信太のボクシングカフェ

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ボクシングが大好きです。大好きなボクシングをたくさんの人に見てもらいたくて、その楽しさを伝えていきたいと思います。

【観戦記】ライアン・ガルシアの帰還、藤岡奈穂子が階級最強エスパルサと統一戦!

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祭りの後、そんな雰囲気の日本ボクシング界。

日本ボクシング界において、過去史上最大規模の世界ミドル級統一マッチは、下馬評通り、ミドル級最強の王者であるゲンナディ・ゴロフキンの勝利に終わりました。

しかし、村田諒太の、あの魂を震わせるような大激闘を生涯忘れることはないでしょう。

そしてさいたまスーパーアリーナに降り立った闘神、鳴り響いたSeven Nation Army、本当に夢のような時間でした。

実は、アマプラはまだ見ていません。それは、翌日が仕事だったし他にも注目の試合があったからです。もう少ししたら、気を落ち着かせて見たいと思います。

ということで今回は、ライアン・ガルシアの復帰戦、そしてアメリカの地で快挙に挑む、藤岡奈穂子の王座統一戦の観戦記です。

↓プレビュー記事

boxingcafe.hatenablog.com

 

 

4/9(日本時間4/10)アメリカ・テキサス

WBA・WBC女子世界フライ級王座統一戦

マーレン・エスパルサ(アメリカ)11勝(1KO)1敗

vs

藤岡奈穂子(T&H)19勝(7KO)2敗1分

日本ボクシング界の誇るレジェンド、藤岡。5階級制覇という男女あわせても唯一無二の大記録を打ち立てた日本の誇りが、敵地アメリカで2団体統一王座戦に臨みます。

46歳という年齢は、彼女にとってただの数字。恵まれない日本女子ボクシング界において、黎明期から険しい道を切り拓いてきたレジェンドの健闘を祈らずにはおれません。

相手のエスパルサは、リングマガジンのフライ級1位にランクされるトップボクサー(藤岡が2位)で、WBC王者。当然、この統一戦にはリングマガジンベルトもかけられます。

名実ともに女子フライ級最強を決める決定戦です。

両者の入場、藤岡は非常にリラックスした表情で、楽しんでいる雰囲気。エスパルサは逆に険しい表情での入場です。選手コールになるとエスパルサに大きな歓声が起こりますが、会場が静かになったところで「フジオカ〜!!」という声が響き渡っています。これは完全アウェーにおいて心強いのではないか。

初回ゴング、まずは両者ともにステップを踏み、攻撃のチャンスを探る。様子見はそこそこ、藤岡が右オーバーハンドをヒットし、左フックをフォロー。まだ浅いですが、初回から非常にアグレッシブですし、さすがのキャリア、大舞台にも緊張はなさそうです。

エスパルサも接近戦でショートの右フックをヒットして譲りません。

 

2R、見るからに体の強そうなエスパルサが体で押し込んでくると怖い。エスパルサはジャブも上手いですが、揉み合いとなるぐらいのショートのパンチもコンパクトに打てて上手い。

藤岡はバランスを崩しながらもパンチを出し続けられる体幹を持ってはいますが、ほんの少し、押し負けている印象があります。

3R、藤岡の攻撃に対してバックステップ、ブロッキングのエスパルサは、その後にカウンター。4Rも細かなステップを多用しますが、このボクサーはこの距離感が素晴らしい。思い切って詰めたい藤岡は、このラウンド中盤以降は右ボディから入るパターンがよく、後半はそれを受けてたったエスパルサと乱打戦!この距離では藤岡の手数が勝り、エスパルサは後退。

5R、藤岡は「攻撃こそ最大の防御」とでも言わんばかりに常に先手。エスパルサはサイドにもよく動き、藤岡の強引な攻撃を躱します。ただ、ここは藤岡の攻勢点を取りたいところ。6Rも展開としては変わりません。エスパルサもディフェンス主体、というわけではなく、よくジャブが出るし、パンチをまとめるタイミングも非常に秀逸。これはさすが、としか言いようがない、巧さも強さもあるボクサーです。互いにクリーンヒットを奪いあう大激闘、終盤には藤岡の印象的な左フックがヒット!

7R、前半に藤岡の右オーバーハンドがヒット、するとエスパルサは手数を出して反撃!こういう劣勢に立たされそうな時にこうして手を出せるのは、ここまでのエスパルサのキャリアが濃密だったことを物語っています。

藤岡は少し疲れたか?それともダメージか?手は出ますが、少し回転力は落ちているかもしれません。

 

8R、エスパルサはディフェンスを主軸として時折速いコンビネーション。このコンビネーションは力強くはありませんがキレがあり、しかも数が出てくるので非常に厄介。対して藤岡は先に攻め、そのパンチは硬質ですがややタイミングをよまれているか。

後半、藤岡とエスパルサの右が交錯!藤岡の右の方が、深くヒットしたように見えましたが、これはカメラの画角の問題か?

9R、藤岡は猛烈チャージ。鋭い踏み込みと力強い連打でエスパルサに迫ります!さながらファイティング原田のような攻勢です。

ここまでのパワーパンチのスタッツは、エスパルサ77/210、藤岡80/224と互角。

エスパルサは後半、動きながら右クロスを綺麗にヒット。藤岡はボディも含めて数を打ちますが、やや的中率に劣るか。

ファイナルラウンド、相変わらずエスパルサのジャブは厄介ですが、早々に藤岡が右をヒット!と思ったら、エスパルサも右を返し、これもヒット!一進一退の攻防は最終ラウンドにおいても続きます。

ハートを誇示して手数を武器に攻めいる藤岡!エスパルサも大きなワンツーで藤岡を押し返し、最後までものすごい大激闘!死力を尽くした決戦は、両者力を使い切り、判定へ。

判定は、2者が100-90。。。。と発表された時点で、残念ながら察してしまった。これは、藤岡も察したのかもしれません。もう1者は97-93、3−0の判定でマーレン・エスパルサ。

 

微妙なラウンドはいくつもありました。全体的に見れば互角の闘いでも何の問題もないぐらいですが、こういう試合でも微妙な優劣がつき、思いのほかポイントが離れるということはラウンドま!マストシステムを採用しているからこそ、よくある問題だと思います。

ただ、フルマークというのはかなり厳しい。ホームタウン・デシジョンに思えますね。

しかし、この結果で、藤岡の偉業が否定されるわけではありません。

本当にファイティング原田のような、エンドレスアタックを10ラウンズ。

欲を言えば勝利を手にしてもらいたかったですが、敵地で戦う藤岡の姿は格好良かったし、間違いなく、日本の女子ボクシング界に大きな流れを引き込んでくれたと思います。

この戦いを経て、多くの女子ボクサーが、この道に続いてほしいものです。

 

 

ガブリエル・ロサド(アメリカ)26勝(15KO)14敗1分

vs

シェーン・モズリーJr(アメリカ)17勝(10KO)4敗

こっちがセミファイナルでしたね。藤岡がセミだと思っていました。。。

ロサドはある種の「ミラクルマン」ですが、普通にコロッと負けそうな雰囲気も漂うボクサーです。ただ、やはりメリクジエフ戦の印象が非常に強い分、劣勢となっても大きな期待を持てるボクサー。

初回、軽やかなステップワークを使うモズリー。ロサドはプレス。ちょっと距離が遠く、出そうとしたパンチをしばしば引っ込めるロサドは、もう少し強引に行かなければ捕まえられないかもしれません。

2R、小刻みに体を振り始めたロサド。モズリーはジャブが良いですね。モズリーと書くたびにどうやってもシュガー・モズリー(父)の顔を思い出します。

中間距離ではモズリーのジャブ、近い距離ではクリンチという展開にか、会場はブーイング。

3R、ロサドの攻撃に対してモズリーはバックステップ、頭を下げて対応、そして素早いクリンチ。会場はまたもブーイング、これはモズリーに対して?攻めきれないロサドに対して?それとも両方?

見方によってはロサドのパワフルな攻撃を、長いジャブと近い距離での技術で抑え込んでいるというモズリー。

4R、モズリーの長いジャブになかなか対応できないロサド。モズリーは距離を把握し、うまく戦っています。このラウンドは、ロサドが強い右をヒット、その後も良いタイミングで右アッパーを突き上げますが、これは躱され、逆にモズリーの右アッパーを浴びます。

モズりーは上手い。さすが、息子。

 

5R、中間距離ではやっぱりロサドは厳しい。モズリーのジャブだけが当たる距離からなかなか抜け出せないロサド、安全圏で戦うモズリー、この差は大きく、どんどんと差が開いてしまう印象。

6R、ジャブを前ではずし、またはタイミングをずらして中に入ったと思えばクリンチで分断されるロサド、何とかしなければいけません。7Rも大きく展開を変えることができないロサド。

8Rもジャブから右オーバーを振り回すロサドですが、冷静なモズりーは遠くから真っ直ぐなジャブで遮断、ダッキングからサイドに回り、ディフェンシブに戦いながらも要所でコンビネーション。

中盤、モズリーはショートの右をヒット、これでロサドはダメージを負ってしまったかもしれません。

このような展開でも、ロサドのパンチはまだ怖く、期待できるところがロサドがロサドたる所以ですが、モズリーは倒しに来ない分、逆転のチャンスは徐々に狭まっている印象です。

9Rも全体を通して大きな盛り上がりは少なく、ファイナルラウンドを迎えます。

ファイナルラウンドは完全に逃げ切りモードのモズリー。それを捕まえられないロサド。後半、荒く攻め入るロサドにカウンターをヒットしたモズリー、ロサドは完全に頭に血が上り、より荒くなったところに攻め込まれて試合が終了。

判定は3~0でシェーン・モズリーJr。

ロサドは残念。。。動きは悪くなかったと思いますが、完全に苦手なタイプのボクサーだったかもしれませんね。ロサドを完封したモズリー、ここから無茶苦茶期待できる、という感じのボクサーではないかもしれませんが、ここから浮上の芽はあるのでしょうか。

 

ライアン・ガルシア(アメリカ)21勝(18KO)無敗

vs

エマヌエル・タゴエ(ガーナ)32勝(15KO)1敗

 

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ライアン・ガルシアの復帰戦。復帰戦、と言っても前戦で負けたわけではないので、表現としてはどうかと思ってしまいますね。

いつの間にかタトゥーだらけになったライアン・ガルシア、未知の強豪、エマヌエル・タゴエとの一戦に臨みます。当然、タゴエにはブーイング、ガルシアには大きな大きな歓声が送られます。

まずは注目の初回、サイズにはかなりの違いがあります。ガルシアはでかい。

小さいタゴエ、主にバックステップを踏みながらガルシアの強いプレスに対抗します。

かなり余裕綽々な雰囲気でプレスをかけるガルシア、タゴエはやや固いのか、何とかガルシアの射程距離から離れていますが、あまり余裕を感じられません。

2R、タゴエは少し及び腰のように見えます。非常にディフェンシブで、かつ、プレッシャーを感じ過ぎているのであれば、早期決着もありそうな雰囲気ですね。

後半、ガルシアの攻めでタゴエがダウン!ただこれはちょっとスリップっぽい。タゴエもレフェリーに何かしらをアピール。

スロー映像が流れますが、ガルシアのパンチが当たってタゴエが頭を動かし、動かした先でガルシアのパンチがカスって、バランスを崩したタゴエはダウン。当たっていましたね。

そこにレフェリーが至近距離にいたので、タゴエはそれを避けたらダウンした、みたいなイメージで文句を言っていたのでしょうか。ただ、ガルシアの最後の掠ったパンチの時、タゴエは完全に足が揃っていたので、これはダウンで良いと思います。

 

3R、下がりながら戦うタゴエ、ジャブは非常に速く、良い。ただ、ほとんどこれだけです。ガルシアは終始プレスをかけていきますが、上体が思いっきり立っている腰高スタイルのためジャブを食いやすく、本来行けるタイミングである時もタゴエのジャブで何度も寸断されています。4Rもガルシアの攻撃は鋭いですが、防御に徹したタゴエを詰めきれず。この頃には、序盤の及び腰も何処へやら、タゴエもガルシアのパンチに慣れ、ディフェンステクニックを存分に披露しています。

5Rもタゴエはほとんどジャブのみ。とりあえずフルラウンド戦おう、ということかもしれません。6Rもガルシアの攻撃は非常にパワフルで、鋭い。それを無効化するタゴエのディフェンステクニックも素晴らしいものだ、ということは推察されますが、ちょっとサバイバルモードへの移行が早すぎます。

ガルシアはせっかくロープやコーナーにタゴエを詰めても、タゴエがジャブで反撃してくるとバックステップ。これは勿体無い。もしタゴエを倒したいのであれば、完全に角に詰めて当たろうが当たるまいが攻めなければいけません。

このバックステップを踏まざるを得ない状況は、ガルシアの腰の高さにありそうです。スウェーはよく使いますが、それ以外のボディムーブがほとんどないガルシアは、前で躱したり外したりが得意ではありません。タゴエが低身長ということも関係あるのでしょうが、これまでの試合でもガルシアがダッキング等を使って前で躱す、という姿は殆ど見かけた事はありません。

なので、超攻撃的に攻めながらも分断されてしまいます。この状況ではなかなか倒すに至れないのかもしれません。この状況は7Rも、そして8Rも続きます。

9Rに入るとタゴエが少し戦い方を変え、クリンチを多用。接近戦を挑み、打ってはクリンチを繰り返します。ここまでロープ際で戦ってきたタゴエですが、このラウンドはリング中央。これはリスクを伴うもので、このラウンドはタゴエも被弾が多い気がします。タゴエもパワーパンチを放ち、ここにきてようやく熱戦の兆し。

10R、引き続きタゴエは積極的にパンチを繰り出していきます。逆   にガルシアは手数が減り、タゴエの攻撃に対しては横着なスウェーで対応。左フックを狙っています。

1分過ぎ、とうとうガルシアの右ストレートがクリーンヒット!これで膝を揺らしたタゴエにガルシアは襲い掛かります!!これはノックアウトチャンス!

会場は湧きますが、ガルシアは詰めるというほどの詰めは見せず、一発で終わらせようと狙いすぎているように見えます。ガルシアの手数が単発になってしまうことでタゴエは生き延びました。

11R、また「逃げるが勝ち」ボクシングに徹したタゴエ。とにかくジャブを突いてまわります。背中にはロープ、コーナーですが、ジャブさえ打てばガルシアは止まってくれることが多いので、タゴエにとっては幸運。

ファイナルラウンド、タゴエはここまでの11Rを総括したような戦い方。ステップで下がり、ジャブで嫌がらせ、近づいてパワーパンチを見舞ってクリンチ。ガルシアはやはりほとんどが単発、一発で倒すパワーに自信を持っているのはわかりますが、これではなかなかこのタゴエにはクリーンに当たりません。

ガルシアが終始攻め続けて、規定の12Rは終了。

逃げ続ける相手に、なかなか大変な戦いとなってしまったライアン・ガルシア。久々のリング復帰ということで、リングの感触を確かめる上では良い経験になったかもしれません。

タゴエは勝ちに来たのか、それとも。。。わかりませんが、あれがベストな選択だったのかもしれませんね。

 

判定は、ほぼフルマークでガルシア。

ともあれ、無事に再起を果たしたガルシア。よくぞまあ、タゴエなんていうやりにくい未知の強豪をセレクトしたもんだと感心します。

ただ、今日のパフォーマンスは、ライト級トップ戦線のライバルたちと対戦を嘱望されるようなものではなかったと思います。(それでも、その人気から嘱望されるのでしょうけど)

ライアン・ガルシア。あのルーク・キャンベルを倒したガルシアは、きっとこんなものではないはずです。

よりボクシングの幅をつけ、こういうボクサーも倒せるほどの力を身につけてもらいたいですね。

 

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