてフューリーの強烈な右フックがヒット!!!このなぎ倒すようなパンチで、ワイルダーは踏ん張ることすらできず、身体ごともっていかれるダウン!!!
これまでを考えるとこれで終わってもおかしくない一発、しかしワイルダーは立ちます!レフェリーも止めません!続行です!!しかし、残りは1分もあります。
終盤、ワイルダーの右アッパー、左フックがヒットしますが、フューリーの右アッパーで顔を跳ね上げられます。それぞれクリーンヒットを奪い合い、このラウンドは終了!
11R、このラウンドも憎らしいほどクレバーなフューリーはステップから。鋭いジャブを飛ばし、左で押さえつけて右ストレート!
その後も右アッパーで幾度もワイルダーの顎を跳ね上げ、最後は右フックをヒットしてワイルダーをダウンさせ、これによりレフェリーがストップ!!
タイソン・フューリー、11RTKO勝利!
いや〜、もうなんとも、形容しがたい素晴らしい試合でした。
終わってみればタイソン・フューリーが順当な勝利を挙げた、とも言えますが、この名勝負はタイソン・フューリー、デオンテイ・ワイルダーという素晴らしい才能に恵まれたボクサーふたりが織りなした、芸術とも言える一戦だったと思います。
フューリーの素晴らしさは、その体格という才能と、リズミカルなステップワーク、スタミナと回復力、そしてボクシングIQ。
ワイルダーは、一発のパンチングパワーと、そして今回見せたのはとてつもない根性、諦めない意思の強さ、精神力。
それぞれが持ち味を出した1戦目、フューリーの良いところしか見えなかった2戦目、そして両者の2番底が見えた、ともいえる3戦目。
ラバーマッチというと、基本的には尻すぼみで内容が盛り上がりに欠け、結局初戦が一番良かったね、というのが通説だと思いますが、このフューリーvsワイルダーについては3戦目が初戦を超えた、とも言える内容ではないでしょうか。
とにかくこの素晴らしい試合には感動しました。
そしてこの素晴らしい試合の最も大きな要因は、「ワイルダーがいつか逆転の一発を入れるのではないか」という思いが、頭の片隅にずっとあった11Rだったからなのではないでしょうか。
ワイルダーは、負けて尚、強し。決して評価を下げるような内容ではなく、逆に、あのハートの強さというものは、ワイルダーの強さを再認識させられる結果になったかもしれません。結果的には完全決着、それも3Rにダウンを奪われてからのワイルダーは、既にダメージも疲労も限界が近い中で、4Rに2度のダウンを奪い返し、よく11Rまで戦い抜いた、と感心します。
勝ち目がかなり薄くなった時点からも、ワイルダーは期待させるタイミングでパンチを繰り出し、力が入らなくともかすっただけのパンチでフューリーを後退させていたりもしました。
本当に感動しましたね。
フューリーの今後、そしてワイルダーの今後。
どちらの今後も期待したいです。
↓最後にこっちも楽しみ!WOWOW最高!!
📢12月放送決定‼
— エキサイトマッチ公式 (@Excite_Match) 2021年10月10日
レジェンド名勝負選「黄金の中量級」特集✨
1980年代を代表する
「ロベルト・デュラン」
「マービン・ハグラー」
「レイ・レナード」
「トーマス・ハーンズ」
この4⃣人の歴史に残る熱戦・激闘⚔をお送りします。
詳細は後日‼ご期待ください🥊#エキサイトマッチ #WOWOW pic.twitter.com/bE5MZul9kZ