注目試合だらけの2/26(日本時間2/27)。
私は仕事だったので、仕事が終わって家に帰って諸々を片付けてから見ますが、このように注目ファイトが多い時は数日間にわたり情報遮断しなければなりません。
全部見終わるのは3/1くらいかな、と思いますが。
ということで絶賛情報遮断中、このブログをアップする時点ではまだShowtime興行の結果も知りませんし、岡山興行の結果も知りません。
ということで今回は、スーパーライト級4団体統一王者、ジョシュ・テイラーがグラスゴーに凱旋したトップランク興行、テイラーvsキャトラルの興行の観戦記です。
2/26(日本時間2/27)イギリス・グラスゴー
フェザー級10回戦
ロベイシー・ラミレス(キューバ)8勝(4KO)1敗
vs
エリック・ドノバン(アイルランド)14勝(8KO)1敗
オリンピック2連覇、ロベイシー・ラミレスのプロ10戦目。エリック・ドノバンもしっかりとしたアマキャリアの持ち主で、36歳という年齢です。
好戦績ですが、ほとんどの相手は負け越しのボクサーであり、プロスペクトのゼルファ・バレット(イギリス)にはしっかり負けています。年齢的にも、プロスペクトとは言えないですね。
サウスポー同士の一戦、ゴング。
ゆったりとしたリズムでプレスをかけるラミレス。ドノバンはスピードもさほどなく、パワーもあまり感じません。まだ様子見段階だから、でしょうか?
開始1分過ぎ、ラミレスが少し強く振ったロングの左フックでドノバンがダウン。
その後もかなり余裕を持ってプレスをかけ、ドノバンを攻めるラミレス。ドノバンはロープのそばをぐるぐるとまわり、攻めれば逃げられ、なかなか上手くは戦えません。
2R、ドノバンはまっすぐのジャブを出します。良いジャブですがラミレスには当たりません。ラミレスはそのジャブのリターンで同じく左からのストレートのコンビネーション、パワー差もありますね。
ラミレスのブロッキングは固く、ドノバンのパワーではびくともしません。
唯一、ラミレスはビッグパンチ(左のオーバーハンド)を狙っているので、その打ち終わりを狙えば勝機は出てくるかも知れません。しかしいつの間にやらドノバンは右眼付近をカット?、流血しています。これはラミレスの左オーバーによるものでしょう。
3R、ガッチリとしたガードでプレスをかけるラミレス。ドノバンに対し、完全に怖さは感じていません。ラミレスはガードを固めて前進するだけなので、ドノバンも強気でコンビネーションを打っていきます。
しかしそのコンビネーションの打ち終わりに、ラミレスが強いパンチをリターン。
この数発のパンチで、ドノバンは効いてしまい、最後は左ボディ(に見えましたが違うかも)でドノバンの体が宙を泳いだところで、レフェリーがストップ。
ロベイシー・ラミレス、3RTKO勝利。
ちょっと力が違いましたね。ロベイシー・ラミレス、そろそろ試練を設けてもらいたいものです。
WBAスーパー・WBC・IBF・WBO世界統一スーパーライト級タイトルマッチ
ジョシュ・テイラー(イギリス)18勝(13KO)無敗
vs
ジャック・キャトラル(イギリス)26勝(13KO)無敗
たった18戦、無敗のままスーパーライト級4団体を統一してしまった議論の余地なき王者、ジョシュ・テイラー。
今回は地元スコットランドのグラスゴーにイングランド出身の挑戦者、ジャック・キャトラルを迎えます。カトラル、カテロール、呼び方は様々ですが、私は以前に見た動画でキャトラルに聞こえたのでそのままにしておきます。まあ、どうでもいいんですけど。
さて、ゴング。
関係無いことなんですが、ESPNの画面ではテイラーのところにスコットランド国旗、キャトラルのところにイギリス国旗のユニオンジャック。テイラーのところにスコットランド国旗を表示するなら、キャトラルのところはイングランド国旗にすべきでは?と。まあ、どうでもいいんですけど。
初回、サウスポー同士前手の右を泳がせ、牽制のしあい。ファーストヒットはキャトラルの左ストレート!これは意外。キャトラルは映像でみたとおり、じっくりと相手を見て落ち着いて戦うタイプのボクサー、ダッキングした時の頭の位置等はテイラーをよく研究しているのかもしれません。
テイラーはかなり攻めにくそうにしています。いつものようにステップインを含めた流れるようなコンビネーションはまだ出ません。
キャトラルは身長がテイラーよりも低いですが、スタンスをかなり広くとり、頭も低くして右肩を出し、いつでもダッキングできるように構えています。
やはり左ストレートを打つ時は体が流れますが、これはかなり半身になって構えるところが影響しているかもしれませんね。
2R、スピードや体のキレはテイラーが勝りますが、キャトラルはテイラーのフェイントには全く反応しません。かなり半身で構える分、キャトラルのジャブはリーチの割には非常によく伸びますし、テイラーとしては遠く感じているのでしょう、プレスこそかけるもののなかなか攻めれません。
そして距離が近くなれば頭を下げて肩をぶつけてくる、クリンチ、ホールド、ダーティテクニックも含めて、キャトラルはやりづらいボクサーですね。
終盤はテイラーがラッシュ、これは感触的には良いでしょう。
3R、ちょっと荒れた展開になりそうですね。キャトラルは近い距離で肩、肘を使って押し返し、テイラーの頭や腕を抱え込む事も。更に、テイラーにとって嫌なタイミングで良いパンチを当てたりもするので、テイラーはかなり苛ついているように見えます。
4R、低空飛行のキャトラルにあわせて、テイラーも徐々に頭が低くなっています。レフェリーが毎度のように試合の流れを止めますが、こういう展開はレフェリーにとっても非常に難しいですね。
とにかく今日のテイラーは思い切りよく攻められません。これはキャトラルのある種の巧さ、によるものなのだと思います。
5R、テイラーが攻めれば肩でプッシング気味に迎え撃つキャトラル。これも技術とはいえ、私は美しいボクシングが見たい。
ちょっと集中力がキレている素振りを見せるテイラー、ちょっと思い通りにいかなくて今日はおかしい、と感じているように思います。
と思った矢先、キャトラルのワンツースリーがクリーンヒット!
取り戻そうと攻めるテイラーですが、キャトラルは上体の動きを前後させて距離を空けたり詰めたりするのが上手く、上手く連続攻撃ができません。
ここまで微妙なラウンド続きでしたが、このラウンドは素晴らしいコンビネーションを当てたキャトラルのラウンドでしょう。
6R、自信満々で攻め込むキャトラル。これはテイラーは本当にピンチかもしれません。
テイラーの攻めはキャトラルが体をくっつける事によって分断、もみ合いの展開も多くなります。いつもはもっと上手くサイドから攻撃するテイラーですが、今日はまっすぐ入りすぎて、それだとキャトラルの肩、肘に阻まれてしまいます。
そんな中で当たるのはキャトラルのジャブ。基本は待ちのボクサーですが、テイラーが気を抜くとリターンのパンチの手数は多い。
7R、早々にキャトラルにホールドの注意。個人的にもかなりこのホールドは目に付きます。もっと注意が多くても良いし、減点しても良いくらい。(そう感じるのは、テイラーを応援しているからかもしれませんけど。)
テイラーは力んでいる、というかムキになっているようにも見えます。いつもより手数が少なく見えるのは、コンビネーションが出ないからでしょう。
インターバル中、ケル・ブルックが来ておりインタビュー。顔はきれいです。当たり前か。
8R、テイラーも頭が低く、それを押さえつけるようなキャトラル。大荒れ模様です。
クリンチになっても振り回す素振りを見せるテイラー、精神的に良い状態とは言えません。おそらく、キャトラルはいつもこんな感じなのでしょう、落ち着いています。
接近戦での攻防の中、クリンチに行こうとしたテイラーがキャトラルの左フックを浴びてダウン!一瞬スリップにも見えましたが、ちゃんとしっかりと当たっていました!
ダメージはさほどなさそうですが、これはいよいよ危ない状況になってきました!
このダウンポイントを取り返したいテイラーですが、左単発大振り、ジャブも殆ど忘れている状態で、ラウンドが終了。
ジョシュ・テイラーのダウンはキャリア初、とのテロップが。そういえばそうですね。。。
9R、上体の動き、ステップをほんの少し取り戻したように見えるテイラーですが、やはり焦りは見えます。距離が近くなればそれは顕著、どうしても一発目を当てようと力みます。
このラウンドはテイラーがよくやる右にダックして相手の様子を見る、という癖?が出ていたので、まだマシかもしれません。ここから立て直してもらいたい。
しかし本当にもみ合いが多い。これはこれでキャトラルの作戦かもしれませんが。
パンチスタッツは手数、ヒットともに大きくキャトラルが優位と出ています。これは本当にまずい。
10R、テイラーはジャブが出てきて、上体の動きも出てきて、前ラウンドに引き続きやや良くなっています。それでも、キャトラルが「攻めさせない」ことについて巧いのは変わらず。
ジャブをついて攻め続けるテイラーに対して、やや動きが緩慢になってきたように見えるキャトラル、もしかすると過去最高のプレスを受けてスタミナを削られているのかもしれません。
そもそもこのボクサーは12Rの経験があるボクサーだったっけ?
ハーフタイム頃、キャトラルが減点。発端となった行動はちょっとよくわかりませんが、まあ、おそらくホールドだと思います。
その後もテイラーがホールドした時にレフェリーがタイムを求め、両者に注意。
一番頭に来ているのは、テイラーではなくて、レフェリーかもしれません。めっちゃ怒っています。
ともあれ、この減点はテイラーにとって追い風。
キャトラルは明らかに手数は落ちており、強いオーバーハンド気味のパンチに頼るようになってきています。ストレートのコンビネーションは出ませんし、ダウンを奪ったコンパクトなフックも出ません。
11R、いずれにしろポイントは微妙、このチャンピオンシップラウンドを獲った方が勝利へ近づくはずです。
グイグイとプレスをかけるテイラー、キャトラルは足を使ってジャブを突き、攻め入られれば体をくっつけて対応。これまでよりも大きく動いている印象で、どちらかというと逃げモードで、自ら攻め入るということはこれまで以上にしません。
こういう場合、やはり攻勢点をつけるべきだと思うのですが、キャトラルはこれで良いのでしょうか。
と、テイラーに余裕が出てきたな、と思ったところで、終了のゴング。
この終了のゴング後、すれ違いざまにテイラーがキャトラルのお腹をポンと叩きました。グローブタッチの代わりとか、そんなふうに見えましたが、レフェリーの目にはこれが「ゴング後の加撃」と映ったのでしょうか。なんと、コーナーに帰っている途中のテイラーを捕まえてリング中央へ連れていき、減点の指示。何ということでしょうか。
ちなみに、このインターバル中に減点のアクションはするべきではありません。片方はインターバルで休憩と戦略を指示されているのに、片方は無駄に時間を使ってしまう、というのは公平ではありません。もしやるなら(やる意味も不明ですが)、次のラウンド開始後にするか、キャトラルをニュートラルコーナーに行かせるべきではないでしょうか。
ラストラウンド、グイグイとプレスをかけるテイラー、サークリングするキャトラル。ダウン奪取後、明らかに手数の減ったキャトラルには、正直ポイントを与えるに至りません。それでもこのラウンドは流石にキャトラルもパンチを出します。
最終ラウンド終了のゴングが鳴ると同時に、ともに勝利をアピール。
特にキャトラルは肩車までして、完全に勝利を確信しているようです。確信できるような内容ではありませんでしたが、微妙なラウンドも多く、キャトラル勝利も考えられます。
しかし、このボクシングで4団体統一王座に君臨してほしくはない、というのが私の偽らざる気持ちです。ただの好き嫌いですが。
果たして判定は、113-112キャトラル、114-111テイラー、113-112テイラー、2-1の判定でジョシュ・テイラーが勝利!!!
これはかなり際どい判定、敗北もありえました。
ともあれ、生き残ったのはジョシュ・テイラー。
キャトラルも持ち味を大いに発揮し、予想以上、予想の数倍以上の大健闘を見せましたね。戦い方はあまり好きになれそうにありませんが。
まあ、この判定は物議を醸しそうな気もします。テイラーはダウンを奪われてもいますし、5、6Rあたりは完全に危なかった。
おそらく序盤、後半にかけてポイントをピックアップしたのかな、と思いますが、今日のテイラーはとにかく手が出ず、的中率も低かった。
その理由は、かなり斜に構えるサウスポー、キャトラルに距離感を狂わされた事が一つ、キャトラルのダッキングが上手く、肩、肘を使ったディフェンスと距離の作り方と潰し方が非常に秀でていた事で、追撃打を打てなかった事。
更に、押され、抱え込まれ、冷静でいられなかったこと。
すべてはキャトラルの思いの通りにさせられた感がありましたが、その中で何とか勝ちきった事は今後のキャリアにとって大きいはず。
テイラーにとって試練の一戦、生き残ったテイラーと、大善戦のキャトラル、「名勝負」とはいえないまでも、両者を称えましょう。
なかなか見るのに疲れる試合でした。
テイラーはウェルター級に転向でしょうか。正攻法のボクサーにはめっぽう強いですが、やりづらいボクサーには意外な弱さを見せたテイラー、このように晒した弱点について、どのようにコミットしていくのかは非常に楽しみです。