日本でも海外でも、興行自体が少ない1月。それでもやはりボクシングの中心地、アメリカでは今週も世界タイトルマッチが開催されます。
Showtimeで放送された今回の世界タイトルマッチは、日本にも馴染みのある階級、フェザー級のタイトル戦。
「年1王者」として知られるゲイリー・ラッセルJr.(アメリカ)にフィリピン期待のマーク・マグサヨが挑むWBC世界フェザー級タイトルマッチ。
今回のブログでは、このラッセルJr.vsマグサヨをメインに据えた、PBC興行の観戦記です。
1/22(日本時間1/23)Showtime
Showtimeを視聴。今日は前ふりがなんだか長い。昨年の振り返りもしているような感じですね。(英語わかりませんけど)
スーパーフェザー級10回戦
ツグスソグ・ニャンバヤル(モンゴル)12勝(9KO)2敗
vs
サカリア・ルーカス(ナミビア)25勝(17KO )1敗
ニャンバヤルはモンゴル人ですが、そのエネルギッシュなファイトスタイルからかしっかりとプロモートを受けている印象がありますね。ゲイリー・ラッセルJr.に挑戦して判定負けも、無敗のプロスペクト、コビア・ブリーディ(バルバドス)に土をつけ、クリス・コルバート(アメリカ)に挑戦して判定負け。1階級上でいきなりの(暫定ながら)世界戦ということで厳しい戦いでしたが、今回の再起戦を糧に這い上がってもらいたい。
対戦相手のルーカスは、代役ですね。当初はビクター・バシージャスだったと思いますが。
このルーカスはUSデビュー、と聞こえましたが、37歳なんですね。
さて、ゴング。
まず初回はジャブの差し合いからスタート。ともに速く、パワフルな左を持っていますが、ニャンバヤルの方が頭の位置が良く、早速優位に立ちます。ルーカスのジャブをかわして強い左フックをヒットしたニャンバヤル、早速会場を沸かせています。
2R、ルーカスはフェイントを駆使しますがニャンバヤルのプレスに押され気味。
ルーカスも後半にかけて手数を増やし、そのいくつかはニャンバヤルにヒットし始めました。
3R、開始ゴングと同時にレフェリーがストップ、既にルーカスの顔は腫れている?ようです。
ここは問題なく再開も、その後もニャンバヤルのパワー、回転力が上回る展開。
ニャンバヤルはジリジリとプレスをかけ、慎重に戦っている印象です。
4R、ニャンバヤルのジャブで何度も上体を起こされるルーカス。見栄えは良いとは言えません。
5R、前半、ジャブを起点にニャンバヤルがラッシュ。ここはガードでしのいだルーカスですが、ニャンバヤルはフィニッシュを狙うか。
後半にもニャンバヤルはルーカスのジャブを外して右アッパーから左フックのコンビネーション!これはルーカス効いてしまったか。
6R、狙いすぎなのか、ここまでやや手数が少ないように感じるニャンバヤル。ルーカスに先に手を出させますが、ルーカスのパンチもまだ生きています。
7R、前ラウンドに続き、ルーカスがよく頑張ります。リズムよく手を出し続けていますね。
8R、序盤にルーカスが良いパンチを当て、ニャンバヤルはスリップ。タイミング的にはダウンを取られてもおかしくなかったこのスリップの後は、打撃戦の展開となりともにクリーンヒットを奪います。
ルーカスの方が手数に勝り、ニャンバヤルはボディで対抗。しかし打ち合いを嫌がる場面も見せますね。これはニャンバヤル、大丈夫か?ポイントは微妙な感じになってきました。
9R、ここまでのShowtimeの採点はドロー、これは納得のいくものです。このラウンドも旺盛な手数のルーカス、ジャブには優れるものの、パワーパンチの少ないニャンバヤル。
ルーカスの右オーバーハンドは効果的に思います。
ラストラウンド、展開は変わらず、この接戦から抜け出すためにもニャンバヤルにはもっと積極的に行ってほしかったですが。
規定のラウンドを終了し、採点集計。
モニターでは8Rのスリップ裁定に異議を唱えていますね。明らかにパンチが当たって、足を滑らせているニャンバヤルの姿が何度も映ります。
判定は、66−64ルーカス、66−64ニャンバヤル、65−65でドロー、1−1のドロー。
ニャンバヤル、動き自体は良かったですが、戦略が良くなかった印象です。レフェリーの裁定に救われた、というポイント差。
対して勝ちを奪われたともいえるルーカスは、結果的に金星とまではいかなくても、名を残しましたね。37歳、ここからどのようなキャリアを描いていくのか、注目です。
ちなみに、試合後、リングの上ではレフェリーにインタビュー。あのスリップ裁定を責められているのだと思います。
レフェリーは開き直っているように見えますが、どうなんでしょうか。
初回を見る限り早いストップを期待してしまいましたが、ルーカスはタフで、ハートも強かった。
スーパーライト級12回戦
サブリエル・マティアス(プエルトリコ)17勝(全KO)1敗
vs
ペトロス・アナンヤン(ロシア)16勝(7KO)2敗2分
勝利のすべてがノックアウト勝利というマティアスですが、2020年にこのアナンヤンに判定負けで初黒星。今回はマティアスにとってはリベンジ戦です。
アナンヤンはこのマティアスを返り討ちにできれば、大きな夢が広がるかも知れません。これは非常に興味深いサバイバル戦です。
さて、ゴング。
やや慎重な立ち上がりから、プレスをかけていくのはアナンヤン。マティアスは下がりながらの対応ですが、ブロッキングがしっかりしている印象を受けます。
それでも時折鋭いコンビネーションを放つマティアス、責め続けるのはアナンヤンですがやはり地力はマティアスが上に見えますね。
2R、マティアスも自分から攻め始めました。相変わらずガードには最新の注意を払っていますね。
近い距離での攻防、マティアスは左右のボディを上手く叩き、アナンヤンは体で押していくという展開。
続く3Rも近距離戦。ともにコンパクトなパンチの打ち合いです。マティアスは前戦の反省からか、ややダイナミックさに欠けますが、ナチュラルなハードパンチャーであるマティアスはこの戦い方でも正解かもしれません。
少し距離が空けばマティアスの強いコンビネーションが飛んでくるので、アナンヤンはこの距離をキープしたい。アナンヤンはこのラウンド、鼻から出血。
4R、前ラウンドの後半から一気にマティアスの動きが良くなったような気がします。スムーズなコンビネーションが、くっついた距離でも出るようになってきました。
相変わらず体で押していくのはアナンヤンですが、的中率はマティアスにあるか。
5Rもこのラウンドもとんでもない我慢比べ。アナンヤンの方が被弾は多いと思いますが、そのタフネスには呆れます。このままラストラウンドまで行くのでしょうか。。。。??
6R、一向に手数の衰えないアナンヤン。これは嫌ですね。手数と体で押しまくり、マティアスの方は少し疲れたか、手数が控えめになり、ロープに詰まる場面も増えます。
7R、早々にマティアスがローブローにより減点。このあとアナンヤンの動きが衰えないと考えると、これは痛い。
しかしこのラウンドはマティアスも手数で応戦、手を出せばマティアスのパンチの方が的確です。
8Rも同様の展開、アナンヤンは前進、マティアスもコンビネーションで打ち返します。9R、前半の左フックの相打ちでダメージをうけたように見えたアナンヤンですが、それでも前進は止めず。しかし手数は減ってきて、パンチを無理やり強振する場面が増えてきます。ここもマティアスがコンビネーションで優勢、そして終盤、離れ際の左フックでとうとうアナンヤンがダウン!!!
立ち上がったところでラウンド終了のゴングがなります。
そして、このインターバルでレフェリーがストップ!マティアスの8R終了TKO勝利!!
レフェリーは良い判断だったと思います。アナンヤンは限界を迎えていたでしょう。
マティアスは、今回ディフェンス、特にブロッキングとウィービングに気をつけて戦っていらように見えました。あの敗戦から、ひとつ学んでひとつ強くなった、とも言えますね。
マティアスはジュケンバエフ戦でも思いましたが、もっと別な戦い方の方が良いと思っています。少なくとも、頭をくっつけて戦う距離よりも少し空間があった方がコンビネーションが活きる、これは確実でしょう。
今回、意外と被弾は少なかったかもしれませんが、この超激闘型のマティアスにはどのような未来が待っているのか。
WBC世界フェザー級タイトルマッチ
ゲイリー・アレン・ラッセルJr(アメリカ)31勝(18KO)1敗
vs
マーク・マグサヨ(フィリピン)23勝(16KO)無敗
2年ぶりのリング登場となるラッセルJr(以後、この記事では単にラッセルと表記します)。毎回1年ほどはブランクなので、今回はその倍。その影響の有無は気になるところではありますが、まあ、あまり関係ないような気がしています。
それよりも、軽い怪我を負っているという情報の方が気になりますね。
相手は思い切りの良いマグサヨ、ラッセルも気を抜くと危ない。
マグサヨの攻撃はダイナミックで、隙も多いですがパワーだけでなくスピードもある、危険な相手です。
注目の一戦、ゴング。
初回、当然に突っ込んでいくのはマグサヨ。ラッセルが低く構えることもあり、サイズは随分違うように見えますね。
ラッセルはまだ様子見か、あまり足を使わず、ハンドスピードもさほど変わりないように見えます。マグサヨにとっては良い出だしだと思います。
2R、マグサヨのパワーパンチはラッセルの体に届きますね。特に右のボディアッパーが素晴らしい。これは、そのうち当てられるのではないか。
と思っていたらもうこのラウンド中盤にはマグサヨの突っ込んでいくコンビネーションは見切られたか、ラッセルの超低空のダッキングで無効化。
それでもまだ右ボディアッパーは機能しています。
ラッセルも動きを取り戻してきて、本番はここから。
3R、ラッセルはガードも硬い、サイドステップも巧みに使ってきますが、マグサヨはとにかくアグレッシブ、そしてパワーだけではありません。ラッセルの踏み込みにも外してボディへ打てていますし、ラッセルからのリターンへの反応も素晴らしい。やはり今日のマグサヨは一味違います。
4R、序盤、マグサヨの右フックがヒット!ラッセルはぐらつきます!!
その後ラッセルはどんどんラッセルらしい戦い方になっていきます。
ラッセルはマグサヨを誘い込んでカウンター。やっぱり巧い。
インターバル中、ドクターのチェックを受けるラッセル。右肩が痛そうです。これが軽い怪我を負った、という部分かもしれません。
5R、安全運転のラッセルに、なかなか攻めきれないマグサヨ。マグサヨもボックスできる選手ですが、やはり技術となるとラッセルの方が上。
ラッセルは左のダブル、トリプルを出していきますが、これはラッセル右が使えないのかもしれません。
6R、観ているとほぼジャブを打たないラッセル。マグサヨの左へ左へ(ラッセルから見ると右)まわって左ストレートを打ち込みます。残りのラウンド、右のみで戦う気でしょうか。これはマグサヨのアップセットの可能性が大いに高まります。
右は伸ばして牽制に使うだけのラッセルですが、この制限はさすがに厳しいでしょう。
ということはマグサヨは回り込むラッセルに対して左フックを効果的に使いたいところですが、果たしてラッセルは速い。
7R、奥の手だけでこんなに戦えるラッセルに驚きを隠せません。。。リードが使えなければ、攻撃力は半減どころの騒ぎではありません。とにかくマグサヨの左へ回り込み、奥手の左ストレートを何度も放っていくラッセル。
8R、マグサヨの右をかわして自身の左を打ち込む、これしか戦法のないラッセル。マグサヨはラッセルの左だけに気をつければ良いはずですが、詰めきれません。
9R、序盤にラッセルの左カウンターがジャストミート。マグサヨはタフさも持っていますが、やや単調になってきています。
マグサヨは、もっともっと、しつこくしつこく行かなければなりません。
10R、その思いが通じたのか(セコンド から喝を入れられたのだと思います。)、このラウンドは非常にアグレッシブに攻めるマグサヨ。ジリジリと距離を詰めてボディを攻めます。
終盤、マグサヨの左フックがヒット!しますが、後続打をもらわないラッセルは流石。
11R、終わりが見えて元気になったマグサヨ、プレスと手数で攻めます。しかしラッセルに簡単に左へ回られてしまうあたりに策がありません。
左ボディや左フックが機能すれば、その後のパンチを当てられるマグサヨ。その攻撃のほとんどは逃げられてはいるものの、勝利はすぐそこか。
ラストラウンド、これが最後と攻め込むマグサヨ、ラッセルも最後まで勝負を投げません。ラッセルがこんなにも強いハートを持ったボクサーだと知りませんでした。考えを改めなければなりません。本当に左手一本でよく戦ったと思います。
規定の12ラウンズを終了し、勝負は判定へ。
ジャッジは114−114でドローがひとり、115-113がふたりでマーク・マグサヨの勝利を支持。
思ったよりポイントは競っていましたね。
ラッセルのアウトボクシングが評価された、ということでしょうか。
ともあれ、後ろ手一本でここまで戦ったラッセルは本当に天晴れです。
マグサヨは序盤、良い感じでしたが、ラッセルに対応されてしまった感があります。
序盤は、一つ二つで攻め込んで、ラッセルが「マグサヨの攻撃が終わった」と思った所からも三つ四つだせていたので、そこは本当に素晴らしかった。ただ、ラッセルはそれにすぐに対応、気を抜かず、三つ四つを出させないステップワークでマグサヨの攻撃を届かせませんでした。
マグサヨは左に回られるのがわかりながらも無策、この辺りの対応力、リングIQは伸び代だとしておきましょう。
ともあれ、マグサヨも天晴れ、できれば万全のラッセルを倒し切って欲しかったですが、そこは致し方ありません。
今後大化けするかもしれないマグサヨには注目、ラッセルも動き自体は悪くなかったので、また(2年後くらい?)にリングに戻ってきてくれるでしょう。
さて、御大・ラッセルの陥落により、混迷を極めることになるフェザー級戦線。
ラッセルの復帰はすぐにはないでしょうから、ひとまず現在のフェザー級最強はエマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)で良いかもしれません。
あとは復帰戦を控えるレオ・サンタ・クルス(メキシコ)がどのような仕上がりで再起を飾るかが焦点ですね。
↓日本人ボクサーにも期待!です。