歴史は繰り返す。
それにしたって、繰り返すサイクルが早すぎるのです。
WBAはかつて暫定王者を次々と擁立し、1つの階級にスーパー王者、レギュラー王者、暫定王者が当たり前のように存在し、ゴールド王者なんていうのもありました。
増えすぎた王座に対し、ABC(The Association of Boxing Commissions)はWBAに対して抗議を表明、これが奏功したのかWBAは暫定王座の撤廃を表明、その行動は意外なほど早いものでした。
⇩当時の記事

もしかしたら、「一回減らして、ほとぼりが冷めたらまた増やせば良いや」だったのかもしれません。
BoxRecからもいなくなったWBAに未来はあるのか。今回のブログは暴走するWBA、最近の暫定王座決定戦のニュースのまとめです。
WBA世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦
いくつかのうち、まだまとも、とは言えるのがこのWBA世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦です。ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)vsリカルド・エスピノサ(メキシコ)の間で12/14(日本時間12/15)に行われる予定です。
WBAの挑戦権を保持するアフマダリエフが、王座挑戦の意思表示をし続け、WBAが折れてこの試合に暫定王座決定戦と銘打った、というのがこの試合の流れなのでしょう。
ただ、ツッコミどころは非常に多い。
そもそもWBA王座、それも井上の保持するスーパー王座の指名戦の期限は18ヶ月。昨年12月に獲得したタイトルなので、そこを起点とするとするならば来年の6月まで、指名戦の期限は来ないはずです。であれば、純粋に4月か5月と言われているラスベガス興行で、井上vsアフマダリエフで十分間に合う計算になりますし、井上陣営としてはそういう目論見ではなかったか。
ともあれ、騒ぎに騒いだアフマダリエフが「指名挑戦者」たる地位をより確固なものにするために、「暫定王者」という肩書きを欲しがった、ということであれば、アフマダリエフ側に立ってみればその行動は理解できなくもありません。彼が待たされているのは事実です。
しかし、対戦相手は2位のラモン・カルデナス(アメリカ)でもなく、3位のイライジャ・ピース(アメリカ)でもなく、4位のルイス・ネリ(メキシコ)でもなく、10/1発表のランキングで突如13位に入ったリカルド・エスピノサです。
2019年ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)に最終回TKO負け、2021年にダニエル・ローマン(アメリカ)にユナニマスの判定負けを喫しているこのエスピノサは、おそらくこの試合を王座決定戦にするために世界ランカーに格上げされたボクサーです。そうでなければ、8月末に42勝28敗の相手に2RTKO勝利したからといっていきなり世界ランキングに入るべくもありません。
1位と13位の王座決定戦というのはなかなか納得性がありませんが、アフマダリエフにはここに快勝して、そのパフォーマンスで井上戦をアピールして欲しいところです。
WBA世界バンタム級暫定王座決定戦
謎は深まるばかりです。
WBA世界バンタム級、といえば、今月の中旬、王者・井上拓真が挑戦者・堤聖也を迎え、それはそれはとてつもなく素晴らしい試合を見せてくれた、あの階級です。
そこから程なくして発表があったこの暫定王座戦は、上記のスーパーバンタム級王座決定戦の前日、12/13(日本時間12/14)にアメリカで行われる、とのこと。
アントニオ・バルガス(アメリカ)vsウィンストン・ゲレロ(ニカラグア)というマッチアップのようです。
リオ五輪に出場した経験をもつバルガスは、18勝(10KO)1敗という好戦績を持っており、元アメリカのトップアマとしては長く待たされたボクサーと言えます。まあ、これは仕方がありません。バンタム級という階級の中心はアメリカではありません。
対してウィンストン・ゲレロ、ファンタズマ(幽霊)というニックネームとゲレロ(戦士)というセカンドネームを持つこの強そうなボクサーは、22勝(13KO)無敗とまだ底を見せていないボクサーです。しかし、強豪との対戦経験はなく、これまでの最長ラウンドは8ラウンド、10回戦のリングには1度しか上がっていません。(3RKO勝利)
バルガスは前戦で挑戦者決定戦に勝利し、挑戦権を得ているのですが、それが今年2月の話で、さらに相手は那須川天心と戦ったあのジョナサン・ロドリゲス(アメリカ)。7RRTD勝利を収めているようですが、初回にダウンを奪われてもいるようで、来日したロドリゲスのボクシングを見てしまった我々日本のファンとしては「ラッキーな挑戦者決定戦だったな」とか思ってしまいます。
だから別に普通の調整試合と言えば良いものの、なぜかこの試合に暫定王座がかかります。そしてもちろん、そんなキャリアのゲレロは世界ランキング12位です。
明らかに、バルガスに世界王座を獲らせるための試合なのでしょう。
WBA世界スーパーフライ級暫定タイトルマッチ
スーパーフライ級といえば今年7月、WBA王者だった井岡一翔とIBF王者のフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)が争い、マルティネスが王座統一を果たしたという階級です。
その統一戦が決まっていたから(と思いたいのですが)、それに先立つ4月、ジョン「スクラッピー」ラミレスvsデビッド・ヒメネス(コスタリカ)の間でWBA世界スーパーフライ級の暫定王座決定戦が挙行されました。
おそらくこの試合はアメリカ期待のスクラッピー・ラミレスに勝たせたい試合でしたが、Bサイドであるヒメネスが奮起、完勝を納めて世界初戴冠。
なので本来であればフェルナンド・マルティネスvsデビッド・ヒメネスというのが次の段取りとなるのですが、そこに井岡が割って入った形になるのでしょう。この部分の良し悪しで言えば、このダイレクトリマッチは歓迎すべきものではありません。ただ、私は完全に日本贔屓であるし、井岡の最後のファイトともなり得ることもあり、このマルティネスvs井岡はさっさと発表してほしい、と思っています。
すでにこの試合がちゃんと組まれているのであれば、このヒメネスの「暫定王座」の防衛戦というのはある種理にかなっているものではあります。
しかし、その問題は(またも)挑戦者にあります。
ヒメネスの対戦相手は、32勝(12KO)6敗1分のキービン・ララ(ニカラグア)、2016年、フライ級王者時代の井岡に挑戦して11RKO負けしたあのボクサーです。
しかももっと問題なのは、このララ、直近5戦で2勝3敗と負け越しており、さらにもっと問題なのはノーランカーであることです。そしてこのララの前戦は、というと昨年の12月であり、11ヶ月以上のブランクを経てのいきなりのタイトル戦ということになります。あ、試合は12/7(日本時間12/8)、コスタリカで行われます。
ヒメネスにとっては凱旋試合となるこの試合ですが、もうちょっと体裁を整えられなかったものなのか、と思います。この試合は本来であれば防衛戦になりえず、11月の発表でララは世界ランク復帰となるわけですが、それで良いのかWBA。
3者の共通点
ムロジョン・アフマダリエフは言うまでもなくマッチルームの所属選手です。エディ・ハーンというでかい影がちらつきます。
アントニオ・バルガスはBoxlab Promotionsというプロモーション会社に所属しており、こちらは小規模興行をDAZNに放映してもらっているようです。
デビッド・ヒメネスは、地元コスタリカファイトクラブというところの所属と思われ、ただし、コスタリカ国外ではBサイドでの試合ばかりであり、コスタリカ国内(というか中南米)での試合はESPN Knockoutで放映されていますが、アメリカやイギリスの試合はBサイドとして赴き、DAZNで放映されています。ここで王者となったヒメネスは、おそらく国外での試合はDAZNと契約していると考えて良いでしょう。(王者ではなくなった途端に契約を打ち切られるやつ)
この3者の共通点は、様々な制約こそあれど、全てDAZNが関わっている、ということです。
DAZNは現在、リヤドシーズンの放映権をはじめ、業界にはかなりの影響力を持っているが故、もしかすると。。。と思うのは邪推なのでしょうか。
ともかく、各団体には健全な運営を望むのみです。
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