10月第二週に入り、ボクシングファンが楽しみにしている週末まであと少し。
那須川天心が「大谷、大谷で飽きないのか?」みたいなポストをXでした、とかで話題になっているようですが、別に個人の意見を言うだけだから話題にすることではないのでは?と思います。私の家にはテレビがないのでオオタニ、オオタニとなっているのもよくわからないし、ネットでもボクシング以外のスポーツニュースはほとんど見ないので、そこまで騒がれていることすらもよくわかっていません。
芸能人の浮気だとか不倫だとか、誰と誰が付き合ってるとか、別のスポーツの選手同士がどう思っているとか、こんなどうでも良いことに時間を割かれ、脳みその容量を持っていかれるのは、情報過多のこの時代において非常に損をしているように感じるのですが。
情報を選択できるからこそ、興味のない情報、意味を見出せない情報はシャットダウンしていきたいものです。
とまあ、そんなことを考える無駄な時間を過ごしてしまいましたが、今回のブログはいよいよ週末に迫った興行についてのプレビュー記事。
10/13(日)横浜武道館
ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)33勝(22KO)4敗1分
vs
サウル・サンチェス(アメリカ)21勝(12KO)3敗
国内外でたくさんの注目興行がある中で、TBプロモーションのこの興行は非常に興味深いものです。特に、日本のボクシングファンにおいては。
何かと話題を作ることが多いジョンリエル・カシメロは、熱心なボクシングファン以外のファンにも名前を知られている稀有なボクサーで、それはコロナ禍の中で井上尚弥の対戦相手候補として名前が上がり、一度はその戦いが決まったためです。
これまでに3階級を制覇した王者ですが、そのパフォーマンスが安定しないというところが難点であり、お世辞にもボクシングへの献身がある、とは言えないでしょう。
それでもその才能は頭抜けており、世界3階級制覇は伊達ではありません。
さほど階級の影響を受けなそうな、パワーあるスタイルのカシメロですが、そうは言ってももう4階級目、そして35歳という年齢的なもの、そして1年ぶりの試合、瞬発力を武器とするボクサーとしての錆びというのは、もしかするとこの試合に出るかもしれません。
とはいえ、このサンチェスはカシメロにとって相性としては悪くない相手のように思え、前に出てくるサンチェスに対してカシメロは追いかける必要もなく、おそらく不得意であろう、「頭を使う」必要もなく、とにかく相手が出てくれば殴れば良いし、自分が疲れればサイドに動いて回復すれば良い、というシンプルな戦略となってくると思います。
上手くハマれば、出てくるサンチェスに対して得意のカウンター一閃で勝負をつけてしまうこともできると思いますし、それ以前に自分から出て行ってパワーで捩じ伏せてしまうこともできるかもしれません。
サンチェスとしてはできることは一つで、いつも通り接近戦を仕掛け、根性とスタミナ、ハートを全面に押し出してとにかく手数で上回り、ポイントを取っていく。特に前半はカシメロの強打に耐えながら、という形になっていくと思いますが、それを耐えた結果、カシメロがオーバーペースになるように仕向けることができれば、ともすれば後半にチャンスが出てこようかというところです。ここで重要なのは、カシメロを削ると同時に、自らのダメージは極力少なくしなければなりません。
なので前半カシメロ、その集中力が落ちてくるであろう後半にサンチェスにチャンスが出てくるかもしれない、という展開。
サウル・サンチェスは強豪ですが、ジェイソン・マロニーに善戦したのはバンタム級での話。そして、勝利を手にすることはできなかったのもまた事実。
世界王者一歩手前のボクサー、サウル・サンチェスに(サンチェスは非常に頑張り屋さんだし、これまでにKO負けがない、ということを考慮したとしても)圧勝できなければ、井上尚弥の対戦相手候補として名前が上がることは難しいでしょう。
カシメロにとって大きな勝負の一戦となるでしょうが、果たして本人にその自覚があるかどうかは謎です。
ビンス・パラス(フィリピン)21勝(15KO)2敗1分
vs
京口紘人(ワタナベ)18勝(12KO)2敗
2018年5月、当時IBF世界ミニマム級王者だった京口紘人の防衛戦の相手として、ビンス・パラスは大田区総合体育館のリングに立ち、フルラウンドを戦っての判定負け。
そして時を経て、京口はライトフライ級に進出、王座を獲得して2階級制覇を成し遂げ、その王座の統一に失敗してフライ級へと転級、2戦を消化し、そろそろ世界挑戦間近か、というところでビンス・パラスとの再戦を迎えました。
この再戦は、一度降しているボクサーで、2階級制覇の京口、無冠であるパラス、おそらく陣営に余裕があってしまったのは事実としてあるでしょう。
この頃のビンス・パラスは、花田歩夢、石澤開を連続で破り、非常に勢いに乗っていた時でした。そして、京口がこのパラスとの再戦で選んだのはボックスする、という作戦で、それは概ね成功しているように見えていましたが、現地のジャッジの判断は全くの逆。
なんと、パラスの3-0の判定勝利という結果が出てしまいました。
パラスのパンチは非常に派手で、当たっているようには見えませんでした。対して京口のパンチはコンパクトで、パワーパンチではないものの、的確にパラスを捉えているように見えました。コツコツとダメージを積み重ね、ダメージは完全にパラス、京口自身はノーダメージに近かったのではないか、と思っていますし、もう2ラウンズあればノックダウンのチャンスもあったのではないか、とも思っています。
(現地と映像の違いで)こういう判定があり得る、ということは理解しているのですが、それでも納得のいかないほどの判定結果。
ここで京口は一度は引退とも取れる発言をするも、のちに撤回、ダイレクトリマッチとなっています。
これはダイレクトリマッチで然るべき試合だとは思いますが、やりづらいのは京口の方です。いくら周りが勝っていたと言ったとしても、公式の結果で敗北しており、以前の戦い方とは変更する必要があります。
試合を見た限りでは、フライ級のパラスのパワーは京口のパワーを上回り、これを例えば10ラウンズの打撃戦となった場合、京口の方が不利に思えるのです。さらに、一度勝っているパラスは当然、自信を持って攻めてくるでしょうし、これはおそらくですが、京口のパンチに恐怖を感じていないからこそ、前戦も最後の最後まで強引に踏み込んで来れたのだと思います。
ボクシング技術としては京口が上、というのは前戦では明らかになっていますが、この再戦、京口はボクシングに徹することができないと思います。京口は、一つの戦略を消した状態、つまりはディスアドバンテージを背負って戦わなければなりません。
京口は、ここで負ければ連敗となり、それが同じ相手となればそのキャリアを閉じざるを得ないでしょう。勝てばパラス第二戦前の位置に限りなく近い場所まで戻れますが、ここで負ければ世界への道のりは一気に遠のきます。
一方でパラスは、現在25歳、これからが全盛期に差し掛かっていく頃で、5ヶ月前と比べても成長している可能性もあります。
負ければあとがない京口と、勝てばさらに太い道が開けるパラス。
生き残るのは、果たして。
当然、頑張れ京口でいきましょう!
小國以載(角海老宝石)21勝(8KO)2敗3分
vs
フィリップス・ンギーチュバ(ナミビア)14勝(12KO)2敗
実は、カシメロvsサンチェス、京口vsパラスよりも最も楽しみである、というのがこの試合ではないでしょうか。
カシメロvsサンチェスについては、カシメロが井上戦を手繰り寄せられるかが焦点であり、それはつまり「カシメロがいかにサンチェスを仕留めるか」ということになってきます。これ以外の結果は、カシメロがナオヤ・イノウエダービーでの敗退を意味します。
京口vsパラスについては、京口にとってはやりづらい一戦ではあるものの、京口が完勝して然るべき試合です。あとは倒せるのかそれとも、という中で、無理に倒しにいってパラスの反撃に遭う、という可能性は否定できないまでも、前戦も含めて京口優位は動きません。
さて、小國以載vsフィリップス・ンギーチュバ。
元IBF世界スーパーバンタム級王者、小國以載は、2019年5月の試合を最後に非常に不遇。
岩佐亮佑にIBF王座を奪われたのが2017年9月のことであり、その後アンダードッグを相手に2戦して2勝するも、その後はコロナもあって試合枯れ。2019年5月の判定勝利の後、その次の戦いまではなんと3年という月日の経過を待たなければなりませんでした。
2022年5月、栗原慶太との10回戦に臨んだ小國でしたが、結果はバッティングによるドロー。これは本当に好勝負となっていきそうなところでのバッティングとなり、本当に残念な終わり方ではありました。
そこからさらに1年と5ヶ月のブランクを作ったのち、2023年10月にジョンリエル・カシメロ戦。こちらも上手く戦い始めてきたというところでバッティングによるドロー、まさかの2戦連続ドローで勝ち星のないままここまできています。
さらにさらに、そこから1年後、これはチャンスというかサバイバルというか、非常に興味深い相手との戦いが巡ってきます。
カシメロと良い勝負をした、フィリップス・ンギーチュバです。
ナミビア出身のンギーチュバ、身長165cm、リーチ180cmという体躯だそうです。(BoxRecより)
2023年5月、カシメロと戦ったことで日本のファンに知られたンギーチュバは、それまでベールに包まれていましたが想像以上に良いボクサーでした。
身体能力が高く、良いジャブを持ち、ハードパンチを持っているボクサー。打たれて強いというわけではないですが、回復力が速く、これはアフリカンボクサー特有の体がバネ構造というものに由来しているのでしょう。
28歳と若く、身体的にはそろそろ全盛期が来そうなところだと思われ、カシメロ戦よりもより強くなっている可能性もあります。
カシメロ戦後、2023年12月にWBOアフリカのタイトルを獲得、2024年4月にそのタイトルを防衛しています。
この強打者であり、やりづらい相手であるンギーチュバに対して、小國はどのように対策をするのか。身体能力では明らかに劣る小國は、真正面から正々堂々とやり合えば明らかに危ないのですが、こういうディスアドバンテージをひっくり返すことができるのが小國以載というボクサーであるし、それこそが小國以載のボクシングです。
小國の勝利を見ることができれば、私たちはまた一つ、ボクシングという競技の奥深さを感じられるような試合を見ることができる、ということです。これは楽しみでなりません。
小國に勝ってほしいところですが、人間というものは歳とともに打たれ弱くもなるものだと思うので、ンギーチュバの強打は非常に怖いところもあります。ガンバレ、小國!
そのほかのアンダーカードと配信情報
谷口将隆(ワタナベ)が41歳のタイ人とのマッチアップ。このタイ人は3度目の来日で、1度目は56kg契約、2度目はスーパーフライ級(52.16kg)、今回は111lbs(50.35kg)の契約ウェイトでリングに上がります。ある意味すごい。
他に新井志道(黒崎KANAO)vs榊野凱斗(角海老宝石)のスーパーフェザー級8回戦と、藤原茜(ワタナベ)が出場するWBOアジアパシフィック女子フェザー級王座決定戦、全6試合のようです。
開始時間は12:45、配信はU-NEXTです。
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