3連休が2週続く、時にシルバーウィークと呼ばれる秋の期間が過ぎ去るとともに、一気に夏が終わりました。
色々あって全くもってゆっくりとはできない期間で、純粋な「ボクシングファン」というのは利他に溢れているものの、運営側にまわれば利己的な人が非常に多いのは何故でしょうか。
ともあれ、この3連休の興行、ダイナミックグローブもムンギアvsバジニャンも、そしてウェンブリー興行もほとんど見ていません。たった1試合、ダニエル・デュボアvsアンソニー・ジョシュアを除いては。
さて、この試合を経てヘビー級という階級は一気に面白くなりました。
いや、その少し前、サウジアラビアでヘビー級のトップボクサーたちが次々と戦うようになってからなのかもしれません。
ということで今回のブログは、ヘビー級のトップ戦線を見ていきます。
更新されていなかったヘビー級
おそらくとてつもないインパクトを残したであろうダニエル・デュボアvsアンソニー・ジョシュアの一戦。
個人的にはデュボアの勝利もありえる、全くの50-50の戦いだと思っていましたが、オッズの開きはかなりあったし、ここ最近のジョシュアのパフォーマンスは良かったこともそれに起因していることだと思います。
この戦いは、ジョシュアが完全復活を果たし、スーパースターとしての責任を果たす試合である、というのが大方の見方であり、多くはそれを期待したのでしょう。
しかし結果としてはダニエル「ダイナマイト」デュボアの5RKO勝利であり、その戦いは非常にクリーンで、何の疑義も生じないものだったと思います。
にも関わらず、リングマガジンのヘビー級ランキングは更新されていませんでした。インパクトのある勝利を得て、しかもその話し合いに時間がかかるようなものでもない場合、更新は早いイメージですが。
絶対王者ウシクと1位2位はイギリス人
ヘビー級のリングマガジン王者はもちろんオレクサンドル・ウシク。
ヘビー級史上初めて4団体を統一したクルーザー級出身の王者は、ヘビー級ボクサーとしてはあるまじきスタイルで最強の座を獲得しています。
パワーではなく機動力、スピード、そしてインテリジェンスです。
この意味において、大きく歴史を変えたと言っても良いウシクは、12月にタイソン・フューリーとの再戦を控えています。ここに勝てば、今年はオレクサンドル・ウシクのための年だった、と言い切ることができるはずです。
1位のフューリーはクリチコ政権を終わらせたボクサーで、2mを超える巨体から捉え所のないボクシングをします。例えばジョシュアやデュボアがこのフューリーに勝つには、ボクシング技術をかなぐり捨てて強引に挑むしかないのではないか、と思うほど、とにかくオーセンティックなスタイルに対して強いというイメージがあります。反面、ボクシングを始めたてのフランシス・ガヌーにあわや敗北という大苦戦を強いられるなど、セオリーの通じないボクサーにはあまり強いイメージはありません。
続く2位にアンソニー・ジョシュア、ここはデュボアがとってかわるのでしょう。
かといって、3位のジョセフ・パーカーには過去一度勝利していることもあるので、パーカーより下にはならないのではないでしょうか。このランキングの一番簡単な道筋は、現在6位という位置にいるダニエル・デュボアが2位となり、現在の2位(ジョシュア)〜5位のカバイェルは一つずつランキングを落とす、ということでしょう。
パーカー、チャン、カバイェル
3位のジョセフ・パーカー、4位のチャン・ツィーレイについてはある程度序列が決まっている、とも取れます。
パーカーは2018年にジョシュアに初黒星をつけられ、その再起戦でディリアン・ホワイトに敗北して連敗しましたが、その後は持ち直します。そして2021年に「ジャガーノート」ジョー・ジョイスに初のKO負けを喫しますが、そこからも這い上がり、2023年末から2024年の前半にかけてデオンテイ・ワイルダー、チャン・ツィーレイに連勝、一気に世界トップ戦線に再浮上してきたボクサーです。現在の肩書きとしてはWBO世界ヘビー級暫定王者です。
ジョシュアに敗れたのももう6年も前、と考えると、ジョシュアとパーカーの序列は変わってもおかしくありませんね。
「ビッグバン」チャン・ツィーレイは、東アジア初の本格派のヘビー級と言っても過言ではないボクサーで、プロスペクト時代からその倒しっぷりは評判でした。2022年、フィリップ・フルゴビッチを相手に初黒星を喫しますが、その再起戦でなんとジョー・ジョイスを相手に6RTKO勝利を挙げ、評価を高めます。
ここでWBO世界ヘビー級暫定王座を獲得、再戦では3RKOで勝利しており、かつてはデュボアにほとんどジャブ一本で勝利してしまったジョイスは、このツィーレイに壊されてしまったのではないか、とも思えるほどです。
そんなツィーレイですが、今年3月、パーカーに判定負け。正直、もう一度やればわからないのでは、という戦いのように思いますが、ともあれこの序列は最近の戦いすぎてこのランキングは覆りません。
ここでWBO暫定王座をパーカーに奪われてしまったチャン・ツィーレイですが、今年6月にはデオンテイ・ワイルダーを5Rでノックアウト、復活を遂げています。
これらのボクサーは無敗ではありませんが、敗北を受け入れ、再浮上してきたボクサーです。さらに、パーカーやツィーレイが出てくるまではヘビー級とは無縁だったアジア・オセアニア地域のボクサーであり、このヘビー級ですら現代ではワールドワイドになり得ることを示しています。まさにこの10年ほどは、ヘビー級史に残る歴史の変わり目と呼ぶこともできるでしょう。
続く5位のアギト・カバイェルはまだまだ未知数と言えるボクサーで、スペシャルなボクサーとはまだ戦っていません。スペシャルな可能性のあるフランク・サンチェス、アルスランベック・マフメドフにKOで連勝しており絶好調、ただ、まだトップボクサーたちと戦ってどうか、というところは破談基準としてわからないところですね。
バコーレ、フルゴビッチ、アジャグバ、フニ
6位は前述の通り、ダニエル・デュボアです。
デュボアは2020年にジョー・ジョイスに敗れて初黒星を喫するまでは、まさに昇龍の勢いでした。その倒しっぷりから非常に期待も大きかったですが、自ら膝を折る負け方をしたことで評価は大きく下がったように思います。
その後は4連続KO勝利も、ウシクに挑んだ一戦は大きく不利予想。下馬評通り、9RKO負けを喫しますが、果たしてジョシュア戦で自信をつけたデュボアが、全てを成し遂げてしまったウシクに挑めばまた結果は分かりません。
デュボアこの2度目の敗戦の後、当時無敗のジャレル・ミラー、フィリップ・フルゴビッチをノックアウト。この2戦はサウジアラビアで行われたリヤドシーズンの興行であり、今後はデュボアを中心にヘビー級が回っていく可能性もあります。
7位にマーティン・バコーレ、8位にフィリップ・フルゴビッチ。
バコーレは前戦でジャレッド・アンダーソンを5R KO、その前にはカルロス・タカムやトニー・ヨカらに勝利しており、今後活躍しそうなボクサーですね。
フルゴビッチもチャンに勝利してからというもの幾度もチャンスを掴んでおり、何度もリヤドシーズンに登場。唯一の敗戦はデュボアですから、今後チャンとの再戦をはじめとしてまだまだチャンスが巡ってきそうですね。
エフェ・アジャグバ、ジャスティス・フニ。
アジャグバは2021年にフランク・サンチェスに敗れており、前戦もグイド・ヴィアネッロに辛勝。今のところはまだトップ戦線に絡めそうにはありません。
フニは無敗ですが10勝5KOとヘビー級においてKO率が低く、まだトップボクサーとの対戦経験もありませんね。それでもこのボクサーはまだ25歳と若く、今後に期待が持てそうなボクサーです。
2025年以降のヘビー級
2024年はウシクvsフューリーの2戦の他にも、大いに盛り上がった感のあるヘビー級。この高いファイトマネーを融通したのがトゥルキ・アラルシクだとすれば、これはボクシング界への大きな寄与だったと思えます。このサウジ資本が介入したことで、ヘビー級は大きく動いたのではないでしょうか。もはやこのトゥルキ氏にはヘビー級だけ受け持って貰えば良いのではないでしょうか。
さて、2024年末、ウシクvsフューリーが実施された後のヘビー級には、一体何が残るのか。
一つは、この試合の後、ウシクがどうするか、というのは焦点となりそうです。
37歳となったウシクがこの試合を最後に引退したり、もしくはクルーザー級に戻ったり、などとするとするならば、この階級の覇権を握るのはダニエル・デュボアでしょう。
デュぼあは多くの強豪と拳を交えてきていますが、その実は27歳とまだ若く、王者として君臨するのに非常に良い年頃です。
そこに絡んでいくのは、ジャスティス・フニであったり、東京五輪の銀メダリスト、リチャード・トーレスJrであったり、東京に続いてパリも制したバホディル・ジャロロフであったりするのでしょう。
トーレスもジャロロフも、来年ということではないでしょうが、再来年くらいにはもう世界タイトルマッチに絡んできていてもおかしくありません。
ジャレッド・アンダーソンが負け、アメリカの復権はまだ先。そこにリチャード・トーレスJrが入ってこれるか、というと、ジャロロフがいると難しいのかもしれません。
そう考えると、ユーラシア大陸とその近辺からヘビー級の王座は出ないかもしれませんね。
しばらくはウシク、フューリー、そしてデュボアの戦いを楽しみにしつつ、そこに絡んでいくパーカーとツィーレイ、という構図になろうかと思います。今後のヘビー級が一体どうなっていくのか、その後の戦いも含めて楽しみましょう。
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