日本のボクシング界の歴史を紐解くと、1960年代とか1970年代は何となく、海外に出て戦うトップボクサーが多かったと思っています。
リアルタイムではもちろん見ていない(そもそも生まれていない)この時期は、1968年に西城正三がロサンゼルスでラウル・ロハスを破り世界タイトルを戴冠したり、1970年に柴田国明がメキシコ・ティファナでビセンテ・サルバディルを、同じく1973年にハワイでベン・ビラフロアを破って戴冠したり、と記録を見るだけでも夢のある時期ですね。
1980年代、1990年代以降は日本人の海外挑戦、これはタイトル挑戦だけでなくノンタイトル戦なんかも、非常に減った、というイメージで、私は90年代からボクシングを見ているので、「海外で日本の選手が戦う」ということはそれだけでもやっぱり「すごい!」と思ってしまいます。
長く内弁慶だった日本人ボクサーですが、この頃は海外での世界タイトル防衛戦、海外での世界タイトル挑戦、ノンタイトル戦も目立つようになってきました。今に続くこの流れをつくったのは、西岡利晃だと思っていますし、石田順裕だと思っています。
そして最近のトレンドは、「強くなってから海外へ出ましょう」ではなくて、「強くなるために海外へ出ましょう」です。
思えば中谷潤人(M.T)や亀田和毅(トライボックス)なんてその先駆けで、成功例と言えるでしょう。
ということで今回のブログでは、「強くなるために」海外で戦う3つの興行のプレビュー記事。心おきなく日本人ボクサーを応援しましょう!
4/30(日本時間5/1)メキシコ・プエブラ
松永宏信(横浜光)20勝(13KO)1敗
vs
ジョニー・ナバレッテ(メキシコ)34勝(15KO)17敗2分

メキシコシティから車で約2時間に位置するプエブラ。googleマップでは標高2,100mとなっていました。バリバリ高地。
松永は長野県の車山高原のあたりで高地トレーニングを敢行、アテンドとして坂井祥紀(横浜光)を伴ってメキシコへ。
前日本スーパーウェルター級王者、松永宏信は、2019年に王座獲得後、3度の防衛。この3度の防衛戦はすべて完勝、もっと言えばその前の王座獲得戦、その前の挑戦者決定戦も完勝し、これによりランカーを総なめ、名実ともに「日本に敵なし」状態となりました。
そんな松永は2021年8月、メキシコ・プエブラのリングに上がり、いろいろあったものの初回TKO勝利、その後は日本で矢田良太(グリーンツダ)の引退試合の相手を務め、6RTKO勝利。
そしてメキシコ遠征第二弾の相手、というのが、あのエマヌエル・ナバレッテの兄で50戦以上の戦歴を持つ、ジョニー・ナバレッテというボクサーです。相性は「バケロ」(カウボーイ)、弟と一緒です。
身長は179cm、スーパーウェルター級という階級のことを考えると大きい方ではありません。弟と同様、アッパーは得意な印象ですが、エマヌエルの方は(身長170cmに対して183cmというリーチを持つことから)ロングのアッパーを打ってきますが、ジョニーの方は相対的に見てリーチがさほどでもないことからそこまでこのアッパーは長くありません。が、リーチはある方だと思います。ジャブが非常に長く感じますね。
負けも多いボクサーですが、それは有望ホープたちの踏み台的な役割を担っているため。2017年と2018年にはハイメ・ムンギア、その間にカスティオ・クレイトン、当時は無敗のケルマン・レハラガ、サドリディン・アフメドフ。。。。とまあ、キャリアはかなり濃い。
ただ、ここ最近は対戦相手の質、ということもあって勝ち星に恵まれず、勝ったのは1勝12敗のボクサーや9勝30敗1分のボクサー、この対戦相手の質は両極端が過ぎますね。
あの非常に長く、鋭いジャブ、そしてやはり縦に入れるアッパーカット、この辺りは非常に不気味で、怖いところ。松永の方がボクシングをして優れているとは思いますが、あとはメキシコ、敵地というのがどのように作用するか。
この試合は、地域タイトルがかかる、もしくは、それなりに権威のある地域タイトルに決定戦に出場する権利を得られるような試合になりそう、とのこと。ここで勝ち、次の勝負に勝てば、世界上位も夢ではありません。応援しましょう。
5/6(日本時間5/7)フランス・オートガロンヌ
サミー・ジアニ(フランス)33勝(8KO)3敗1分
vs
木村吉光(志成)13勝(8KO)2敗1分

スペインとの国境も有する、フランス南方に位置するオートガロンヌ県。そのオートガロンぬの北方、ブラニャックという都市で行われるようです。
ボクシング不毛の地の一つである、香川県。現在、香川県民の期待を一心に背負っているボクサーは、(多分)木村吉光だと思います。(その前は石本康隆か)
2015年にプロデビュー、2016年のフェザー級全日本新人王に輝いた木村は、2018年にリチャード・プミクピック(フィリピン)の持つWBOアジアパシフィック同級タイトルに挑戦。この挑戦は判定負けでしたが、再起3連勝を飾ると、2019年12月にOPBF東洋太平洋スーパーフェザー級王者、三代大訓(ワタナベ)に挑戦します。
この試合は大接戦、ヒリヒリした緊張感のある試合で、結果は1-2、全員が1ポイント差という内容で惜敗。そして、続く2020年11月、仲里周磨(現オキナワ)とのホープ対決も、ドローで勝ち星ならず。この仲里戦も非常に緊張感のある試合で、名試合。倒し倒され、となった試合でしたが、ダメージングブローでダウンをした木村と、引っ掛けたようなパンチでスリップ気味にダウンした仲里という構図があり、やや木村に分が悪い引き分けにも見えました。
その一戦の後、現日本スーパーフェザー級王者、坂晃典(仲里)との空位のOPBF王座決定戦に臨んだ木村は、なんとこの試合を3RTKOで勝利。
これはまた、ものすごい試合でした。
非常に好試合の多い木村でしたが、今一歩のところで勝ちきれなかったイメージ。
それを大いに覆してあまりある勝利と言っても過言ではないと思います。この一戦で、大きく覚醒した、と言えるのかもしれません。この試合は、とにかくびっくりしました。
さて、サミー・ジアニ。
このボクサーは、非常に回転力があり、フィジカルが強く、パンチの連打でグイグイ押してくるタイプのボクサーのようです。得意なのは接近戦でしょう。
欧州ボクサーは、こういうタイプが多いですが、一発一発に力を込めて打つのではなく次々と手数を繰り出す中でクリーンヒットを奪い、果てはロープやコーナーに追い詰めてストップを狙う、というタイプのボクサー。決してパワーレスというわけではなく、フィジカルが強いからこその、どんな体勢からもパンチを打てる技術を確立しているボクサーです。
但し、木村もフィジカルは相当鍛えているはず。彼はTwitterで「筋肉痛えぐい」ぐらいしか
呟かないほど、フィジカルを鍛えに鍛えています。
そして、坂戦で見せた思い切り打ち込む右、あまり近くならない距離で、サウスポー相手にあの右を打ち込むことができれば、ジアニだってタダでは済まないでしょう。
この試合には、IBFインターコンチネンタルのタイトルがかかっています。
そして、ジアニはIBFで4位、WBC7位という世界ランカーでもあります。
フランスという敵地、ということは心配の種ではあるものの、ここは木村が買ってくれるのではないか、と大きな期待ができるところです。
ここで勝てれば、一気に世界ランク上位の可能性。夢広がる一戦です。
5/11(日本時間5/11)オーストラリア・ニューカッスル
サム・グッドマン(オーストラリア)10勝(6KO)無敗
vs
富施郁哉(ワタナベ)11勝(1KO)1敗
フランシス・チュア(オーストラリア)8勝(3KO)2敗1分
vs
三代大訓(ワタナベ)11勝(4KO)1分
シドニーと同じくニューサウスウェールズ州に所属、シドニーから車で2時間ほど北に行ったところにあるニューカッスルでの興行に、日本人ボクサー2人が出場です。
このNo Limit Boxing興行のメインイベントは、オーストラリアの国内ヘビー級タイトル戦、ポール・ガレンvsクリス・タジエフスキーの一戦。
セミファイナルに、WBOオリエンタル・スーパーバンタム級戦として王者サム・グッドマンに日本の若武者、富施が挑むという構図。
チュアvs三代はノンタイトルの8回戦、チュアというボクサーは前戦でリアム・ウィルソン(ジョー・ノイナイに5RTKOで負けて、その後ウェイトオーバーしたノイナイに2RKOでリベンジ)に敗北を喫しているボクサーです。
この三代は、おそらく富施が呼ばれたことにより、試合を組んでもらった感じがあり、下位ながら世界ランクも保持していることから、このフランシス・チュアにとってのチャレンジマッチ、という印象でしょうか。
なので三代はここは完封勝利を収めなければいけません。オーストラリア、判定は当てにはできません。ここは是非とも倒して、ライト級に三代あり、をアピールしてほしいところです。
なので、三代のことは問題なく、「キャリアを積むための海外遠征」だと信じておりまして、問題は富施の方です。
このサム・グッドマンの映像を見ました。10勝6KO無敗という戦績に全く偽りのない、素晴らしいボクサーですね。
これは、日本人も好みそうなボクシングで、ガードこそ少し低めながらも、非常にバランスの良いボクサーです。
バックステップを巧みに使って距離ではずし、それが間に合わなければスウェー。非常に優れた距離感から、素早いステップインとコンビネーション、そこからまたサイドに周り、コンビネーション。その間、バランスが一切崩れません。
マロニー・ブラザーズのボクシングを、もう少し柔軟にしたようなイメージ、に思います。
これは予想以上に強敵です。
しかし、富施は、田井宜広(RST)戦で見せたようなボクシングを完遂すれば、もしかしたらこの強敵グッドマンに勝利できる可能性があります。
まずはプレッシャーをかけること、そして相手の速いコンビネーションに対して、慌てずディフェンスをすること。そして、相手の打ち終わりに素早く踏み込むこと。
このグッドマンというボクサーのレベルは、非常に高い。ここに勝てれば、富施は非常に大きなステップアップを果たすと思います。
是非ともここは勝利を手に入れて、今年を飛躍の年としてほしいものです。
日本人の海外戦はどこかで見れるか
あとは本人からの発表がまだですが、6月には京口紘人(ワタナベ)vsエステバン・ベルムデス(メキシコ)のWBA王座統一戦がメキシコで開催される見通しです。
多分日本での「正式発表」はまだ、ですかね。海外では各所からニュースが出て、日本でもYahooとかに出ていますが、多分本人からの言及はまだないと思います。(4/26現在)
ともあれ、この京口vsベルムデスはDAZNでの放送となるのでしょうが、今回紹介した3つの海外興行については、どのように見れるか、また見れるかどうかもよくわかりません。
松永vsナバレッテの興行については、ポスターの一番上に「FITE」の文字があるので、もしかしたらFITEのPPVで見れるかもしれません。配信国に日本が入っていれば、の話で、とりあえず水曜日か木曜日くらいにははっきりするはず。
フランスの興行については、ちょっと未知ですね。とりあえずポスターに載っていた「ブラニャック・ボクシングクラブ」なるプロモーター?のフェイスブックページは見ていましたが、放送とか配信の情報はなさそうでした。
オーストラリア興行はNo Limit Boxing興行なので、通常オーストラリアではメインイベンツ社が中継。今回はPPVのようですが、日本で見られるかというとちょっと難しいかもしれません。
あとはちょっとわかりませんね。。。
また放映情報がわかったら、このブログかツイッターで報告します!
日本人選手の健闘を祈りましょう!!