サム・グッドマン、またも負傷。
12月、スパーリング中の左瞼裂傷を負い、1ヶ月の延期と決まった「元」クリスマス決戦。
1/24(金)とほんの少し有明アリーナに行きやすくなったわけですが、その試合の2週間前の1/11(土)に同じ箇所を負傷というニュースが流れ、グッドマン陣営は欠場を決めました。
挑戦者として、王者を待たせるというだけでなく結局欠場というのは流石にもう弁解の余地はありません。グッドマンの挑戦資格は剥奪、というのが相応しいような気もしますが、これでもしまだIBFの指名戦の縛りに苦しめられるようなら井上が不憫です。
ということで今回のブログは代役としてリングに上がるキム・イェジョンについて。

1/24(金)Lemino ボクシング
世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチ
井上尚弥(大橋)28勝(25KO)無敗
vs
キム・イェジョン(韓国)21勝(13KO)2敗2分
トップコンテンダーのサム・グッドマンですらおそらく相手にならないだろうと思われていたのだから、このキム・イェジョンという、かろうじてWBOの11位にランクされている下位ランカーであれば尚更のことでしょう。
いずれにしろ、井上にとって十分な相手はランキングを見渡してみても不在なので、致し方ありません。
聞けばこのキム・イェジョン、元々代役として準備をしていたそうなので、少々の準備不足はあろうとも降って湧いたような挑戦者ではない、ということは少しは期待ができるのかもしれません。
まずこのキム、来日としては3度目となるようで、日本人ボクサーとの対戦は8回目、となるようです。
2012年にプロデビューしたキムは、デビュー2戦目で初黒星。おそらく叩き上げと思われるこのボクサーは、4戦目、4回戦で日本人ボクサーと戦い、2RTKO勝利。これは韓国での戦いだったようです。
その後は6戦目で後楽園ホールのリングに上がり日本人ボクサーを相手に判定勝利、2014年にはカシミジムの興行に呼ばれて松本章宏とWBCユース王座を争い、9RTKO勝利でこれを戴冠。
その後も幾人かの日本人ボクサーと韓国で対戦、その中には先日増田陸に挑んだ宇都見義広(キムの7R終了TKO勝利)、のちのWBOアジアパシフィック王者ストロング小林祐樹(キムの判定勝利)とも戦っていますね。
引き分けを挟んでの連勝街道を突き進んだキムは、その間にIBFアジアのタイトルも獲得、そして2019年に小坂遼との王座決定戦を制し、WBAアジアのタイトルも獲得しています。
これが2019年5月の出来事で、そこから3年と5ヶ月の間リングから離れていますが、これはおそらくコロナ禍が関連しているのでしょう。2022年、リング復帰したキムは、それまで戦ってきた韓国、日本を飛び出してメキシコで勝利。翌2024年にはアメリカのリングでロブ・ディーゼルという連敗中のボクサーに8ラウンド判定負けを喫しています。
その後はオーストラリアで初回TKO勝利、タイで5R TKOとさながらロードウォリアーのように戦っています。
キャリア最大の勝利はストロング小林戦か小坂遼戦で、どちらもアジアのタイトルマッチ。小坂戦を見ると、グイグイ迫ってくる小坂をいなし、的確にパンチを当ててダウンを奪った末のTKO勝利(RTD勝利)であり、その技術の高さを感じさせますね。
そして敗れはしたものの好ファイトであるロブ・ディーゼル戦は、さながら昔のコリアンファイターのように前に出て戦い、0-2の判定を落としてはいるものの素晴らしいファイトを見せているようです。ハイライトでしたが、接近戦も上手く、見せ場も作っているように見えますね。
BoxRecを見るとニックネームは二つ、一つはメディアでも発信されている「トラブルメイカー」というもので、もう一つは「Pacquiweather」、パッキウェザーとでも読めば良いのでしょうか、ディフェンス技術に定評のあるキムですが、そのアグレッシブネスもなかなかのもので、パッキャオとメイウェザー、両者の特徴を併せ持つ、という意味のようです。当然、完成度こそ及ばずとも、攻めて良し守って良し、そのファイトスタイルを象徴するニックネームということなのでしょう。
ちなみにこのキム、小坂戦はオーソドックスで戦っていますが、ディーゼル戦ではサウスポーを主体として戦っていますので、おそらくスイッチヒッターなのでしょう。
目指せアップセット?
あまりにも高く、遠い目標を敷くのはあまり現実的ではありません。
どんなにこのキムを持ち上げても井上尚弥に勝てるという確率は1%を切るでしょうし、残念ながらグッドマンにも及ばないというのは事実でしょう。
もし井上尚弥に付け入る隙があるとすれば、これはもちろん月並みなものになってしまいますが、ランキング下位の相手との防衛戦で少なからずモチベーションが低下するであろうこと(を期待すること)で、グッドマンのオーセンティックなスタイルに対策してきた井上尚弥に対してサウスポーで挑めること(とは言っても、ここ数戦、井上の対戦相手はサウスポーばかりだったのであまり効果はないかも)ぐらいでしょうか。
このキムはパワーはどちらかというとある方だと思いますし、KO率も決して低くはありません。ただどちらかというと1発で倒すパワーというよりもパンチの的確性に優れており、またカウンターも上手く、畳み掛ける時のチャージの的中率が良い、という感じ。果たしてそのチャンスが井上を相手に訪れるのか、二の矢三の矢を出せる状況を作り出せるのか、というのはなかなか難しい問題です。
正直な話、キム陣営としてはほんの少しでも見せ場を作ることができれば次につながる、くらいの気持ちでいた方が良いのではないか、とすら思います。
おそらくキム陣営の準備期間は1ヶ月半ほど。グッドマンが1度目の負傷の後、リザーバーに選ばれたであろうキムは、このグッドマンの2度目の負傷がなかったとしても1/24の興行に組み込まれる予定だった、ということですから、調整自体には問題はないでしょう。
そして、勝てばもちろん人生が変わるという大一番。きっと死に物狂いでやってくるでしょうし、ジェイソン・モロニーのスパーリングパートナーを務めているというのも良い方向に転ぶ出来事ではあるのでしょう。
これまでの試合を見る感じでは、気持ちも強いボクサーだと思うので、なんとかフルラウンド逃げ回ろうという戦法は取らないでしょうし、トップファイターとの試合経験もないキムは、当たって砕けろという精神がグッドマンよりもより強いと思います。
申し訳ないですが、ここは井上がどのようなノックアウトシーンを生み出すのか、ということが焦点になりそうな試合ではあるものの、やはりこの代役挑戦者であるキムにはどのようにか見所を作って欲しいと期待するところです。
「代役」は意外とかき回す場合があります。それは例えばオーソドックスの代役としてサウスポーが選ばれた場合や、仮に無敗の未知の強豪だった場合。キムはすでに2敗しており、「未知」とは言えないかもしれませんが、この心意気は買って、試合を楽しみに待ちましょう。
↓キム・イェジョンvs小坂遼のYoutube動画
https://www.youtube.com/watch?v=aP4ddfestRg&t=705s
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