週末は、海外戦が盛況。
イギリスではジョシュア・ブアツィ、アメリカではデビッド・べナビデスが登場。そして、同じくアメリカではジャニベック・アリムハヌリもリングに上がりました。
さて、いつもの通り私は仕事で、いずれもリアルタイムでの視聴は叶いませんでしたが、情報遮断、帰宅してからの視聴。
まずは最も気になっていたトップランク興行、ジャニベック・アリムハヌリvsダニー・ディナムの観戦記からです。
↓プレビュー記事
5/21(日本時間5/22)ラスベガス
今回はESPNで放送されたアンダーカードからチェック。
ライト級プロスペクト、19勝(7KO)無敗のジョバンニ・カブレラ(アメリカ)はエリアン・ダミアン・アラウホ(アルゼンチン)に判定勝利。このアラウホは前戦でレモンド・ムラタヤ(アメリカ)に5RTKO負けを喫している選手でした。
カブレラは中々ディフェンシブなボクサーでしたが、ちょっとスピードに欠ける印象。スタミナメンでも「?」がつくボクサーですが、これで20連勝、大事に育てられている感が強いです。メイントレーナーはフレディ・ローチ。
続いて登場はデューク・ラガン。東京オリンピック・フェザー級の銀メダリストで、決勝ではアルベルト・バティルガシエフ(ロシア)に敗れたボクサーです。
相変わらず巧く、そのジャブはよく伸びますね。ビクトリーノ・ゴンザレス(アメリカ)にフルマークの判定勝利、これで6勝(1KO)無敗です。身体能力が高く、素晴らしい反応、素晴らしいカウンターを持っており、コンビネーションも良い。とはいえ、まだまだこれからのボクサーですね。
↓東京五輪フェザー級決勝の観戦記
そしてかなり早めの時間帯、興行開始3試合目ですが元世界王者、ジェシー・マグダレノ(アメリカ)が登場。相手は19勝(7KO)6敗6分のエディ・バレンシア・メルカド(メキシコ)。明らかなBサイドであるバレンシアはプレスをかけるもなかなか手が出ず、ヒット数もかなり少ない。下がりながら周りながら闘うマグダレノに完封され、マグダレノがフルマークの判定勝利。
ここまで大きな盛り上がりの無い拷問にも似た試合が続きましたが、続くルーベン・セルベラ(コロンビア)vsカルロス・バルデラス(アメリカ)の試合は非常に見応えがありました。
スーパーフェザー級6回戦で行われたこの一戦は、初回にバルデラスが左フックカウンターでダウンを奪取、3Rにも左フックカウンターをヒットしてダウンを追加。
セルベラも13勝中11KO(2敗)というハードパンチャーで、力強いパンチを放っていましたが、このバルデラスも12勝(11KO)1敗という戦績、きっとこの左フックカウンターでKOの山を築いてきたのでしょう。
ハードパンチャー同士の一戦は、最後まで緊張感のあふれるものでしたが、結果はバルデラスの判定勝利。見事なカウンターパンチャー、バルデラスは注目ですね。
続いてはアダム・ロペス(アメリカ)vsウィリアム・エンカーナシオン(ドミニカ共和国)。
19勝中15KO(2敗)というハードパンチを持つエンカーナシオンは、初回、右カウンターで早々にダウンを奪取。ロペス危うしか、と思いましたが、そこからしっかりと持ち直し、2Rには手数で攻勢に出ます。
しかし3R、またもエンカーナシオンの右がヒット、ロペスはダウン!!
ロペスはダウンを奪われても諦めずに攻撃を続け、エンカーナシオンはその後徐々に疲れが見え始めます。
もともとディフェンスが良いボクサーではありませんし、これまでの2敗は2KO負け、決して打たれ強いボクサーでもありません。ロペスのパンチに幾度となくぐらつきますが、これは効いているのかもしれませんが疲れが大きいかもしれません。
後半はやや失速気味のエンカーナシオン、そしてロペスもポイントを奪い返そうと頑張ったためか、疲れが見えます。
この試合は、76-74が一人、77-74が2人でアダム・ロペスを支持。
これは結構、ロペスに有利に出た判定だと思います。ポイントを見るに、エンカーナシオンがダウンを奪っているラウンドでも10-9とつけているジャッジが2人いる、ということになります。他のラウンドはロペスにつけるラウンドも多かったと思いますが、このポイント差でいうと1R、3R以外のすべてのラウンドがロペス、ということになってしまいますね。
判定は露骨で残念でしたが、素晴らしい好ファイトでした。
エンカーナシオンの次戦は日本で、亀田和毅戦。亀田は序盤、特に気をつける必要があります。ただ、エンカーナシオンはかなり雑なところがあり、回転力はそれほどでもないので、もしインサイドで戦う事になっても亀田のハンドスピードならカウンターを取れるかもしれません。
いずれにしろ、やはりこのエンカーナシオンは強敵。7月が楽しみです。
さて、もうだいぶ疲れたわけですが(笑)、いよいよメインカードの放送です。
メインカード
メインカードの一発目は、3勝(2KO)無敗のタイガー・ジョンソン(アメリカ)。実は見落としていました、というか知らなかったです。今日、ジョンソンが出るなんて。
東京オリンピックのシルバー・メダリストは前座で、メダルに届かなかったジョンソンがメインカードの放送枠に乗ってくるというのは不思議なものですが、やはりこのジョンソンは巧く、強い。
オーグスティン・ゲルバルド・クチャースキー(アルゼンチン)というボクサーを終始余裕を持った上で圧倒、3RTKO勝利。役者が違いました。
セミファイナルが始まるまでの間は、カンボソスvsヘイニーをばんばん宣伝していますね。ということはカンボソスvsヘイニーのときはイノウエvsドネアをばんばん宣伝してくれるということでしょうか。
ESPN版もみてみようと思います。
ライト級10回戦
ジャメル・ヘリング(アメリカ)23勝(11KO)3敗
vs
ジャーメイン・オルティス(アメリカ)15勝(8KO)無敗1分
元世界王者、ジャメル・ヘリングの復帰戦。ただ、相手は期待のプロスペクト、ジャーメイン・オルティス。
初回、リズムよく攻め込むのはオルティス。ヘリングはゆったりとしたリズムから鋭いジャブ。ヘリングは思ったより悪くありません。ジャブは非常に走っているし、じっくりとプレスをかけ、オルティスを下がらせています。
ただ、オルティスのコンビネーションも良いですね。その踏み込みは鋭く、流石、期待のプロスペクト。
2R、良いリズムを刻み、素晴らしいステップワークから攻め入るオルティス、ヘリングのジャブも届かなくなってきました。
近い距離ではオルティスの方がよりパワフルで、回転力に優れます。
一瞬で距離を詰めれるダッシュ力を持っているオルティスは怖いボクサーです。パワーも素晴らしく、終盤、オルティスの右でヘリングはダメージを被ります。
3R、ヘリングのジャブ、ストレートは長いですが、それに反応時動力で対応するオルティス。ともにダッキングした時のヘッドバットは気をつけてほしいですね。
4R、このラウンドは序盤、バッティングかと思いますがヘリングが後退、そこに襲いかかるオルティス。中盤以降はやや落ち着きます。
ただ、やっぱり頭の位置は気になりますね。頭はかなりたくさん当たっていそうです。
5R、ここまでのパンチスタッツは全くの互角。このラウンドの前半、オルティスはコンビネーションでの波状攻撃を見せますが、ヘリングはボディムーブでかわします。
その後中間距離で過ごしたあと、中盤以降はやや距離が詰まる展開。この距離だと、オルティスのコンビネーションが非常にパワフル。ただ、オルティスはこの距離を続けず、自らステップを使って離れます。
6R、ここまでも随所でスイッチをしてきたオルティスが、このラウンドはサウスポースタート。ちょっと雰囲気が違います。このサウスポースタンスでも非常に鋭い右ジャブを持っているのが非凡です。
このラウンドはオルティスの入り際にヘリングの印象的なアッパーがヒットする場面も。
この後、オルティスはスイッチを繰り返しますが、オーソドックスのときにはどうしてもバッティングが発生してしまいますね。
7R、機動力に衰えを見せないオルティスは、ノーガードから一瞬の踏み込み、ボディムーブを使いヘリングを幻惑。このスピードにちょっとヘリングがついていけなくなってきているようにも見えます。
ヘリングはちょっと疲れたか、ラウンド終盤、オルティスに打ち込まれてしまいます。
8R、オルティスの動きは序盤よりも良いような気がします。これはヘリングが落ちているからでしょうか。
軽やかなステップワークからカウンターを狙い、かと思えば一瞬の隙をついて鋭い踏み込み。
9R、接近戦、もみ合いの時間も増えてきて、ここで有効なのはオルティスのボディショットか。オルティスのショートは非常に力強く、手数と回転力もあります。
この距離では苦しいヘリングですが、負けじと打ち合い、退きません。ただ、ヘリングにとっては得策とは言えません。
ラストラウンド、強気に攻め入るのはオルティス。出入りのボクシングは非常にダイナミック、足を止めての打ち合いでも非常にパワフル。なぜこのボクサーのKO率は50%程度なのか、非常に謎です。
ヘリングは疲労かダメージか、パンチにあまり力が入らず、動きもかなり鈍っています。対してオルティスはまだまだ非常に速く、そして力強い。
それでもヘリングは退かず、最後まで侠気を見せて最終ラウンドのゴングを聞きました。
クリンチに逃げる事もできたでしょうし、距離をとってダメージを被らないようにもできたはず。しかしヘリングは、最後の最後まで勝負を投げませんでした。
判定は、97-93×2、96-94×1でジャーメイン・オルティスを支持。
判定は至極順当だったと思います。ジャメル・ヘリングは、次世代のボクサー、ジャーメイン・オルティスにバトンを渡し、その役割を終えたのかもしれません。
WBO世界ミドル級暫定王座決定戦
ジャニベック・アリムハヌリ(カザフスタン)11勝(7KO)無敗
vs
ダニー・ディナム(イギリス)14勝(8KO)無敗1分
そしてメインイベント。ジャニベック・アリヌハムリの登場です。アナウンサーは「アリムハヌラ」と言っているように聞こえますね。早くメジャーになって表記を統一してもらいたいものです。
さて、ゴング。
まず細かく上体を振り、フェイントをかけつつプレスもかけるのはアリムハヌリ。そして鋭いジャブを飛ばします。ハンドスピード、体のスピード、非常に速い。ディナムはしっかりとした構えからジャブを飛ばしますが、比べてみると歴然のスピード差。ディナムはちょっと固いか?
前半に軽いワンツーをヒットしたアリムハヌリは、その後もフェイントをかけつつ時に鋭い踏み込みを見せ、コンビネーションをヒット!この最後の右ストレート(前手)も当たりはやや浅いか、と思いましたが、ディナムはそれを受けてアリムハヌリによりかかるようにダウン!
さて、ここからも冷静なのがこのアリムハヌリというボクサーです。
この後も左ストレートをヒット、ジリジリと追い詰めてはジャブからワンツー、これは決して振り抜きません。
生き延びたディナムですが、画面は紅潮し、ダメージは明らか。
2R、アリムハヌリは決して気を抜きません。ややプレスをかけ気味の体制から、相手が打ってくればバックステップで確実にかわし、打てそうなタイミングでカウンター。このラウンドも序盤にディナムの打ち終わりに左ストレートをヒット、その後アリムハヌリのフェイントにひっかかって踏み込んだディナムはよろけて膝をつきます。これはディナム、既にかなりのダメージかもしれません。
再開後もまた転ぶディナム。。。。もうやばいのではないか。。。
それでも非常にクレバーなアリムハヌリは、中間距離で様子を見てフェイントからのジャブ、ワンツー、カウンターの左。
決して無理をせず、安全圏からジリジリと追い詰めます。
アリムハヌリの左カウンターがかすめ、よろりとしたディナムは後退、ここで打って出るアリムハヌリ。ロープ際、ワンツー、ワンツーをヒットしたアリムハヌリは、次も同じタイミングで今度はジャブから左アッパー!!!
これをまともに浴びたディナムは崩れおち、レフェリーは試合をストップ!!!
ジャニベック・アリムハヌリ、2RKO勝利、WBO世界ミドル級暫定王座を戴冠!
まぁ、見事としか言えませんでしたね。
アリムハヌリの方がパワーやテクニックに優れており、アリムハヌリの勝利は固い、とは思っていましたが、想像以上の差がありました。
ディナムはイギリスから乗り込んできましたが、本当に全く何もできず。
ただただ、アリムハヌリの強さを見せつけたという試合となりました。
さて、ジャニベック・アリムハヌリ。中央アジアのカザフスタン出身というだけで身近に感じるボクサーですが、前戦のエンダム戦では余裕を持ちすぎた戦い方が少し鼻についたボクサーでもありました。
ただ、このボクサーは驚くほど冷静なだけなのかもしれません。
鬼神のようなGGGとは又違い、こちらは冷徹なマシーンのよう。
冷静に、確実に仕留めきったこの殺戮マシーンは、世界タイトル初戴冠の瞬間、両手をあげて感情を表しました。
今後、どのようなキャリアを歩んでいくのか。
世界王者となっても恵まれなかったGGGとは違い、世界初戴冠(しかも暫定)の試合から既にESPNでの放送という大きなバックアップを受けています。
ここからもっともっと人気が出ていってほしいボクサーですね。
是非とも「BooBoo」アンドラーデ戦を実現してほしい。