メインイベント4試合、そしてアンダーカードが2試合、という興行のAmazonプライムビデオプレゼンツ、LIVE BOXING。
そのファイナルバウトである寺地拳四朗vs京口紘人の王座統一戦は、世界のボクシングマニアから熱視線を集めていますが、国内のファンなら他の試合も当然見逃せません。
アメリカでド平日の火曜日、午前4:00に起きて、アマプラ放送の第1試合からしっかりと見たマニアがどれくらいいるのかはわかりませんが、このクアドラプル・ヘッダーのオープニングバウトを飾るのは吉野修一郎vs中谷正義という、「WBOアジアパシフィック・タイトル戦」という冠が霞むほどのビッグファイト。
そして、我らが期待の中谷潤人も登場で、対するは井岡に善戦したフランシスコ・ロドリゲスJr。こちらも非常に楽しみなマッチアップ。
ということで今回のブログは、LIVE BOXINGの観戦記第二弾、吉野vs中谷、そして中谷vsロドリゲスの観戦記です。
↓プレビュー記事
11/1(火)ライブボクシング
WBOアジアパシフィック・ライト級タイトルマッチ
吉野修一郎(三迫)15勝(11KO)無敗
vs
中谷正義(帝拳)20勝(14KO)2敗
アマプラ配信のオープニングバウトは、日本のライト級頂上決戦!
「頂上決戦」というと三代大訓は?となりますが、三代はマッチメイクの面で少々苦戦気味。
対して吉野修一郎のマッチアップ、そして中谷正義のマッチアップは本当に素晴らしいとしか言いようがないマッチメイクを繰り返しています。
そんな二人の激突は、嬉しいような、切ないような。
素晴らしい煽りVTRを見ていても、鳥肌が全然収まりません。
鳥肌がおさまらないまま、両者が入場、ここではお馴染みの「ガッツだぜ」で入場する吉野が、いつものニコニコ顔が印象的。このビッグマッチにおいても平常心なのでしょう。
そして中谷正義は、というと、ややくどめのリングアナウンスのせいで、エクスキューショナーポーズの決めどきをほんの少し、困ったような印象。
ともあれ、初回のゴング。
まずは中谷のジャブが鋭く、速い。いや、これはわかっていたことながら、おそらく想像以上なのかもしれませんし、初回から吉野がこのジャブに対応できるべきなのか、というとそうも思わない分、想像通りなのかもしれません。
中谷は帝拳移籍以後、やはりバランスが非常によくなっているようなイメージで、ジャブの戻しは非常に速く、隙がありません。
ラウンド後半、吉野がインサイドに入れそうか?という雰囲気になってきましたが、ここで中谷はコンビネーション、特に右アッパー、左ボディ、打ち下ろしの右が素晴らしい。
2R、中谷はジャブが冴え渡っています。
しかし中盤、吉野はボディに活路を見出し、当初からおそらく狙っているであろう中谷のジャブにあわせた右クロスもタイミングがあってきているように見えます。
ただ、それでも中谷は非常に遠く、しかも右クロスを警戒しながらもジャブを止めないので、やはりまだ中谷に有利な展開なのでしょうか。
少しずつ、距離がつまりはじめた両者、揉み合いも増えます。
終盤は打撃戦、クリーンヒットの奪い合いです。
3R、バッティングにより、中谷は左目の下をカット。目に血が入る、という場所ではありませんが、バッティングは怖いですね。
このラウンドも中谷のジャブが冴え、吉野はなかなかインサイドに入れません。
中谷はディフェンスも向上しているように見えます。
長く伸ばしたリード、左右へのダッキング非常にバランスが良く、以前のように乱れません。
下半身の力が増したとか、体幹が安定したようなイメージ。
4R、吉野は思い切ってプレスを強めます。時に頭から突っ込むような前進も使い、中谷のジャブをとうとう外し始めます。
吉野は非常にフィジカルが強く、ブロッキングも丁寧で、元々のファイティングポーズのガード位置も高いので、これで中谷のジャブを外せるようになれば一気に近寄れそうな気がします。
中谷は少し大きな動きを見せるようになっており、吉野のプレスがかかってきている印象を受けますね。
5R、吉野はさらにプレスを強め、フィジカルを活かしてグイグイと攻め入ります。それに対して中谷も応戦、序盤はさほどクリーンにもらっている印象はあリませんでした。
しかし、吉野が飛び込みのジャブを使い始めると、これで距離を見誤ったのかそのいくつかが中谷にヒット。
このジャブから細かな連打につなげた吉野!中谷は一気に詰められ、ロープ際で吉野の連打を受けます!
ここは何とか上体の動きで凌いだ中谷でしたが、終盤、吉野の右オーバーハンドをもらい後退。そこから追いかけた吉野は飛び込んでの左、しつこく追いかけて右で追撃してダウンを奪取!!!
立ち上がった中谷、ここでゴング!
6R、ダメージがあるであろう中谷ですが、ここで勝負をかけます。
リング中央、足を止めて、コンビネーション!序盤は明らかに中谷の手数が多く、右のショートをヒット、その後も左右を打ち付けて吉野にガードさせます。
しかし吉野は吉野でブロッキング、ダック、時にもらいながらも非常に冷静で、カウンターのタイミングを見計らって単発で打ち返すところから始め、1分頃のところで左右のフックの連打!この連打で中谷はダウン!!
立ち上がった中谷ですが、帝拳陣営はエプロンに駆け上がり棄権の意思表示!
吉野修一郎、6RTKO勝利!!!!
吉野の強さは、想像以上でした。
体の強さ、攻防のバランスの良さ、スタミナ、さまざまなものを備えたボクサーであることはわかっていたはずでしたが、今回の試合はまたこれまで以上のモチベーションもあったのでしょう。
作戦も本当に素晴らしく、中谷のジャブを封じるために右クロスを序盤から多用、そしてチャンスをものにする嗅覚と、そこで強弱をつけながら攻め入る冷静さ、全てこれまでも見せていた武器を、さらにランクアップさせたものを見せつけられた印象です。
中谷を倒し切った、ということは非常に大きい。かつてのプロスペクト、フェリックス・ベルデホはチャンスに中谷を詰めきれずに逆転KO負け。ーこれは、中谷の回復力を侮った、というかわかっていなかった、そしてベルデホ自身もスタミナに不安があったからだと思いますがーそこも研究していたのかも知れません。
ともあれ、吉野は素晴らしいボクシングを展開しました。
三迫ジムのマッチメイクは、海外に向けてはやや不安なため、いっそのこと帝拳の口利きでトップランクあたりと契約して、海外で活躍してほしいと思いますね。それぐらいのチャンスを与えてあげても良いのではないでしょうか。
そして中谷正義、非常に残念な結果となりました。
長身ゆえ、元々線の細さもあるボクサーであり、耐久力の面においてはやや不安があるかも、と思っていましたが、そこを突かれたような感じ。
ただ、鋭いジャブや打ち下ろし、そして今回はディフェンス面、バランスも向上しているように見えたので、まだまだ、ここまでというボクサーではないと思います。
本当はもっともっと中谷のボクシングを見ていたいですが、元々「一度負けたら終わり」と言っていたボクサーだけに、この「日本人ボクサーからの一敗」は彼にとって非常に大きいことだと思います。まずはゆっくり休んで、答えを導き出してもらいたいものです。
スーパーフライ級10回戦
中谷潤人(M.T)23勝(18KO)無敗
vs
フランシスコ・ロドリゲスJr(メキシコ)35勝(25KO)5敗1分
この試合に先立ち、WBO世界フライ級王座を返上した中谷潤人。「前」フライ級王者として、スーパーフライ級のテストマッチに臨みます。
そのテストマッチの相手は、「テスト」に相応しいとも言えるし、相応しくないとも言える強豪、フランシスコ・ロドリゲスJr。
中谷の敗戦というのは想像できませんが、もしここでこの「チワス」ロドリゲスを倒してしまうようなら、既にスーパーフライ級でも最強かも知れません。
ということで初回のゴング。
いきなり踏み込んでいくのはロドリゲス。中谷は鋭いジャブで応戦。
ロドリゲスはかなり鋭く、大きなステップインで攻め込んできます。非常に強いプレスです。
中谷も強気に打ち返し、荒々しいパンチの交換。ロドリゲスはやはり一筋縄ではいかず、かつて、中谷はここまで強いプレスをかけられたことはないかも知れません。
2R、ロドリゲスは前ラウンド中盤からサウスポーにスイッチしており、このラウンドもサウスポー。中谷を相手にサウスポースタンスで行くようで、これができるのならば正解かも。
というのも、中谷はオーソドックスを相手に前手の右アッパーをカウンターで入れるのが超得意で、スイッチすることでこの必殺技を封じることができるかも知れないからです。
そこからさらに体で押し込んでくるロドリゲス、ミニマム級上がりなのにこのフィジカルの強さは何なんでしょう。
揉み合いの場面が増え、中谷は消耗させられるかも知れません。
それでも、近い距離での攻防で的確性に優るのは中谷。
3R、中谷は丁寧にジャブをつき、このラウンドは少し落ち着いた雰囲気。おそらくセコンドからの指示でしょう、冷静に、中間距離で戦えば、中谷に分があります。
4R、乱打戦に巻き込まれないように気をつけているふうに見える中谷。中間距離ではジャブからストレート、(このストレートが非常にまっすぐで、戻しが異常に早い)近くなればクリンチ、と上手い。
ロドリゲスはややラフなファイトを展開、そして手数も多く、次から次へと仕掛ける様はまさに「チワス」(=チワワ)。
5R、ガンガン出てくるロドリゲス、これは中谷にとっても好ましくない戦い方でしょう。距離が詰まり、揉み合いとなりながらも中谷はアングルを変えたパンチをコツコツと当てていきます。
ロドリゲスの手数は侮れませんが、近距離では中谷のアッパーが徐々に当たり始めている印象です。
6R、ここもロドリゲスは出てきます。中盤、中谷の左がヒット!それでもロドリゲスは臆することなく前進してきます。
7R、中谷は左ストレートの打ち終わりには気をつけなければいけません。ロドリゲスは狙っているのかどうなのかは全然わかりませんが、とにかく中谷が打つとパンチを返してきて、中谷の左に対しては強い右を必ず返してきます。こういうボクサーは、対戦相手からすると非常に嫌。
このラウンド、ロドリゲスはローブローで減点。
揉み合いも多く、なかなか距離が噛み合いませんが、中間距離では中谷が明確に上回り、接近した距離ではロドリゲスの手数の見栄えが良い、という印象。
8R、前半にロドリゲスはチャージ。中谷はアッパーの連打で応戦。
打撃戦へと発展し、ロドリゲスのパワーパンチと中谷の的確性という勝負。
中谷はロドリゲスのパワーでバランスを崩すこともままありますが、的確なパンチにより、このラウンドロドリゲスは左目下付近をパンチによりカットしています。
9R、このラウンドも前進してくるロドリゲス。中盤、中谷の打ち終わりにロドリゲスの右パワーパンチがヒット。これはやはりヒヤリとするパンチです。
中谷もコンビネーションで逆襲、その後は中谷もプレス、互いに距離を測りあって休んでいる印象。
ラストラウンド、突進してくるロドリゲスに対して中谷はやや後手。
中盤にはロドリゲスの手数に押される場面もありながら、後半にはワンツーで逆にロドリゲスを下がらせ、終盤にはパンチをまとめて非常にタフな10Rを終了。
判定は、97−92、98−91、99−90で中谷潤人。
ラウンドごと、僅かに上回ったのは中谷だったと思うので、中谷の勝利は揺るがないでしょう。
ただ、ポイント差以上に苦戦したと思われるのもまた事実であり、これは井岡戦の時も同様です。
非常に強いボクサーではありますが、このフランシスコ・ロドリゲスJrというボクサーは、微妙なところで勝ちきれないボクサーなのかも知れません。
ともあれ、スーパーフライ級初戦を強豪相手に勝ち切った中谷潤人。
今後も非常に楽しみですね。
↓セミとメインの観戦記
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