前日計量で問題が勃発。
1度目の計量で岩佐亮佑、ゼネシス・カシミ・セルバニア、そしてジーメル・マグラモがまさかのウェイトオーバー。
岩佐のウェイトは250gオーバーとのことで、2度目の計量でクリア。マグラモはなんと900gものオーバーでしたが、1.5時間の縄跳びのあと、計量クリア。マグラモに関しては900gオーバーというのは驚きですが、日本が想像以上に寒かった、というのが理由だそうで、最終的に調整が難しかったのかもしれません。結果しっかりと落としたので、ここでコンディションを崩したとしても、自己責任。
セルバニアは早々に諦め、当日計量64.0kgで試合を強行するとのこと。
岩佐vsセルバニアは、フェザー級(57.15kg)戦として発表されていましたが、一週間前に62.0kg契約戦に変更されていたようです。おそらく知っていたファンは皆無でしょう。
当初の予定よりも約5kgも重くなる、というのは前代未聞のことかと思いますが、それはセルバニア陣営の都合であり、そこから更に体重超過というのはいただけません。
「岩佐亮佑のフェザー級転向初戦」という触れ込みのはずですが、これでは話が全く変わってきてしまいます。62.0kgというのはスーパーライト級(61.23kg〜63.15kg)です。
フェニックスバトルは、とにかくこういうことが多い。
非常に素晴らしいマッチメイク、注目度もある興行でこれでは試合を楽しみにしているファンの気持は削がれてしまいます。
そしてこの岩佐vsセルバニアについては、かなり危険な匂いが漂ってしまいますね。様々な事情があるのでしょうが、今後は試合中止も視野に入れてもらいたい。岩佐には怪我なく、勝利をしてもらいたいですね。
ということで今回のブログは、やや気持ちを削がれてしまったフェニックスバトルの観戦記。
↓プレビュー記事
10/25(火)フェニックスバトル
この興行は、ABEMAプレミアムで視聴。ひかりTVやdTVと違い、月額料金はやや高いですが、アーカイブはすぐ出るし、追っかけ再生も可能というのが良いところ。ABEMAさんは最近ボクシング配信も頑張ってくれていて、非常にありがたいですね。
小浦翼(E&Jカシアス)15勝(10KO)2敗
vs
アルアル・アンダレス(フィリピン)14勝(6KO)2敗1分
2試合目で世界ランカー対決。とんでもないマッチアップが並びますね。だからこそ、メインは残念なんですが。
初回、体を振って中に入ろうとするアンダレスですが、小浦のジャブが良い。見るからにフィジカルの強そうなアンダレスは思い切って入ってきますが、ここで小浦の右!これはタイミング的にはダウンかと思いましたが、ヒットはしていなかったようですね。
出てくる相手に対して、こちら側からも距離を詰めてクリンチにいく小浦、この辺りの距離把握は抜群です。
2R、アンダレスは右のオーバーハンドが怖いですね。強引さも持っている怖いボクサー、ここは必然的にバッティングが起こります。右瞼、かなり腫れていますね。
ドクターのチェックのあと、レフェリーがストップ。これは仕方のないことかもしれません。
海外とかだとノーコンテストになりますが、JBCのルールではドロー。
うーん、残念です。
チャイワット・ブアトクラトック(タイ)38勝(25KO)6敗
vs
中嶋一輝(大橋)12勝(10KO)1敗1分
初回、リング中央を陣取り、プレスをかけるのは中嶋。手を出すわけでもなく前進、ロープを背にしたチャイワットに左ストレートをスイング。チャイワットも流石のもので、ロープに詰まり切る前に鋭い踏み込みで反撃します。
しかし、リングを支配しているのは中嶋で、落ち着いてボクシングを展開しています。
2R、このままではいけないと思ったか、チャイワットも自分から攻め始めます。チャイワットの攻撃に対してはスッとバックステップの中嶋は、鋭いジャブ、そして力強いコンビネーション。
3R、開始30秒ほどのところでチャイワットの左がヒット!ちょうど中嶋もパンチを出したところで、カウンター気味になりました。ここから一気に攻撃的に攻めるブラドック、中嶋も強気に応戦!
ブラドックは体ごと突っ込んでくる分、かなり大きな踏み込みです。パワーもありそうですね。後半、中嶋のローブローで中断。スロー映像が流れますが、これは思いっきりローに入っていますね。
4R、中嶋も少し慎重になったか、やや膠着状態。お互いに警戒しあってはいるものの、勢いよく攻め入る場面をつくります。クリーンヒットはほぼありませんが、ちょっと怖い時間です。
終盤、右フックを打ち込んだ中嶋に同時打ちのタイミングでチャイワットが左フックをヒット!中嶋がダウン!!!立ち上がったところにチャイワットが攻め入り、中嶋は足を使ってエスケープしたところでゴング。
5R、中嶋のダメージはあまり感じません。ただ、ちょっと打ち終わりは気をつけたいですね。
しかし1分頃、近い距離での打ち合いとなったところで中嶋はなぎ倒されるようにダウン!
ダメージのほどはわかりませんが、強気に攻めてくるチャイワットに対して、中嶋も強打で応戦!これは危険。
中嶋はビハインドを取り返そうとちょっと焦っているようにさえ見えるプレッシャーをかけていきますが、この打ち様に合わせてくるのがチャイワット。
6R、チャイワットにかなり余裕が出てきてしまっています。フェイントをかけながら狙うチャイワット、中嶋はプレスをかけるも攻めきれない。
中嶋が攻めると確実にリターンをしてくるチャイワット、振り切って攻められない中嶋。
後半、中嶋が右フックをヒットして効かせたように見えましたが、チャイワットも同時打ちのタイミングでヒット。
7R、右に左に動くチャイワット、もう2度のダウンを奪っているとあって無理には攻めてこないのかもしれません。しかし、中嶋のパンチにあわせて出す左右は驚異。嫌な戦い方です。
中盤、中嶋は左をクリーンヒット!プレスを強めて手数を増やし、リスクを承知で攻め込みます!ここでチャイワットは後退、リターンにも力がこもっていません!ボディが効いているのか、防戦一方となるチャイワット!コーナーで防戦一方のチャイワットでしたが、ここでゴング!中嶋は最終ラウンドに望みをつなげます!
ラストラウンド、かなりフラフラにみえるチャイワット。序盤に減点。この減点はちょっと意味がわかりません。中嶋が判定で勝てるように仕向けた、と言われても仕方がないような。。。
クリンチに逃げ、ガード一辺倒のチャイワット、中嶋はクリンチも振りほどいて攻め続けます!ボディを叩き、アッパーで顔を起こし、左右のフック。チャイワットも意地でリターンを返すものの、そこにかつてのパワーはなく、手数も少ない。
対して中嶋の手数は止まりません!チャイワットがロープに詰まったところで、レフェリーがストップ!ただ、チャイワットも手を出していたにも関わらず、ストップというのはちょっと。。。
中嶋一輝、8RTKO勝利。
これは、チャイワット陣営としては納得がいかないかもしれませんね。ただ、続けるのもかなり危険な状態でもありました。
池側純(角海老宝石)3勝(1KO)1分
vs
石井渡士也(REBOOT.IBA)6勝(4KO)1敗
初回、まずは石井がプレス。背中はいつも通り見事な逆三角形ですね。池側はアッパーを巧打、石井の踏み込みにあわせて上手くパンチを当てています。
2R、踏み込みの鋭い石井、リターンで強く踏み込む池側、ちょっとバッティングが怖い展開。比較的遠目の距離から、一瞬で距離が詰まり、その一瞬のタイミングでどちらが上回れるのか、という展開です。
池側のパンチの方がアングルに優れ、石井はちょっと攻撃がわかりやすいか。
3R、ちょっと石井が攻めあぐねているイメージ。池側はサウスポー、リーチも長いとあってかなり距離が遠く感じるのかもしれません。加えて、池側の左ストレートは非常に伸びます。
4R、いよいよ石井のプレスが効いてきたか、石井のパンチが届き始めたイメージです。中盤、右ストレートをヒットします。
5R、中間距離での攻防は、互いにクリーンヒットをほとんど奪えません。そうすると常に攻め続ける石井の方が印象は良いか。
後半、池側が石井の右をかわして左をヒットすると、終盤には石井も右ボディをヒット。
6R、プレスを強めて攻め入るのは石井。それをかわしてリターンする池側。特に石井の右の打ち終わりに出す左ストレートが秀逸な池側、ちょっと石井は苦しいのではないでしょうか。
7R、更にプレスを強めた石井、揉み合いの展開も多くなります。やはり石井のパンチはパワフルで、フィジカルも強い。池側も逃げずに応戦、押し合いながらも退きません。
ただ、ここは石井が打ち勝ったイメージ。
ラストラウンド、早々に右をヒットしたのは石井。池側は右手をすっとつっかえ棒のように伸ばし、石井の侵入を阻みつつ、入られるとクリンチ。そして自らも攻め込んでクリンチ、と、距離のコントロールの良さを見せています。
判定は、1者が77-75で石井、残り2者は76-76のドロー。
池側は素晴らしいボクサーですね。これは流石にランクインするでしょう。石井はランク的には「格下」相手にドロー、ただ池側純というボクサーは、強かった。
OPBF東洋太平洋フライ級タイトルマッチ
ジーメル・マグラモ(フィリピン)26勝(21KO)2敗
vs
桑原拓(大橋)10勝(6KO)1敗
初回、まずはマグラモがプレス。桑原もちょっと警戒気味、バックステップが速い。中盤、マグラモの打ち終わりにコンビネーション、これは良い攻撃。桑原のスピーディーな攻撃に、マグラモはブロッキング主体ですが、この相打ち気味に振る左右は怖い。
2R、マグラモがプレスを強めます。バックステップからのリターンが素晴らしい桑原、特にアッパーが良いですね。
ただ、マグラモはラウンドが進めばもっと強引に、なりふり構わず入って来そうな感じがするので、序盤から中盤にかけてペースを掌握しておきたいところ。
桑原はカウンター、が一発で終わらずにコンビネーションが素晴らしい。ですがマグラモはがっちりガード、こちらはフィジカルが強い。やっぱり中谷戦では良さがなかなか見えませんでしたが、紛れもない強豪です。
3R、ガードを固めてグイグイくるマグラモ、桑原はバックステップからカウンター!桑原は素晴らしい戦い方!このままならポイントは問題ないでしょうから、これを12R続けられるかどうかが鍵となりそうです。
4R、ガードを上げたまま、こんなに速く動けるのはなぜなんでしょうか。攻撃に転じると、そのパンチは単発で終わらずしっかりと打ち分けられたコンビネーション。今戦は左ボディから左フックの返しが本当に素晴らしく、打てばすぐに動くためにマグラモは桑原を捕まえられません。
桑原は圧倒的なスピード差を武器に、ここまでほぼ完璧なボクシングを展開しています。
当然のことながら、途中採点は39-37、40-36×2で桑原。
5R、とにかく距離を冷たいマグラモですが、マグラモの一発に対して2発、3発と返す桑原。マグラモはあまり手を出さずに足で追い詰めていった方が良さそうですが、桑原はあまりにも速い。
マグラモはおそらくボディを嫌がっており、桑原がボディを繰り出すと顔面のガードが下がり始めています。終盤には桑原がキレイにワンツーをヒット!
6R、マグラモが丁寧にジャブを突き始めました。これは桑原にとっても嫌ですね。更にプレスを強くしたマグラモ、桑原もガードの場面が少し増え、動きが大きくなっています。
固まる場面がなければ、桑原のカウンターからのコンビネーションは非常に効果的だと思いますが。
ゴング直後、打ってしまったマグラモ、申し訳無さそうに桑原とレフェリーに謝ってます。こういうところに人柄が出ますね。
7R、やはりラウンドが進むにつれプレスが強くなるマグラモ。桑原は時折迎え撃ちながらもサークリング、しかし序盤のようなコンビネーションは少なくなっています。ここからが正念場。
桑原のカウンターが単発気味になるにつれて、マグラモは前進しやすくなりますが、ここで幾度か両者の右と右が衝突、危険なタイミングです。
8R、桑原はコンビネーションが復活してきたイメージ。ですが、ちょっと振りが大きいか。
変わらずプレスをかけるマグラモ、桑原はインサイドに入られる前に左ボディ、もしくはストレートのコンビネーション!この心身ともに辛いラウンドにきて、このパフォーマンス!
途中採点は、79-73、78-74×2で桑原!あと4R!!
9R、後がないマグラモですが、桑原はまだまだ元気!マグラモがジャブで踏み込んだ時、右アッパーをカウンターしますが、こんなのどうやって打つのか全然わかりません。。
桑原は高い集中力をキープしており、このラウンドに来ても元気なのは桑原の方です。対してマグラモはちょっと雑になっているようにも見え、疲労もありそうです。
10R、このラウンドも桑原のステップワークとカウンターが冴えます。全然落ちません。これは、唯一の敗戦となったユーリ阿久井のプレスをひとしきり受けた経験が役に立っているのかもしれませんね。
マグラモはどちらかというとフッカーで、ユーリ阿久井よりも近い距離で本領を発揮するタイプだと思うので、桑原がそこまで近寄らせないボクシングを展開している、ということもあるのかもしれません。
11R、桑原は非常に良いフットワークを使いながらも、安全圏では戦わず、隙あらば素早いコンビネーションを見せますね。これこそが彼の華であり、ファンを魅了する部分なのでしょう。
後半、桑原の左フックがタイミングよく入り、マグラモは少しぐらついたように見えました。しかし終盤、マグラモも右をヒット!これはかなり危険なパンチ!
ラストラウンド、右に左に動く桑原、マグラモは兎に角追いかけ続けますが、捕まえられる気はしません。
マグラモの動きは少し落ちており、桑原のスピードは落ちていないため、安心してみていられます。このままラウンド終了のゴングを聞きました。
判定は、116-112、117-111×2、3-0の判定で勝者は桑原択!!
見事、見事な勝利、完勝でした!これは桑原のベストバウトに数えられて良いでしょう。
素晴らしいスピードスター、桑原の初戴冠は、2度目のタイトルアタックで見事そのチャンスをものにしました。
本当に完璧なボクシング、ここに桑原拓のボクシングは一度、完成を見たと言って良いのではないでしょうか。ここからのブラッシュアップが、世界への道です。ユーリ阿久井とは世界タイトルの統一戦で再戦してもらいたい!
岩佐亮佑(セレス)27勝(17KO)4敗
vs
ゼネシス・カシミ・セルバニア(カシミ)34勝(16KO)3敗
初回、プレスをかけるのはセルバニア。岩佐はよくジャブが出て、セルバニアは思いの外前に出られません。
中間距離でのジャブの差し合い、ほぼリング中央での戦いです。
2R、岩佐は中間距離で小気味よく軽めのパンチを繰り出し、セルバニアを中間距離に釘付けにします。そこから強い左ストレート、これが岩佐の作戦でしょうから、岩佐がうまく戦っています。ウェイトの件もあるので、乱戦にはなりたくないところ。
今日の岩佐はよくジャブが出て良いですね。
3Rも岩佐は軽めのコンビネーション。良い距離感です。
左ボディストレート、右ボディフック、これも良いですね。ちょっとセルバニアはボディを嫌がっているようにも見えますね。
4Rも同様、岩佐はますボクシングのように軽いパンチから、強打へつなげます。時折当たるセルバニアのパワーパンチ、これに岩佐は効いた素振りを見せませんが、体重の件があるのでなんだか怖い。
と思っていたら、近い距離で岩佐が左アッパーをダブルで突き刺すと、セルバニアはダウン。
立ち上がるも、レフェリーがストップ。
岩佐亮佑、4RTKO勝利!
良いボクシングでした、岩佐亮佑。終始落ち着いており、契約体重の変更に次ぐ変更の上の体重超過した相手に対して、怒りはなかったのでしょうか。
非常にクレバーで、やきもきしていたのは見ているファンだけだったかもしれません。
ともあれ、このような試合をしてはいけないですよね。。
谷口vs石澤のときもそうでしたが、ウェイトオーバーしていない方の選手が勝利した、というのは安心できることではありましたが、だからこそこの流れは止まらないのかもしれません。
とはいえ、選手としては、相手がどうあれ「試合がしたい」というのは常でしょうから、受けた岩佐を責めてはいけないと思います。勝っても負けてもキャリアを終わりにする覚悟もしていた、と語る岩佐は、この試合をキャンセルする術は持っていなかったでしょう。
これはちょっと大橋会長、何とかしてもらいたい。興行ありき、ではなく選手ありき。
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