週末は国内外で非常に興味深い試合がいくつもありましたね。
日本では後楽園ホールでダイナミックグローブ、そしてエディオンアリーナで大成ジム興行。
私はホールに行き、その帰りにエディオン興行のメインのみを試聴しましたが、これが物凄い大激闘。まさにシーソーゲームと呼ぶに相応しい展開の、THIS IS BOXINGを魅せてくれました。
加納陸は新鋭・井上夕雅に競り勝ったという結果となりましたが、ランキングに反してまだ世界レベルではない、ということも一つの結論として言えるとも感じます。もう少し、地力を養ってもらったほうが良いのではないでしょうか。ただ、陣営としては、これまでもキャリア初期に世界挑戦を実現させていること、やや急ぎ目(に見える)に地域タイトル戦を組んでいることから、早々の世界戦を望んでいそうですね。
今後、OPBF東洋太平洋・フライ級王座には、桑原拓(大橋)が就く予定ですので、是非その桑原との王座統一戦を経て、世界へチャレンジしてもらいたい。日本王者、ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)については、次戦が世界戦だと信じています。
さて、本題と全く関係のない前置きが長くなりましたが、今回のブログは、プレビュー記事すら書いていませんが、ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)のWBC世界スーパーフライ級フランチャイズ王座戦について。
9/3(日本時間9/4)メキシコ
IBF世界ライトフライ級王座決定戦
エクトル・フローレス(メキシコ)20勝(10KO)無敗4分
vs
シベナチ・ノンシンガ(南アフリカ)10勝(9KO)無敗
これまでなかなか見ることができなかったシベナチ・ノンシンガ。長く世界ランク上位に居座り、リングマガジンのランキングでも7位(2022.9現在)されており、評価は非常に高い。
対するはエクトル・フローレス、こちらも無敗のボクサーで、世界挑戦経験のあるジェイ・ハリス(イギリス)に勝利したボクサー。
フェリックス・アルバラード(ニカラグア)の返上した王座を巡り、無敗のボクサー同士が激突します。このタイトルは、今後日本人が挑む可能性も大いにある王座だけに、注目です。
初回のゴング、まず鋭いジャブを飛ばすノンシンガ。体格もよく、想像どおり身体能力の高そうなボクサーです。対してフローレスもザ・メキシカン、ハイガードスタイルからプレスをかけ、体ごと突っ込んでいくマチズモを湛えたボクサーですね。
ノンシンガは突き刺すようなジャブが非常によく、その右はパワフル。しかしフローレスは心身ともに強そうで、恐れる事なく踏み込んでボディを叩きます。二人のボクサーの持ち味がよく分かる初回。これは好試合を予感させますね。
2R、グイグイと攻めるフローレス!ノンシンガはもうほんの少し、離れて進化を発揮するボクサーだと思いますが、このフローレスのプレスは強く、ちょっと距離が詰まりがち。そんな前半を折り返すと、ノンシンガの鋭いジャブが機能し始め、その「ほんの少し」の距離が空いてきたか?と思った瞬間、ノンシンガがワンツーを放ってやや外を回る右がヒット、フローレスはダウン!
立ち上がったフローレスに強い右を放っていくノンシンガですが、フローレスの強い抵抗にあい、追撃はできません。やはり近い距離ではフローレスも強い。
3R、闘志の衰えないフローレスは強いプレスでノンシンガを接近戦に巻き込みます。フローレスはなぎ倒すような、力づくのフックでノンシンガのバランスを崩しますが、パンチのキレはノンシンガにあります。ノンシンガはフローレスの攻めに対して頭の位置をかなり低く動かし、その後すぐにステップでスペースを作り、スムーズなコンビネーションも巧い。このボクサーは、ただの身体能力依存型のボクサーではなく、しっかりとした技量を持っていますね。
しかしフローレスも終盤に力強いパンチをボディに当てて反撃、シーソーゲームです。
4R、グイグイ攻めるフローレス、中盤にはその攻撃が奏功。ワンツーをヒットし、ボディ、ボディ、ボディ、ボディ、執拗にボディを叩き、ノンシンガは後退!後半にはそこから顔面へ返し、ノンストップの連打!メキシカンの頑張りに会場は大歓声、ノンシンガも打ち返しますが明らかに流れはフローレス!フローレスのビッグラウンドも、ノンシンガは何とかサバイブ!!
5R、まるで戦車のように、パンチを打ちながら前進するフローレス!ノンシンガは決して得意な距離ではないと思いますが、頭を低くしてこの接近戦に応戦!ただ、この近い距離ではフローレスの手数に凱歌が上がっていそうです。
中盤、フローレスは額から出血、これはバッティングでしょうか。
6R、ちょっとフローレスの突進が弱まったか?休むラウンドにしたのか、それとも出血が気になるのか。距離が開けばノンシンガの長い距離のワンツーが怖い。
中盤、ノンシンガが距離を詰めてプレス、フローレスをコーナーに詰める場面を作れば、フローレスも体を入れ替えて逆にロープに詰め、ラッシュ。
7R、フローレスは旺盛な手数で前進、しかしノンシンガはブロッキングとステップ、上体の動きでそれをかわし、クリーンヒットは少ないように見えます。ノンシンガは力強いカウンターを返してフローレスの突進を止め、クリーンヒットはノンシンガの方が多く見えます。
後半はもうラストラウンドかのような打撃戦。これは両者とも最後まで持つのか?
8Rも非常にアグレッシブなフローレス。とにかく止まらない手数は素晴らしいですが、その的中率はさほどでもなく、見栄えとしては時折当たるノンシンガの方が上、のように思います。
ともにかなりの疲労を感じますが、気持ちが切れる事なく3分間ずっと打ち合い。これはとんでもない試合です。
9R、先程の続き、とばかりの接近戦。本当にフローレスは止まらず手を出し続けますが、ノンシンガは少々距離をとってから踏み込みながら打つので見栄えが良い。ノンシンガも気持ちが強いですね、弱気なところを見せずに応戦しつつ、時折ビッグパンチをコネクトします。
10R、ノンシンガは少し距離を作って鋭いジャブ。確実に、この戦い方の方が良い。フローレスは突進力が陰り、ミスブローも多くなってしまいます。
しかしノンシンガもステップワークを使える程の余裕はなく、すぐに距離が詰まってしまいます。
11R、ちょっとフローレスは疲れているのか、プレスが少し弱い。少し下がってしまう場面もでてきます。
中盤以降はまたプレスを強めて前進しますが、パンチのキレとしてはやはりノンシンガ、フローレスには「怖さ」はあまり残されていないように見えます。
モーレツ突貫ファイターであるフローレスに比べ、ノンシンガの方が接近戦も含めてボクシングがよくわかっているイメージで、様々な技術的なところはノンシンガが全体的に上回っています。
ラストラウンド、ここは流石に出てくるフローレス、手数は引き続きものすごいですが、的確性がノンシンガなのも変わらず。
しかし後半、この手数に押されるように下がるノンシンガ、相手が下がればフローレスは元気になって更に攻めます。もう相手を倒せるパンチを持っていないかもしれませんが、最後まで攻めたフローレス、それをしっかりと受け止めたノンシンガ。
これはものすごいファイトでしたね。判定は、116-111ノンシンガ、115-112フローレス、114-113でノンシンガ!!!スプリット判定で新王者はシベナチ・ノンシンガ!!
なんと、ノンシンガが敵地メキシコでメキシカンボクサーを撃破、新王者となりました。
個人的には、試合展開としては最後まで前に出て攻めたフローレスかな、と思いましたし、メヒコ判定が出るかと思いましたが、全然出ませんでしたね。
ノンシンガの方が見栄えが良かった、ここを評価されたのかもしれません。
ということで、京口紘人、寺地拳四朗、そしてそのうちに岩田翔吉の対抗王者となったのは、ノンシンガ。身体能力だけでなく、ハートの強さも見せてくれましたね。
WBCフランチャイズ世界スーパーフライ級タイトルマッチ
ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)42勝(28KO)3敗
vs
アルジ・コルテス(メキシコ)23勝(10KO)2敗2分
本来はノンタイトル戦だったと思いますが、直前でフランチャイズ王座がかけられる、との報道。フランチャイズ王座は移動しない、という大根底は覆され、移動するんですね。まあ、前例もあるのでもうどうでも良いのですが。
WBAが王座削減に動くと、WBCが増やすという意味不明のいたちごっこに終止符が打たれるのはいつのことになるのやら。
まあ、置いておいて、エストラーダにとってはこの試合、あくまでも調整試合。ロマゴンとのラバーマッチを希望するエストラーダは、WBA王者、ジョシュア・フランコ(アメリカ)との団体内統一戦を嫌がってWBAスーパー王座を返上。これは逃げた、というよりもファイトマネーが安すぎたのが理由だと思われます。
対してアルジ・コルテスというボクサーは、好戦績を持つナチョ・ベリスタイン傘下のボクサーのようです。ゴング前、ニヤニヤ顔のコルテス。自信の現れなのでしょうか。
初回、ともにステップを踏みながら中間距離での攻防。エストラーダがジャブ、長い距離での左フック、そして右ストレートでやはり優勢ではありますが、このコルテスも反応はなかなか良く、そのパンチは強力そうで、一筋縄ではいかなさそうなボクサー。
2R、エストラーダはジャブから攻め込み、時折ノーモーションの右。コルテスもサークリングしながら良いジャブをリターン、思っていた以上に良いボクサーです。
3R、エストラーダは本腰を入れてプレスをかけ始めたか、強いプレスから右をヒット。その後も左フックをヒットしてラッシュを仕掛けます。ここでフローレスは強気に打ち返しますが、そのパンチは非常にワイルドで、パワフルです。
4R、少し待ちのボクシングのコルテスですが、このラウンド中盤には中間距離から強い右をヒット。コルテスは結構思い切りの良いパンチを打ってくるので怖さがありますね。と思った後半、またも右をヒット、ちょっと動きが止まったように見えたエストラーダ!
更に終盤にも右、ショートの左フックをヒットして、このラウンドはコルテスのラウンドか!?
5R、コルテスは回りつつ、エストラーダに合わせていますが、このボクシングはどハマり。後半にはコルテスからプレスをかけ始め、コンビネーションから攻勢に出ます!ロープを背にしたエストラーダに対してラッシュを仕掛けます!
エストラーダは打ち返してその危機を逃れますが、これは流れが変わったのかもしれません。終盤にも強い左ボディでエストラーダの動きが止まったように見えます。その後はコルテスが大振りになってよくありませんでした。
6R、まさかの展開があり得るのか。
リズムの出てきたコルテス、会場は「ガジョ」(エストラーダ)コール。
コルテスはストレート系のコンビネーションがポンポンとよく出て、これをされるとエストラーダは得意の距離まで詰められません。ジャブの距離では互いに被弾があり、互角の展開ながら、相打ちで下がるのはエストラーダ!
7R。1-3がエストラーダで、4-6がコルテスだとすると、ここで振り出しに戻ったのではないでしょうか。流れはコルテスにあるかもしれません。
変わらずエストラーダがプレス、コルテスはサークリングしつつ対応、という所で、エストラーダのワンツーがヒット、少し動きの落ちたコルテスに追撃の右。
少し距離が詰まり、こ子ぞとばかりにエストラーダが攻め込みます!コルテスも応戦、パンチの交換が続きます。
しかしここは地力の差が出たか、徐々に下がっていくのはコルテス、追いかけてエストラーダは右をヒットして、近い距離で右ボディ!コルテスはダウン!!
立ち上がったコルテスに襲いかかるエストラーダ、コルテスは体をくっつけて何とか凌ぎます。
8R、エストラーダは決める気満々で前進。会場はガジョコール、コルテスも鋭いジャブをリターンしていきますが、やや押され気味。
コルテスは回る動きが非常に大きくなっており、これは「動かされている」という印象です。
ただ、大きく動く分、エストラーダもボディを打てないでいますね。
9Rが開始。したところで気づいたのですが、公開採点があるようですね。4Rが終わった後もあったのかもしれません。77-74×2がエストラーダ、77-74コルテス、と聞こえました。(違うかも)
ボディでダウンしたダメージからはすっかり回復した感じのコルテス、よく足が動きます。エストラーダが打ってきた所にリターン、もらいながらですがよく返しています。先に攻めるのは主にエストラーダ、これをコルテスは距離で外すことも多く、コルテスのリターンについてはエストラーダは上体の動きかブロッキング、ダメージを溜めがちなのはエストラーダに見えます。
ただ、エストラーダのタフネスは驚異的だということはわかっていますので、それ込みの戦略なのでしょう。
10R、展開は変わらず、ですが、クリーンヒットの少ない序盤を過ごします。しかし残り1分ほどのところでコルテスがコンビネーションをヒット、その後エストラーダは単発で返しますが、このラウンドはコルテスのボクシングが上回ったイメージ。エストラーダはちょっと単調か、コルテスにしっかりと距離で外されています。
11R、最後の勝負に出たように見えるエストラーダ、歩くようにプレスをかけてコルテスを追っていきます。コルテスはなかなか見事なステップワーク、嫌なタイミングデジャブを打ったり、右ボディを叩いたりと追うエストラーダを上手く躱してカウンター。
ラストラウンド、ともすればここを獲った方が勝つんじゃないか、というくらいの大激闘。
エストラーダは引き続き強いプレスをかけ、コルテスは動きながらも強振して応えます。やはりこのラウンドまで来ても全く動きの落ちないエストラーダは王者としての強さを発揮、乱れる事なくプレスをかけ続け、これまで通りの被弾もしながらもしっかりと打ち返し、大歓声のうちに規定の12ラウンズを終了しました。
判定は、115-112×2、114-113、3者ともにファン・フランシス・エストラーダ!
エストラーダは薄氷の勝利、超がつくほどのシーソーゲームを何とか制し、次につなげました。ダウンを奪っていなければ、本当にわからない試合でしたね。
変な判定(変にエストラーダ贔屓)を出すジャッジもおらず、ちょっと安心しました。
アルジ・コルテス、これは怖いボクサーですね。今後、日本人と絡む可能性もありますので、覚えておいた方が良いボクサーかもしれません。
さて、ファン・フランシス・エストラーダ。かつてのPFPファイターは、お世辞にも良いパフォーマンスをとは言えませんでした。しかし、いつもに比べて動きが緩慢だとか、スタミナがないとか、そういう事もありませんでした。被弾するのもいつものことですので、結局このエストラーダは誰とやってもこのような激闘になり得るボクサーなのかもしれません。
ともあれ、今日はアルジ・コルテスが非常によく頑張りました。
ローマン・ゴンサレス戦を目指すというエストラーダ、どこまでこのダメージを抱える戦い方でやっていけるのか。バンタム級に上がったとすれば、より相手のパンチは強くなります。不安しかありませんね。。。
明日もボクシング
さて、現地(アメリカ)時間で9/4(日)、日本時間で9/5(月)もボクシング。
アンディ・ルイスJr(アメリカ)vsルイス・オルティス(キューバ)をメインに据えたFOX放送の興行がありますね。
この興行はアメリカではFOXのPPV放送であり、残念ながら日本で見る術がありません。
ただ、イギリス版のFITE.TVであればPPV放送してくれるようで、アメリカのFOXと契約してPPVを購入するよりも、安価に見る方法はありそうです。
具体的には、VPN(日本にいながら、他国にいるかのようにネットワークを構築する)を使ってイギリスのFITEにアクセス、PPVを購入して視聴する、という方法です。
過去、この方法については解説しているので下記記事をご覧ください。
↓これと方法は一緒です。
尚、このイギリス版FITEの放送内容は、
アンディ・ルイスJr.vsルイス・オルティス
イサック・クルスvsエドゥアルド・ラミレス
アブネル・マレスvsミゲル・フローレス
ホセ・バレンズエラvsジェスレル・コラレス(BoxRecではエドウィン・デ・ロス・サントス)
となっています。
なにーーーー!!!
ライース・アリームvsマイク・プラニアがない!!!
そんなわけで、個人的に最も注目している試合がリストにないので、購入するかどうかは迷っています。どうせリアルタイムで見れないし、月曜日の夜は忙しいので見るのは火曜日になりそうですし。悩みますね。。。
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いやー、素晴らしいメキシカンファイトでしたね。非常にエキサイティングで、やっぱりメキシカンは良いものです。
ということで、「私もメキシカンに憧れる!」という方は、是非Casanovaのボクシンググローブを使ってみてください。メキシコからほとんど出る事のない、made in MEXICOのグローブは、メキシコのトップファイターの多くが支持しているボクシングブランドです。
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