降って湧いたような世界タイトルマッチ。
当初、BoxRecに載っていたのは、パンヤ・プラダブスリvs小浦翼というマッチアップでした。が、おそらくただの間違いだったのでしょう。
田中は2020年3月、WBA世界ミニマム級タイトルマッチでノックアウト・CPフレッシュマートに挑戦し、ほぼフルマークの判定で敗れています。同年11月に再起戦を戦い判定勝利、そこから2年近くのブランクを経てまたも世界タイトル戦のチャンスを掴みます。
パンヤもCPフレッシュマートにサポートされるボクサーで、リングネームはペッチマニー・CPフレッシュマート。つまり田中の情報は筒抜けの状態であることが予想され、更にCPフレッシュマート陣営は「丁度良い相手」として田中を挑戦者に選んだ可能性すらあります。
ここはひっくり返してほしい。。。!
ということで今回は、タイで行われたパンヤ・プラダブスリvs田中教仁の観戦記。
WBC世界ミニマム級タイトルマッチ
パンヤ・プラダブスリ(タイ)38勝(23KO)1敗
vs
田中教仁(三迫)20勝(10KO)8敗
ともすれば最後の世界挑戦、最後の戦いとなり得る37歳、田中の挑戦。
(タイの興行でありがちな)長い長いセレモニーのあと、開始のゴング。とはいえ、この長いセレモニーも、敵地の洗礼も2度目とあって田中は非常に落ち着いて見えます。
開始早々、アグレッシブに攻め入るのは田中。この勢いは大事で、ここは敵地タイ、倒さなければ勝てないと思って良い。
攻める田中に対してパンヤは下がりつつの迎撃、田中は被弾しながらも前進します。強いプレスでパンヤを追い立てる田中、パンヤは鋭いジャブを突き、大きくリングを使っています。
2R、開始のゴングは聞こえませんが、始まっているようです。このラウンドも攻め入るのは田中。しっかりとガードを挙げてジャブを放ち、強い右を打ち込んでいきます。パンヤは多彩なアングルのパンチで対抗、特にアッパーには気をつけたい。
3R、開始早々に田中は強いプレスでパンヤをロープに押し込みます。パンヤは左右のボディを意識的に叩いて応戦します。一歩も退かない田中、素晴らしい気合と集中力です。
中盤、リング中央での打撃戦からプレス、しつこくしつこくパンチを放っていく田中、これはパンヤは嫌でしょう。田中は非常に上手く戦っていますが、タイということを考えるとポイントはパンヤに流れているのかもしれません。
4R、ガードを固めて前進する田中に対して、パンヤはアッパーを多用。田中はパンヤの攻撃に対して常に打ち返し、プレスをかけてパンヤを下がらせます。
バチバチの打撃戦は五分五分、パンヤがアッパーを決めれば田中もフックをヒット、押して行くのは相変わらず田中!
5R、開始直前に途中採点みたいなのがでました。三者ともに39-37でパンヤ。1ポイントだけでも取れているのは朗報ですね。
田中のやることは一つ、プレスをかけて強いパンチをコネクトすること。その際、なるべくパンヤのパンチをもらわないように務めなければいけません。特に、顎が跳ね上がったりするのは避けたい。
パンヤはジャブが上手く、また下がりながらのパンチ、そして田中が出てきたところに合わせるボディ、アッパーもタイミングが良い。田中は終盤に強い右をヒットし左ボディもヒットしますが、このラウンドはパンヤがヒット数で上回った印象。
6R、田中は鋭いジャブで攻め込み、このジャブは比較的当たります。が、パンヤはコンビネーションに優れ、軽めのパンチで下がりながらも手数が多い。そして上下の打ち分けも良いですね。
田中はこのままプレスをかけ続け、パンヤの失速を狙うしかないのかもしれません。
7R、開始早々パンヤがワンツーで攻め入り、ラッシュ!田中はこれをガードしてやり過ごすと、プレスをかけて反撃します。
8R、展開は変わらず、パンヤはやっぱりジャブが良い。このジャブをかわしてボディから攻める田中も気迫を感じて素晴らしい。田中の左ボディが効いたのか、かなり嫌がっているように見えるパンヤ。頭を前に倒し、なるべくボディを遠ざけているように見えます。
とすると、田中の光明はこのボディです。ただ、ラウンド終了後、ロープにもたれかかる田中を見ると、ずっと攻め続けているためかスタミナがかなり厳しいのかもしれません。ここは頑張りどころ。
9R、田中は疲労もあるでしょうが、その突進力は衰えるところを知りません!これこそがサムライスピリッツ!
強いプレスで攻め入る田中に対して、パンヤは鋭いジャブとコンビネーションで対応、田中もパンチを返して押していきます。やっぱりパンヤはボディを嫌がっているように見えるので、ここでボディを叩きたい。
10R、パンヤのアッパーが良い。そこから右の打ち下ろしにつなげるのも良い。やはり、強いチャンピオンです。田中も負けじと強いフックを返し、体を使って押していきますが、パンヤの方が手数が多いか。
後半、田中は飛び込みの左フックをヒットしますが、パンヤも右をヒットして反撃。この右で後退してしまった田中はパンヤに攻め込まれる場面をつくってしまいます。
11R、田中が力を振り絞って攻め込みます。右ストレートをヒットしてパンヤの顔を跳ね上げ、その後も左フックをヒット。パンヤもしっかりと応戦しますが、後半にもバランスを崩しながらも右オーバーハンドをヒット、このラウンドは見栄えの面で田中のはず。
それでも「互角」ではいけません。田中にとってポイントはかなり厳しい状況にあるでしょう。
ラストラウンド、序盤にワンツーをヒットした田中は1stラウンド同様にグイグイと攻め込みます。ここは何とか倒してほしい!
パンヤは疲労もダメージもあるのでしょう、田中のジャブで顔を跳ね上げられることもしばしば、田中にとっては最後のチャンス。
ここまで欠けてきたプレスが一気に実るか、とも思いますが、ここでパンヤも強いワンツーをヒット、このあたりの完全に劣勢にさせないあたりは流石のキャリア。
最終ラウンド終了のゴング、悔しさをにじませた表情の田中。よくがんばりましたが、ここは敵地、おそらくポイントは及ばないでしょう。
判定は、119-109、118-110、116-112でパンヤ・プラダブスリ。
思っていたよりも公平に近い採点が出た、というのは良い報せなのかもしれません。116-112というのはこれまでのことを考えると比較的妥当な採点に思えますね。(他の2つは論外だと思いますが、この一人の採点はあり得る、ということで大きな前進だと思います。というプラス思考。)
実は一応タイムを測っていましたが、概ね良好。(始まりのゴングがわからなかったので、おおよそです。)
田中は本当に気合の入ったボクシングを展開し、挑戦者にふさわしいハートの強さを見せました。パンヤは勝ったとはいえ、おそらく気持ちの面では田中が上回ったことで、かなり疲弊したのではないかと思います。
配信が一般的になっている分、多くの人が見る可能性があり、この辺りがちゃんとし始めているのかもしれません。
ということは、鬼門と言われるタイでの戴冠ももうすぐそこまで来ているのかもしれません。
この牙城は、いつかきっと崩してくれるボクサーが現れるはず。
その時を期待して、待ちましょう。
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