2022年のはじまりは、日本王者は14階級において8名のみでした。
空位だった王座は、1月に行われた日本ミニマム級王座決定戦を皮切りに、続々と埋まっています。
2/5(土)に行われたダイナミックグローブ、日本バンタム級王座決定戦、澤田京介vs大嶋剣心。この一戦は、5R負傷判定により澤田が新王者に。
2/8(火)に行われたダイヤモンドグローブでは日本ライト級王座決定戦として鈴木雅弘と宇津木秀が激突し、宇津木が9RTKO勝利で新王者に。
この空位の王座決定戦で戴冠したボクサーの初防衛戦というのは思ったよりも早い。
日本ボクシングコミッションルールの規定は下記の通り。
※第3章「公式試合」第2節「日本タイトルマッチ」第68条「空位決定戦」の第3項
空位決定戦の勝者は、3ヶ月以内に、JBCの指名する者と初防衛戦をおこなわなければならない
そしてこの「指名する者」は既に決まっており、バンタム級においては澤田の怪我次第(怪我等の正当な理由があれば日程を伸ばす事ができる)ではあるものの、通常5月までに澤田は指名挑戦者の挑戦を受けなければなりません。
ということで今回のブログでは、澤田の次戦の指名挑戦者との初防衛戦、そしてその後、誰が、どのようにこのバンタム級を盛り上げていってくれるのか、日本ランキングを見ていきたいと思います。
(日本ランキングは2022年2月現在。王者は空位の状況ですので、3月には大きく変動します。)
↓これはJBスポーツジム、山田武士トレーナーのツイッターから。ものすごくかっこいい。
ロッキーのオマージュだそうです(笑)
— 山田武士 (@JBSPORTSGYM) February 9, 2022
有り難いです‼️ pic.twitter.com/d999sgMQUY
遂に決まった日本バンタム級王者
↓日本バンタム級王座決定戦の観戦記
日本バンタム級王座の「呪い」は解けたのか。
好試合を予感させる立ち上がりから、2Rに澤田がダウンを獲得。
3Rに澤田がバッティングで額をカット、血が滴り落ちる状態でした。4R終了のゴングが鳴れば試合は成立する、そのため、レフェリーも、ドクターも、そのように流れてしまった感はあります。
結果、5R早々に試合はストップ、判定へ。
結果はダウンを奪っていた澤田の勝利となりましたが、あのまま続けていればどちらに転んでいたかは正直全くわかりません。
そんな「完全に呪いが解けた!」とは言い難い一戦だったと思いますが、ともあれ王者は澤田に決まりました。
これからどんどんと動いていくはずの「日本の」バンタム級戦線を、今回のブログでは掘り下げて行きたいと思います。
3位堤聖也(ワタナベ)
その指名挑戦者とはこの堤。
2020年1月、GOD'S LEFTバンタム級トーナメント決勝で中嶋一輝(大橋)の強打を封じ込め、同年10月の比嘉大吾(志成)との一戦では手数、コンビネーションで互角にわたりあい、この年、大きく名を上げた堤。
しかし、2021年は対戦相手の棄権等で1試合もできず、現在に至っています。
これまでも我々ファンの目に見える形でも多くの試合が流れてしまっている堤。しかし、中嶋戦時に日本バンタム級18位だった肩書は、その後勝利を掴んでいないにもかかわらず現在3位。ランキングとは不思議なものですが、この堤は当然それほどの実力のあるボクサーだとも思います。
そして、結果的に1位と2位の決定戦となったこの日本バンタム級王座に、堤は次戦で挑む事が決定しています。扱いとしては、指名挑戦者。
日本バンタム級のトップ選手たちは、自身に預かり知らないところで我慢を強要されたボクサーたちです。特にこの堤は恵まれていない、とも感じる分、是非ともこの次の一戦をものにして欲しいと願うボクサーです。
4位比嘉大吾(志成)
その堤と引き分けたあと、その2ヶ月後にはWBOアジア・パシフィック王座への挑戦というチャンスを得て、見事これを獲得した比嘉。
その後、初防衛戦では伏兵西田凌佑(六島)に敗北、残念ながらかつての輝きは今の比嘉にはありません。
しかし、それでも尚、比嘉の大復活を願わずにはおれません。
世界王座獲得前、世界王者だった頃。あの頃の比嘉の躍動感を取り戻し、再びリングで輝く日を心待ちにしています。
5位南出仁(セレス)
GOD'S LEFTバンタム級トーナメント初戦で、中嶋一輝(大橋)に初回TKO負け、1年半以上のブランクをつくっての復帰戦でも石井渡士也(REBOOT.IBA)に5RTKO負けと手痛い連敗を喫した南出でしたが、2021年12月、遠藤清平(RK蒲田)を2Rで倒し、復活の狼煙をあげました。
やや危うさもあった試合展開だったのかもしれませんが、ランキングを奪おうと気合に入った遠藤を退け、勢いに乗っています。
6位村地翼(駿河男児)
前戦では中村祐斗(市野)とドローに終わった村地。駿河男児期待のホープはやや停滞、どちらかというと対戦相手の中村が評価を上げた試合となったと思います。
直近の試合では吉野ムサシに勝利。後半追い上げられ、苦しい勝利でしたが、その分、課題も見えた事でしょう。
この苦戦の2試合を糧として、今年、大きく飛躍できるかは分岐点かもしれません。
7位川端遼太郎(真正)
2020年9月、敵地静岡で村地との一戦に臨み、敗北を喫した川端。意地は見せたものの村地のジャブにしてやられました。
しかしその半年後、高橋竜也(土浦)に勝利してランキングを獲得しています。
8位高橋竜也(土浦)
プロ49戦、このバンタム級日本ランカーの中では破格のキャリアを誇ります。川端に敗れ、ランキングを落としますがその半年後に再起戦を勝利、ひと桁ランクに返り咲きます。
地方ジムにあって、非常にコンスタントに試合をしているイメージです。
9位与那覇勇気(真正)
2016年、長嶺克則(当時マナベ)戦での敗戦以後、ブランクをつくった与那覇は、2019年の復帰戦こそドローでしたが、その後は3連勝。
変則でアグレッシブ、見ていて飽きない稀有なボクサーで、リングに上がる度に「今回は何をやってくれるのか」とワクワクするボクサーです。今後もますます楽しみ。
10位・富施郁哉(ワタナベ)
2017年の全日本新人王で、一度は石井渡士也(REBOOT.IBA)にランキングを奪われるも復活。前戦では難敵、田井宜広(RST)を破って日本ユース王者となりました。
しっかりとした基礎技術の上に、距離を活かすサウスポー、前日本新人王→ユース王者と獲って、次は日本タイトルにステップアップしたいところでしょう。
11位千葉開(横浜光)
高山涼深(ワタナベ)、中嶋一輝(大橋)といったスーパーホープたちと激闘を繰り広げた、千葉。この2戦で敗れはしたものの、決して評価を落としたわけではありません。
一時期のスランプから脱し、強敵との連戦を経て、まだまだこれからのボクサーだと思います。ただ、王者となるにはもう一皮、薄皮一枚剥けなければならないかもしれません。
12位田井宜広(RST)
個人的に非常に期待している、自由自在にリングを翔けるボクサー、田井。前戦は富施郁也とのユース王座戦は敗れてしまいましたが、躍動するボクシングをまた後楽園ホールで見たい。
15位木村天汰郎(駿河男児)
前戦、竹嶋海刀(勝輝)戦で素晴らしいパフォーマンスを披露、見事日本ランキングの末席に名を連ねた木村天汰郎。完全に距離を支配し、巧さを発揮した穴のない美しいボクシングでした。
これからはランキングを上げるために、ランカー戦でしょうか。「誰とやってもやることが一緒」という木村は、ランキング以上に強いボクサーに見えます。
「郎」の字がいとこの木村蓮太朗と混ざってややこしいのが玉にキズ。
日本王者との絡みはあるか?
当然、他にもまだたくさんのボクサーもいますし、今回、澤田に敗れた大嶋剣心(帝拳)にしても力のあるところは証明もできているので、このタイトル争いに絡んでいくはずです。
ただ、互角の戦いであり、負傷判定であったとしても、この「5R負傷判定で澤田の勝利」という結果は覆りません。
大嶋がすぐにまた日本王座に再挑戦、というのは残念ながら虫が良すぎる話であり、今まで待たされ続けた他のランカーたちにチャンスが来て然るべきでしょう。
まずは、何事もなければ5月頃、もしくはもし澤田の傷の回復を待って、となったとしても秋頃には開催されるであろう澤田京介vs堤聖也の日本バンタム級タイトルマッチを見守りたいと思います。
そして、日本ランクにこそ入ってはいないものの、日本王者との絡みがあるかもしれないボクサーたち。
OPBF東洋太平洋王者栗原慶太(一力)
バンタムといえば、忘れてならないのがこの栗原慶太。
日本王座を狙う、ということはないかもしれませんが、本人は「堤聖也選手とやりたい」と以前から発信しています。
もし、堤が日本王座を獲得すれば、日本×OPBF東洋太平洋の王座統一戦が現実味を帯びてくる可能性はあります。
日本バンタム級王座の行方、そしてその後にも注目です。
WBOアジア・パシフィック王者西田凌佑(六島)
2021年の「アップセッター・オブ・ザ・イヤー」(こんな言い方はしません)といえば西田。この西田は、大森将平(当時Woz)を結果的に引退に追い込み、復帰途中の比嘉大吾(志成)の夢をシャットアウト。
4段飛ばしくらいで駆け上がってきたこのボクサーは、今年どのような戦いを魅せてくれるのでしょうか。
日本王座と絡むことなく、関西から独自路線を敷くのか、それとも中央に乗り込んでくるのか。この動向には要注目です。
そして日本ランキングに入ってはいませんが、その気になれば入るだろうというボクサーもいます。現在、日本バンタム級ランキングには入っていませんが、OPBF東洋太平洋及びWBOアジアパシフィックのバンタム級ランキングに入っているボクサーもいます。
石田匠(井岡)
田中恒成(畑中)戦では惜しくも敗れますが、試合は全くの互角。石田を応援していた人は石田の勝利に思えたほどの接戦でした。
しっかりとその力を誇示した石田匠、既にベテランの域とはいえ、まだ世界王座を諦められるポジションではありません。
ここ最近はバンタム級のウェイトでの試合なので、スーパーフライはきついのだろう、と思っていますが、如何に。
再起に期待です。
高山涼深(ワタナベ)
渡辺雄二の甥にして、たった5戦ながらもスペクタクルなノックアウトを量産している高山も、期待のプロスペクトの1人。
日本ランキングはスーパーフライ級でランクインしているので、目指すべき王座はスーパーフライ級なのかもしれませんが、アジアのランキングではバンタム級のようです。。(ちなみに試合のほとんどはスーパーフライ)
まあ、日本王座の狙い目はスーパーフライの方で、本人もそちらの方が実力が出せるのかもしれませんね。
あとは強いて言えば「日本人キラー」井上拓真(大橋)。ただ、拓真に関してはもう井上尚弥後の世界バンタム級王座を一直線に狙う、ということで良いと思います。既に国内で証明することはないでしょう。
呪いを払拭する一年に
日本バンタム級王者が決まったとはいえ、まだ安心できる決まり方でなかったことも事実。
この呪いを払拭するには、少なくともあと1戦、できればあと2戦ほど2022年中に日本バンタム級タイトルマッチを開催してもらいたいものです。
王者がその都度変わるかもしれないことは仕方ないですが、やはりタイトルマッチ戦線は活発な方が良いですし、ランカーたちは「強敵上等」と思っているであろうランカーたちなので、タイトル戦のオファーがくればすんなり決まりそうでもあります。
ともあれ、このタイトル戦が活発に動くことを願う2022年、今まで動かなかったバンタム級が大きく動く年になりそうです。