さて、忙しい日々。
「心」を「亡くす」と書いて忙しい、なんという非情なことばなんでしょうか。
新しい仕事に就いて、気持ちが急いてしまうのもそうなんですが、今年から○○ボクシング連盟の事務局なんていうのを引き受けてしまっていて、それもまた、慣れない仕事(じゃなくてボランティア)だから忙しい。
というかアマチュアボクシング界のアナログっぷりにはなかなか辟易しますね。ちゃんとやれば今の10倍は手続きとか簡単になると思うのですが。
なんていう愚痴は置いておいて、本日はダイナミックグローブ。
更にこのクソ忙しい時に、たまの奥様孝行なんかをしに行っていました。時間もないので(あと、あまり勝負論を感じないアンダーカードのため)メインイベントのみですが、観戦記です。
↓プレビュー記事
1/14(土)ダイナミックグローブ
WBOアジアパシフィック&OPBF東洋太平洋ウェルター級タイトルマッチ
豊嶋亮太(帝拳)16勝(10KO)2敗1分
vs
佐々木尽(八王子中屋)13勝(12KO)1敗1分
このウェルター級は世界的に見れば常に化け物ばかりの階級で、日本人ボクサーでは未だこの階級に世界のベルトを手にしたボクサーはいません。
↓ウェルター級の世界挑戦の歴史
そして、現在日本のウェルター級は小原佳太(三迫)と豊嶋亮太(帝拳)が2大巨頭として君臨、その中でも豊嶋は3団体において15位以内にランクイン、形だけみれば「世界挑戦」の権利を得ている事になります。
この一戦は、総合力に勝る豊嶋が、佐々木の強打をいかに無効化し、どのような「ボクシング」で破壊力に対応するのか、佐々木は、如何ように考え、どのような戦略を練って豊嶋に一発を当てようとするのか、というところが見どころだったはずです。
しかし、そうはなりませんでした。
初回。ハナから近い距離でのボクシング。
豊嶋は王者のプライドなのか、「盤石な勝利」よりも、佐々木の得意な土俵で相手を打ち負かし、力の差を見せつけようとしたのか。
一方の佐々木は、以前のような「とりあえず強振」は控えめで、アグレッシブながらもこちらが丁寧でコンパクトなボクシングを心がけているように見えます。
この接近戦のさなか、佐々木の左フックがヒット、早々にぐらつく豊嶋。
佐々木はそこから獰猛に襲いかかる、かと思いきや、そこも荒ぶることもなく、非情に冷静なボクシングを展開。そして豊嶋も退かず。
佐々木はついに必殺の左フックをクリーンヒット、豊嶋は倒れ、レフェリーはカウント途中でストップ。
佐々木尽の初回TKO勝利!!!
佐々木尽というボクサーは、非情にロマンのあるボクサーで、鋭い左フックはいつでもどこでも倒せそうな雰囲気を持っている反面、これまで幾度も相手のカウンターにダウンを喫してきた、という印象もあります。
「先に当たれば」早い段階で印象的なノックアウトを生んできた分、カタにはまれば(「はめれば」ではない)無類の強さを発揮する、というボクサー。
これまでも佐々木は数々の強豪を屠ってきていますが、ボクシング技術で上回れても、結局一発当ててしまえば終わり、のようなボクシングでした。
しかし、今回それが大きく違ったのは、佐々木はしっかりと相手のことを見て、おそらくしっかりと研究し、一人よがりではない相手にあわせた自分のボクシングを展開した、ということなのだと思います。
今回が格上相手だったから、もしくは国内にほぼ敵のいない豊嶋亮太だったからなのか、下馬評で不利だったのか、冷静さを失わない、アツくならないことをテーマにしていたのか、それはわかりません。
ただ、この2分ほどの時間は、非情に大きな佐々木尽の成長を見せてくれました。
この試合で、「国内最強」が佐々木と小原になったか、というとそうではないのかもしれません。それでも、このロマン溢れるボクサーが、この一つの勝利で豊嶋に代わり、世界タイトルの数歩手前にまで歩を進めた、ということは事実として残ります。
豊嶋は「結果的に」戦い方を間違えた、とも思います。
佐々木を圧倒して降さなければ世界どころではない、そう考えるのも、ウェルター級の世界戦線を見ると納得できますから、ここは「佐々木に確実に勝利」という道よりも、あえて「佐々木と打ち合って勝つ」という内容にコミットしようとしたのでしょう。これは一種の「挑戦」であり、それが失敗に終わった。これは非情に残念なことではありますが、「挑戦」だからこそ失敗する可能性ははらんでおり、この選択は今後本気で世界を狙うのであれば立派だったと言えると思います。
今後、豊嶋はどうするのか。
すぐにとは言いませんが、是非ともここは戻ってきてもらい、再び世界を目指す姿を見たい。豊嶋はまだ若く、大きな可能性を秘めていると思います。
そして天晴れな佐々木尽。こちらは豊嶋よりもさらに若い。落ち着きを覚え、ここで慎重になりすぎず(ならないとは思いますが)、左フックに頼るボクシングから組み立て、クレバネスを身に着けていけば、もしかするともしかするかもしれません。
クロフォード、スペンス時代もあと数年で終わりを告げ、タイトルが飛散したころにそのタイトルを狙っていく。この場合、一番イージーそうなところでも何でも良い。
ここからは、是非とも海外のランカーと戦い、腕を磨いてもらいたい。
「ボクシングは夢の潰しあい」。佐々木の豪腕を知る国内のボクサーではなく、海外の強豪を。それが、豊嶋を倒しきった佐々木に期待される道のりではないでしょうか。
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