8月最終の週末は、注目興行がやや控えめな印象。
しかし、その中でもやはりボクシングの灯火は消えず、日本ではスーパーホープ、武居由樹(大橋)がOPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王者、ペテ・アポリナル(フィリピン)に挑むという初のタイトルマッチに臨みます。
↓プレビュー記事
そして、アメリカでは「スナイパー」ホセ・ペドラサと、リチャード・コミーが激突する、元世界王者同士のサバイバルマッチ。
ということで今回は、ペドラサvsコミーをメインに据えた、ESPN放送のトップランク興行をプレビュー。
8/27(日本時間8/28)アメリカ・オクラホマ
スーパーライト級10回戦
ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)29勝(14KO)4敗
vs
リチャード・コミー(ガーナ)30勝(27KO)4敗
Jose Pedraza Vs Richard Comey In The Ring Next Saturday In Tulsa, USA
これぞ本当のサバイバルマッチ。
元IBF世界スーパーフェザー級、そして元WBO世界ライト級王者であるホセ・ペドラサ。3階級目となるスーパーライト級に転級したのは2020年で、その初戦でホセ・セペダ(メキシコ)に判定負け。
その後、ミケル・レスピエール(アメリカ)、ハビエル・モリナ(アメリカ)、ジュリアン・ロドリゲス(アメリカ)を退けて調子を取り戻し、ホセ・カルロス・ラミレス(アメリカ)とのサバイバル戦に挑むも敗北、今回の再起戦では強敵、リチャード・コミーを迎えます。
ラミレス→コミーという強敵との連戦とはいえ、33歳という年齢を考えると、ここでの連敗は正直キツイ。
その他の2敗も2017年のタンク・デービス(アメリカ)戦、2018年のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)戦と強豪ばかりですが、元々完成度の高いペドラサは、ここから更に向上するか、というと厳しいかもしれません。
コミーも同様に、元IBF世界ライト級王者、という肩書を持ったボクサーではありますが、すでに35歳。前戦は2021年12月に行われたワシル・ロマチェンコ戦で、再起戦で強豪・ペドラサ戦ということになりますね。
コミーはこれまで主にライト級戦で戦っており、世界トップレベルのスーパーライトを迎えるのは初めてのはず。ただ、ペドラサも根っからのスーパーライトではないだけに、コミーの強打は間違いなく通用するでしょう。
個人的な見解を述べればホセ・ペドラサの技巧がコミーを上回るように思いますが、どこかでコミーの一発が当たればわかりません。
そして、何よりも重要なのは、この試合の敗北は、おそらくもう二度と、スーパーライト級のトップ戦線へ上がってこられない、ということを意味しそうなことです。ペドラサはこの階級の世界タイトルに手が届く前に負けてしまった、という現実がありますし、強豪相手とはいえ、両者ともにここ5戦の戦績は3勝2敗、ギリギリのライン。
だからこそ、二人のボクサーは、いつも以上に絶対に負けられない戦いに臨む、真のサバイバルマッチと言えるのです。
このスーパーライト級という階級は、タレントが非常に豊富。豊富すぎるくらいに豊富。
かつての絶対王者、ジョシュ・テイラー(イギリス)は、4団体統一を果たしました。
しかし、その初防衛戦ではジャック・キャトラル(イギリス)を相手に薄氷の勝利を挙げ、その存在は薄まってしまった上、王座のいくつかを手放してしまいました。
この興行の1週間前、テイラーが手放したうちのタイトルの一つであるWBA王座は、アルベルト・プエリョ(ドミニカ共和国)によって制覇されました。
WBC王座は、ホセ・セペダ(メキシコ)とレジス・プログレイス(アメリカ)の間で争われる事が決まっています。本来はこの試合、セペダの相手はホセ・カルロス・ラミレスでしたが、ラミレスが自身の結婚で忙しくキャンセル。ただ、ラミレスはまたタイトルに絡んでくるはずです。
そんなラミレスだけではなく、テオフィモ・ロペス(アメリカ)やライアン・ガルシア(アメリカ)らのスーパーライト級参戦、パーフェクトレコードを継続しているゲイリー・アントワン・ラッセル(アメリカ)等の若きボクサーたちも控えています。
他にもマイキー・ガルシア(アメリカ)を破ったサンドール・マーティン(スペイン)、アマ300勝でリオ五輪銀メダリストのシャフラム・ギヤソフ(ウズベキスタン)等の実力者たちもタイトルを狙える位置まで来ています。
このペドラサvsコミーの敗者は、下から上がってくるボクサーのテストマッチの相手に下がらざるを得ないかもしれません。そうなると、厳しい戦いを連戦でこなさなければならず、そしてそこから這い上がってくるのは至難の業。
ボクシングというスポーツは非常に残酷で、落ちれば地の果てまで落ちていきます。両者にとってここは踏ん張りどころ、トップ戦線への生き残りをかけた一戦であり、ともに意地が試される一戦です。
ヘビー級8回戦
ジャレッド・アンダーソン(アメリカ)11勝(11KO)無敗
vs
ミルジャン・ロブカニン(セルビア)24勝(16KO)2敗
そんな精神的に逼迫した状況のメインイベントとは違い、このペドラサvsコミーを彩るアンダーカードはお気楽に見ていられる、と言っても良いでしょう。
セミファイナルは「ビッグベイビー」ジャレッド・アンダーソンで、対戦相手は戦績こそ良いですがおよそメジャーとは言えない相手。ちなみにアンダーソンは前戦、ロマチェンコvsコミーのセミファイナルに登場しましたが、今回もコミーのセミファイナル。これは集客力がある、と見て良いのかもしれませんね。
ともあれ、このジャレッド・アンダーソンというボクサーは、パワー偏重のヘビー級において非常にスタンダードなボクシングをします。ジャブを打ち、ステップを使い、コンビネーションを使います。まるで中量級当たりのボクサーのようです。
このビッグベイビーが、12Rにわたってそのボクシングを展開できるかどうかは未知数。そろそろ、強豪との試合を見てみたいところです。
その他のアンダーカード
ヘビー級8回戦
エフェ・アジャグバ(ナイジェリア)15勝(12KO)1敗
vs
ジョゼフ・ダルモス(ハンガリー)14勝(10KO)4敗3分
前戦でフランク・サンチェス(キューバ)との無敗対決に敗れたエフェ・アジャグバは、10ヶ月超ぶりのリングでの再起戦に臨みます。サンチェス戦前のブライアン・ハワード(アメリカ)戦はアジャグバのKOハイライトに流れそうな素晴らしいノックアウト勝利だっただけに、非常に残念でしたね。
今回の相手はジョゼフ・ダルモスというボクサーで、完全にアンダードッグの扱い。
アジャグバを復活させようと目論むマッチアップでしょうから、アジャグバはしっかりと倒して再起してほしいですね。
その他、東京五輪銀メダリストのリチャード・トーレス(アメリカ)のプロ3戦目、同じくオリンピアンのデランテ「タイガー」ジョンソンのプロ5戦目がアンダーカードを彩ります。あとはキーショーン・デービスの兄、ケルビンもプロ6戦目に臨みますね。
今回のトップランク興行は、プロスペクト祭りからの、メインのみガチ・マッチメイクという興行。そのガチメインもプエルトリコ人とガーナ人なので、もしかするとアメリカ人の興味を引く事は難しいのかもしれません。もう少し、セミあたりで良いマッチメイクを見たかったですね。
放送・配信
このトップランク興行は、アメリカではESPNで生配信。そして、日本ではFITE.TVがPPVでライブ配信をしてくれる予定です。(FITEはいきなり配信がなくなったり、時間が変わったりするので注意が必要です。)
日時については、日本時間で8/28(日)AM9:00〜となっており、放送内容はセミファイナルとメインのみ。そうなるとメインがAM10:00前からの放映となってしまうので、これは明らかに怪しい。おそらくメインがお昼前後くらいになると思うので、もっと放送カードが多いか、もしくは開始時間が遅いか、のどちらかだと思います。
各々、前日又は当日に開始時間も含めて確認してください。(PPVも前日の夜か当日に購入することをおすすめします。)
↓FITE.TVのPPVリストはこちら
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