未来のPFP候補、ネクスト・メイウェザーの最有力。そしてネクストS.O.G。
未来を期待させる様々な肩書を持つシャクール・スティーブンソンがやってくれました。
みんなの期待を裏切る、前日計量1.6lbs(約726g)オーバー。しかも、再計量までの猶予で落とす気全くなし。
たかが726gと侮るなかれ、体重制の競技においてこの差は非常に大きく、しかもシャクールは絞り切った体をしているわけでもありません。すべては健康のため、と言われると仕方がないのですが、この開き直りっぷりといったらなかなかで、せめてしおらしくしてくれとも思ってしまいます。
なのでコンセイサンを応援、というのは非常に当たり前の流れにはなるのですが、体調不良でもない限りシャクール優位は動かず。
今回のブログでは、結局報酬アップでこの試合を呑んだロブソン・コンセイサンに期待のWBC・WBO世界スーパーフェザー級「変則」タイトルマッチ(コンセイサンが勝利した時のみタイトル獲得、シャクール勝利の場合は空位)、観戦記です。
↓プレビュー記事
9/23(日本時間9/24)アメリカ・ニュージャージー
キーショーン・デービス(アメリカ)5勝(4KO)無敗
vs
オマール・ティエンダ・バヘナ(メキシコ)25勝(18KO)5敗
ESPN放送のメインカードはこのセミファイナルから。
ゴールドのグローブをまとったキーショーン、まずはゆったりとした立ち上がりから鋭いジャブ。
ティエンダは左ジャブ、左フックを振るって果敢に攻め入りますが、キーションはステップでかわします。
メキシカンらしくグイグイ攻めるティエンダですが、キーショーンを捕まえる事はできず、キーショーンの攻めに対してブロックで固まってしまうところはよくありません。
終盤、ティエンダの入り際にキーショーンが右を当ててダウンを奪ったように見えましたが、これはスリップ。当たっていなかったようですね。
2R、グイグイ攻めるティエンダ!これでこそメキシカン!
ジャブを打ちっぱなしで攻め込んでしまうティエンダ、そこにキーショーンはショートの右クロス!初回終盤に当たらなかったこのパンチを当てると、ティエンダは大きく膝を折ります。
キーショーンはガンガン出てくるティエンダに対して、ジリジリと下がりながらのボクシングですが余裕がありますし、クリンチも巧い。
そして相変わらずティエンダが攻めてくるところに右カウンターを狙っており、このパンチはキーになりそうですね。ティエンダはこれに対応しなければいけません。
ティエンダが右を警戒しているとわかると左ボディから左フック、抜け目がありません。
3R、攻める際の勢いを持っているティエンダですが、キーショーンには届きません。相手をしっかりと凝視し、最適なパンチをセレクトするキーショーンに対して、ティエンダは頭から突っ込んでいきます。褒められた事ではありませんが、こうする他ないのかもしれません。
4R、このラウンドはティエンダがガードを固めて、キーショーンを待ちます。キーショーンは警戒しながらもコンビネーション、打ってはクリンチ。思い通りに戦えず、フラストレーションが溜まったティエンダはキーショーンを投げ飛ばそうとまでします。
ティエンダが攻めようとするとキーショーンは右をヒットしてそのまま幽霊のようにすり抜けてティエンダの背面。こんな事ができるんですね。
5R、本気でアップセットを狙っているであろうティエンダは右も左もなく、とにかく勢いよく前にでて攻め入ります。それを時にかわし、時に距離を詰めてクリンチデイナしたキーショーン、中盤にティエンダの入り際にショートの右クロス、この試合で何度もヒットしているこのパンチでクリーンヒットを奪い、これでティエンダはダウン!
立ち上がったティエンダに対して、左右を強振、力強いパンチを叩きつけたところで、レフェリーがストップ!
キーショーン・デービス、5RTKO勝利!
ティエンダは立ち上がったとき、無理矢理平気なふりをしていましたし、そのブロッキングにも力強さを感じました。ダメージはあったと思いますが、しっかりと凌ごうとしていたところにキーショーンの強打の嵐、スローで流れてみるとそのヒット率はエグい。
ガッチリとガードを上げているティエンダに対して、そのガードの間隙を縫うような連打はさすが五輪銀メダリスト。一戦一戦、プロの水に馴染み、力強さも増してきているキーショーン・デービス、今後も期待です。
そういえばこのキーショーンが何度やっても勝てなかったアンディ・クルスは今何処。
WBC・WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
シャクール・スティーブンソン(アメリカ)18勝(9KO)無敗
vs
ロブソン・コンセイサン(ブラジル)17勝(8KO)1敗
そしてメインイベント、体重超過により秤の上で統一王座を失った、シャクール・スティーブンソン。そして前戦ではオスカル・バルデスのドーピング疑惑に巻き込まれた上、判定を盗まれてしまったという感の強い不運のコンテンダー、ロブソン・コンセイサン。
この不運なコンセイサンに愛の手を差し伸べてほしいものですが、これは相手が悪い。
頑張れコンセイサン、といきたいところではありますが、シャクールは盤石かと思われます。
シャクールへの歓声はものすごい。体重超過しようとも、地元ということもあるのでしょう、観客の期待は非常に高いようです。
ということでゴング。
エバーラスト、「エリート」ボクシンググローブ着用のシャクールに対し、コンセイサンはカナリアカラーのアディダスですね。
初回は両者ジャブで探ってスタートですが、比較的アグレッシブに攻め込むのはコンセイサン。シャクールはバックステップで躱し、ワンツー。コンセイサンもステップワークで躱します。
これはさすが、ハイレベルなボクサー同士の絶妙な距離感の戦い。願わくば、フェアな状態で見たかった。
2R、様子見を終えたか、コンセイサンはかなり強気に振っていきます。リーチはコンセイサンの方があるのでしょう、かなり長いワンツー。シャクールは計量こそ失敗していますが減量失敗は感じさせないいつもの動き、反応も良いですね。少し大きく振ったコンセイサンの攻撃をかわして、ショートの左。
3R、これまで技巧派のイメージだったコンセイサン、今日は非常にアグレッシブで、且つ、パワフル。最初にコンセイサンの映像を見たときはパワーレスだと思いました(し、まさかバルですに勝てるなんて夢にも思わなかった)が、今日は本当にパワフルで、またよく動きます。これは敗れはしたもののバルデス戦で自信をつけた、ということなのかもしれません。
積極的に攻めるのはコンセイサン、ですがやはりヒットはシャクールか。このラウンド、シャクールはよく左ボディをヒットしているような気がします。
4R、開始早々にここまでのパンチスタッツが出ます。シャクールは41/120、コンセイサンは21/127。やはりヒット数はシャクール。
ちょっとコンセイサンに勢いがなくなってきたか、シャクールに押され始めます。シャクールがプレスをかけてボディにパンチを集めると、コンセイサンの鋭い踏み込みは激減。
終盤、もみ合ったところでコンセイサンが膝をついたところで、レフェリーはカウント。何故かコンセイサンはダウンをとられたようです。
スロー映像を見ると、そのもみ合いになる前にシャクールが左ボディをヒットしています。これにより、シャクールにより掛かるようにクリンチしたコンセイサンがそのまま膝をついた事から、ダウンとなったようです。
5R、いつの間にか強気に攻めているのはシャクール。遠い距離ではなく、コンセイサンのパンチも当たる距離で微妙にずらし、ボディショット。この距離ではさすがに多少の被弾もあるものの、塩分濃いめの戦い方ではありません。
今日の車クールはステップワークではなく、ブロッキングとスウェー、ダックが主のディフェンスであり、力強いパンチをリターンしています。これはやはり、コンセイサンに怖さを感じない事が大きいのでしょう。
6R、やはりプレスをかけるのはシャクール。コンセイサンはワンツー、ですがこの右ストレートは完全に見切られ、シャクールのボディへのリターンを喰らいます。
常にロープを背にしての戦いを強いられているイメージのコンセイサン、序盤はパワフルに感じたそのパンチもスイングこそ大きいもののパワーを感じなくなってきました。
後半、シャクールの左オーバーハンド!これまでボディに集めてきていた左を上に持ってきたこのオーバーハンドをヒット、終盤にも右フックをヒットしました。圧倒モードです。
7R、コンセイサンのパンチはおもしろいほど当たりません。疲れもある、ボディへのダメージもあるのか、スリップダウンが多くなっているコンセイサン、かなり正念場です。
これは完全にコンセイサンにパワーを感じていないシャクール、固いガードでブロッキングしてリターン、終始前に出ます。
インターバル中、コンセイサンにドクターチェック。週末は近いかもしれません。
8R、ここまでのパンチスタッツは124/321シャクール、39/292コンセイサン。圧倒的です。
また先にプレスをかけるのはシャクールですが、このラウンド中盤以降、勝負に出たのはコンセイサン。振り回すような、体全体を使ったワンツーを連打、シャクールをロープに押し込む場面も。それでもシャクールはもらいません。
破れかぶれかというくらいの思い切ったワンツーを放つコンセイサンに対して、悪魔的冷静さを持つシャクールはそれをブロックしてコンパクトなパンチをリターン。
9R、前足と前足が交錯する位の距離でのボクシングで、ヒットするのはほとんどシャクールのパンチ。当然、ウェイトオーバーしても体調バッチリのシャクールに分があってしまうのは致し方ないとしても、ここまで差があるものなのか。
中盤、もみ合いとなった段階でシャクールはコンセイサンを投げ飛ばして、減点。
10R、ポイント的にもう後がないコンセイサンは逆転を狙ってコンビネーションを打ち込みます。しかしそれを難なくかわすシャクール、左オーバーハンド。
このラウンド後半もシャクールはコンセイサンを投げ飛ばしていますが、ここは減点なし。
シャクールは倒すのは諦めたのか、カウンター狙いの単発になってきています。
11R、シャクールはコンセイサンが出てきたところに左ストレート、左オーバー、左ボディアッパー、等々を使い分けて迎撃。これがまたよく当たる。
手数が少なくなった分、ヒット率はとんでもないことになっていそうです。
ある種平常運転となったシャクールでしたが、このカウンターをヒットさせてコンセイサンを下がらせてからはプレッシャーをかけてコンビネーションにつなげ、徐々にダメージを与えていきます。
ラストラウンド、ジリジリとプレスをかけるのはシャクール。ノーガードで単発のパンチで追い込んでいき、コンセイサンが固まるようだとコンビネーション。
コンセイサンもコンビネーションを放ちますが無効化され、シャクールの反撃にあうとどうしても体が泳いでしまいます。これでは、ポイント奪取すらなりません。
そんなこんなで12Rが終了、判定は117-109×2、118-108が一人でシャクール。
減点が一回、なので12Rのうちコンセイサンがとれたのは1〜2R。
五輪銀メダリスト・シャクールと、五輪金メダリスト・コンセイサンのエリート同士の超技術戦には、プロボクサーとしては圧倒的な差があった、と言って良いでしょう。
ロブソン・コンセイサンをしても、シャクールを「苦戦」とか「勝負」の段階まで持っていく事は困難でした。おそらく、体重超過をしていなかったとしても結果は変わらなかったのでしょうが、本当に公平な勝負が見たかった。
さて、ロブソン・コンセイサン。ストップ負けしてしまうか、とも思っていましたが、このボクサーは思ったよりタフ。序盤、パワフルだと思ったそのコンビネーションは回を重ねると目減りし、やはりパワーレスに思ってしまいます。
これで軟弱な顎を持っていたとするならば、プロスペクトたちの格好の餌食にもなりえますが、このボクサーはタフなので、持ち前の技術で何とかしていつしか王者へとなれるボクサーでしょう。
次戦に期待です。
シャクール・スティーブンソンについてはただただ残念、コンセイサンに対して技術で圧倒したのはそのとおりなのですが、いかんせんこの戦い始まる前からケチのついた戦い。
しかし、そんなケチのついたシャクールについて、彼の試合を「もう見ない」なんていう勇気は我々ボクシングファンにはないでしょう。こういうところも、ウェイトオーバーが常態化している一因なのかもしれません。
ということで、なんだかんだ楽しみにしてしまうシャクールのライト級参戦。
ワシル・ロマチェンコはカムバック戦のパフォーマンスがどうか。
ジャーボンタ・デービスは今後のキャリアが怪しい。
ライアン・ガルシアだってまだまだ怪しい。
デビン・ヘイニーは今度カンボソスをまた塩漬けにしてしまうでしょう。
最近充実のイサック・クルスは今後も楽しみ。
ジョセフ・ディアスの評価が高いのが私にとっては謎ですが、次戦はウィリアム・セペダとこれは超楽しみ。
リナレスに勝ったザウル・アブドゥラエフの音沙汰は?
等々、ライト級は楽しみだらけ。
ボクシングは麻薬のようなもの、とプレイヤー側は言いますが、観客にとっても麻薬のようなもので、ひき逃げしようが一般人に暴行を振るおうが、はたまた歌舞伎町でホステスさんの頭を鷲掴みにしようが、リングの上(とその周辺)にとっては全く関係がないわけで。
ということで、私は今後もボクシングを楽しみます。
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