ゴールデンボーイ、堤駿斗がプロ転向3戦目で挑むOPBF東洋太平洋戦。対戦相手は強豪、ジョー・サンティシマです。
堤はプロ転向後、安定したパフォーマンスを見せてはいるものの、期待以上には成長してはいないという雰囲気で、これはファンの(私の?)期待が高すぎる事もあるのですが、毎試合のように「覚醒」を待っているような雰囲気。
ジョー・サンティシマは世界挑戦経験もある世界的強豪で、日本のリングでもその強さを見せつけています。ただ、前戦は下町俊貴(グリーンツダ)に敗戦、そのほかにエマニュエル・ナバレッテ(メキシコ)やジョエト・ゴンサレス(アメリカ)には倒されて負けているという事実から、このサンティシマに勝てば世界が目前か、というとそういうわけでもないと感じています。
とはいえ、キャリアの浅い堤にとっては世界への足がかりになるはずの一戦です。
ということで今回のブログでは、日本の期待・堤駿斗が、日本人最速の地域タイトル獲得を目指す一戦の観戦記。
5/31(水)Life Time Boxing
スーパーフライ級8回戦
ウィーラサック・ラックチャート(タイ)3勝(2KO)無敗
vs
廣本彩刀(角海老宝石)5勝(2KO)1敗
セミファイナルには実力者・廣本が登場です。対戦相手のタイ人は今年プロデビューした新人。それで3戦というのはなかなかハイペースではありますが、流石にこれはミスマッチのはず。
初回、まずは丁寧にガードを掲げ、サークリングする廣本。ウィーラサックはサイズが小さく、ガタイが良く、まあムエタイ上がりという感じ。
ボクシング技術の差は明らかで、廣本はジャブを当てては離れ、ウィーラサックはついてこれず。ただ、そのパンチはパワフルですね。
2R、ウィーラサックは上半身のパワーこそあれど、ステップワークはボクサーとは言えません。なので当然、バランス良く攻撃をすることはできず、中盤には打ち終わりに廣本の右を浴びてノックダウン。
立ち上がったウィーラサックは懸命に攻めていきますが、後半に入る頃、廣本の左ボディが炸裂するとダウン。レフェリーはカウントを数えていますが、これは立てるダウンではありません。
廣本彩刀、2RTKO勝利。
見事な倒しっぷりでした、廣本。中川健太(三迫)、池上渉(DANGAN郡山)など国内強豪との対戦を厭わない廣本、今日は良いイメージを作れたと思うので、次戦が楽しみですね。
OPBF東洋太平洋フェザー級王座決定戦
堤駿斗(志成)2勝無敗
vs
ジョー・サンティシマ(フィリピン)22勝(19KO)5敗
そんなわけでメイン、ですが、プロモーターはもう少しがんばって良いカードを揃えてほしいですね。4回戦の試合とかは好試合になることもままあるし、意外とアンダードッグの外国人ボクサーががんばることもあるのですが、まずはメイン、セミくらいには好カードがないとチケットが売れる事はないでしょう。
配信、配信は良いのですが、やはり一番良いのは「現地に行けないから仕方なく配信で楽しむか」という世界線です。知り合いを頼ってチケットを無理やりハケさせる、というやり方はあまりにも広がりがない。
まあ、置いておいてメインイベント。
初回、まずは低い姿勢でプレスをかけるのはサンティシマ。堤はサークリングしながら、サンティシマは強い踏み込みを見せながらのリードの差し合いです。
堤のジャブのタイミングは一級品、サンティシマが出ようとしたところに突き刺さるジャブは本当に素晴らしい。サンティシマノ攻撃にはステップワークとボディワーク、素晴らしい反応ですね。
2R、様子見は終わりとばかりにプレスを強めるサンティシマ。堤は当然のように安定感のある試合運び、素晴らしいタイミングでのステップインジャブ。このラウンドは右も出始め、この右を上下に散らしています。
堤のこういう動きは勿論予想できたことであり、技術でサンティシマを圧倒できることは明確。そこからもう一段階の良いパフォーマンスを見せられるか、というのが堤が覚醒したと言われる条件でしょう。
3R、サンティシマの鋭い攻撃をステップワークでかわした堤は、力強いコンビネーション。サンティシマはやや一発狙いのペースになってきており、これは悪手。
サンティシマの打ち終わりに強いリターンを決める堤、後半にはボディを効かせるとサンティシマは後退。なんともまあ、素晴らしい動きです。
4R、サンティシマはまだ出てきます。やはり世界的強豪は、ちょっとやそっとで折れませんね。
身体を低くしてガードをかため、広いスタンスで追ってくるサンティシマ。堤は丁寧なポジショニングでサンティシマノ攻撃をいなし、中盤にはサンティシマノ右をブロッキングしてその手で左ボディ。
そうして相手の右側に意識をさせた上で、巻き込むような右を顔面へ持っていきます。サンティシマの攻撃はというと堤のステップワークとポジショニング、ブロッキングにより無効化、ここまでは完全に圧倒しています。
途中採点は、40-36×3で堤。
5R、明らかな劣勢のサンティシマ、パワーパンチを振るって攻め入ります。しかし堤には一向に届かず、逆に堤のリターンやカウンターを浴びてしまいます。
その後もジャブで顔を跳ね上げられるサンティシマ、後半はガードを気をつけるあまり手数が減ってきたようなイメージですね。
6R、サンティシマが苛烈に攻めてきます。ガードを固めて前進、今度は自ら攻めながらも堤の打ち終わりにもリターンを返します。
空振りすると一回転するくらいの力強いスイング、並のボクサーだと当たらずともこの勢いに呑まれてしまうことも考えられるほどのものです。
7R、堤がどっしりとした構え、突き刺すようなジャブからワンツー。プレスをかける場面も出てきて、ここからはしっかりとダメージを与えていこうという意志を感じますね。
ここは堤の動きも少なく、ややアクションの少ないラウンドでもありました。
8R、サンティシマが入ってきたところに堤の右がヒット。その後もプレスをかけるサンティシマ、堤はサークリングしながらカウンタータイミングを伺います。
とにかく距離で外しまくる堤、そして打てそうなところではカウンター、リターン。なんという安定感。
途中採点は、79-72、80-72×3で堤。
堤、ここまで圧倒しているなら倒して勝ってほしいですね。
9R、グイグイ攻めてくるサンティシマ。堤はジャブで引き離し、近づいてきたサンティシマにはアッパーをお見舞い。
中盤、堤の右がサンティシマを捉えるも、サンティシマは非常にタフですね。
10R、とにかく行くしかないサンティシマは歩くように前進。堤はカウンターを狙いながらサークリング、ここで必要なのはサンティシマの意識を断つような極上のカウンターです。
中盤以降、堤も足を止めてボディショットを決める場面も出てきます。そして後半は顔面へのアッパーをヒット、近い距離でのボクシング。堤のボディアッパー、左ボディもよく入っていますが、サンティシマはなかなか倒れてくれません。
11R、堤は本当にリターンが素晴らしい。このラウンドもサンティシマの攻撃に対し、ブロックしたほうの手でリターンを決め、前ラウンドから使っている顔面へのアッパーカットもヒット。
明らかに近い距離でサンティシマを迎え撃つ堤、後半には右カウンター、その後アッパーを決めるもサンティシマは倒れず。
ラストラウンド、攻めるサンティシマ。これを大きなステップでかわした堤は、そこから近づいてボディショット。ちょっとボディが効いたサンティシマ、上のガードが空きはじめます。
ここから堤が顔面にパンチを集めて攻勢をかけ、プロ初のKOへの期待が膨らみます!
ボディが効いて身体がくの字のサンティシマですが、それでもその闘志は衰えず、最後まで打ち返して試合終了!堤にとってはタイムアップ、規定の12ラウンズが終了しました。
判定は、118-110、119-109、120-108で堤駿斗。
プロ転向後わずか3戦目でOPBF東洋太平洋王座を獲得、日本人ボクサーとして最短での地域タイトル獲得という記録をつくりました。
たったプロ3戦で12ラウンズを戦い抜き、地域タイトルを獲得。しかも相手は世界挑戦経験もあるジョー・サンティシマ。控えめに行っても完璧な試合運びでもありました。
これは勿論ものすごいことなんですが、やはり我々ファンの堤駿斗への期待はもっともっと大きなものです。
堤駿斗は非常によくまとまっており、負ける姿がなかなか想像できないボクサーの一人。前戦、アポリナル戦では不用意な被弾もありましたが、今戦ではそこは既にほぼなかった、つまりはまだまだ向上しているのだと思います。
そして完璧な試合を見せつけたこの試合でも、まだ、堤は我々の期待を超えていません。我々の期待は、もっともっと先にあります。是非とも、ファンの期待を上回るボクサーになってもらいたいと思います。
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