3/19(日)日本ユース・フェザー級タイトルマッチではどっちに転ぶかわからないハイレベルなギリギリの戦いを見れて、3/20(月)日本バンタム級タイトルマッチでは王者の強さに舌を巻くとともに、ボクシングという競技の残酷さを突きつけられました。
そして3/21(火)はWBCで日本がメキシコに劇的なサヨナラ勝ち、なんという幸運な国民でしょうか。まあ、WBCは全く見ていないんですけど。
そんな盛り上がりに追い打ちをかけるように、週末にはべナビデスvsプラントの注目試合のほか、ホセ・ラミレスvsリチャード・コミー、ローレンス・オコーリーvsデビッド・ライト等々、注目試合が盛り沢山。
なので日本でもプラットフォームを分けて放映してくれれば良いものの、べナビデスvsプラントをWOWOWとU-NEXTが放送という謎状態。
ということで今回は、日本では2つのプラットフォームがシェアを取り合うという注目試合、デビッド・べナビデスvsケイレブ・プラントのプレビュー記事。
3/25(日本時間3/26)アメリカ・ラスベガス
WBC世界スーパーミドル級暫定タイトルマッチ
デビッド・べナビデス(アメリカ)26勝(23KO)無敗
vs
ケイレブ・プラント(アメリカ)22勝(13KO)1敗
すでに2度、正規の世界王者に輝いているデビッド・べナビデス。1度目の王座は薬物、2度目の王座は体重超過により剥奪されたべナビデス、さっさと階級を上げれば良いものの、未だスーパーミドル級というのは意外なものです。
最初の王座獲得は2017年9月のことで、当時空位のWBC世界スーパーミドル級王座決定戦でロナルド・ガブリエル(ルーマニア)を相手にスプリットの判定勝利。この試合、べナビデスはダウンを奪われる大苦戦でしたが、初防衛戦でダイレクトリマッチを行い、今度は完璧に退けています。思えばこの戴冠当時はまだ20歳、とんでもない才能と言えますね。
その後は薬物で休養王者となりますが、べナビデス不在時に正規王者となったアンソニー・ディレル(アメリカ)を9Rでノックアウト、王座返り咲き。
今度こそ、べナビデスの時代となるかと思われたこの王座の防衛戦で、ウェイトオーバーにより王座剥奪。それでも何故かWBC世界スーパーミドル級暫定王座決定戦に出場、デビッド・レミュー(カナダ)を3Rでストップして暫定王座を獲得しました。
この階級のWBC王者は、4団体統一王者のサウル「カネロ」アルバレス。暫定王座を持つべナビデスは、このカネロの対戦候補の一人でもあるし、以前から「カネロに勝て得るボクサー」として名前があがっていました。
このべナビデスというボクサーは、戦績からも分かる通り大変なハードパンチャー。そのパンチは隙だらけのようにみえますが、構えた位置から最短距離で飛んでくるようなパンチで、軌道は大きい時こそあれど意外とコンパクト。父がメキシコ人(だったと思う)というだけあってそのリズムは非常に特異なもので、高いとはいえないガードポジションからすっと出てくるパンチはテイクバックがないため非常に分かりづらいパンチなのだと思います。おそらく、映像で見る何倍も速く見えるはず。
最初の王座獲得戦以外、苦戦することもなくその強さを遺憾なく発揮しているデビッド・べナビデス。スパニッシュ・アメリカンである彼のニックネームは「El Bandera Roja」、レッドフラッグ、赤い旗。別に共産党員ではありません。これ以上彼に近づくな、という意味の危険信号です。
今回、レッドフラッグを無視して、危険領域に近づくのがケイレブ・プラント。スーパーミドル級において当時無敵のカネロのラスボスとして登場、期待にそぐわぬ戦いを見せてくれたボクサーです。
ここは奮闘むなしく、11RTKOに敗れてしまったわけですが、「Sweethands」と言うニックネムに名前負けしないテクニシャン。このカネロ戦も非常に巧く戦い、そのスピーディなジャブにカネロも近づくのに苦労し、近づいてもクリーンヒットを当てるのに時間がかかってしまった印象です。
2019年1月にホセ・ウステカギ(ベネズエラ)を判定で降してIBF世界スーパーミドル級王者となったプラントは、マイク・リー(アメリカ)、ビンセント・フェイゲンブッツ(ドイツ)を降して連続KO防衛。このあたりは一戦ごとに評価を高めていたという印象で、その後ケイレブ・トゥルーアックス(アメリカ)を相手にフルマークの判定勝利、スーパーミドル級随一のテクニシャンという地位を確立しました。
その後カネロ戦では敗北を喫したものの、11ヶ月後の再起戦ではWBC世界スーパーミドル級挑戦者決定戦でアンソニー・ディレル(アメリカ)を9RTKO。このノックアウトシーンは、BoxingSceneやPBCで年間最高KOと讃えられるほどのもので、プラントは左ボディから溜めをつくっての顔面へのショートの左フック、これがディレルの左フックへのカウンターとなり、とてつもないノックアウトを生み出しました。
KO勝利後の墓掘りパフォーマンスも話題となってしまいましたが、やはりこのケイレブ・プラントというボクサーは抜群のテクニシャンで、素晴らしいセンスを持つボクサーです。
そんなふたりの対決は、「暫定」と言う余計な言葉ついてはいるものの、間違いなくビッグマッチ。だからこそのPay Per Viewファイトとなるのですね。
基本的にガードが低いべナビデスがプレスをかけ、プラントが下がりながら対応する、と言う展開になると思いますが、べナビデスにとって厄介なのはやっぱりプラントのジャブ。
この鋭いジャブを外すか、もしくはブロッキングして自分のパンチが当たるところまで行きたいところですが、果たしてそれを外したとして、プラントがまともにパンチをもらうかというとそうではありません。
ただ、べナビデスは爆発力のあるボクサーで、そのパワーもさることながら回転力も素晴らしい。これはプラントでも、近い距離で外しまくるというわけにはいかないような気もします。
この試合は単純な試合にはならないでしょう。1発のパンチングパワー、回転力でいうとべナビデス、リングIQや単発のスピードでいうとプラント。
後半にいけばいくほどプラントが優位になるような気がしますが、前半のうちにべナビデスがプラントにダメージを与えられれば、逆に後半にべナビデスがストップするという展開も考えられます。
いずれにしろ、特に序盤、べナビデスのプレスやパワーをどのようにプラントが捌くのか、というのが論点であり、そのプラントのスピードや戦略にべナビデスがどのようについていけるのか、もしくは上回るのが鍵となるような感じがします。
オッズはべナビデス優位とあるようですが、これは単純にファンの数といっても差し支えなく、おそらく50-50。かなりの好ファイトが期待されます。
ヘスス・ラモス(アメリカ)19勝(15KO)無敗
vs
ジョーイ・スペンサー(アメリカ)16勝(10KO)無敗
スーパーウェルター級の無敗プロスペクト対決!!こんな試合が決まるんですね。。。
22歳のラモス、23歳のスペンサー、本来はもっと大事に育てたいであろうスター候補同士がここで激突です。
ヘスス・ラモスはこの日のPPVのオープニングファイトに出場するアベル・ラモスの甥っ子で、これまでも幾度かShowtimePPVに登場してきたボクサー。
素晴らしいパワーとチャージ能力を誇りますが、やや中だるみする試合も見受けられ、あんまり無理をしない、という印象がありますね。
その「無理をしない」状態でこのKO率の高さというのは、とんでもない才能の持ち主なのかもしれませんが。
そんなラモスに対するのが、同じく無敗の若手プロスペクトであるスペンサーで、BoxRecを見ると「ジョセフ・スペンサー」ですが、このジョセフでYoutube検索しても一向に出てこないのでご注意を。
ということでジョーイ・スペンサー、名前はしっていてもなかなか試合を見る機会のなかったボクサーですが、こちらもパワフルなボクサーですね。
ワイルドな攻撃、特にボディのアングルや踏み込みのタイミングが素晴らしいボディ・スナッチャー。近い距離で戦いたいタイプのボクサーかもしれません。
これはエキサイティングな打撃戦になりそうな感じがしますね。
ちょっと途中休む傾向のあるラモス、そこをスペンサーが攻めていけば、ずっと手を出し合う展開になるかもしれませんし、それを通り越して消耗戦になる可能性もあります。
ともあれ、このセミファイナルはエキサイティング・ファイトを期待です。
クリス・コルバート(アメリカ)16勝(6KO)1敗
vs
ホセ・バレンズエラ(アメリカ)12勝(8KO)1敗
そしてセミセミはライト級10回戦、ここは今後の両者のキャリアが大きく変わるかもしれないサバイバルマッチ!個人的にはセミファイナルよりも楽しみです。
元WBA世界スーパーフェザー級暫定王者、クリス・コルバートは生粋のアウトボクサーで、およそ負ける姿が想像できないようなボクサー「でした」。WBAの暫定王座乱発によって生まれたこのコルバートの王座は、WBA暫定王座廃止宣言に伴い「挑戦資格」に格下げられ、コルバートは挑戦権を保持することになりました。
そして決まった当時のWBA王者、ロジャー・グティエレス(ベネズエラ)との一戦は、試合の直前にグティエレスがコロナに感染、代役としてエクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国)がリングに上がることとなり、この一戦はファイナル・エリミネーションバウトとして挙行されることとなりました。
コルバートの評価が高かったことと、ガルシアが代役であった事を考えると当然のことながら、この試合はコルバートの圧倒的優位。しかし蓋を開けてみると、ガルシアのあくなき突進をもてあましたコルバートは、世界王座目前でとうとう初黒星を喫してしまいました。
そこから1年超、ようやくリング復帰をするコルバート。今戦では、1階級上げてライト級でのマッチアップです。
そして対するのは、ライト級のプロスペクト、ホセ・バレンズエラ。
このボクサーは名前でわかる通りヒスパニック系のアメリカ人ボクサーですが、そのルーツ通りのボクシングではなく、スピードとテクニックに秀でたボクサーファイターというイメージ。
当然、そのルーツ通りのハートの強さも有しているバレンズエラは、コンビネーションも正確で、個人的には非常に期待しているボクサーでした。しかし2022年、我々もよく知るフランシスコ・バルガス(メキシコ)を初回KOで破って話題となりましたが、次戦でエドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国)にまさかの3RKO負けで初黒星。
これはハードパンチャー同士の非常にエキサイティングな試合内容で、2Rに先にバレンズエラがダウンを奪うも、サントスが倒し返し、そのまま3Rにストップしてしまった、という試合内容。
↓観戦記
この時、サントスは代役で、本来のバレンズエラの相手はジェスレル・コラレス(パナマ)でした。ちょっとコラレスとサントスを比べると、ファイトスタイルが違いすぎるということもバレンズエラにとってアンラッキーだったのかもしれません。
ともあれ、クリス・コルバートとホセ・バレンズエラは、ともに期待されながらも代役を相手に敗れてしまったボクサー。そしてさらに、そこからの復帰戦ということで負ければ「連敗」という傷がついてしまいます。
コルバート26歳、バレンズエラ23歳、若きボクサーたちのサバイバルマッチ、これは儚い。
個人的にはどちらを応援するか迷う一戦で、コルバートはNYブルックリン出身の成り上がり物語を持つボクサー。バレンズエラはそのファイトスタイルに好感が持てるボクサー。
どちらかが連敗を喫するというのは個人的に非常に切ないのですが、しっかりと見届けたいと思います。
コーディ・クロウリー(カナダ)21勝(9KO)無敗
vs
アベル・ラモス(アメリカ)27勝(21KO)5敗2分
無敗のウェルター級、コーディ・クロウリーが世界タイトルへの挑戦経験もあるアベル・ラモスとの対戦。この一戦がPPVのオープニングファイトとなるようです。
結構な期間、Showtimeに登場しているクロウリーですが、意外と見る機会が少ないボクサーでもあります。アグレッシブで非常に素晴らしいコンビネーションを持っているボクサーで、空いているところにするりとパンチを滑り込ませるようなイメージ。
アベル・ラモスはヨルデニス・ウガス(キューバ)と2020年9月にWBA世界ウェルター級王座を争ったボクサーで、1-2のスプリット負け。ただ、これはかなりラモス優位に出た採点であり、ウガスの完勝でした。
クロウリーはこの世界挑戦経験者、ラモスを仕留めて世界戦線に名乗りを上げたいところ。というかウェルター級においては、名乗りを上げているボクサーはたくさんいますが、タイトル戦線は一体どうなるのか。
放送・配信
この興行は、アメリカではShowtimeの放送で、PPVです。価格は74.99$、日本円にすると10,000円くらい。
これを日本では追加料金なしで見られるというのは非常にありがたいことなのですが、もうちょっと配慮がほしいのがリアルな話。
ちなみにU-NEXTでは3/26(日)AM9:30〜中継開始、WOWOWでは3/26(日)AM10:00〜中継開始となっており、ShowtimeのPPV放送は3/25(土)21:00〜なので、WOWOWの放送時間とドンピシャ。
なので内容的には、4試合の中継ということでしょうね。
そんなわけで、この興行はWOWOWもしくはU-NEXTでご覧ください!!
↓WOWOWはこちらから
↓U-NEXTはこちらから
【宣伝】
ボクシング用品専門ショップ、やってます。
英国には大人気ボクシングメーカー、FLYというメーカーがあります。日本では唯一、BoxingCafeで取り扱い中!4/1にはなんとボクシングシューズも世界初販売!
是非覗いてみて下さい。