いよいよ近づいてきました、世界ライト級4団体統一タイトルマッチ。
史上はじめて、ライト級という大人気階級の4つの世界タイトルが統一されたのは、今から1年ほど前の事で2022年の6月です。
当時の3団体統一王者、ジョージ・カンボソスJr(オーストラリア)と当時WBC王者だったデビン・ヘイニー(アメリカ)が4つのタイトルをかけて激突、大方の予想通り敵地に乗り込んだヘイニーがカンボソスをしっかりとアウトボックスして完勝。
そしてダイレクトリマッチでも、これも大方の予想通りより大きな差をつけてヘイニーが完勝。
ライト級史上初の4団体統一王者が誕生したにも関わらず、このライト級という階級はデビン・ヘイニーを中心に回っていない事が面白いところです。
ということで今回のブログは、真の王座をかけて、デビン・ヘイニーvsワシル・ロマチェンコをプレビュー。
5/20(日本時間5/21)アメリカ・ラスベガス
世界ライト級4団体統一タイトルマッチ
デビン・ヘイニー(アメリカ)29勝(15KO)無敗
vs
ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)17勝(11KO)2敗
世界的にみて競技人口が多く、また強豪も集まる大人気階級であるライト級。
そのライト級において、4団体を統一したボクサーこそが現代最強のボクサーであっても全く違和感はないはずです。
しかし、そうはならないどころかPFPリストに一切(かどうかはわかりませんが、私の知る限りは)入らないライト級4団体統一王者がデビン・ヘイニーです。
それは単に、戦ってきた相手のレジュメであり、その相手に対するパフォーマンスである、とも言えますね。
元々評価の高かったヘイニーは、2015年にプロデビュー、2019年にザウル・アブドゥラエフ(ロシア)を破ってWBC世界ライト級暫定王座を獲得します。この試合こそ4R終了TKO勝利だったものの、それ以後はずっとランニングしての判定勝利を挙げています。
戦ってきた相手はユリオルキス・ガンボア(キューバ)、ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)といった古豪や、ジョセフ・ディアス(アメリカ)のような人気ボクサー、そして上に挙げたカンボソス。
ガンボアやリナレスのその後の凋落ぶりを考えると、実質名のある相手に勝利した、と言えるのはジョジョ・ディアスくらいのもので、カンボソスは相変わらず判断が難しい相手のままです。
だからこそ、このヘイニーの評価は定まらない、そのためにPFPにも入れようがない、というのが事実だと思うのですが、やはりこのヘイニーのボクシングは相手にとって非常に崩しづらく、その結果、ボクシングファンにとっては退屈そのものです。
これまで誰もヘイニーを崩す事はできておらず、当時衰えたとはいえ卓越したスピードを誇るリナレスでさえ、10Rの終盤に右一撃を当てる事ができた、くらいのものです。
その後のチャンピオンシップラウンドは見事なまでのなりふり構わないクリンチワークで勝利への執念を見せたヘイニーは、きっと誰よりも勝ちに貪欲であり、それが行き着いた末のあのボクシング。
ヘイニーのボクシングは驚くほどつまらないですが、それは相手がヘイニーを崩す事ができないから、でもあります。
それを覆してくれるか、ワシル・ロマチェンコ。
ロマチェンコは多くを語る必要がないほどのボクサーで、いわく「史上最高傑作」。
かつて一世を風靡した元PFPキングは、ここでヘイニーに勝利して4団体統一王者となれるか、否か。
本来、カンボソスが3団体王者に君臨したとき、カンボソスが本当に戦いたかったのはヘイニーではなくロマチェンコでした。
しかし、当時起こった戦争により、ロマチェンコは戦地に赴き、一度決まった試合は破断、カンボソスvsヘイニーの4団体統一戦が決まったという経緯があります。
あの時やっていたら、きっと勝っていたのはロマチェンコであり、カンボソスがどのような負け方をしたとしてもカンボソスにもわざわざ「最強」を呼び寄せて戦った漢、としての名声がついたはず。
結局そうはなりませんでしたが、ここでヘイニーはロマチェンコから逃げず、4団体統一タイトルの防衛戦で迎えることになりました。
ヘイニーはヘイニーでウェイト面できつそうで、これでロマチェンコを避けてスーパーライト級に上がってもよかったかもしれません。しかし、頭の良いヘイニーは知っているのでしょう、自身がライト級最強と認められていない事、そしてそれはロマチェンコを倒すことでクリアできるであろう事、そしてロマチェンコが以前ほどの力を有していない事を。
ロマチェンコが前戦、ジャーメイン・オルティス(アメリカ)戦で見せたパフォーマンスは、彼の今の限界の力なのか、それとも戦争やブランクの影響なのか、もしくはオルティスが見た目以上に強いボクサーなのか、それは現時点ではわかりません。
勿論、私の、いや我々の希望としては、ロマチェンコの勝利。
それでも、並んだ写真を見ると驚愕するほどサイズは違い、ロマチェンコにとって厳しい戦いとなることは容易に想像できます。
ただひたすらに強者を求めて渡り歩いてきたロマチェンコのプロキャリアは、年齢的にももう最終章でしょう。
この戦いは50-50に近いものであると思いますが、ロマチェンコにはここに勝って、もう一つ、ライト級で伝説を作り上げてほしいものと願います。
オスカル・バルデス(メキシコ)30勝(23KO)1敗
vs
アダム・ロペス(アメリカ)16勝(6KO)4敗
セミファイナルはオスカル・バルデスvsアダム・ロペス。当然バルデスは(残念ながら)人気ボクサーであり、ロペスも名のあるボクサーだけに、興味深いといえば興味深いマッチアップ、PPVファイトのセミファイナルになるのも頷けます。
ただ、この試合は再戦であり、両者は2019年に戦い、バルデスが7RTKO勝利。
このとき、バルデスはスーパーフェザー級転級初戦のテストマッチ、にもかかわらず当時フェザー級の無名ボクサーだったロペスをピックアップしています。
この戦いで、アンダードッグだったロペスは見事に噛みつき、2Rにダウンを奪う大健闘を見せています。結果は7Rで敗れたものの、アダム・ロペスという名前を多くのボクシングファンに刻みつけた試合でもありました。
その後、ロペスはフェザー級に戻り、多くの強豪と拳を交えて勝ったり負けたりしながらキャリアを積んでいます。
バルデスはミゲル・ベルチェルト(メキシコ)を倒してWBC世界スーパーフェザー級王座を獲得、2階級制覇を成し遂げますが、ハーブティ事件を引き起こした直後に迎えた初防衛戦ではロブソン・コンセイサン(ブラジル)に実質の敗戦(公式は判定勝利)、シャクール・スティーブンソン(アメリカ)に完封負けして初黒星。
復帰戦となる今回で、一度勝っている相手を選ぶ、というのはなかなかにノーリスクの選択です。
ここはまたロペスに噛み付いてもらいたいものです。がんばれ、アダム・ロペスでいきましょう。
レイモンド・ムラタヤ(アメリカ)17勝(14KO)無敗
vs
ジェレミア・ナカティラ(ナミビア)23勝(19KO)2敗
ということでセミファイナルよりもずっと興味深いのがこちらの一戦。
レイモンド・ムラタヤは非常に発達した上半身を持ち、素晴らしいパワーを持っているボクサーですが、おそらく本当の姿はコンビネーションパンチャー。コンビネーションを素晴らしい的中率で放てるボクサーファイターで、このボクサーは見ていて本当に楽しい。
前戦は2023年3月、たった2ヶ月前で、この試合は初回にダウンを喫する立ち上がりながらも、何度も倒し返して9RTKO勝利。
そろそろ格上や強豪との対戦が見たいと思っていたところに、このナカティラ戦だからこれはまた私の心を鷲掴みにするマッチアップです。
ナカティラの試合はたくさん見ている、とは言えませんが、最新試合であるミゲル・ベルチェルト戦を見るだけでも十分伝わるパワーと迫力。
荒々しさのあるパンチャーは、2021年にシャクール・スティーブンソンに文字通り「完封」されており、それが過小評価につながってしまったと思います。この試合でシャクールが試合後に「倒しに行きたかったけどナカティラにパワーが残っていたのでいけなかった」と語っているのですが、これがおべっかでも相手へのリスペクトでも何でもなく、きっと真実だったのだろうと感じたのがベルチェルト戦でのワイルドでパワフルなナカティラの攻撃です。
さあこれはKO決着必至、どちらに転んでも痛烈なノックアウト劇が期待される試合です。
ともに一発があり、一瞬で勝負がついてしまう可能性があるため、本当に目の離せない戦いになりそうですね。
上記3試合がESPNのPPVファイト、この日は非常に楽しめそうですね。
放送・配信
この興行はアメリカではESPNでのPPVで中継されます。このPPVファイトの前に、中谷潤人vsマロニーのWBO世界スーパーフライ級王座決定戦も行われますね。
ちなみにPPVファイトの開始時間は、日本時間で5/21(日)11:00から。
この11:00の時間がムラタヤvsナカティラの開始時間と思われます。
とすると、メインのヘイニーvsロマチェンコは12:30とか13:00くらいでしょうか。
この興行の日本での配信はもちろんWOWOWですが、WOWOWは9:30から中継開始なので中谷vsマロニーもしっかりとライブで流してくれそうです。
↓試合の順番はこちら。(PPVの分)
↓PPVの直前はこの試合
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