先週末、IBF世界バンタム級王者、西田凌佑(六島)が7ヶ月ぶりにリングに登場。
デビュー戦以来の2度目のノックアウト勝利を決め、本人は納得いかないようですが素晴らしい強さを見せてくれました。
肋骨の怪我で実戦練習の不足、そして当日も不安を抱えながらあのパフォーマンスというのは、相手が下位ランカーとはいえ世界戦においても力の差は大きかったのでしょう。
そして勝利者インタビューで飛び出したのは「中谷選手と戦いたい」との言。
一気に日本人王者が揃い踏みした2024年を経て、ここからは統一路線です。
ということで今回のブログは、2025年のバンタム級統一戦線を見ていきましょう。

バンタム級
WBA王者:堤聖也(角海老宝石)
2024年10月、井上拓真(大橋)を降してWBA世界バンタム級王座を戴冠した堤。あの試合は少なくとも日本のFOTY候補には上がるはずの試合であり、堤は2年連続でこの「最高試合賞」を受賞することになるかもしれません。
いつもその気合いを前面に押し出して戦う堤、その試合は毎試合のように感動を呼ぶものです。増田戦も、穴口戦も、もっと振り返れば中嶋一輝(大橋)、比嘉大吾(志成)、澤田京介(当時JBスポーツ)、大嶋剣心(一力)、どの試合も素晴らしいファイト。
そんな堤の次戦はどうでしょうか。
まず井上拓真との再戦、という線は、この王座が色々とザルなWBA王座であること、そして大橋ジムが大きな力を持っていること、さらに前王者として拓真陣営にオプションが存在するであろうこと、これを考えるとダイレクトリマッチの可能性は否定できません。
ただ、判定結果が告げられた瞬間、拓真が素直に堤を讃えていた(負けを受け入れていた)こと、そしてあの試合の後、何も発信していないことを考えるとその線は濃くはないでしょう。まあ、正直井上拓真はこの後地力を蓄えて、スーパーバンタムで井上尚弥の後釜王座を狙う方にシフトする可能性もあると思っています。
それでは堤の次戦が王座統一戦となるか、というとそれもまた難しい。
理由はWBAがWBAらしく、2ヶ月前に決まった正規王者をよそに暫定王座を設定してしまったからです。
↓観戦記
ニッポンのバンタム級王者たちは、それぞれが非常にアクティブに活動しています。
そこに暫定王者など入り込む余地はないはずですが、この辺りはさすがWBA。ともあれ、アントニオ・バルガス(メキシコ)はアメリカ国籍ですがマチズモの体現者であり、非常に攻撃的なボクシングをする王者です。
反面、ディフェンスにやや甘さは残りますが堤とは大いに噛み合うでしょうし、またも好試合が見られるのではないでしょうか。
規定で言えば、団体内王座統一戦が組まれるのが当たり前のことですが、何せこれはWBAの王座だけにわかりません。ただ、「正規王座の防衛戦」と「暫定王座の防衛戦」があまり変わらない時期に組まれる、という意味不明な事態を防ぐためにも、是非とも早々にこの試合は実現して欲しいものです。
WBC王者:中谷潤人(M.T)
2024年2月、ノニト・ドネア(フィリピン)を破ったアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)を一蹴、WBC王座を獲得した中谷潤人。
2024年は年間で3試合をこなし、7月にジェイソン・マロニー(オーストラリア)と好勝負を演じたヴィンセント・アストロラビオ(フィリピン)を初回KO、かつて井上拓真と王座を争ったペッチ・CPフレッシュマートを6RTKOで撃退、現在世界戦3連続ノックアウト勝利中。
1試合ごとに大きく評価を上げる中谷に対し、世界中のファンが望むのは井上尚弥との日本ボクシング界のTBE(The Best Ever)を決める戦いに臨むことです。
とはいえ、すぐに戦えるかというとそうではなく、中谷としてもこのバンタム級で、4団体とは言わずともいくつかの統一戦を戦っておきたいようです。
そしてつい先日、IBF世界バンタム級王者の西田凌佑が「中谷選手と戦いたい」と名言。プラットフォームの違いこそあれど、U-NEXTもAmazon Primeも帝拳プロモーションの息のかかったプラットフォームであり、西田がABEMAで戦た頃と比べればその障壁の高さはないに等しい。
中谷も西田もこの階級での仕事を急いでいる、と考えると、案外すんなりとこのマッチアップは決まるのかもしれません。
そしてもしこの試合がすぐに決まらなかったとしても、中谷には非常に興味深い対戦相手がわんさか湧いてきている状態です。

1位に元WBC世界スーパーフライ級王者、ファン・フランシス・エストラーダ(メキシコ)。このスターボクサーとの対戦は非常に話題になるはずですし、比べ始められたジェシー「バム」ロドリゲスとの格付けが可能になる戦いであると思われるので、海の向こうのファンたちにも訴求する部分は大きいでしょう。前戦で完璧に敗北したエストラーダが階級を上げてなぜ1位に?というのは言いっこなしです。理由は「エストラーダがメキシコ人で、このランキングはWBCだから」としか言えません。
さて、2位にランキング復帰したのが井上拓真。これは王座陥落後、すぐに復帰しているので「中谷にぶつけるため」のランク復帰ではありませんが、この位置にいるというのは非常に興味深いものです。そして堤に敗れたとはいえ、このタイミングでも戦う価値は十分にある相手でもあります。
3位の那須川天心とやることはないでしょうが、那須川はすでにここまで上がってきているのですね。
IBF王者:西田凌佑(六島)
2024年5月、階級最強の一角でもあったエマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に挑戦、ダウンを奪っての判定勝利を得た西田凌佑。この勝利は海外での評価も非常に高く、リングマガジンのWebサイトが閉鎖される前のランキングは中谷潤人に次いで2位だったと思います。
そこから7ヶ月後の先週末が初防衛戦で下位ランカーを相手とはいえ、良い勝ち方をしましたね。
そして勝利者インタビューでは「中谷選手とやりたい」とはっきりと伝えました。
この戦いが叶うならば、リングマガジンのベルトもかかる階級最強決定戦となるでしょう。
バンタム級で戦える時期はさほど長くなく、他のボクサーのように年3試合というのは西田にとって難しいはず。とすれば2025年の夏頃に1試合、冬頃に1試合というのが理想的なペースのように思えます。あとはそのタイミングに、中谷が合うかどうか。
トップランクとも契約する中谷は、もし来年春に井上尚弥がラスベガスのリングに立つならば、そこにも顔見せしておきたいところ。そうなると西田の予定次第ですが、夏の予定を少しずらすことで秋口の試合が可能になるかもしれません。
さて、IBFで気になるのは指名挑戦者の存在です。
IBFの指名挑戦権というのは、他の団体とは違いちゃんと施行されるのが一般的。
この挑戦権をかけて、(1位と2位が空位)3位のチャーリー・エドワーズ(イギリス)と4位のホセ・サラス・レイジェス(メキシコ)が対戦、という予定でしたが、この話はもしかすると立ち消えになっているのかもしれません。
というのも、当初この試合の予定は1/24(日本時間1/25)と報じられていましたが、当のチャーリー・エドワーズは3/15(3/16)に別の試合を入れています。これはつい先日発表されたニック・ボールvs TJドヘニーのアンダーカードです。
来年いっぱい西田がこのバンタムにいられるかどうかはわかりません。もしその前に中谷vs西田が決まるのであれば、勝った方はバンタム級最強の称号と、井上尚弥への挑戦権を手に入れる、そんなストーリーで良いような気もします。
WBO王者:武居由樹(大橋)
サム・グッドマン負傷の割を食ってしまった武居由樹。2024年5月に世界を初戴冠、その4ヶ月後に初防衛戦、そしてその3ヶ月後に2度目の防衛戦、ともなるとなんだか令和のボクサーではなく、少なくとも平成時代のボクサーのようなアクティブ感です。
もちろんこのように短期間でリングに上がってくれるのは本当にありがたいし嬉しいことですが、それなりにしっかりと期間をとってリングに上がっている今の時代だからこそ、選手寿命が伸びている、と考えるのは浅はかでしょうか。例えばある程度のキャリアを積み、選手個人がいけると思ったならば3ヶ月に1度の防衛戦ペースでも問題ない(例えば井上尚弥のように)ですが、果たして武居はキャリアがまだ浅く、しかも12ラウンズの激闘に慣れていないところで2試合連続判定勝利。試合内容も本当に疲れるもので、ダメージもあるはずで、このハイペースは心配になります。
だから1ヶ月でも伸びてよかった、と武居に関しては思います。
ともあれ、武居由樹の次の相手、ユッタポン・トンディー(タイ)については得体がしれないボクサーではありますが、ここは良い勝ちっぷりをしてもらいたいところ。
問題は武居のその後、というところではありますが、この武居由樹だけはバンタム級において「王座統一戦」の話題がでないボクサーです。
もちろんその理由は、武居由樹vs那須川天心というマッチメイクを、ボクシングファン、格闘技ファン、全員が見たいからです。
だからこそ、武居は負けてはいけません。
この2人が無敗でぶつかることにこそ意味があります。
王者は武居ですが、このマッチアップの主導権はなぜだか那須川にあり、さっさとやりたい武居に対して、那須川は「もうちょっと待て」と。
武居としてはおそらく減量も苦しいでしょうから1日でも早い方が良い、そして那須川からするともう少しボクシングに慣れるために少しでも遅い方が良い。
この待ち時間に武居が負けてしまった場合、元も子もないですが、武居だっておそらく今度の試合は(たとえ口でどう言ったとしても)モチベーションはマロニー戦や比嘉戦の比ではないでしょうし、そのさほど高くないモチベーションに対してトンディーなる未知のボクサーが怪物のように強かったら、と考えると恐ろしいものです。
ボクシングのマッチメイクというのは水ものです。
できる時にさっさとやらなければ、一気に旬を逃してしまいます。
この試合のリミットは遅くとも来年中かと思われ、できれば来年の夏くらいまで、もしくは秋口くらいに決まって欲しいものです。ここに勝利した方は王座統一戦に進んでもらって良いと思います。
バンタム級
「2025年は王座統一戦」、これはボクシングを見ている人なら強く願うことでしょうし、それが当然の流れになっているであろうバンタム級。
それでも得てしてうまくいかないことがあるのも、またボクシングです。
特にこのバンタム級で安易に次は統一戦、ということが叶わないのは、この階級の世界戦線を取り巻く環境が現在激戦区そのものであるからです。
そもそも、「勝てば次は統一戦」というのが内定していた井上拓真は、堤聖也に敗れました。
そしてもちろん、WBOアジアパシフィック王者の那須川天心(帝拳)、日本王者の増田陸(帝拳)、どちらも世界王者になっても驚きはない、というぐらい強いボクサーです。
OPBF正規王者の栗原慶太(一力)は、一時期は対戦相手が現れないほどのボクサーでしたが、ここ最近のパフォーマンスは極上とは言えません。次戦になると思われる暫定王者との王座統一戦、ケネス・ラバー(フィリピン)との戦いは、ファンに世界への道のりを示す上で非常に大きな一戦となるのではないでしょうか。
那須川にしても、増田にしても、栗原にしても、王者たちが統一戦をやるから待ってくれ、と言われて待つわけにはいかないでしょう。そこにどうにか割って入って行こうとすれば、そうすんなり王座統一戦が決まるわけがありません。
どのような戦いになろうとも、興味深いマッチアップとなるバンタム級。2025年のバンタム級も楽しみにしましょう。
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