当代随一のスターボクサー、サウル・アルバレス。またの名を、カネロ。
ボクシングファン、もしくはボクシングにほんの少しでも興味のある人であれば、その名を知らない者は存在しないのではないでしょうか。
ただそのカネロの領域に少し足を踏み入れると、過去にはカネロに有利なキャッチウェイトばかりでの試合があったり、ドーピング検査陽性反応もメキシカンビーフにより不問、そしてこれはカネロ自身の問題ではありませんが、カネロ有利のジャッジ。そして大金を稼ことによる、まわりからの嫉妬。
それでもここ最近は、そうした雑音をかきけすかのようなパフォーマンスを見せていることも事実。私個人としては、カネロのパフォーマンスを楽しみにしてしまっている一人なのです。おそらくそういう人も多いはず。
残念ながら、カネロから判定勝利を挙げるのは非常に困難。これまでカネロに勝利したのはフロイド・メイウェザーJrのみで、しかもあの内容で2-0。
とすると完璧なノックアウトしか勝ち筋がないわけですが、今回の対戦相手、カレブ・プラントは倒すタイプのボクサーではありません。
それはカネロに倒されてきたスーパーミドル級の王者たち、カラム・スミスにしてもビリー・ジョー・サンダースにしてもそうでした。
なので、既にカネロの4団体統一は既定路線、あとは今回カネロがどのようなパフォーマンスを見せるのか、というのが個人的な焦点です。
とまあ、ここまで書きましたが、何が起こるかわからないのが四角いリング。プラントの善戦に期待しつつも、カネロのパフォーマンスを楽しみにする、そんな矛盾をかかえたスーパーミドル級の4団体統一戦の観戦記が今回のブログのテーマです。
↓プレビュー記事
11/6(日本時間11/7)
PPVファイトの初戦、エルビス・ロドリゲス(ドミニカ共和国)vsファン・パブロ・ロメロ(メキシコ)のWOWOWでの放送はなし。正直セミよりもみたかったですが、残念。こちらはプロスペクト、ロドリゲスが5TKO勝利とのこと。
フェザー級10回戦
レイ・バルガス(メキシコ)34勝(22KO)無敗
vs
レオナルド・バエス(メキシコ)21勝(12KO)4敗
プレビュー記事を書いた時は、BoxRecではスーパーバンタム級表記でしたが、やはりフェザー級戦。BoxRecの表記も直っていましたね。
スーパーバンタム級元王者、バルガスの久々の試合、そしてWBC世界フェザー級トップコンテンダーのテストマッチの位置付け。2年4ヶ月ぶりの試合という試合感覚なので、ややイージーな相手を選んだという印象。
↓レオナルド・バエスはジェイソン・マロニーに7R終了TKO負けを喫した選手。
このときの試合がバンタム級の試合ですからね、バエスとしてはスーパーバンタムでも充分やれたと思います。Bサイドのボクサーは仕方ないのかもしれませんが。(但し、前戦はスーパーフェザー級戦)
初回、バルガスはやや固さが見られる立ち上がり。ただ、もともと固いボクサーなのでこんなものかもしれません。スーパーバンタム級のときよりも体の厚みは増しているような感じはあります。そして結構、アグレッシブにいきますね。いかにも硬そうなパンチをバエスのボディに突き刺します。
2R、バエスもフェザー級の選手ではありませんが、それにしてもバルガスはでかい。ややガードが甘くなってしまうバルガスに対して、バエスはアッパーをヒット。それでもバルガスの方がいくつも強いパンチをヒットしています。バルガス、今日は本当にアグレッシブ、カネロのアンダーカードに組み込まれ、絶好のアピールチャンスだからでしょうか。
3R、バルガスがバックステップを使い始めました。バエスは頭から突っ込んでくるので、バッティングが怖い。バルガスは中間距離から強いコンビネーションを放ちますが、バエスのボディワークも良い。そしてバルガスの攻撃に対して(当たらないまでも)確実にリターン。攻撃の精度はバルガスの方が圧倒的に上ですね。
4R、バルガスのパンチは非常にワイルド、それが遠い距離から飛んでくるのでバエスのリターンは届きません。バルガスは足を使いながらスムーズなコンビネーションをヒット。5Rも同じく、バルガスは距離をキープしてバエスに攻めさせず、遠い距離から自分のパンチを当てるという展開。バエスは中距離で耐え、接近戦に持っていこうと試みますが、なかなか届きません。バルガスはブランク前の戦い方、ファンが「つまらない」というパフォーマンスに戻ってきましたね。
6R、バエスはプレスを強め、アタック。しかしバエスの右をかわしたバルガスは、左アッパーから右ストレートをヒット。やはり地力の差は大きい。7Rもバルガスのコンビネーションが冴え渡り、上下へ打ち込みますが、バエスは非常にタフ。もしくは、バルガスがこのフェザー級で通用しないのか。
8R、バルガスは強いパンチを当てるもバエスを弱らせる事はできず、バエスは常に前に出続けるものの展開は変わらず。9Rも強い踏み込みを見せるバエス、距離で躱し、時に受けて立ち、コンビネーションを当てるバルガス。
ラストラウンドも足を使って距離を取り、ジャブを突くバルガス。リターンも届かないバエス。結局圧倒しながらも倒せないバルガス、そして前に出る事はできてもそれ以上ができないバエスの一戦は、果たして終了。
判定はほぼフルマーク、レイ・バルガスの勝利。
バルガスのパフォーマンスとしては、まずまずという結果なのでしょうか。完全にチューンナップの試合なので、10R、フルで戦えた事はバルガスにとってよかった事でしょう。
このバエスがタフなのか、バルガスがパワーレスなのか。
いずれにしろ、もう少し調整試合をこなし、勢いをつけなければフェザー級では厳しいのかもしれません。
スーパーミドル級10回戦
アンソニー・ディレル(アメリカ)33勝(24KO)2敗2分
vs
マルコス・エルナンデス(アメリカ)15勝(3KO)4敗2分
このスーパーミドル級戦をセミファイナルに持ってきたのは、カネロの次期挑戦者候補、ということなのでしょうか。それにしてもカネロvsディレルになっても盛り上がりそうにはありません。ファンの求める試合ではないでしょう。
初回からディレルが右をヒットして攻め込む場面を作ります。ややプレス気味のディレル。ちょっと固い雰囲気のエルナンデス。
2Rもプレスをしっかりかけていくディレル、少し余裕を持って攻め込んだところでエルナンデスの左フックがカウンター。これは結構危ないパンチです。ここからエルナンデスの手数が増え、良い感じにほぐれてきましたね。
3R、近い距離での打撃戦に突入。スーパーミドル級らしい重厚な打ち合いです。
4R、開始早々、ディレルがスッと接近したところで、素晴らしい右アッパー!!静寂な状態から一気に巻き込むように突き上げたこのアッパーで、エルナンデスがダウン!立ち上がるもフラつくエルナンデスを、レフェリーがストップ!!
アンソニー・ディレル、4RKO勝利!
アップセットを本気で狙っている感じのあったエルナンデスに対して、強い勝ち方でその力を誇示したディレル。良いパフォーマンスでしたね。
弧を描くあの右アッパーは非常に美しかったです。
勝利者インタビューで、カネロvsプラントの勝者と戦いたいと語りました。
しかし、もしカネロ戦となるとさほど興味が湧かない試合になってしまうのは、カネロがやはり別格だからでしょうね。
WBAスーパー・WBC・IBF・WBO世界スーパーミドル級王座統一戦
サウル・アルバレス(メキシコ)56勝(38KO)1敗2分
vs
ケイレブ・プラント(アメリカ)21勝(12KO)無敗
カネロ・アルバレスが4団体統一戦に挑むという一戦。カレブ・プラントと表記していましたが、WOWOWではケイレブ・プラントでしたね。ジミー・レノンJrのコールも明らかに「ケイレブ」だったのでケイレブ・プラント表記で参ります。
セミファイナル放送前、記者会見の映像も流れますが、プラントはジャッジに対しての牽制も行なっていますね。
国歌斉唱の後、やや時間が空き、計量の映像。写真でも見ていましたが、プラントの仕上がりは半端ない。本気でアップセットを目指す姿が伝わりますね。
そして入場、今回はスムーズに進みます。裏でやっているUFCとの時間の兼ね合いは必要なさそうですね。
さていよいよゴング。初回の立ち上がりから序盤でプラントはなんとかペースを掴まなければなりません。注目の第一ラウンド!
カネロは完全に様子見。ガードをしっかりと固めてプラントの出方を窺います。プラントはスピーディなジャブ。このジャブを見切ろうとしっかりと見たカネロは、中盤から上体の動きを出し始め、プレスを少し強めます。
カネロは落ち着いて攻め、プラントは忙しなく動き回る初回。カネロの手数が少ないので、ポイントはプラントに流れたでしょうが、今後はどうか。
2R、プラントがギアアップ。素早い足の動きと左でカネロに対抗します。カネロは強いプレスをかけ続けますが、今のところは捕まえ切れてはいません。プラントはロープに詰まった時も上手くクリーンヒットをもらっていません。
が、カネロのパンチは非常に派手。ポイントを奪う説得力を感じるんですよね。
3R、プラントはうまく戦えているので、リズムに乗ってきましたね。コンビネーションがよく出ます。足もよく動き、カネロは相変わらず捉えきれませんね。プラントは距離を詰められてもカネロの得意なコンビネーションをまともには貰わず、研究と対策をしっかり行なった様子が窺え、そしてプラン通りに戦えているのでしょう。
4R、プラントはラウンドを重ねるごとにリズムが良くなり、スピードが出てきます。カネロはそろそろ強引にでも行かなければいけないかもしれません。
と思ったところでカネロは強引に距離を詰めてラッシュ、クリーンヒットはしないもののやっぱりこういう攻撃が良いですね。
5R、やはりプラントは速いのか、カネロはいつものようなヘッドムーブは出ません。逆にプラントはフィリーシェルのディフェンステクニックが非常にうまく機能し、ボディへの左フックはブロッキング、顔面への左フックはスウェーで距離を作って躱しています。
6R、カネロはプレスを強め、鋭い踏み込み。プラントは速いコンビネーション。カネロが強引にいき、プラントにほんの少し恐れが見えると、カネロに余裕ができてきます。
こうなると少し距離がつまり、カネロが大きな踏み込みなしにパンチを当てられ、そしてプラントの手数が減る。余裕が出てきたカネロはのしのしと歩いてプレスをかけ、突き放そうと打ち返すプラントのパンチをヘッドムーブでヒョイヒョイとかわします。ここでようやく、カネロの本領が発揮でしょうか。
7R、プラントのジャブはまだキレがありますが、今度はカネロのリズムが良くなっている分、効果が薄くなってしまいます。
中盤にカネロは得意の左フックをヒット、その後ロープ側で休んだカネロは終盤にまたプレスから左フックをヒット。
8R、前ラウンド同様、カネロがプレス。プラントも頑張り、完全なカネロのペースとはいきません。
9R、プラントも衰えませんね。体全体のスピードも、ボディムーブもまだ良い。6Rが一番のピンチで、そこから持ち直している感じです。プラントは細かなコンビネーションが復活してきました。
カネロは若干休んでいるように見えますね。だとすれば、次のラウンドからチャージか。
10R、調子良くスピーディなコンビネーションでスタートしたプラントですが、ここでカネロの逆襲。やはりカネロは先程のラウンドは休憩ラウンドだったのか、プラントをコーナーに詰めて力強いパンチを打ち込んでいきます。
後半、とうとうプラントが少し、腰を丸めます。ボディが効いてきたかもしれません。
11R、カネロがヘッドムーブからの飛び込み左フックでプラントの体勢を崩し、さらに右アッパーをフォローするとプラントがダウン!カネロのサンデーパンチのひとつ、左フック。中でもこの右から左へのウィービングからの飛び込み左フックは、本当に素晴らしい。再開後、攻め切るカネロ、固まったプラントに右を効かせ、最後は右ボディですがこれはおまけみたいなもの。
カネロ・アルバレス、11RTKO勝利!!
プラントは非常に上手く戦いましたし、本当にアップセットを目指した本物のボクサーでしたね。
ただ、それを上回るほど、カネロは強かった。
プラントは計画通りに戦いを進め、最善を尽くしましたが、カネロもまた、計画通りに戦いを進めていました。序盤はプラントにポイントを与えても良いくらいの様子見、徐々にプレスをかけてそれを強め、後半にTKO。もうお見事です。
ビバメヒコ。
気に食わない、という人も本当に多いとは思いますが、カネロは強い。ドーピング疑惑というのが本当に残念ですね。ともあれ、これで4団体統一王者となったカネロ・アルバレス。その4団体統一という偉業に要した時間は、たったの1年間。
(我らが井上尚弥は、2年前とタイトルの数は変わらず。。。)
今後のことは考えていない、と語りますが、カネロは防衛戦をするのか、それとも階級アップか。
スーパーミドル級はもうカネロに蹂躙されてしまったので、カネロが闘うべきで残っているのはデビッド・べナビデスくらいのものでしょうか。
ライトヘビー級でビボルやベテルビエフ戦、こちらの方が楽しみです。
これでカネロは休み、2022年1月に話をする、そして来年春くらいに試合をするというイメージだそうです。カネロが今後、どのような道を歩むのか。楽しみですね!