今週は、歴史に名を残すWBC初代ブリッジャー級王者が誕生。試合は熱戦でしたが、リバスとロジッキーの間には約20ポンドの体重差があり、階級制のボクシングにおいては公平性に欠ける一戦だったような気がします。(それ以前に問題がありますが)
「ブリッジャー級史上最高の一戦」(笑)と言われたこの一戦は、プレビュー記事を書きましたががあまりにもアクセスが少なかったので(泣)、観戦記はやめておきます。
そもそもリバスはヘビー級のボクサーで、ロジッキーはクルーザー級のボクサー、この時点でちょっと。。。とかいう話はもう置いておいて、今回のブログではそのブリッジャー級戦の翌日に行われた、ジャメル・ヘリングvsシャクール・スティーブンソンの観戦記です。
↓プレビュー記事
10/23(日本時間10/24)
WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
ジャメル・ヘリング(アメリカ)23勝(11KO)2敗
vs
シャクール・スティーブンソン(アメリカ)16勝(8KO)無敗
実はWOWOWのオンデマンドを仕事で見れず、情報遮断して仕事を終え、帰宅後にESPNで視聴したわたし。
解説は亀海さんだったと思うので、10/25のタイムリーオンエアを楽しみにしたいと思います。
順調に戦歴を重ね、2階級制覇へ臨むスーパースター候補、シャクール・スティーブンソン。対して海兵隊出身の人気者、ジャメル・ヘリング。
伊藤雅雪から王座を奪ったヘリングの奮闘に期待したい気持ちがありますが、シャクールは数年後、PFPトップに立ってもおかしくないようなボクサーです。
苦労人かつ実直な人柄で、日本でも人気がある(と思う)ヘリングは、スーパースター候補、シャクールの踏み台になってしまうのでしょうか。注目の一戦がゴング。
ともにリング中央へ歩み寄り、右ジャブの差し合いからスタートです。まだ様子見段階ながら、スピーディなシャクールのジャブの打ち終わりにジャブを合わせるヘリング。
このラウンド中盤、シャクールは早くも距離を掴んできたのか、左を浅くながらもヒット、その後ヘリングのジャブを微妙な距離を取って外し始めます。序盤、届いていたヘリングのジャブは一気に届かなくなりましたね。。。
2R、シャクールがややプレスをかけ、ヘリングがじりじりと下がる展開。そしてやはりシャクールは完全に距離を把握、シャクールのジャブは当たりますが、ヘリングのリターンは届かず。ヘリングは手を出しているというより出さされているパンチも多い印象。
ヘリングはジャブが当たらないため、左のストレートは打てませんが、シャクールはそろそろ左を多くしてきています。
そしてブロッキングに頼ってしまうヘリング、この展開は危ない。本当におもしろいようにシャクールのパンチばかりが当たります。
3R、シャクールはワンツーフックからワンツー、ヘリングがガードを固めてしまうとコンビネーションが打ちやすくなります。
ヘリングのガードの隙間からパワーパンチを滑り込ませるシャクール!これは実力差が明確になってきてしまいました。後半、ヘリングもワンツーで攻め込み、意地を見せますが、シャクールを捉える事はできません。
4R、シャクールへのジャブへの反応が遅れるヘリングは苦しい。後ろ荷重に構え、前足をジリジリと前に持ってきて距離を測るシャクールは、ヘリングにとって予想以上に遠く見えるのでしょうか。
シャクールの身体のフェイントにひっかかり、パンチを出してしまうヘリングはその後打ち込まれてしまい、シャクールのやりたい放題。
5R、流れを変えたいヘリング上体の動きを大きくして、プレス。しかしシャクールの動きは速く、そしてパワフル。シャクールのコンビネーションでヘリングのブロッキングは乱れる一方で、ヘリングのパンチのほとんどはクリーンヒットは奪えません。
後半、ややラフにいくヘリング、ボディこそ当たるものの顔面へのヒットは難しい。
6R、前ラウンドに続いてプレスを強めるヘリング、スタミナを使って前へ。シャクールは打ってはかわし、後半の右フックでヘリングは少しぐらついたように見えます。
忙しく上体を動かし、フェイントをかけるヘリングですが、あくまでも冷静なシャクール。
7Rに入り、ここまでのパンチスタッツが出ますがヘリングは49/268に対してシャクール102/338。大きな差が開いています。
シャクールは自分から攻めるタイミング、そしてリターンを狙うタイミングがすごい。自分は自分のリズムで戦いつつ、ヘリングに休む暇を与えていないように思います。
クリンチ際になっても身体で押し負けることのないシャクール、強い左右のフックを与えてこのラウンドも優勢。
8R、攻め込んではシャクールのジャブに阻まれ、待てばコンビネーションで攻め立てられるヘリングは、ダメージもありそうですがここは王者の矜持。ボディジャブで近づいて左ボディを叩き、この状況を何とか打開しようと試みます。
9R、この展開では無理をしないのがシャクール、ヘリングが出てくるので待ちつつ、カウンター狙い。
ヘリングの打ち終わりにコンビネーションをヒット、それをもらいながらも前進するヘリング。近い距離になってもヘリングのパンチはシャクールの顔面に届きません。シャクールは巧すぎ、悲しくなるほどです。
10R序盤、両まぶたが腫れてしまったヘリングに、ドクターチェックが入ります。顔面を見るとダメージの差は明白です。
再介護、コンビネーションをガードの隙間から滑り込ませたシャクール、試合を決めようとしているのかプレスをかけます。
ガードでしのぐヘリングですが、シャクールのパンチは時にガードの間隙を縫って入り、時にガードを吹き飛ばします。
シャクールのパワーパンチでヘリングがぐらついたところで、レフェリーがわって入り、ストップ。
シャクール・スティーブンソン、10RTKO勝利!
見事としか言いようのないシャクールの勝利。自分のリズムをまったくもって崩さず、ジャメル・ヘリングを一蹴してみせました。
残念ながら力の差は大きく、ヘリングの両まぶたは大きく腫れ上がり、シャクールの顔はきれいなものです。全くもってダメージを感じさせないシャクールの姿は、10Rの戦いを戦いきった顔には見えません。
そもそもここまでのプロ戦歴で、ダメージを負った経験なんてないのかもしれません。
驚くほど強かったシャクール・スティーブンソン。
スーパーフェザー級の世界王者を目指すボクサーには気の毒としか言いようがなく、シャクールがこの階級にとどまる限り、その頂は高く、果てしなく遠そうです。
そういえばもうすぐお子さんが生まれるんですね。守るものが増え、今後どのようなキャリアを歩んでいくのか。技巧派と呼ばれるヘリングを、より圧巻の技巧で降したシャクールの今後は、非常に楽しみですね。
ということで(我慢しきれず)先にメインイベントを見たので、アンダーカードに戻って視聴。
この日の「メインカード」枠で放送された第1試合は、モハメド・アリの孫、ニコ・アリ・ウォルシュ。
ニコ・アリ・ウォルシュ(アメリカ)1勝1KO無敗
vs
ジェイムズ・ウェスリー(アメリカ)1勝無敗
ウェスリーもデビューしたての新人で、36歳。新人同士の4回戦ですが、注目度は抜群です。
アリは前戦よりもステップワークを多用、よりボクサーっぽくなっていますね。初回の前半にウェスリーの右オーバーハンドを被弾するものの、今日はよくジャブが出ているのは良い傾向に見えます。後半、右アッパーを当てたアリはチャージするものの、詰め方はまだ甘く、途中また被弾。
2Rはアップセットを目指してウェスリーがややラフに攻めます。ウェスリーの右オーバーハンドは要注意、アリのジャブを完全に狙っています。例えば日本ボクシングの4回戦と比べ、このアリは巧い。上下ヘの打ち分け、そしてワンツーの威力。
アリは、このワンツーでラウンド終盤にダウンを獲得。
3R早々にも右ストレートでダウンを奪ったアリ。ここでウェスリー陣営が敵わじとみて棄権の意思表示。
ニコ・アリ・ウォルシュ、3RTKO勝利。
ウェスリーもアンダードッグとはいえ、なかなかにパワフルなボクサーでしたね。アリはまだまだ、というかこの先も長く話題先行のボクサーだと思いますが、今後も頑張ってもらいたいですね。トップランクのもとで、大切に育てられていくことでしょう。
ザンダー・ザヤス(プエルトリコ)10勝(7KO)無敗
vs
ダン・カーペンシー(アメリカ)9勝(4KO)3敗1分
プエルトリコのネクストスター候補、ザンダー・ザヤス。まだ19歳という新鋭は、9月に中谷潤人vsアンヘル・アコスタのアンダーカードでリングに上がったばかり。1ヶ月少々のスパンでのリング登場です。キャリアを積ませるためでしょうが、なかなか短いインターバルです。
カーペンシーはかなりディフェンシブなタイプのボクサーですね。極端な後ろ荷重で、自らパンチを放つ事はあまりありません。
ザヤスが打っていった時に、強いパンチを放つという一発狙いのボクシング。これはこれで怖いです。しかしザヤスは前戦もそうでしたが、驚くほど冷静です。
2Rに入ってもほとんど自ら攻めようとしないカーペンシー。上体をとにかくオーバーに動かし、かわして強振という狙いです。そこにザヤスのパワーパンチが遅い、カーペンシーはパンチを出す暇も与えてはもらえません。
しかしザヤスも、上体を大きく動かし、ベルトラインくらいまでのダッキングをするカーペンシーを攻めあぐねているのも事実。
3Rに入るとザヤスは身体で押し込んでの接近戦。見事なアングルのアッパー、フックで攻め立てます。その後打ち返してくるカーペンシーの強打は距離で外す、お見事。
4Rも素晴らしいコンビネーションをヒットさせるザヤス。こういう高速コンビネーションが彼の持ち味ですよね。この様々なアングルから、自由自在に放たれるコンビネーションは、その回転力も相まってブロッキングですら対応ができません。
鼻血を流して苦しいカーペンシーですが、相変わらずザヤスの打ち終わりヘの一発狙いは健在です。
そしてこのラウンド終了後、(ESPNではコマーシャル中に)カーペンシーが棄権の意思表示。これはコーナーに戻った本人が「無理無理」と首を振っての棄権なので、アリの相手ウェスリーとはまた違います。
ザンダー・ザヤス、4R終了TKO勝利。
まあ、冷静ですね、19歳のザンダー・ザヤス。19歳って信じられません。シャクールvsヘリングという注目試合の、セミファイナルを見事飾ったザヤス。
コンビネーションに優れていますが、そのコンビネーション中に打つパンチが非常に多彩。絶妙な角度から、自然な形で放たれるパンチの回転力も非常に速く、一発のパンチングパワーには欠ける気がするもののやはり強いですよね。
次のリング登場も、そう遠くないでしょう。今後も楽しみです。
ということで、メインとアンダーカードと前後してしまいましたが、今回はトップランク興行の観戦記でした。
時間があれば、またイバン・ホリフィールドの試合もみてみようと思います。ESPNはライブ放送のあと、すぐにアーカイブで見れるのでおすすめです。しかも金額は60$/年と非常にリーズナブル。VPNは必要ですが、個人的には非常に重宝しています。