イギリス人対決、と言っても、スコットランド出身のジョシュ・テイラーと、イングランドのランカシャー州出身のジャック・キャトラルでは、同国人といえども持っているプライドはまたきっと違うのでしょう。
そして決戦の地は、スコットランドのグラスゴー。
いわばジョシュ・テイラーの地元。
4団体統一戦のあと、初の防衛戦ということで凱旋試合という意味合いもあるのでしょう。
さて、今回のブログでは、「タータントルネード」ジョシュ・テイラー、地元スコットランドでの防衛戦のプレビュー記事です。
ちなみに同日のアメリカ興行ではクリス・コルバート、ゲイリー・アントワン・ラッセル、ジェルウィン・アンカハスが登場です。↓
2/26(日本時間2/27)イギリス・グラスゴー
WBAスーパー・WBC・IBF・WBO世界統一スーパーライト級タイトルマッチ
ジョシュ・テイラー(イギリス)18勝(13KO)無敗
vs
ジャック・キャトラル(イギリス)26勝(13KO)無敗
スコットランド国旗の青い部分、イングランド国旗の赤い部分をあしらったユニオンジャックにならない国旗風のポスター。こういうセンスは羨ましいですね。かっこいい。
ちなみにイギリスの正式国名は、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」。イギリスの最も大きな陸地帯であるグレートブリテン島、そしてアイルランド島の一部である北アイルランドの連合王国です。
そしてそのグレートブリテン島の中に、イングランド、ウェールズ、スコットランドがあり、国際的には「イギリス」とひとまとめにされますが、彼らの中ではそれぞれが独立国というプライドが根強いと言われています。
※ちなみに私はモッズカルチャー大好き人間です笑
さて、そんなグラスゴー出身のUndisputedチャンプ、ジョシュ・テイラー。
スーパーライト級はこのテイラー以外に、WBAレギュラー王者も暫定王者もいない、本当に唯一無二のタイトルホルダーです。
例え4団体を統一したとしても、諸事情により他にも世界王座を持つボクサーが現れてしまう昨今において、このことは非常に稀なことではないでしょうか。
しかもその道のりも本当に素晴らしく、2018年6月に全勝のまま元王者ビクトル・ポストル(ウクライナ)を退けた後、WBSSトーナメントに参加。
準決勝でイバン・バランチェク(ベラルーシ)を破り、IBF王座を獲得。この試合のセミファイナルは井上尚弥(大橋)vsエマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)でしたね。会場は今回と同じグラスゴーのSSEハイドロ。
決勝でレジス・プログレイス(アメリカ)との統一戦を制し、WBSSトーナメントに優勝、アリトロフィーの獲得とともにWBAスーパー王座を吸収しています。(あとついでにWBCダイヤモンド王座も。)
この2団体統一王座の初防衛戦の相手はアピヌン・コーンソーン(タイ)、この階級で当時のアジア最強の指名挑戦者を全く相手にせず、初回KO勝利で防衛。
そして2021年5月、WBC・WBOの統一王者であるホセ・ラミレス(アメリカ)との米英対決を制して4団体を統一。
バランチェク戦、プログレイス戦、ラミレス戦。その全てのビッグマッチで高いパフォーマンスを発揮してきたテイラーは、安定感の塊のようなボクサー。
おそらく普段から摂生に努め、ボクシングへの献身の溢れるボクサーだということは想像に難くありません。
スピード、パンチングパワー、スキル、ボクシングに必要なものが非常に高次元でまとまっているボクサーで、派手さこそ少ないもののパーフェクトに近い。
ブロッキングなどのガードも隙がないし、遠い距離だけでなく近い距離でのステップワークも巧み、攻防に非常に優れたボクサーです。
言い方を変えれば、突出した、何か特別なものがない、ともいえますが、弱いところを消して、消して、消しまくってきたであろうこのテイラーのボクシングは、規律に満ちています。おそらく、相当な練習量を積んでおり、それも本当につまらない反復練習の結果だと思います。
今回、4団体統一タイトルの防衛戦に臨むサウスポーに、果たして死角はあるのでしょうか。
対戦相手のジャック・キャトラルはあまり聞いたことのないボクサーでしたが、WBOのトップコンテンダー、指名挑戦者です。
こちらもサウスポー、非常に落ち着いた試合運びを見せるボクサーで、当然この位置まで上がってきたボクサーだけあって、強いです。
しかし、テイラーの相手、となれば正直物足りなさも残ります。
個人的には、このキャトラル、左ストレートを打った時に体が前のめりになり、泳いでしまうほどバランスが悪い。私の見た映像が対オーソドックスで、距離が遠いから?しかしそこを修正してこそサウスポーの利点が活きるのだと思いますが。
ただ、得てしてアップセットというものは、こういう時に起こるものだと相場が決まっています。先日のリナレスvsアブドゥラエフも、映像を見た限りではリナレスの勝ちは固いと踏んでいましたが、蓋を開けてみればあの結果。
今回、千載一遇のチャンスを得たキャトラルが、これまでの実力を遥かに凌駕するパフォーマンスを見せることは大いにあり得ることだと思います。
キャトラルは、死に物狂いでくるでしょう。ここに勝てば、これまでのテイラーへの評価を一気に自分のものにできます。
タイトルがかかれば、挑戦者の実力は3〜4割増となることもある。
そこに、もし、テイラーが相手のことを舐めてかかればアップセットが起こる可能性もゼロではありません。
しかし、おそらくテイラーは「油断」とはかけ離れた存在であるでしょう。
周りの興味も、どちらかというとこの一戦、というより、この一戦の後のテイラーの動向にあるのではないでしょうか。
ジョシュ・テイラーの今後は?
4団体統一王者、ジョシュ・テイラーが、このキャトラルを退けた後どうするのか。最大の関心ごとはここです。テイラーは、かねてからウェルター級転向を示唆しており、テレンス・クロフォードの防衛戦を視察に訪れたことも。
テイラーはトップランクと契約しているので、クロフォードとの対戦は決まるかな、と思っていましたが、クロフォードがトップランクを離脱。アラムお爺さんを訴えているとのことなので、さてどうなるか。
4団体を統一すれば、(どれほど厳密に行われるのかは謎ですが)各団体の指名挑戦者を迎えなければならないことから、返上&転級というのが既定路線でしょう。
クロフォード、スペンス、ウガス、エニス、オルティス等々といった才能が集結しているウェルター級に、スーパーライト級のUndisputedチャンプが殴り込みをかけるというのは胸アツ展開です。
並はずれた身体能力や、何かに秀でたスペシャルなボクサーの中で、どのようにして「総合力」で勝負していくか、というのは非常に楽しみですね。
そしてテイラー後もスーパーライト級には、注目の「ホセ」対決を控えるホセ・ラミレスとホセ・ペドラサ、あとはホセといえばホセ・セペダもいます。スーパーライト級でウェイトオーバーなんかもかましてはいるもののレジス・プログレイス、マイキー・ガルシアを相手に金星を上げたサンドール・マーティン、そして異彩を放つプロスペクト、ブランダン・リーもあと2〜3年のうちには上がってくるはず。
今週末が終われば、早々に動き出す可能性のあるスーパーライト級、大注目ですね。
ちなみにアンダーカードにはロベイシー・ラミレス(キューバ)が登場です。ロンドン、リオでオリンピックを2連覇、鳴り物入りでプロデビューするもデビュー戦でまさかの敗戦。
その後は雪辱も果たし、順調にキャリアを構築していますね。現在8勝(4KO)1敗、今回はアイルランドのエリック・ドノバン(14勝8KO1敗)を相手にフェザー級10回戦。
放送・配信
このグラスゴー決戦は、イギリスではスカイスポーツで生放送。そしてアメリカではESPNで生放送が決まっています。
日本は、というと、今回もWOWOWは中継してくれませんので、ライブ放送はありません。
(3/14のレギュラー放送で放映あり)
ESPNで中継する場合、日本版のFITE.TVでの放映(PPV)の可能性がありますが、最近はめっきり減ってしまいましたね。ちなみに確かテイラーvsラミレスの4団体統一戦は、FITEでもPPVで放映されていたと思います。
また2〜3日前にFITEのサイトをチェックしてみてください。私も気づけばブログでお伝えします。ちなみにESPNの放送は日本時間2/27(日)AM4:00〜。メイン開始時間はいつものイギリス興行と同じく、7:00くらいかな、と思います。
ともすればスーパーライト級卒業の一戦となるかもしれないUndisputedチャンプ、ジョシュ・テイラーの戦いぶりは楽しみです。