行ってきました、両国国技館。
井上尚弥、2年ぶりの凱旋試合。
ただ、相手は当初「調整試合」と堂々と言っていたくらいのアンダードッグ、アラン・ディパエン。どちらかというと試合内容的には期待することはできず、早いラウンドでのKOを期待する声が多いでしょう。ディパエンが初回からアップセットを起こす気満々ででてきてくれたらありがたい。
注目はセミファイナル、谷口将隆(ワタナベ)の2度目の世界挑戦となるウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)戦。技巧派同士の一戦は、スキルフルな一戦となることが予想され、ミニマム級ということも相まってスピーディな攻防が見られる事が楽しみです。
更に、武居由樹(大橋)が難敵・今村を迎える一戦も、そしてミライモンスター松本圭佑(大橋)vsベテラン、荒木貴裕(JBスポーツ)も非常に楽しみ。
↓プレビュー記事
ということで今回のブログでは、フェニックスバトル・ワールドスピリッツの観戦記!2F席から見たので、豆粒ほどのボクサーを目を凝らして見ました。少しでも早くお届けしようと、メモを頼りにサービスエリアで書いています笑
12/14(火)PXB WORLD SPIRITS
スーパーバンタム級8回戦
石井渡士也(REBOOT.IBA)4勝(3KO)1敗
vs
藤岡拓弥(VADY)10勝(1KO)10敗1分
井上尚弥のスパーリングパートナーとして名を上げた石井、前戦では素晴らしいパフォーマンスを披露してくれました。今回のパフォーマンスにも期待が高まります。
初回から石井はハイペースに攻め入り、藤岡も左ボディを強く打ち、食い下がります。石井のジャブは非常に素晴らしく、飛び込みの左フックもヒット。初回の中盤以降、早くも手が出なくなる藤岡。
石井の動きは本当に井上尚弥によく似ています。
2Rに入ると打撃戦がスタート。藤岡はセコンドから活を入れられたかもしれません。藤岡も怯みませんが、石井の右アッパーは素晴らしく、パワー差を感じますね。
3R、引き続き、次々とヒットするのは石井のパンチ。藤岡はタフネスを証明するばかり。
4R、石井はスイッチをする等、誘いも入れて試しますが藤岡もがんばります。パンチはめちゃくちゃ当たっているように見えますが。。。
5Rに入ると石井は誘ってカウンター、時に強引な攻撃も交えますが、藤岡は本当にタフ。続く6Rには石井の右ボディが印象的、藤岡は「ただ倒れない」だけでは勝利は難しい。
7R、8Rも同様で、石井は攻めますが強靭なこころと身体を持つ藤岡を倒せず。藤岡はラストラウンドに気迫のこもった反撃を見せるものの、全ラウンドを通してほとんど何もできませんでした。
石井渡士也、3-0の判定勝利。
無難に、という石井の勝利。藤岡のようにタフなボクサーが、手数を少なくしてディフェンシブに戦えば、はっきり言って倒すのは容易ではないですね。
それでも石井は最後まで倒しに行っていたと思います。天晴です。
対して藤岡は、あの戦い方から勝利の道筋は見えませんでしたね。
58.5kg契約8回戦
松本圭佑(大橋)3勝(3KO)無敗
vs
荒木貴裕(JBスポーツ)12勝(4KO)10敗
ミライモンスター、松本と、ベテラン荒木の一戦。この煽りVTRも非常に良い。
初回は慎重な立ち上がり。松本は序盤、危うさがあるので、これぐらい慎重で良いですね。荒木は待ちながらも、カウンター狙い。これはかなりヒリヒリする展開です。
荒木の入り際に、松本が左フックのカウンターをヒット。流石、巧い。
2Rのゴングがなると、前ラウンドの静寂が嘘だったかのように荒木が奇襲!これを冷静に対処した松本ですが、荒木はここからラフに攻めてきます。
それでも非常に落ち着いている松本、素晴らしいジャブ。
3Rは白熱してきます。接近戦となり、中盤に松本は左フックを立て続けにヒット!4Rもラフに攻める荒木、これは怖さがあります。しかし、荒木の攻撃に対してディフェンスのあと、松本のリターンのジャブ、リターンのワンツーの速さが尋常ではありません。
ここまでは松本が非常い落ち着いており、荒木に怖さはあるもののペースは松本。しかし5Rに入ると荒木がよくなり始めます。
接近戦で大きなパンチを振るい、松本を脅かしはじめ、松本はちょっと集中力が途切れるか?
と、思った瞬間、松本の目にも留まらぬワンツーのリターンがヒット!押されるように倒れた荒木!ここでレフェリーがストップ!
松本圭佑、5RTKO勝利。
ちょっと確認できないくらい速い(たぶん)ワンツーでした。
一瞬にして意識を刈り取ったような、キレのあるパンチ。う〜ん、これは素晴らしいKO勝利です。
荒木は、あの戦い方で決して間違っていなかったと思います。やや線の細い印象のある(精神的に)松本に対して、「強引に、ラフに振っていく」ことを織り交ぜた、という作戦は松本を困らせたと思います。
しかし松本はプロ4戦目にして、これまでで一番落ち着いており、冷静でした。
また一つ、強くなった、そう実感させられるような試合でしたね。
55.0kg契約8回戦
武居由樹(大橋)2勝(2KO)無敗
vs
今村和寛(本田フィットネス)2勝(1KO)1分
今回、フェニックスバトルが作ってくれた煽りVTRの中で、この試合の煽りVが一番好きです。武居由樹のK-1時代のことは正直知らないのですが、周りへの感謝、そしてそれを受け継いだという感じが感動させられます。K-1時代の武居のことを知っている人たちは、もっとでしょう。
対して今村も、大変正直で素晴らしい。今村にとってはビッグネームを喰う大チャンス。前戦では、辰吉寿以輝というビッグネームを食いそこねたこともあるので、こうして巡ってきたチャンスが嬉しい、というのは本心でしょうね。
果たして注目の一戦がゴング、ファーストヒットは今村のボディジャブだったと思います。
しかし武居は緩急の付け方が素晴らしく、軽いジャブ、ゆったりとしたリズムから、いきなりスピーディな右フック!
距離が近すぎ、もみあいになった際に、離れ際にもすぐにパンチを返そうとする辺り、闘志もみなぎっていますね。
そして今村の左の打ち終わりに、この右フックをヒットして左フックをフォロー、今村はダウン!立ち上がるも足元が定まらず、レフェリーは試合をストップ!!
武居由樹、1RTKO勝利。
デビュー以来3連続1RKO勝利。これは恐ろしい。
今回の相手今村は、決して弱いボクサーではありませんでしたし、アンダードッグでもありませんでした。
武居由樹の強さは底が知れません。
パンチ力は相当なもの、なんでしょうね。
初回KOを続けていると、証明されないものも多いのも事実。どのタイミングで、この武居が本領を発揮できるのか、これは非常に楽しみですね。
素晴らしいノックアウトでした!
WBO世界ミニマム級タイトルマッチ
ウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)16勝(6KO)1敗
vs
谷口将隆(ワタナベ)14勝(9KO)3敗
さて、一番楽しみな試合。メンデスは若く、非常にやりづらい王者ではあるものの、今の谷口には期待も大きい。
このミニマム級において言えば、日本王者と世界王者の違いは、そもそもそんなにない、と思っています。
その日本ミニマム級タイトルを、圧倒的な力で防衛してきた谷口、しかもここ最近の安定感、リングIQといったら期待しかありません。
注目の一戦がゴング。
初回のゴング早々、谷口がプレス。「挑戦者らしく戦う」というのはこの事ですね。自らの技巧に頼らず、技巧派王者を攻略しようというこのスタイルは間違いではないと思います。
谷口はもともとおそらく器用なタイプに感じるので、このプレッシャースタイルも決して付け焼き刃ではないと思います。
しかし、プレッシャーをかけられて下がるメンデスのリターンも速く、これは侮れません。
インターバル中の選手紹介で、いきなり武居由樹の紹介をはじめた富樫アナ。ひどい笑
2R、谷口は更にプレス。ボディワークもお見事ですね。このラウンド、距離が詰まったところで谷口は左フックをヒット、メンデスは押されるようにダウン!ダメージは感じませんが、序盤でこのダウンゲットは最高ですね!
3R、メンデスはジャブを多用、積極的に距離をつくりにきました。谷口はよくサイドに動き的を絞らせず、体全体の動きが非常にキレており、リターンも鋭いです。
あと、京口紘人の声が非常によく通ります。
4R、しつこく攻める谷口、フィジカルでも大きく勝っています。遠い距離ではリーチのあるメンデスのストレート系のパンチに苦しめられますが、近くにいけば谷口が押し勝つ、という展開。
5R、接近戦で始まりますが、このラウンド中盤以降は谷口は距離をとり、サークリング。このあたりの変幻自在さ、戦い方を変える事ができるということはやっぱり器用なボクサーです。
谷口が動き続けるとメンデスは追えません。なるほど追うことが得意でないメンデスには、この戦い方でもいけそうです。
6Rはバチバチの接近戦。メンデスのボディ乱打がものすごいです。劣勢を意識してなのか、接近戦でも打ち勝とうとしているように見えますね。
しかしこのラウンド、メンデスはホールディングで減点。セコンドはめちゃくちゃ怒っています。メンデスのセコンド陣は、谷口のキドニーブローを抗議しているのだと思います。
7R、接近戦でのボディに活路を見出したか、メンデスはこのラウンドも接近。谷口もちょっとこのボディが苦しいか、接近戦で手数に劣ります。谷口としては、ワンツーの距離で戦いたいところ。
8R、このラウンドは谷口の鋭いジャブが印象的なラウンド。しかし終盤、メンデスがパンチをまとめてこれが谷口にヒット、メンデスもまだがんばります。
9R、離れてもくっついても両者が技巧の限りを尽くしています。谷口は驚くほど低く入り、メンデスのボディを好打。
このラウンド、メンデスはボディが効いてしまったように見えました。追う谷口に対して、メンデスはサバイブ。
10R、このラウンドも谷口のジャブが印象的ですが、やはり終盤にメンデスがチャージ、終盤の打ち合いは互角、もしくはメンデスが打ち勝ったようにも思えました。
11R、ややキレのなくなってきたメンデスのパンチのリターンで、谷口の左ストレートがヒット!ぐらりとしたメンデスに、谷口がすべてをかけて襲いかかります。
そのままロープに押し込んでパンチの雨あられ、ラッシュ!ラッシュ!!
反撃できなくなったメンデスを見て、レフェリーはストップ!!!
谷口将貴、11RTKO勝利!!!
どれくらいぶりでしょうか、目の前で日本人世界王者誕生の瞬間をこの目で見れたのは。やはり、この体験は格別です。
今日、両国国技館に来たのはこのためだと言っても過言ではありません。プレビュー記事でも書きましたが、メインの井上vsディパエンについてはお祭りのようなものなので。
ストップの瞬間、ロープに登って雄叫びを上げた谷口。そのあと、京口と喜びを分かち合っていました。
先を征く者に対しての劣等感、その人に教えを請い、そして王座奪取の瞬間にはそばに。
このふたりの友情物語は、本当に胸が熱くなりますね。
セコンドの中で誰よりも大きな、よく通る声で谷口を応援していた京口。
これは、谷口だけの勝利ではなく、二人の勝利なのでしょう。
この谷口の勝利により、のちに控える重岡兄弟も含め、日本ボクシング界で、いやワタナベボクシングジムでの主要4団体制覇、というのも可能性が出てきます。
ワタナベジムは、ここ最近、世界タイトル戦を組むのがあまり上手ではない。。。というイメージがありますが、是非ともこの谷口に続き、重岡兄弟も早めの世界タイトル戦が実現できると良いですね。
さて、王座陥落となってしまったメンデス。
よくぞこの日本に乗り込んできてくれました。隔離という絶対不利な条件のある日本で、しかも今回はレフェリー、ジャッジ全員が日本人という、我々としても大変に申し訳ない状況の中で、しっかりとリングに上がってくれた事に本当に感謝です。
メンデスはまだ25歳、また再起に期待したいものですね。
WBAスーパー・IBF世界バンタム級タイトルマッチ
井上尚弥(大橋)21勝(18KO)無敗
vs
アラン・ディパエン(タイ)12勝(11KO)2敗
注目は、井上が何ラウンドで倒すのか。ディパエンがどれくらい持つのか。
ただ勿論、リングの上では何が起こるかわかりません。好勝負に期待したい。
初回のゴング、井上はいつもどおり相手をじっくりと観察します。しかしディパエンも観察。多くの人が見たでしょうが、荒川竜平戦でも初回は観察から入ったディパエン、これは正直得策とは思えません。井上にも慣れがない、初回からガンガンいかなければ話になりません。
2R、ディパエンの攻めは力強いですが、井上のジャブは非常によくキレています。プレスもかけつづけ、ディパエンはほとんど手を出すことなくサークリング。
3R、ディパエンのガードは固い。井上は出すパンチのほとんどがジャブ。「リードで倒す」はマジなのか。右はおろか、左フックやボディブローも極端に少ないです。
4R、このラウンドになってようやく他のパンチを使いだした井上。噂の左アッパー3連打を試したり、自らロープを背負ってみたりとかなり余裕を持った戦いぶり。
ディパエンは、というとそれでも非常にディフェンシブ、自ら攻める事はほとんどしません。
遠くからでも、ディパエンの顔が真っ赤(血?)になっているのがわかります。
5R、ディパエンは全く手が出ず、逃げ回っているだけのように感じますが、とにかくガードは固く、井上の強いボディを受けても沈みません。「最後まで立っている」が目標なのかもしれません。
6Rもただガードを固めて逃げ回るだけの延命措置に終始。時折鋭いボディ攻撃を見せるも、一度ガードされたらそれで終わり、そして井上のジャブ一発でその動きは止まってしまいます。
これが本当にアップセットを目指して海を渡ってきたボクサーなのでしょうか。
7R、井上の左ボディがヒットも、ディパエンは効いていないアピール。確かにタフネスは素晴らしい物を持っています。しかし、その後の右ストレートは効いているように見えました。
井上はスイッチを試し、ノーガードで誘いますが、ディパエンは全く乗ってきません。
8R、とうとう、というかようやく、というかフィニッシュ。井上は左フックでディパエンをふっとばし、立ち上がったディパエンに対してまたも左フックをヒット。
ディパエンは最初のダウンですでにフラフラしていたように思うので、あの左フックでのストップは納得です。
井上尚弥、8RTKO勝利。
個人的には、ディパエンの戦い方はちょっと残念でした。あのように延命措置を取るだけだと、我々としては殺戮ショーを見せられているだけになってしまいます。
玉砕覚悟で初回から行ってほしかった。その方が評価はできそうな気がします。
何ラウンドからか、は忘れましたが(5Rくらいからかな?)ラウンドが始まると会場から大きな拍手が湧いていました。
あの拍手は、井上に向けて「そろそろフィニッシュを」という拍手だったように感じています。
ただ、あのようにタフネスを持ち、さらに「ガードを固めて」「逃げ回る」相手を仕留めるのは容易なことではなく、その万難を排して倒しきった井上はさすがのひとこと。
残念ながら、国際的な評価は上がらないのでしょうが。
ともあれ、久しぶりのボクシングのビッグイベント、非常に楽しかったです。
後楽園ホールとはまた違った、大きい箱でやる時のボクシングは、「非日常」的な楽しみがありますね。白いドレスコード、については良いか悪いかわかりません(ちなみに私は白いマスクでドレスコード代わり笑)が、色々ものは試しでやってみるのもおもしろい。
あとは配信のプラットフォームだけ統一してくれれば良いのですが。
あ、ちなみに今日の私的MVPは勿論谷口将隆です!とっても感動しました!
ということで、明日も仕事なので帰ります。お疲れさまでした。