5/21(日)、私は仕事でした。
これをリアルタイムで見れないのは非常に残念でしたが、WOWOWは放送中から追っかけ再生もできるし、すぐに見逃し配信も見れるので本当にありがたい。
新興のボクシング配信サービスもそうしてもらいたいものです。
本当は放映された全ての試合をしっかりと見たいのですが、時間があまりないこともあり今回は中谷vsマロニー、ヘイニーvsロマチェンコ、2つの試合の観戦記です。
5/20(日本時間5/21)アメリカ・ラスベガス
WBO世界スーパーフライ級王座決定戦
アンドリュー・マロニー(オーストラリア)25勝(16KO)2敗
vs
中谷潤人(M.T)24勝(18KO)無敗
注目の一戦、思った以上にお客さんは入っているように見えます。
初回のゴングと同時に飛び出していった両者、中谷は様子見のジャブ。マロニーは初回から非常にキレのある動きで出入りのボクシング。
1分が過ぎる頃、中谷が左ストレートを使い始めます。この左は浅いながらもヒット、マロニーも序盤にこれに対応するのは困難でしょうが、マロニーは非常に勇敢に距離を詰めてきます。
後半も中谷の力強い左。中谷は良いですが、マロニーも非常に機敏な動き。
2R、マロニーがガードを固めて前進。いやー、ブロッキングも上手いマロニー。
しかし中谷はそこから軌道を変えての左アッパー!その後もたれかかるように追撃を阻止しようとするマロニーに、今度は右アッパー!マロニーはダウン!
このパンチのセレクトは恐ろしい。
立ち上がったマロニーは落ち着いていますが、ここでも中谷のアッパーがヒット。
ダメージがあるかマロニー、くっついたり下がったりしながら中谷の攻撃に対応。しかし中谷は多彩なアングルのパンチを繰り出してマロニーを攻め立て、マロニーはやや動きが鈍ったか。
マロニーも流石のもので後半には反撃に出てこのラウンドは終了。
3R、早くも大きなビハインドのマロニー、強引に攻めます。しかしここでバッティング、中谷は眉間あたりをカット、流血。偶然のバッティングです。
これはちょっと嫌な流れ、マロニーは思いっきり行けるが中谷は気をつけなければいけない展開。
中盤に中谷は技ありアッパーカットをヒットして優勢ですが、マロニーはバッティングを恐れず前に出てくる分、ある種の怖さがありますね。
その後も額から血を流しながらもとんでもない右アッパーをヒットした中谷。ボクシングでは圧倒していると言って良いですが、バッティングが怖い展開です。
4R、額からの出血で慎重にならざるを得ない中谷は、距離をキープしたボクシング。ここでは軽めのジャブからの長い左ストレートが有効。
中谷が左を放ったところで映像が止まり、残り1分ほどのところでリスタート。
中谷は長い距離からのカウンター狙い、マロニーが頭を下げて入ってくる分、ちょっとやりづらいか。
5R、マロニーの闘志は衰えず、グイグイ前進。前半、マロニーのボディアッパーをスタンスの変更で躱す中谷。これは鬼。
体ごとぶつけてくるマロニー、よほどスタミナには自信があるのか、変わらず非常に運動量が多い。本気で中谷に勝利するためのトレーニングを積んできたことが伺えます。
後半、中谷の左カウンターがヒット、これは浅いか。
6R、本当にマロニーがガンガンきます。こんなにも劣勢を跳ね返す可能性のあるボクサーだと思っていなかったので、驚きです。
このラウンドはマロニーの右が良いタイミングでヒット、後半にも体で押して中谷をロープに詰めます。ここでは中谷のアッパーがヒットしますが、徐々に徐々にマロニーが持ち直してきている雰囲気。
7R、中谷が良いジャブを突き刺してスタート。しかし、グローブのテーピングが剥がれかけての再開後、マロニーが良いパンチを当てています。
中谷がアッパーを連打、その打ち終わりにフックを返すマロニー!思いのほか、激闘となります。
8R、中谷が先手、マロニーは下がるという展開。長い距離ではやはり中谷、ですが中盤にはまたマロニーが強引な踏み込み。中谷はここで長い左とステップワークでマロニーを突き放し、良いボクシング。
この左アッパーで突き放してからの長めの右アッパーという中谷得意のコンビネーションは良いですね。
9R、このラウンドはマロニーがしっかりと体をくっつけてスタート。肩で押し、密着状態のボクシングはマロニーのもくろむ乱打戦の様相です。
マロニーの方がフィジカルに優れるか、中谷は押される場面が目立ちます。
しかし後半、的確性で上回る中谷がパンチで押し返し、マロニーも負けじと打ち返すという展開です。
10R、このラウンドも中谷のジャブ、ストレートが冴えます。マロニーはちょっとキツくなってきたのか、これまでよりもやや手数と突進力が落ちます。休んでいる、というよりは、流石にこの運動量のためやや落ちた、と言う方が正しいはず。
11R、ポイントでビハインドと思われるマロニーにとっては、実質ラストラウンド。ここでマロニーはチャージ、ガードを固めて前進。中谷はストッピングジャブ、ジャブ、ジャブ、からの左ストレート!弾け飛ぶようにマロニーはダウン!
立ち上がったマロニーに対して中谷は強引にはいかず、遠い距離からのストレートを狙っているようです。
マロニーが入ろうとしてもバックステップでクリンチもさせず、後半に入ろうかと言うところでも左ストレートをヒット!
マロニーは足を使ってサバイブ、それでも終盤には攻める姿勢を見せています。
このラウンドで中谷がマロニーを倒し切ることはできませんでしたが、これはダメ押しです。
ラストラウンド、中谷はやはりストレートの距離で勝負。マロニーは最後の最後までインサイドへの侵入を試みます。
突き放すようなジャブから左ストレート、右アッパー。マロニーも全力で中谷にくっつき、相変わらず素晴らしい運動量で肉薄しますが、後半まで中谷が素晴らしいタイミングでジャブを放ってマロニーを近づけず。
そして残り30秒を切ったところで中谷の左オーバーハンドのカウンター!!!!!
これでマロニーがダウン、レフェリーは即刻試合をストップ!!!!
なんというフィニッシュ!!!
中谷潤人、12RTKO勝利で2階級制覇達成!!!
いやこれはもんのすごいフィニッシュ。マロニーが最後の最後までしっかりと粘るかと思ったところでのあのカウンター。
全体重をのせたかのような左オーバーハンドは、タフなマロニーを沈めるのに十分なものでした。
やはり中谷潤人は日本の至宝。
スローで見るとこの左オーバーハンドの前にちょこんとジャブを当てていますね。完全に測っています。
対してマロニーも本当によく頑張りましたね。ここまでアグレッシブに攻められるボクサーだと思っていませんでした。相手が中谷でなければ、あのしつこいボクシングに呑まれていたかもしれません。結局のところ、好試合というのは相手あってのもの。マロニーの最後まで勝利を諦めない姿勢にも拍手を送りたい。
ともかく、中谷潤人は素晴らしい。今後も非常に楽しみです。
世界ライト級4団体統一タイトルマッチ
デビン・ヘイニー(アメリカ)29勝(15KO)無敗
vs
ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)17勝(11KO)2敗
中谷vsマロニーの後にPPVが始まり、2試合を消化。その結果を私はまだ見ていませんが、このメインの後にみようかと思います。元気があれば。
という事でメインイベント。ロマチェンコ復活を望むのみ。
初回、やはり体躯は随分と違います。プレスをかけるのはヘイニー、ロマチェンコはいつも通りまずは距離をとってパンチを出さず、じっくりと見ます。
中盤に入る頃、ロマチェンコもコンビネーションを出し始めますが、ヘイニーはちょっと過敏に反応しすぎのようにも見えます。ヘイニーはいつもよりジャブが少なく、余裕が内容に見え、ちょっと力んでいるようなイメージ。これはロマチェンコにとってはチャンスで、自在な動きでペースを取れそうな感じ。
だからなのか、このラウンド後半にはロマチェンコが早くも高速コンビネーションで攻め込んでいく姿を披露しています。
2R、遠い距離からヘイニーのジャブ。随分出始めたこのジャブ、やはりこれは厄介です。ヘイニーのジャブが出始めるとロマチェンコはちょっと攻めあぐねるか、ヘイニーの右も非常に多彩で嫌になりますね。
ヘイニーは初回よりも落ち着きを取り戻したようで、鋭いリードが出ています。
会場はたくさんのお客さん。PPVが売れるのか?とか思っていましたが、アメリカ人ボクシングファンもこの試合を楽しんでいるようで安心です。
3R、ヘイニーが長いジャブから長い右ストレート。この右をボディに持っていくと、結構な確率で届いているように思います。ちょっとボディに不安のあるロマチェンコ、大丈夫でしょうか。
今日のデビン・ヘイニーはいつになくアグレッシブ、体格の利を十分に活かそうとしているのが見て取れます。ナチュラルに体格を活かしたテオフィモ・ロペスとは少し違ったアプローチ。
4R、相変わらずヘイニーのジャブが鬱陶しい(私情)。ロマチェンコが入り込んできたときのショートの右、これもちょっと怖いですね。
先に手を出すのはヘイニー、ちょっとロマチェンコは手が出ません。
5R、このラウンドも先手はヘイニー。ヘイニーが攻めるとロマチェンコはディフェンス、ここで何か策があれば良いのですが、基本はブロッキングやサークリング、その後が出てきません。
ただ、中盤以降はロマチェンコがアグレッシブに出る場面を作り、クリーンヒットこそ少ないものの攻勢をアピールしています。
意外にも面白い試合になっている今戦、ロマチェンコはもう少し、自分から試合を作りにいかなければいけません。
6R、ロマチェンコがサイドに回っても、ヘイニーは上体をぐるぐる回して的を絞らせません。これは上手い、ロマチェンコ対策とも言えます。
ヘイニーのダッキングはかなり低いですが、レフェリーは注意せず。こうすることでロマチェンコのインサイドワークを防いでいる、と言えます。
7R、序盤にロマチェンコが軽めの左ストレートでヘイニーの顔を弾きます。その後はディフェンスマスター同士の戦いらしく、クリーンヒットらしいクリーンヒットは生まれず。
後半、左と左の相打ち、これはどちらがダメージを被ったのか。
8R、ヘイニーのジャブの打ち終わりに踏み込んだロマチェンコ。ここから、ロマチェンコがギアを上げるのか、もしくは後半に落ちる可能性もありますね。
このラウンドはロマチェンコがプレス、真っ直ぐの左が効果的のように見えます。
このサイドに踏み込みながらの押し込むように打つ左は、ロマチェンコのサンデーパンチというイメージです。
9R、リング中央を陣取り、先手を取るのはヘイニー。ジャブから右ボディ、そこにロマチェンコは左ストレートをリターンです。
この左は当たっているのかどうなのかは分かりませんが、ちょっとヘイニーはのけぞってしまい、見栄えが悪い。
10R、長いジャブのヘイニーに対して、中盤ロマチェンコはコンビネーションで見せ場作り。もみ合いの展開も多く、互いにまだ動きが落ちない中で、クリーンヒットを奪えないからこそこういう場面をもっと作ってもらいたい。
終盤、ロマチェンコがプレスをかけてラウンドが終了。
ここまで、どっちつかずのラウンドがほとんどであり、もしかすると競っているかもしれないし、どちらか一方にポイントが流れている可能性も否定できません。
KO決着も期待はできず、これはどちらが勝つにせよ議論を呼ぶ判定となりそうです。
11R、前半にロマチェンコが左ストレート、からの飛び込みの右フック!これがヘイニーにヒット。それと同じパンチをもう一度ヒットしたロマチェンコ、その後はグイグイとプレス。
決して打たれて強いとは言えないヘイニーは後退、その後はこれまでのラウンドで最もロマチェンコの攻撃が当たっています。
上下に打ち分けてはヒットを重ね、いきなりの左ストレートもヒット。ここでもっとロマチェンコは行くべきですが、後半はちょっと待ってしまいます。
ラストラウンド、ヘイニーもここは負けじと攻め入ります。ロマチェンコもプレスをかけて左ストレート、互いに手を抜く素振りは見せません。
ヘイニーは下がりながらもコンビネーション、ロマチェンコはプレスをかけつつもあまり手が出ません。が、ヘイニーが攻めてきたときには必ず左ストレートを返し、最後まで動きは落ちず。
こうして最終ラウンド終了のゴングを聞き、互いに相手に向かってガッツポーズ。
勝負は判定に委ねられました。
判定は、116-112、115-113×2でデビン・ヘイニー。
これは残念、ロマチェンコ。
空を仰いだロマチェンコ、割とスッキリした顔をしていたように見えます。
これはヘイニーの作戦勝ちとも言える内容で、やはりストロングポイントである体格をしっかりと活かしたボクシング。ただ、このボクシングは比較的パンチングパワーのない、ロマチェンコ相手だからできた作戦かもしれません。
いずれにしろ、デビン・ヘイニーのボクシングはこれまでで一番面白かった。
そしてワシル・ロマチェンコ。かつて傲慢だったとも言える王者は、殊勝に敗北を認めることこそしませんでしたが、周囲への感謝を述べ、相手への賛辞を述べました。
前戦、ジャーメイン・オルティス戦よりは遥かに動ける体を取り戻したロマチェンコ。本人がインタビューで語ってくれた通り、「まだできる」を示してくれた一戦だったと思います。
今後のロマチェンコの動向に注目しつつ、いつしかとなる王の帰還をまだ待ちたい。
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