まだ続いている日本時間2/27(日)の観戦記。
イギリス興行、アメリカ興行に続いては、日本・岡山で行われた日本フライ級タイトルマッチ!
このご時世で、地方ジムの興行はかなり厳しいと思いますが、それでもやってくれた倉敷守安ジム。岡山にボクシングの灯を絶やすまいとするこの心意気は素晴らしいですね。ユーリ阿久井という看板選手がいるからこそ、ということもあるのでしょうが、やはりこのジムは応援したい。
ということで今回は、2/27(日)に行われた桃太郎ファイトの観戦記です。
尚、私はBoxing Raiseで視聴しましたが、A-SIGNのYoutubeチャンネルでは無料で見れます。2/28(月)18:00からです。
↓プレビュー記事
イギリス興行、アメリカ興行の観戦記はこちら
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2/27(日)桃太郎ファイト
スーパーフライ級6回戦
神崎靖浩(倉敷守安)6勝(2KO)2敗1分
vs
米田優大(泉北)4勝(2KO)3敗
初回のスタートは、ジャブの差し合いから。神崎が鋭いジャブを飛ばすと、米田もリターン。米田は右オーバーハンドも狙っていきます。
プレスをかけるのは米田の方ですが、神崎のダブルジャブが非常に良い。肩を入れた貫通力のあるジャブから、中盤にはストレートにもつなげます。
米田もキビキビとした動きから強打を放ちますが、このラウンドは神崎のジャブが印象的。
2R、ジャブを起点にストレートを当て始めた神崎。米田は強いフックで攻め込んでいきたいようですがなかなかその距離まで近づくことが難しい。
3R、このラウンドも引き続き、神崎のジャブが冴えます。そこから右へとつなげ、打っては離れる。米田のフックをブロックしてリターン、良い見切りです。
米田はちょっと攻めあぐねているか。どこかで思い切ってチャージしなければいけないかもしれません。
4R、よりプレスを強めたように見える米田、連打がよく出ます。ここでも神崎の突き刺すようなジャブは有効で、ステップのリズムもブロッキングも非常に良い。
ここまで神崎が思いの通りに戦い、米田はこのままではまずいような気がします。
5Rに入ると頭を振って、さらにグイグイと出ていく米田。しかし神崎もペースアップ、速いステップでサークリング、そしてやはり鋭いジャブをヒット。
米田も攻める場面を作りますが、そのほとんどはブロックの上か空を切ります。
ラストラウンド、攻めるしかない米田は猛然とラッシュ。しかし神崎のステップ、スウェー、ブロッキング、これは巧い。付け入る隙を与えませんね。
パワーで押されることもなく、6Rにわたって完封してみせた、と言って良いでしょう。
判定は、59-55が1人、60-54が2人というユナニマスで、神崎が勝利。
やっぱりこのボクサーは巧い。
日本フライ級タイトルマッチ
ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)16勝(11KO)2敗1分
vs
粉川拓也(角海老宝石)32勝(14KO)6敗1分
初回、猛ダッシュで襲い掛かる粉川。なるほど阿久井の強打を潰すために、完全にゼロ距離にしてショートパンチを打っていこう、という作戦。
確かに右ストレートが武器の阿久井にとっては、この展開はありがたい展開とは言えません。
当初は乱されたように見えた阿久井でしたが、中盤には再度へ回り込み、ボディやアッパーをヒット。近い距離でもブロッキングはしっかりと機能しており、下がり、回り、スペースを作ってうまくパンチをコネクトしています。
2Rも開始早々粉川は距離を詰めます。額と額が触れ合うほどの距離、必然的に揉み合いもおおくはなりますが、クリンチはなく、ともに休みません。
コンパクトなアッパー、ボディを決め、この拮抗状態から抜け出しつつあるのは阿久井。阿久井は初回ほどは下がらず、押していきます。
3R、阿久井はいつの間にやら接近戦のステップも巧みになっています。体の位置を変えつつ、多彩なアングルのパンチを打ち込んでいきます。コツコツとしたショートパンチ、距離が近すぎる分、一撃必倒のパンチではありませんが、あのゴツゴツしたパンチはガードの上からでもダメージを与えそう。
粉川もショート連打と強いパンチを使い分けて応戦、それでも阿久井の好ブロッキングに阻まれてやや分が悪いか。
4R、完全に我慢くらべの展開。阿久井にとっても当然気の抜ける展開ではありませんが、サイドに回るとき、相手のパンチを受けた時、軸が乱れない阿久井と、軸がぶれてしまう粉川。終盤には阿久井の左フックで粉川が後退、やはりこの距離では阿久井が強い。
5R、粉川はそれでも、このままいくようです。距離が開けば逆に危険、という判断だと思います。この接近戦に全てをかけて、元王者粉川は意地の前進。
パンチングパワー、的確性、フィジカルの強さ。その全てで阿久井が上回るように見えますが、それでもなお、この距離に勝機を見出そうとする粉川の勇気を讃えます。
途中採点は、三者共に50-45で阿久井。
6R、開始早々、粉川のワンツーボディの強弱をつけたコンビネーションが良い。しかしその後、阿久井はアッパーで粉川の顔を跳ね上げます。
7Rも同様の展開。阿久井はこの近い距離でもジャブを打てるし、後ろ手のダブル、トリプルも使え、この消耗戦の中にあっても非常に冷静、そしてその技術力も光ります。
8R、粉川はこの戦法に一点突破で、阿久井はこのまま倒し切ろうとしています。王者と元王者の意地と意地がぶつかり合う、素晴らしい根比べ。
とはいえ、ここまでの展開を見る限り、ここから粉川が挽回するのはかなり険しい道のりと言わざるを得ません。
中盤、アッパーを決めた阿久井、それに対して粉川はショートのストレート連打、しかしその後阿久井の左ボディが効いたか、手数が落ちて後退の粉川!
阿久井にとってチャンス到来の終盤でしたが、粉川は踏ん張り、ラウンド終了。
9R、それでも一切弱気の面を見せず、このラウンドも開始直後にダッシュで近寄り、猛チャージする粉川!阿久井の強打を受け続け、相当なダメージと疲労を抱えているはずですが、この戦いは本当に見事。
その思いを真っ向から受ける阿久井もまた、ポイントの優位性は関係ないと言わんばかりにそのチャージを受けて立ちます。
中盤の左ボディの打ち合いは、「相手の技を受ける」という意味でまるでプロレス。
ラストラウンド、グローブタッチからそのまま頭をつけた打ち合いに突入した両者。
粉川は最後の力を振り絞り、やや大振りになってきた上、さほど威力はないかもしれませんがとにかく手数。阿久井は変わらず、ジャブを打ち、アッパー、フックとアングルを変えたしっかりと腰の入ったパンチをコツコツとリターン。
フルラウンドに渡り、一切手を抜くことなく、休むことなく手を出し続けた2人の戦士、その戦いは終了。ジャッジは3者ともに100-90という完璧なフルマークで、ユーリ阿久井政悟を支持。
ユーリ阿久井が見事に日本フライ級タイトルを防衛しました。
粉川がよく手数のでるボクサーだとはわかっていたことですが、初回から完全に距離を潰してきたことには、並々ならぬものを感じました。
ハードパンチャー相手のあの戦法は、倒される危険性を孕むものであり、本当に勇気の必要な戦法だったと思います。
それをスキル、ハート、キャリアでフルラウンドに渡り続けた粉川のボクシングは、賞賛されるべきものでしょう。それでも、この一戦、世界に照準を合わせ始めた阿久井と、タイトルを手放して4年超の粉川では、勢いには差があったと思います。
そんなベテランの意地を、そのベテランの土俵で越えてみせたユーリ阿久井。
この元王者の気持ちを持って、是非とも世界戦線へ羽ばたいてほしい。
個人的にはこれで国内を卒業、世界タイトルマッチのチャンスを待てば良い、と思っています。現在の世界ランクは、WBO5位、WBC8位、IBF14位。
もう少し、世界ランクを上げる戦いが必要なのかもしれませんが、WBO王者の中谷潤人(M.T)は次の防衛戦を勝てば転級の可能性があり、WBC王者のマルティネスもロマゴンに勝てばスーパーフライにあげるでしょう。
どちらかの王座が空けば、世界戦の声がかかるのもさして遠くないはずです。
是非とも2022年、世界王者となったユーリ阿久井を見たい。