10/12(土)〜10/14(月)のビッグウィークエンドまで残り1ヶ月。
今からもうワクワクが止まらない13日の金曜日です。
愛知県国際展示場でのIBF世界ライトフライ級タイトルマッチに始まり、終わりはおそらくWBC世界バンタム級タイトルマッチとなるであろうこのビッグウィークエンドで、最も注目のファイトは何でしょうか。
私はまだ、決めきれません。
それでも、最大の注目ファイトの一つであり、かつ、素晴らしいファイトになるであろう予感がしており、さらにどちらを応援するか明確なファイトは存在します。それは、10/12(土)に行われるシベナチ・ノンシンガ(南アフリカ)vs矢吹正道(LUSH緑)のIBF世界ライトフライ級タイトルマッチです。
ということで今回のブログは、このタイトル戦をプレビュー。
格好良いポスターだとは思いますが、果たして左下の亀田興毅氏は必要か。右下の方々は主催者だったか、アンダーカードに出場するボクサーを出してあげたほうが良いでしょう。それよりもこちらの方が衆目に触れやすいからそうしているのでしょうが、あまり裏方がしゃしゃり出るのは好きではありません。
10/12(土)3150×LUSH BOMU
IBF世界ライトフライ級タイトルマッチ
シベナチ・ノンシンガ(南アフリカ)14勝(11KO)1敗
vs
矢吹正道(LUSH緑)16勝(15KO)4敗
IBF王者、シベナチ・ノンシンガ。
2017年にプロデビュー、10勝(10KO)無敗という怪物的戦績で2021年4月、クリスチャン・アラネタ(フィリピン)との挑戦者決定戦に出場します。
それ以前から比較的長く上位ランクに居座っていたと思いますが、ようやく巡ってきたチャンスに初めての判定勝利を得て、IBFの王座決定戦へと出場します。この時、ノンシンガはラストラウンドにダウンを喫するなど苦闘していますが、ここでフルラウンド戦えることを証明したことは大きかったと思います。
2022年9月、ヘクター・フローレス(メキシコ)とのIBF王座決定戦はスプリット判定でしたが、敵地メキシコでの堂々の戴冠。その後強豪レジー・スガノフ(フィリピン)を相手にしっかりと防衛を果たし、王座統一戦を熱望するようになりました。
しかしここで伏兵アドリアン・クリエル(メキシコ)にまさかのKO負け。
23勝中4KOしかなかったクリエルは全くのノーマークでしたが、KO率の低さに反して非常にパワフルであり、このアップセットには大いに度肝を抜かれましたね。
↓観戦記
まさかの初黒星から約4ヶ月後、ノンシンガはクリエルに10RTKOで勝利してリベンジ。しかもこのリベンジはただのリベンジではなく、おそらくスタイル的には苦手であろうクリエルに対し、クリエルの土俵-つまりは頭をつけての乱打戦-を選択し、そこで劣勢に立たされつつも一瞬の隙をついての大逆転ノックアウト。
再戦を見る限り、クリエルは大きな自信をつけていたし、ノンシンガには迷いがあったように思います。それでも地力と言うべきなのか、火事場の馬鹿力と言うべきなのか、シベナチ・ノンシンガの奥底にある強さを見ました。
↓素晴らしい試合だったクリエルvsノンシンガ2
おそらく今度は、ノンシンガが大きな自信をつける番でしょう。
このリベンジファイトを経て、ノンシンガはおそらく大きな波に乗っています。
ここから統一戦を模索するも、WBA・WBC王者の寺地拳四朗(BMB)、そしてWBO王者のジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)は相次いで王座を返上、ついにはライトフライ級の王者はノンシンガたった一人になってしまいました。これは、物理的に統一戦ができる状況ではありません。
ここでIBFはノンシンガに対してIBFの指名戦をオーダー、当初はクリスチャン・アラネタ(フィリピン)戦のオーダーが降るも、アラネタが負傷により辞退、これにより2位の矢吹正道にお鉢が回ってくる結果となっています。
挑戦者矢吹正道もまた、敗戦を知り、その敗戦を糧としてきたボクサーです。
ノンシンガも長らく世界ランキング上位で待たされ、我慢し続けてきたボクサーではあると思いますが、この矢吹の我慢具合には敵わないと思います。
矢吹はその誰もが認めるセンス、強さのため、また中部地域というカテゴリーのせいなのか、評価はされつつも長く日の目を見ませんでした。
ようやくタイトルに絡めたのは2020年のことで、その前年の日本ライトフライ級の挑戦者決定戦で芝力人(当時RK蒲田)に4RTKO勝利、その勢いを駆って王座決定戦を初回で決め切り、日本王座を獲得。
挑戦者選びに苦労した矢吹は初防衛戦をクリアすると王座を返上、2021年9月、当時から絶対王者だった寺地拳四朗の持つWBC世界ライトフライ級タイトルへの挑戦が決まりました。
いかに矢吹が強かろうとも、相手はすでに8度も防衛している絶対王者。しかも、その勝ち方たるや隙がなく、矢吹にとっては大きく不利予想でもありました。
しかしこの不利予想を覆し、矢吹は10RTKOで勝利。あわやKO負けの大ピンチを乗り切った末のノックアウト勝利は、両者ともに全てを出し切った素晴らしいファイトでした。
↓初戦の観戦記
見事世界王者となった矢吹でしたが、初防衛戦では寺地拳四朗に完敗。初戦と明らかに戦法を変えてきた拳四朗に対応できず、3RTKO負けを喫しています。
たとえ実力が拮抗していようとも、呑まれては負け。初戦で勝利していた矢吹にとっては、非常にやりづらい戦いであったこともあるでしょう。
とはいえ、当時の絶対王者を破った殊勲は歴史に残るものであり、仕事も家庭もある矢吹はこれで引退でもおかしくはありませんでした。ただ、矢吹が選んだのは修羅の道。
黒星の後の復帰戦、それも世界タイトルマッチ、さらには惨敗と言って良いほどの敗北の後は、どうしても勝たなければなりませんから、比較的「勝利の感覚を取り戻せる相手」を選びがちなのが普通ですし、それは決して否定できなことです。
この辺りも非常に俠気を感じるところなのですが、矢吹が復帰戦の相手に選んだのは当時24勝(22KO)無敗という強打者のプロスペクト、タノンサック・シムシー(タイ)。グリーンツダの本石会長がその才能に惚れ込んだことでグリーンツダ所属となっていたシムシーです。
このシムシーに対して7RTKO勝利を挙げた矢吹は、続いて28勝(20KO)1敗1分という好戦績のロナルド・チャコン(ベネズエラ)を11RTKOで撃破。この戦いはIBFの「次期」指名挑戦者決定戦と銘打たれており、これで矢吹はIBFランキングを2位に上昇させています。
最新の試合は2024年3月で、キャリアこそ少ないものの7勝(2KO)1敗のケビン・ビバス(ニカラグア)を4RTKOで倒し、今回の一戦を迎えます。ちなみにこのビバスは矢吹戦前にレネ・サンティアゴ(プエルトリコ)と好勝負を演じている実力者です。そして矢吹はアキレス腱断裂という大きな怪我からの復帰戦でもあり不安はつきませんでしたが、それを感じさせない勝利でした。
持っているのか、いないのか
自ら険しい道を進んでいるかのように見える矢吹正道のキャリア。
「誰も戦いたがらない」日本ランカーという経験を経て、「誰も戦いたがらない」日本王者へ。そして、「誰も戦いたがらない」世界王者への挑戦と攻略、陥落。
この黒星を喫してからも楽をすることなく最短距離を歩んだ矢吹正道にとっては、年齢的なものも含めてここはもうラストチャンスなのかもしれません。
今、4団体のうち、3つの王座は空位であり、王者はただ一人です。
この王座挑戦も、おそらくもっと楽な道があったのでしょうが、矢吹は「持っている」のか「持っていない」のか、ともかく「階級最強の王者」と呼ばれるボクサーにまたも挑戦しなければいけません。
これを不運と捉えることも可能かもしれませんが、思えば本来はアラネタが挑戦した後、ノンシンガvsアラネタの勝者に挑戦予定だったのが早まった、という見方もできるし、何よりもノンシンガはマッチルーム傘下のボクサーなので、このノンシンガvs矢吹が実現するとしても、比較的大きな資本がなければ日本での挑戦は不可能に近かったでしょう。
それこそ、力石vsマグネッシを落札できなかった3150FIGHTだけでは、不可能だったでしょう。
しかし、3150とLUSHが組んだ状態で、どのように資本を出し合ったのかは分かりませんが、ともかくマッチルームとの入札(多分)にアップセット勝利。この一戦が晴れて日本開催となったことは、矢吹にとっては大きな追い風ではないでしょうか。
オッズと配信情報
オッズは、シベナチ・ノンシンガが若干優位。もちろん後1ヶ月ありますから、変わる可能性はあります。個人的には、もう少し近付くのではないかと思っていますから、これはほとんど50-50の戦いであるといえます。
言うまでもなく、シベナチ・ノンシンガというボクサーは現段階で階級最強の王者であり、25歳と若く、自信をつけ、勢いに乗っています。
対して矢吹は32歳、ライトフライ級においては若いとはいえず、勢いに乗ったところでの大怪我もあります。
それでも、やはり地力で矢吹が優っていると信じたい。
ここは矢吹正道を絶対応援の戦いであることも言うまでもなく、ここに勝利して是非統一戦へと進んでもらいたい。矢吹正道という稀有なボクサーを、世界の人々に知らしめてもらいたい。
いずれにしろ、両者の一発のパンチングパワー、KO率を考えればKO決着は濃厚であるし、ともにハートの強さ、一気に試合を決め切る力を持っているから、どんなに優勢でも、また劣勢に立たされたとしても、大逆転が起こりうるという最後の最後まで気が抜けない戦い。
これは名勝負間違いなしです。
この名勝負を配信してくれるのはABEMAです。
LUSH BOMU興行は非常に長くなるので、ABEMAプレミアムでの視聴がおすすめ。
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